どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。
いやー、完全に明けたね。年。こうも毎回明けるもんかね。他にこんなに毎回明けるもんある? どう考えても年だけだよ。我、強すぎでしょ。
そんな我の強い暦と比べて私ときたら、繁忙期に押し寄せてくる膨大な仕事という津波に飲まれて、完全に藻屑と化していた。
忙殺される日々を過ごすうちに、私の自我はほとんどなくなり、機械的に毎日をこなしていた。仕事帰りのスーパーで店員さんに「ありがとうございました~」って言われたときに、職業病でついつい元気よく「ありがとうございましたっ!!」って大声で返してしまうレベル。あれ絶対あとで、めっちゃ元気いい客がいたって言われてるよ。むしろ元気ねえっつうの。
そんくらい自我を失って、ぼんやりとした毎日を過ごしていた。
で、そんな壮絶な日々の中で数少ない癒やしといえば、やっぱり私は読書で、ただでさえ少ない睡眠時間をわずかでも削って読書に充てていた。健康を考えたら正気の沙汰ではなく、フィクションの世界に逃げ込んでいる時間があったら絶対に寝た方がいい。
だが不思議なことに、仕事で忙殺されているときよりも、フィクションに没頭しているときの方がよっぽど“私”なのである。本を読み、集中し、心が自由に動く。その瞬間の私は、なによりも私だった。この感覚、分かってもらえるだろうか?
今までも数多くの機会を本に救ってもらったけど、今こうやって忙しかった日々を思い返してみると、やっぱり私にとって読書は命綱だな、と思う。大げさじゃなく。(とか言いつつ、ほんとに崖とかで落ちそうになって、命綱と本を同時に差し出されたら、間違いなく命綱を握る。当たり前だろ。っていうか、その状況で本を渡してくるそいつ、病院か警察行け)
このように、その人その人で読書との付き合い方の物語があるのだ。
ということで、今回の記事のテーマである。
「お前らの命綱を見せてくれよ」
これである。
皆さんが2020年に出会った本たちの中でも、「これは最高!」と言える作品たちを知りたいと思った。そしてそれにうってつけのタグを見つけてしまった。
#2020年の本ベスト約10冊
“約”というところに、作品を絞りきれないTwitter読書垢の未練がましさと本愛が垣間見えてよろしい。その愛、私がすくい上げてみせる。
そんなわけで、毎度のことながら皆さんの「#2020年の本ベスト約10冊」のタグが付いたツイートをすべて手作業で集計させていただいた。
※過去の似たような記事たち
今回集計したツイートはその数、実に1664ツイート。
集計した作品は全部で18000冊以上。
仕事が一段落したのをいいことに、業務時間も好き放題に使いながら集計させていただいた。社畜最高!社長ごめん!いつか死ぬから許して!!
~集計のルール~
①作品名が出たら1票としてカウント
②同じ人の同じツイートは不可。リツイートも同様。
③ひとつのツイートの中で複数回言及されていても1票としてカウント。
④すべてのツイートを集計し、票数が多い順にランキング付け
以上がカウントの基本ルールである。
ただ、困ったのがシリーズもののカウント方法。
1巻と書いてる人もいれば、2巻と書いてる人もいれば、〇〇シリーズとも書かれているときがある。
未読の作品だとどう対応したらいいのかさっぱり分からない。
で、これに関しては本当に申し訳ないのだが、私の独断と偏見と皆さんの表記傾向を見て分類させていただいた。
例えば、〇〇シリーズと書いてる人が多数の場合は、1巻や2巻と書いてる人も含めて合計し、ひとつの作品としてカウントしている。
1巻や2巻の表記を分けている人が多数のときは、別の作品としてカウントさせてもらった。
また、これこそ完全に独断と偏見なのだが、〇〇シリーズとか1巻2巻といった表記がされていたとしても、私が既読で「これは続き物の作品だから、巻数は重要じゃない」と感じたものに関しては、どんな表記をされようがまとめてカウントした。集計した人間の特権だと許してほしい。
このような感じで、皆様の「#2020年の本ベスト約10冊」ツイートをすべてカウントし、「2020年にもっとも読者を満足させた本」を可視化させてもらった。
Twitterの読書垢が1年を費やして見つけ出した珠玉の10冊たち。さらにそれをまとめたランキングである。
これはつまるところ、Twitter読書垢が決める「2020年に読んだ本総選挙」と言っても過言ではないだろう。
で、このあとランキングを発表するのだが、前述のとおり18000冊と、集計した数があまりにも膨大で、情報量が半端じゃない。
なので今回はベスト20のみを紹介する。
正確な数は把握できないのだが、集計した作品が全部で8500ぐらいあったので、その上位20だから、文句なしで超人気作品たちである。
※もしこの記事が好評なようであれば、完全版として今回紹介できなかった21位から32位(4票獲得)も含めたランキングを編集して公開します。
過去に似たような記事を書いたときに、記事が長大すぎて見れないという方もいらっしゃったので。
ではTwitter読書垢による、2020年に読んだ本総選挙。開催である。
行ってみよう。
第20位
16票を獲得した20位はこちらの作品。
すげえな!2020年になってもまだ人類を魅了してんのかよ!
ドストエフスキー氏は、一体いつまで最強の座に君臨し続ければ気が済むんでしょう。もう人類をあなたの筆力(ふでぢから)から開放させてやってくれませんかね?
世界最高文学の称号は、まだまだ失いそうもない。さすが。
ちなみに『カラマーゾフ』は7票獲得の20位。
第19位
続きまして、17票を獲得した第19位は、ちょっと多めの全部で7作品。
『Another』シリーズに関しては、表記のバラツキがあったのだが、単体でも作品として完全に独立していると判断したので、別々に集計させてもらった。
ちなみに『Another』 は6票獲得で30位である。館シリーズで才能を使い果たしたかに思えた綾辻行人。そんな彼の新たな代表作としてここまで育ったことを、いちファンとして嬉しく思う。
直木賞にもノミネートされた、今最も勢いのある若手歴史作家、今村翔吾の快作は19位にランクイン。
歴史ものは根強い人気があって、本屋大賞でも毎年ひとつはランクインしている印象。2021年本屋大賞ノミネートなるか。
平野啓一郎は今、Twitterを一番上手く活用し、一番影響力のある作家じゃないだろうか。作品内で表現の限界に挑戦し続けるアグレッシブな作家だけに、SNSでも面白いことをしないと気が済まないのだろう。それかただ単に、言いたいことが山ほどある人なのだろう。
おぉ~、噂にはちょくちょく聞いていた『革命前夜』がめでたくランクイン。
ハイレベルに文章へ落とし込まれた音楽描写と、重厚な歴史ドラマ。感動を生む深いストーリー。まだ私は未読なんだけど、感想を見る限り、けっこう全方向から強いタイプの作品っぽい。
口コミでじわじわ売れ続け、長く世の中に愛される作品になりそうである。
出ました。デビュー作でいきなり世のミステリー好きたちに、その豪腕を見せつけ、本屋大賞で3位という快挙を成し遂げ、さらには映画化と、大暴れした『屍人荘の殺人』である。そのぶん、ゴリゴリのミステリー過ぎて被害者も生み出してったぽいけど。
読めば分かるのだが、作者の「とんでもねえもん作り上げたる!」という気合が凄い。壮大な建築を見せられたような気分になったよね。
これは個人的にめっちゃ嬉しい!
不思議作家の恒川光太郎の作品、しかもデビュー作がこんなに人気とは…! じわじわ来てるのか?これから来るのか?!いや絶対にそんなバズる作家じゃないから、この辺りが適当でしょう。←めっちゃファンだけど、ここは冷静に評価
恒川光太郎の代名詞である「読者を“ここではないどこか”へ連れ去る鬼才」を、存分に味わえる作品。断言しよう。この読み味は唯一無二である。
本屋大賞を受賞した瀬尾まいこの最新作がランクイン。
見たことない出版社だと思ったら、なんとこの作品が一作目だそう。社長は元文藝春秋で、藤崎彩織の『ふたご』を手掛けた篠原一朗氏。
このご時世に新しい出版社なんて。そしてそこから上梓した瀬尾まいこ。見えるよね、愛が。
第18位
18票を獲得した第18位は1作品のみ。
300年前の小説が見事ランクイン。どないなっとんじゃ。
今のところ終わりの見えないコロナ禍で、ウイルスの話題なんてラーメン二郎ぐらい大盛りで毎日摂取してるだろうに、まだ欲するかね。読書家の知識欲よ。
でもそういった問題に直面しているからこそ、「もうお腹いっぱい」という人と「より知りたい」と興味を進めちゃう人がいて、読書家はどうしたって後者になりがちだよね。
第17位
19票を獲得した第17位は全部で6作品。数の偏りが凄い。
安定の伊坂幸太郎。でもなんで今さら?と思ったけど、文庫化が2020年だったのか。
伊坂らしいみんなが美味しく召し上がれるストーリーだし、黒澤が大活躍してるし、新規も古参も大満足な一冊。
この国から「おじさん」が消える――、なんていう衝撃的な惹句が紹介文に書かれていて、なんのことかと思ったらジェンダー問題を扱った小説だったのか。フィクションは現実を写す鏡であり、必要だからこそ生み出されるものだ。
狼煙を上げる作品がこうやって上位に食い込んでいること、それが何よりも世の中が変わりつつあることを表している。
本屋大賞2位、Twitter文学賞受賞と、翻訳小説の中でも2020年の顔といえばルシア・ベルリンでしょう。「アメリカ文学界最後の秘密」の異名は伊達ではない。それにしても美人さんですなぁ。
東大卒の頭脳を存分に活かして、トリッキーだけど確実に読者の思考の穴を突いてくる、優秀な短編集。井上真偽といい、五十嵐律人といい、知念実希人といい、最近のミステリー作家は偏差値水準がぶっ壊れてきてる印象。
米澤穂信は偉い作家である。十分ネームバリューがあってノンシリーズで書いても売れるのに、古参ファンのためにシリーズものの続編をちゃんと書いてくれるのだから。
スイーツネタ縛りで絶対に苦しいだろうに、それでもキレイにまとめあげちゃう手腕はさすがの一言。あとはもう、『冬季限定』を名作にしてくれれば言うことはないだろう。
テレビもネットも、息苦しくなるようなニュースばかりだった1年だったので、こういうほっこりした優しい作品がみんなの胸を打ちやすかったのかもしれない。殺伐としてるときに、わざわざ平山夢明とか馳星周とか読みたくないもんな!(私は読みたい)
未読の作品なのだが、レビューの高評価っぷりを見る限り、相当な名作であることが伺える。派手じゃないけど味のある作品が評価されるのは、本好きとしてとても嬉しい。
第16位
20票を獲得した第16位は2作品がランクイン。
本屋大賞初のノンフィクション部門で大賞をかっさらった名作。
あらゆる媒体で大人気で、アマゾンのレビュー数とかもとんでもないことになっている。最初タイトルを見たときはイロモノだと思ってたけど、実は深くて、考えさせられて、感動できる良作だったようである。売れすぎててなかなか読む気にならないけど、興味あるなぁ。
おぉ! 先日書いた私のフェチを全開にした記事で取り上げさせていただいた作品である。
だって切なすぎない?星を探した言い訳って。歴史上一番切ない言い訳でしょ。好きすぎる。優勝。
タイトルだけで満足しちゃって、まだ読んでないのは秘密だ。
第15位
21票を獲得した第15位は5作品。
またまた伊坂幸太郎がランクイン。いやー強いねぇ。
このブログでは腐るほど書いているのだが、伊坂幸太郎は面白い小説しか書けない病気に罹っているので、みんなが10冊の中に選んじゃうのも当然である。
その一方で伊坂は多作なので、どうしても票がバラけてしまう傾向がある。それでもこの強さである。凄さが伝わるだろうか。
小説界の永遠のアイドルこと村上春樹の登場である。
今回も残念ながらノーベル文学賞を逃してしまったが、その人気は揺るぎない。こんな地味すぎるタイトルでもガッツリ売れるし、読者を満足させて15位にまでランクインしてしまう。
私も村上春樹は大好きでよく読んでいるのだが、正直、読んでるときは没頭して楽しいのだが、読み終えると何が面白かったのか分からなくなるし、なんならどんなストーリーだったのかもよく把握できてなかったりする。たぶん村上春樹に向いてない。
大好物。
脳汁だくだくになるから、みんな読め。
SFものが連続でランクイン。ただこちらは中国発。
それにしても最近の中国SFはどうなってんだ。世界を席巻しすぎでしょ。こちらのテッド・チャンは“巨大ばかうけ”こと映画『メッセージ』 の原作でも有名で、現代SFの最先端をひた走る作家である。世界最高峰とも評され、オバマ元大統領もファンに持つ当代随一のSF作家が放つ異次元の短編集である。
ここ数年、本屋大賞の常連になっている村山早紀の最新作。
優しく暖かく、癒やしに満ちた作風を得意とする村山早紀の真骨頂みたいな作品である。
コロナ禍でクサクサしているときに村山早紀は相性が良いのかもしれない。
第14位
続いて、22票を獲得した第14位は2作品。
その刺激的な価値観で世界中の読者を巻き込んでいる村田沙耶香。そんな彼女の名を世に知らしめた名作の登場である。
芥川賞を受賞してすぐの頃はそれこそ賛否両論だったけど、こうやって時間が経ってみれば、高評価の声ばかりが残っていて、未だに売れ続けている。文句を言うやつはすぐにいなくなるってことだ。
続いては2020年の直木賞の登場。いいね、芥川と直木が同時ランクインって。
直木賞の特徴として、作品そのものよりも作家自身に贈られる意味合いが強いのはよく知られていることだけど、こちらの『熱源』は作品そのものの力がかなり評価されている印象。
樺太のアイヌ民族の数奇な運命を壮大なスケールと緻密な描写で描いた名作である。
第13位
23票を獲得した第13位は全部で5作品。
メフィスト賞の良心こと辻村深月の本屋大賞受賞作である。
本屋大賞はやっぱり強いね。辻村深月は長年ノミネートし続けての受賞だったから、デビュー以来見続けていた私としては、嬉しいっていうよりもなんか安心してしまった。労いの気持ちが大きい。
それにしても、メフィスト賞受賞作家がドラえもんの映画の脚本を書くようになるとはなぁ…。時代も変わったもんだ。
美術×小説といえばマハ。もう独擅場と言っても過言ではないだろう。美術を扱ってるときの無敵感が凄い。しかもこちらの『たゆたえども沈まず』はみんな大好きのゴッホが主役だし、キーパーソンでピカソも出てくるし。これがウケないはずがない。
マカン・マランはシリーズでのツイートが過半数を占めていたので、すべてのツイートをまとめて計上させていただいた。
「どんな名言よりも効く!」と評されるほど、疲れた人々の背中を後押ししてくれる名作である。シリーズ全体を推す人が多いことからも、病みつきになるタイプの作品であることが伺える。
やっと登場しました、奥歯氏。若干25歳にしてこの世を去ったとある編集者の日記をまとめた書籍になる。
この作品には、本を愛して止まなかった女性の穏やかな日々と、徐々に心を壊していく様子が、どちらも等しく描かれている。共感もあれば、耐えられないぐらい厳しい描写もある。そして、なによりも本というものへの愛が詰まっている。
これは読書を愛する人たちに贈られた、彼女からの遺書なのかもしれない。
これもずっと売れ続けてるし、ずっと人気だなぁ。さすがのマハ。
スピーチをテーマに小説を書くという結構野心的な試みに挑戦している。知的で美術な作品を書いているから勘違いしがちだけど、マハはこと創作においては肉食獣だからな。
TEDとかを見ると分かるけど、どんな感動的なスピーチも、文章で読むと途端に味気なくなるんだよね。リズムとか抑揚とかが失われてしまうから。そこに原田マハの筆はどう立ち向かったのか。ぜひ確認してほしい。
第12位
24票を獲得した第12位はこちら!!
先日書いた記事では、圧倒的な強さで他を寄せ付けなかった十角館の殺人だけど、さすがに年間ベストの括りだと厳しかったか。 というより、1987年に発表された作品がいまだに年間の12位に食い込んでるっていう事実の方がヤバいか。
衝撃の度合いは言わずもがな。というか言っちゃダメ。勧めたいときは無言で手渡す。そんな武士のような振る舞いが求められる作品である。
第11位
26票を獲得したものの、惜しくもベスト10入りを逃した第11位は2作品!!
マジか、これはちょっと意外かも。2020年の本屋大賞で堂々の3位に入って、マンガ化までされた人気作だけど、惜しくも今回のランキングではベスト10入りならず。
このランキングの場合、単純に票数だけをカウントしているから、重要になるのは
①読まれた数
②作品の面白さ
の2点のみ。となると、数は絶対に売れてるはずだし、面白くないはずもないから、すでに2019年に読まれちゃってたパターンかもしれない。あとは、マンガで知られても、原作まで手を伸ばす人ってなかなかいないだろうし。
本屋大賞でランクインしてれば有利かと思ってたけど、意外とそんな単純な話じゃなさそうである。
本屋大賞を受賞して、遂に世間にバレてしまった凪良ゆうである。正直、分かりやすい作風ではないから心配してたけど、広く認められてくれて嬉しい限りだ。
流浪の“月”の次は小惑星である。月のときは隠喩として使われていたが、今回の小惑星はモロである。なんせ衝突してくる。
突飛な設定の中で、凪良ゆうの静謐で奥深い筆は、どんな心情を描き出してくれるだろうか。
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さてさて、ここからは皆さん超お待ちかねのベスト10である。
2020年に読書家たちの心を奪いまくった、文句なしの名作たちである。ぜひ予想しながら楽しんでいただきたい。
では行ってみよう。
第10位
まずは 27票を獲得した第10位である。3作品が同時ランクインである。
ひとつめ。
2019年の本屋大賞受賞作品がランクイン。文庫化のタイミングが合ったのもベスト10入りを後押ししたものと予想される。
『そして…』に関しては何度も書いて申し訳ないけれど、これだけ地味な装丁と、感情移入しにくいテーマで、よくぞここまで売れてくれたと思う。ちなみに私はボロボロ泣いた。この作品で瀬尾まいこに興味を持たれた方はぜひ『あと少し、もう少し』もオススメなのでよろしく。
続いて、第10位のふたつめ。
ミステリー界の新たなスターになる空気が凄い、斜線堂有紀の代表作である。本屋大賞ランクインの匂いもしますなあ!
「殺人を2度犯すと天使に地獄へ引き摺り込まれる」という特殊な世界線で繰り広げられる、トリッキーなミステリーである。ここまでの評価を得られているということは、相当に満足度が高いと見ていいのだろうか。最近私は加齢のせいか、野心的なミステリーに挑戦する勇気がなかなか出なくて困っているのだ。
一応、15位に『息吹』でランクインしているテッド・チャンの『地獄とは神の不在なり』にインスパイアされている作品である。
そして10位の最後の作品はこちら。
もう完全に市民権を得たね、「推し」。遂に芥川賞にも絡むようになったか。
若干21歳で芥川賞候補に名を連ねた鬼才が描くのは、アイドルと炎上。なにかにハマる人、つまりオタクというのは少し前は気持ち悪い存在の代名詞だった。しかし膨大なコンテンツが溢れる現代において、なにかひとつのものに集中できる愛を有しているのは、なかなか稀有な存在である。みんな流れてくるコンテンツをだらだらと受け取り、誰かがまとめたものだけで満足しているのだから。
芥川賞候補に選ばれるのも納得の、今という時代を切り取った怪作である。
第9位
続きまして、30票を獲得した第9位である。
これも私は未読だけど、タイムラインで噂はかねがね。かなりのやり手だと聞いている。完全に本屋大賞がちらちら見てんなぁ!
本好きなんてどうせ偏屈な友達少ないやつばっかりだから、こういう「普通から外れた人」の話が絶対に好きなわけよ。異論は認めないとか言う必要もないでしょ。
だってさ、「裁縫好きなのを周囲にバカにされている男子高校生が、姉のためにウエディングドレスを縫う」って、完璧なあらすじでしょ。未読だけど大好き。
第8位
次は31票を獲得した第8位である。
俺たちのモリミーが帰ってきた!
これよこれ、私が待ってたのは! 『熱帯』みたいな高尚なモリミーもいいし、『夜行』みたいな幻惑的なモリミーもいいんだけど、やっぱり欲してるのはこれなんだよ。
きっとみんなも待ってたんでしょ。だからこその第8位。さすがであります。
褒めついでに2021年本屋大賞をあげたいところだけど(そんな権限一切ないけど)、どうだろう。『夜は短し~』で2位取ってるからなぁ。それに元ネタというか、映画のリメイク的な感じだから、さすがに難しいかも。
第7位
さあどんどん行こう。次は35票を獲得した第7位である。2作品がランクイン。
まずひとつめ。
出ました。王様のブランチブランド。
さきほど原田マハの『本日は、お日柄もよく』を紹介したときに、「スピーチを文章で表現する難しさ」という話をしたのだが、こちらはさらに高難度、なんと調香師、香りの話である。
未読なのでどのような表現がされているのかまったく想像ができないのだが、失敗パターンならちょっと思いつく。
例えば、「…アーモンドを焦がしたときに出るわずかな温かみのある甘み、それをイメージしながらも濡れた犬の鼻を触ったときのような絶妙な違和感が…」みたいに、形容詞を連発しまくるパターンだ。
言葉を尽くせばいいってもんじゃないのだが、伝えたいと思うあまりにも作家に限らず、人が陥りやすいパターンなのである。
どんな未知の文章表現世界が広がっているのか、気になって仕方がない。
続いて第7位のふたつめ。
まだ人気なのかよ! 『蜜蜂と遠雷』 強すぎ。っていうか恩田陸がバケモノすぎる。最前線で活躍しないと生きていけない運命でも背負ってるのかな。あんな穏やかそうな見た目なのに、仕事っぷりは完全にキングダムの世界観じゃん?
直近の本屋大賞受賞作をぶち抜いて、堂々の第7位である。このまま好きなだけ暴走してください。
そういえば、これも「文章から音楽が聞こえる」っていう、表現がバーストしてるタイプの作品だったわ。もうこの辺りの順位になってくると、人外みたいな作品ばっか。
第6位
36票を獲得した第6位はこちらの作品。
なんて美しいタイトル。絶対に明確に意味のある「52ヘルツ」と、絶妙に非現実感のある「クジラ」の組み合わせね。合いすぎでしょ。溢れ出る無敵感。
みんなの感想をざっと眺めるだけでも、かなりの感動作であることが伺えるんだけど、やべえなこれ。獲っちゃうよね、あれを。 もうさっきから言及しすぎてるから控えるけど、本を売ってる屋さんの大きな賞的なやつを。
誰かの孤独をすくい上げる、大きな救いの物語は、多数の支持を得て第6位である。これは2021年から、一気に読まれていくでしょう。
第5位
さあさあ、このランキング記事もあと残りわずか。ベスト5を残すだけとなった。
Twitterでも書いたけど、「今年の本屋大賞のノミネート作品が予想できる」と私がほざいてたのがよく分かってもらえたと思う。うーん、面白い。
では、続きまして39票を獲得した第5位である。2作品が同時ランクイン。
まずひとつめ。
このランキング記事の主役を上げろと言われたら、間違いなく凪良ゆうと答えてしまうレベルで、高い凪良ゆう率。“あれ”もまだ出てきてないし…。
こちらの『わたしの美しい庭』は、生きづらさの代弁者、凪良ゆうの真骨頂とも言うべき作品で、色んな人たちの“絡まり”をテーマに物語が展開されていく。
分かりやすい応援メッセージや、熱いエールではなく、そっとその人の辛さに寄り添う柔らかい優しさが、大いにウケている理由ではないかと想像している。
第5位のふたつめはこちら。
これが1位だと予想していた人も多かったのではないだろうか。それくらいに読書界を賑わせてたし、なんなら普段本を読まない人でさえも狂喜してたぐらいだ。世界に中国SFの実力を知らしめてくれた作品である。
あぁそうだ、『三体』に関しては多くの方がわざわざ『三体1』とか『三体 黒暗森林』と書き分けてくれていたのだが、どう考えても単体では成り立たない作品なので、私の独断ですべて『三体シリーズ』として集計させていただいた。
めちゃめちゃ売れてるし、人気になる理由もよく分かるのだが、中国語読みに慣れないと、ちょっと入り込みにくい。あと、科学の話がかなりハイレベルに展開されるので、そこで人を選んじゃうかもなと思っている。
でも間違いなく傑作。長く歴史にその名を刻むことになるはずだ。
第4位
続きまして、惜しくもベスト3ならずの、第4位である。48票を獲得し、2作品が同時ランクインである。
まずひとつめ。
アメリカで引くぐらい売れまくっている社会派ミステリーの傑作。たしか500万部超えてたんじゃなかったっけ。『三体』といい、最近小説でバカ売れしてる作品が連発してて、この動画全盛の時代に本が売れてることが嬉しい。
こちらの『ザリガニの鳴くところ』の作者であるディーリア・オーエンズさんは、これが処女作で、しかも68才で作家デビューである。カッコよすぎん?
どんな才能だよ、って突っ込みたいところだが、実は彼女は動物学者であり、その知性は本物である。
確かな知識に裏打ちされた自然描写は、読者の想像を超えており、レビューを見るとみんなその話ばかりしてて笑ってしまう。
日本に住んでる私たちには馴染みのない、ホワイト・トラッシュというアメリカの差別問題を正面から扱ったことも、評価を得た大きな要因かもしれない。
第4位のふたつめはこちら。
順当~。2020年本屋大賞第2位は伊達ではない。そりゃ食い込むよ、上位に。でもそれを退けた作品がまだあるってのが面白い。
長い作家生活で培ってきた小川糸というネームバリューに加え、終末医療という(不謹慎を承知で書くけど)物語的に絶対に美味しいテーマを使ったら、そりゃあもうウケますわな。
人の死に触れると、どうしたって人は自らの生を見つめてしまう。それはフィクションの死であっても同じで、日々の見え方を変える力がある。
まだ私は死を肯定したり、全面的に受け入れられるほど成熟してはいないのだが、それでもこういう作品たちと出会う中で、死と生について考えることは悪くないように思っている。
第3位
待望のベスト3の発表である。2020年にもっとも人気のあった最強の3冊だ。
ではまずは、第3位の発表である。
獲得票数は一気に増えて61票。
それは…こちら!!
『逆ソクラテス』!!!
第4位に大きく水をあけてのランクイン。さすが伊坂。元祖にして永遠の無敵作家。
伊坂の人気と作品のクオリティを考えると、1位でもおかしくないと思ったんだけどなぁ…。
多分だけど、これは伊坂病が出てる可能性が高い。
伊坂病ってのは、伊坂の面白さは抜きん出てるのに、読者の方が伊坂クオリティに慣れちゃって正確に作品の良さを評価できなくなっている状態だ。M-1に何度も出てるコンビが優勝できないのと同じである。
胸を熱くする名言連発で、しかも安定の伊坂クオリティの構成力。夢中で楽しめる最高の一冊である。
3位は十分素晴らしいと思うけど、あえて言わせて。惜しくも3位にランクインと。
第2位
では第2位である。2020年で二番目に本好きを悶絶させた作品だ。2ばっか。
各得票数は…実に63票。圧倒的である。
2020年に読んだ本総選挙の準優勝作品は…こちら!!
『medium 霊媒探偵城塚翡翠』!!!!
来たねぇ。2020年の本屋大賞では6位に甘んじたけど、確かな実力とインパクトで、こちらのランキングでは堂々の第2位である。おめでとうございます。
ミステリー好きの私としては絶対に外せない作品なんだけど、友人たちのタイムラインを見てると、絶賛と酷評が入り乱れていて、心の綱引きに決着がついていない。いつ読もう…。
第20回本格ミステリ大賞受賞、このミステリーがすごい! 1位、本格ミステリ・ベスト10 1位と、総なめもいいところな結果を出している。「2020年はmediumの年だった」と伝えられそうだ。
未読なので語れることはほとんどないんだけど、ミステリー歴の長い人間として、未読の方にアドバイスをひとつ。
このランキングの順位とか、推理作家たちの絶賛コメント集とかで、無駄に期待値を上げすぎないように。ろくな事にならないからな。
第1位
さてさてさてさて…。
この長い記事も終わりの瞬間を迎えようとしている。遂に待望の第1位の発表である。
きっと8割ぐらいの方が予想してしまっているだろうが、ちゃんと発表しよう。
獲得票数は…ぶっちぎりもぶっちぎりの、なんと119票。第2位のダブルスコアに迫る勢いである。
2020年に読んだ本総選挙、第1位は…
これだっ!!!!!
『流浪の月』!!!!!!
はい、みんな知ってましたね。意外性ゼロ。
でもさすが。いくら本屋大賞受賞作と言っても、過去にやらかしてる作品が無いわけじゃないからね。安定して評価を得続けるのって、本当に難しい。
唯一無二の世界観で、唯一無二の関係を描き、だけど誰もが普段感じている息苦しさを拾い上げてくれる。そしてなによりも、ひたすらに美しい…。
未読だったときにアマゾンの紹介文を見て、「何言ってんの…?」と思ったんだけど、読み終えてみたら分かったよね。掴みきれないのに、でも凄いものを読んだってのだけは分かるから、 訳のわからない紹介文になっちゃうんだよね。
私もレビュー記事を書いたけど、結果的には何千文字も費やして上げた白旗って感じになった。でも過去に書いたレビュー記事の中でも特に好きな仕上がりだったりする。
※参考記事
いやー、それにしてもここまで圧倒的な結果になったのはさすがに意外だわ。それとも私が知らなかっただけで、毎年似たような傾向があるのか? また来年も同じ記事を書く予定なので、そのときの楽しみとしておこう。
ということで、2020年に読んだ本ランキングの第1位は、凪良ゆうの『流浪の月』でした。
長い記事に最後までお付き合いいただき感謝!!
もし楽しんでいただけたなら、この記事を拡散したり、コメントいただけると、私の摩耗しきったやる気が復活します。人助けだと思ってぜひ!
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楽しんでいただいた後の不躾なお願い
正直に書くのだが、私のブロガー活動でほとんど収益が発生できていないのが現状である。
ではどうやって活動を維持しているかと言うと、記事を読んでいただいたい方からのカンパに頼っているところが非常に大きい。恥ずかしい限りである。
しかしながら、皆様に良質な情報を提供し続けるためにも、この活動は求められる限り続けていきたいと思っている。
そこで非常に不躾なお願いなのだが、道端の大道芸人にカンパするようなイメージで、どうか私めに投げ銭をいただけると幸いである。
その行為自体が、金額以上に私の応援になることも付け加えさせてほしい。
そして、今までカンパしてくださった方々、この場を借りてお礼を言わせてほしい。
投げ銭箱を設置するまでは、こんなにもたくさんの方に応援してもらえるとは思ってもいなかったので、嬉しいやら、なんだか申し訳ないやら、でもありがたいやらで、寝る前に布団の中でモジモジしてしまった。本当にありがとうございます。また読書界に還元できるように、誠意を尽くします。
ということで、投げ銭箱はこちら↓
以上。疲労困憊です。