どうも、読書中毒ブロガーの ひろたつ です!
今回はツイッターでめちゃめちゃバズらせていただたいやつの、個人的総集編である。
※参考記事
ツイッターに生息しているタイトルフェチたちに、「あなたが最高だと思うタイトルを教えて!」とお願いし、1300を超える“最高タイトル”たちを集めることに成功した。
で、タイトルフェチたちの性癖を白日の下に晒すことに成功したこの記事は、非常に多くの方に読んでいただき、喜びの声を多数届いている。ブロガー冥利に尽きるとしか言いようがない。マジで苦労した甲斐があった。
で、こんだけ長大な記事を書いたのはいいんだけど、私にはまだまだ書き足りないことがある。
そう…
私の性癖(好きなタイトル)
についてである。
上記の記事では皆様から寄せられた膨大なせいえき…じゃなかった性癖をまとめるのに精一杯で私自身のことを記せなかった。というか、公共の場に私の心の恥部を晒すのはさすがに気が引けると思ったわけだ。
ということで、今回の記事では私ひろたつが選ぶ、最高のタイトルベスト50を発表したい。
また、タイトルの記事ではスペースの関係で載せられなかった“おまけ”もこちらで紹介しよう。集計の際に見つけた「誤タイトル集」である。みんな「#私が選ぶタイトルが最高の本」ってつぶやいておきながら誤字って。好きな人の名前間違えるようなもんだからな! 嫌われちゃうよ?
ベスト50を発表!!
さてさて、では読書中毒ブロガーひろたつが選ぶ、最高タイトルベスト50を発表していこう。
今回はせっかくなので、普段は極力避けるようにしている「ランキング形式」で発表していく。どれもこれも大好きでめちゃくちゃ刺さりまくった作品ばかりなので、順位を付けるのは本当に忍びなかった。だがその分、真夜中にひとりで「えーもう無理でしょ」とか「待って待って!」「いやいやさすがにキツイからっ」とか盛り上がってしまった。完全に狂人である。光栄です。
ぜひ皆さんも個人的ベスト50を決めてみてほしい。想像の10倍盛り上がれるから。
先に言っておきたいのだが、ランキングでは記事の構成上仕方なく下位にした作品たちもあるが、実際のところ今回紹介する50作品のどれもが最高である。だから50位だからと言って低レベルというわけではなく、むしろこの世界にある何百万という本の中から選ばれた至高の50冊のひとつだと理解してもらいたい。
ということで、ランキングの発表である。
共感したり、「ちょっ、おま、それもっと上位だろ! 感性死んでんのか」と非難するも良し。思い思いに味わっていただければ幸いである。
では行ってみよう。
第50位
『銀河鉄道の夜』
まずはこれでしょう。
集計記事では堂々の第4位にランクインした泣く子を号泣させるレベルの美タイトルである。
幼い頃に出会っている人が多いだろうから、昔すぎてこのタイトルと最初に出会ったときの感覚を覚えていないかもしれない。または、『銀河鉄道999』に先にであってしまって、松本零士感に押されてそこまでの美しさを感じられなくなってしまったパターンもあるかもしれない。
しかしながら、多くのアーティストがオマージュしていることからも、このタイトルが日本が誇る“最高タイトル”なのは間違いないだろう。私のめちゃくちゃ好きだ。もう正解をあげたい。っていうかあげる。宮沢賢治の墓に「正解!」って書きたい。もしそういう事件があったら私が犯人だからすぐに通報してくれ。正気を失った私になんて未練はないから。
「銀河鉄道」と聞けば、100人中100人が描けるであろう、天の川を鈍色の機関車が遠ざかる光景。最高の映像である。無敵すぎ。
第49位
『ままならないから私とあなた』
これまで数え切れないぐらいの小説を読んできたけど、恋愛ものというのはほとんど読んでいない。どうやら色恋沙汰で楽しめる感性がどこかのタイミングで焼ききれてしまったらしく、まったく楽しめないのである。むしろ恋愛要素をノイズだと感じるほどである。
で、そんな感性死に死に人間の私だが、ことタイトルとなると、突然瑞々しい何かが復活する。心の中の乙女が盛り上がりだす。枕を抱きしめてゴロゴロしだす。「キャー」とか言いながら。普通に奇行である。どうか駆逐してくれ。
『ままならないから私とあなた』
この短い文章だけで、主人公の劣等感と、パートナーへの信頼感、そして人間に正解などはなく、人それぞれがそれぞれでいること。そのことが大事なのだと伝わってくる。
弱さが見えるけれど強くて、儚いけれど希望がある。そんな絶妙タイトルである。
第48位
『やさしい竜の殺し方』
いやぁー。殺さないでぇー。この子、本当は優しいの!みんな見た目で勘違いしてるだけっ。この間の突然吐いた火で街を滅ぼしちゃったのは、ちょっと驚いちゃっただけで、悪気はなかったの!もしこの子を殺すなら、まずは私を殺して!
…みたいなセリフが30代半ばのオッサンの口からすらすら出てきてしまう強タイトルである。
また「優しい」を「やさしい」って平仮名に開いちゃう優しさね。「殺」という言葉の対比と合わせて、独特な味わいを発揮している。
最高タイトルを見渡してみるとパターンが見えてくるんだけど、こういった「意外な組み合わせ」もそのひとつ。
多くの人に新鮮な驚きを与える。新しい言語感覚に酔える。未知の世界観への期待など、読み手に与える印象は大きいだろう。
第47位
『骨は珊瑚、眼は真珠』
地獄で骸骨たちが使う褒め言葉かな…? 立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花的なやつ?
不穏だけど美しいっていう、読者の不安感を存分に揺さぶってくる怪タイトル。
「眼は真珠」はまだ分かる。でも「骨は珊瑚」って、どう綺麗な映像に変換しても、猟奇感が拭えない。変態の天才アーティストが、憧れの人の骨格を宝石で彩っているイメージがまざまざと浮かんでくる。だがそれがいいっ…!
変態的って、つまりは一般人の先にいるってことだから。進行方向に居るかどうかは別として。
第46位
『雨やどりはすべり台の下で』
したいっ!!!!
殺してくれ!!!
なんだろう…この感覚。美しいこの一文を見ただけで、私の心は美しさに殺戮されたい欲求でいっぱいだ。すべり台の下で架空のあの子と雨やどりしたすぎて、惨殺されたい。できるだけグチャグチャにされたい。はっはっは。
常々思ってるんだけど、人間にはエモに殺されたい欲求を抱えていると思う。私がこうやって最高タイトルを収集しているのも、結局はエモに切り裂かれたいからなのだ。
すべり台なんて雨やどりの機能はほとんど付いてシロモノ。寄り添う二人の距離は自然と近くなることだろう。普段なら意識しないお互いの存在感を、濃く感じてしまう空間。そこに付ける名前はない。というか必要ない。あとは雨が少しでも長く降り続けることを願うのみである。うん、死にたい。
児童文学作品だったんですね…。キッタナイ言葉を連発して申し訳ない限りです。結局死にたい。
第45位
『大人は泣かないと思っていた』
ね、私も思ってた。共感がすぎて泣きそう。
私が大人の涙を初めて見たときのこと、というか意識して「わ、大人が泣いてる!」と思った瞬間をよく覚えている。
ひとつは母と一緒に観に行った映画『ディープインパクト』で。津波のシーンでボロボロ泣いているのを見て、映画の中身よりも母親が泣いていることに衝撃をうけてしまった。まさに「大人は泣かない生き物」と勝手に思い込んでいたわけだ。
『大人は泣かないと思っていた』という文章を見て「分かる分かる~」と軽く共感するのもいいんだけど、私としてはその感覚を保持し続けていた作者の感性を褒め称えたい。だって、私の母親の涙を見た思い出も、このタイトルを見て想起されたもので、言われなければ「そういえば、幼い頃は大人は泣かないものと決めつけてたなぁ」と思わなかったわけだ。
日々の生活を送り、成長していく中で少しずつ私たちの感性は風化していく。得るものもあれば、失うものもある。そんな中で、むかし失ったものと再会できるのって、めっちゃ最高ですよね?ね?ねっ?!
第44位
『遠くで瑠璃鳥の鳴く声が聞こえる』
マヤたんったらもう…! 変態的などうしようもない作品ばっかり書くくせして、こんな素敵タイトルを付けちゃうんだから!…好き。
これね、映像にすると実はそこまでだったりする。
私の場合は、ちょっと都心から離れた程度の自然の中で、休暇を取った主人公がログハウスの外で荷物を運び込んでいる最中、ふと遠くから瑠璃鳥の鳴き声が聞こえる、っていうシチュエーションが出てくる。ちなみに絶対に休暇の初日ね。帰りでは絶対にないから。
色々書いたけど、画的には緑の中にひとりの男性。ただそれだけ。サウンドも鳥の鳴き声だけ。映えない。でもタイトルとしては映えてる。字面だけインスタにアップしても違和感ないレベル。っていうかもうすでにやってる人いるんじゃないか?
まず「瑠璃鳥」が強い。この単語を使えば、相当下手な使い方をしない限りいい感じになっちゃう。しかも「遠く」って。手の届かない感じがシチュエーション色を強めてるし、あと「鳴く」「声」ね。これって、『遠くで瑠璃鳥の鳴き声が聞こえる』でも通用するのよ。でもあえて、絶対にあえて『遠くで瑠璃鳥の鳴く声が聞こえる』にしてるわけ。瑠璃鳥の主体性がより強くなるのよ。それがマヤたんの狙いなわけ、分かる?←ドヤ顔←死ね
いやー、愛しがいのあるタイトルですわ。
…ちょっと待って。
気付いちゃったんだけど、こんな熱量で書いてったら、この記事ヤバい文量になるんじゃないか…?
というか、もうすでにみんなブラウザバックしてる可能性がかなり高い。
と気付いたけど、そもそも私の心の恥部を晒すつもりで書いてるんだから、他人がブラウザバックしようが、一緒に並んで恥部を晒そうが関係ないか。
ということで、このままのテンションで続けます。
第43位
『空を見上げる古い歌を口ずさむ』
ニヤけちゃうよね。こんな美人(美しいタイトルの意) を見たら。
完璧だよね。空を見上げる人と、古い歌を思わず口ずさんじゃうシチュエーション。最高の気分のときのやつじゃん。この人の、穏やかだけどご機嫌な感じがなだれ込んできますわ。私もこの文章を書きながらテンション上がってきてるし。もらいゲロならぬ、もらいご機嫌って感じ。例えが最低でゴメンね。
考えてみれば、空を見上げるのなんて、余裕があるときじゃなければしないじゃん? 古い歌を口ずさんじゃうのも、気分が良いとか、良いことがあったときとか、やっぱり気持ちに余裕があるときじゃん? ってことは、余裕×余裕のハイブリットタイトルなんだから、そりゃこっちの気分も良くなるわな。
第42位
『セックスのあと男の子の汗はハチミツの匂いがする』
え…?なにこのタイトル…。そうなの?私も男の子だったときはハチミツの匂いさせてたの?まあ今も心はおねえさん前じゃ全然男の子なんだけど。大体にして物理的に男の子だったときは、余裕で童貞だったから。ハチミツフレーバーを分泌する機会なんて、全然ありませんでしたわ。その機能、使う前に壊死したっぽい。もしかして、それが後に加齢臭を出すところと同じとか?ハチミツが加齢臭って、人間がゾンビになるぐらい絶望的な変化なんだけど。私って、これからゾンビになるの?死にたい。せめて美しいまま殺して。まあ大して美しくもないんだけどさ。
ふう…。
以上。
存分に吐き出してスッキリしたので、次いこ、次。
第41位
『ベルカ、吠えないのか?』
出ました固有名詞シリーズ。
これね、ちょっと皆さんと共有したいことがある。
タイトルに固有名詞を入れるのって、どう思いますか?
実際、最高タイトルを集計してみた傾向からすると、このパターンは根強い人気があることが分かっている。
だけど私としては、ちょっと受け止めきれない部分がある。
というのも、タイトルに内輪感が出てしまって、締め出しを食らってるような気分になるのだ。
具体的な例を出すと敵を作ってしまうようで申し訳ないけど、例えば『ご冗談でしょう、ファインマンさん』とか言われても、「どちら様でしょう?」と思ってしまうのだ。私のいないところですでに話が進んでる感に、気後れしてしまうのだ。これは私が人見知りする性格なのと関係があるかもしれない。他人の会話に途中から入り込むような下品な真似ができないのである。
だがだ。
こちらの『ベルカ』、完全に固有名詞。作中に出てくる犬の名前だ。そんなことは読むまで知らなかった。だけどタイトルを見た瞬間にヤラれた。そして読んであまりのつまらなさに壁本に処したレベルなんだけど(壁本⇒つまらなさすぎて読了後、壁に投げつけてしまう本の総称)、このタイトルは…くらった。くらってしまった。
ベルカのことなんか知りもしないのに、「吠えないのか?」という焚きつけるような、試すような、でもどこか懇願や哀切さも感じさせるセリフにヤラれてしまったのだ。
単純だけど強力。最高に効果的。
タイトル道の奥深さを考えさせられる名タイトルである。
第40位
『魔法使いが落ちてきた夏』
始まったな。完全に。物語が。
もうね、刷り込まれてんのよ。誰かが落ちてきたら素敵な物語が始まるって。それが不思議な青い石を持った少女だろうが、魔法使いだろうが関係なくて、しかもそれが夏だったら、なお良いじゃん? 春より夏でしょ?100%で。「春夏冬」って書いて商いとか読んでる場合じゃなくて、「夏」だけで「始まったな」って読め。もし無理なら最悪「シータ」でもおk。とにかく始まりの季節は夏。これで決定だから。
このタイトルをちょっといじってみると、どんな効果が出ているのかよく分かる。
例えばやりがいなパターンだと「魔法使いが落ちてきた」のみね。ラノベ感がだいぶ出てくるし、私の感性的にはなかなか最悪なパターンだ。
でもその最悪に「夏」を入れるだけで、あら不思議。思い出っぽくなって、途端に物語性が立ち上がってくる。しかも、その物語が終わっている雰囲気も出てる。この“妙”ね。好き。
私のところにも落ちてきてほしい。誰でもいいから。季節を選ぶようなワガママも言いませんから、どうかどうか…。
第39位
『しろいろの街の、その骨の体温の』
お前、何言ってんの?
この圧倒的「の」の多用っぷりね。日本中の「の」を集めたんじゃないかってぐらい「の」だらけ。タイトルの14文字中、5文字が「の」って。割合で言ったら3割超えですよ。そんなに「の」だらけの名前って、もう「のびのびた」ぐらいしかないから。とっても国民的アニメ級です。
はい、ふざけるのも大概にしておくとして。
でもこのタイトルを見て「なるほど…」みたいなことにはまずならない。友達が横でこんなこと言ってたら、「おい、お前どうした?」ってなる。それくらい意味分かんないし、現実離れした言葉。
だけどひと目で分かる破壊力ね。意味不明なのになんか伝わってくる。全然分からないのに、掴めそうな感覚になる。そんな自分のことを「これを理解しちゃう私って、もしかしてセンス良いのかも」とか勘違いしちゃう。勘違いさせられちゃう。つまりこれは恋。
はい。次に行きましょう。
第38位
『奇跡も語る者がいなければ』
これも最高タイトルで見かけるパターンのひとつ。名言系。
どんな奇跡が起ころうが、それを目撃して語る人がいなけりゃ、奇跡として成り立たない。言われてみれば確かに、という膝を打ってしまうようなタイトルである。
個人的に名言系は好きだけど、実は萌えレベルだとそこまで高くはない。
センスに悶えるよりも、感心が勝っちゃって物語性をそこに見いだせなくなってしまうのだ。「試着室で思い出したら本気の恋だと思う」とかね。面白いんだけど、惹き付けられはしない。
だけどこのタイトルの場合、「奇跡」とか「語る」とか物語を想起されるワードで構成されてるし、「いなければ」っていう投げ捨てるような厳しさがあって、とても美味しい。
第37位
『今はもういないあたしへ』
失われたものって、いいよね。
こういう手紙のようなメッセージ系もよくあるパターンである。手紙やメッセージは、それだけでひとつの小さな物語である。感情やドラマが詰め込まれている。
このタイトルの場合、おそらく過去の自分に向けたメッセージだろう。それか「なれなかった自分」だろうか。どちらにしろ、失われた何かの存在が感じられ、切なさに胸がきゅっとなる。良い。
あと一人称ね。「あたし」だからこそ出てくるヤサグレ感。青さを感じさせる。
これが「わたし」だと精神的に成熟しすぎてるし、「ウチ」じゃ台無しだし、「あたしゃ」はまるちゃん。ということで「あたし」が正解なんです。
第36位
『花は泡、そこにいたって会いたいよ』
これも…とっても…意味不明です。花は泡じゃないよ?
意味不明シリーズとでも名付けようか。意味不明だけど魅力は伝わってしまうタイトル。
なんだろうな…。脳みその裏側で味わうような。目をつぶって視覚を遮断し、じっくり心に染み込ませると、理解のほんの一端に届くような…。
こういう意味不明シリーズって、さっきの『しろいろの街の、その骨の体温の』もそうだけど、遠さがあるからこそ良いんだよね。届かない良さ。
いやーでも、眺めれば眺めるほど凄いタイトルだな。私はこれをひと目見て「好き!」ってなったんだけど、落ち着いてから好きになった理由を考えると、全然分からない。「花は泡」って。3歳児のでも言わないレベルの間違いだし。そこからの「そこにいたって会いたいよ」だよ。 場所の話なんかしてなかったけど?支離滅裂の例題かよ。
第35位
『明るい夜に出かけて』
一緒に連れてってください…。この薄汚い世界から、どうか私めを。薄汚い世界よりももっと本格的に汚い私めを…。
はい。矛盾パターンタイトルね。
これもみんな好きだよね~。私も大好き。「飛べない鳥」的なことでしょう? これ適当に考えてもけっこう良いのが出てくる。「止まった時計」とか「罪人の正義」とか「堕ちたラピュタ」とか「裸眼ムスカ」とか。
それでも「明るい夜」の絶妙さね。なんでこんなにセンスよく感じちゃうのか不思議…って書いてる途中で気付いたけど、あれか。これ完全にピーターパンのイメージが刷り込まれてるのか。
誰もが成長することからは逃れられなくて、老い朽ちていく私たちにとって、ピーターパンはドラえもんに匹敵する夢の存在だ。そりゃエモるよね。
第34位
『いつか記憶からこぼれおちるとしても』
通って良し!!
…申し訳ない。あまりの良さに何の権限もないのに、通行の許可を与えてしまった。
なんだこの切なさは。近くにぬいぐるみがあったら抱きしめて思いっきりゴロゴロしたい気分だ。耐えられない。
人の記憶はたゆたう。元から曖昧なもので、どんな素敵な記憶だって、その瞬間から風化していく。人が介在した時点で、すべては無くなる運命にある。
だからと言って私たちが日々感じる喜びや、幸福や、素敵なタイトルを見たときに感じる興奮などに、意味がないわけではない。紛れもなく私たちが生きる理由がそこにはある。
人という存在の儚さを感じさせながらも、それでも顔を上げて前を見ようとする希望に満ちている。まるで朝の日差しのような眩しさを感じさせるタイトルである。また誰かを照らしてくれ。だから通って良し。
第33位
『半分の月がのぼる空』
情景もの。
単なる風景描写をしてるだけで、なんの感情も読み取れないんだけど、でも良い。それが凄く良い。
なんだろう…この我々人間を置いてけぼりにしてる冷たい感じ。超越したところから見下されてる感じ。身の丈に余るほどプライドの高い私だけど、このタイトルの前には自然とひれ伏したくなっちゃうもん。自然に垂れるよね、頭(こうべ)が。
あと「半月」じゃなくて、わざわざ「半分の月」っていう言い方が、上品でよろしい。みそ汁をお味噌汁って言うような感じ?ちなみに「おもちゃ」は正確には「もちゃ」だからね。「御御御付け」は「おみおつけ」だから気をつけるように。
第32位
『どうか天国に届きませんように』
お前…なにしやがった…?!
なにこの罪深いタイトル。切な美しすぎる。
こんなに悲しい願いごとある? 天国に届いてほしくない願い事って、絶対ロクなもんじゃないよね。絶対に誰かが不幸になるやつだよね。あぁ…もうっ!でも良い! 養ってやるからうちに来やがれ。温かいご飯用意しておくから。
こんなタイトル見ちゃったら、母性が引きずり出されるわ。こちとら正真正銘のオッサンだけどな。
圧倒的庇護欲を掻き立てる最高タイトルです。素晴らしい。
第31位
『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』
間違いない。
これね、野田洋次郎の歌詞にも通ずるものがあるんだけど、良い言葉が良い絵面とは限らなくて、このタイトルなんかその典型的なパターン。ぬいぐるみと喋ってるオッサンなんて絶対にキツイでしょ。差別は許されないけれど、どうしたってぬいぐるみと喋って画になる人とそうじゃない人がいるのは揺るぎない事実。
でも字面ならすべてが許される。全人類を包容してくれる。
そんなことを愛用のぬいぐるみちゃんに今夜語り聞かせようと思う。誰か優しいって言って。
第30位
『桜の森の満開の下』
はい出ました、最高タイトルの主人公。
これはもう選ぶっきゃないでしょ。真正面から来すぎて若干「そんなグイグイ来るなら、ちょっといじわるしちゃおっかな」と一瞬ランキングから外そうかと思ってしまったのだが、やはり良いものは良い。変化球好きの私だけれど、たまには素直に抱かれてやってもいいかな。って、誰が変態プレイ好きじゃ。こちとら冒頭から最高タイトルとまぐわってるだけじゃ。
はい、さすがに下品がすぎるので話を戻します。っていうかさっきからタイトルについて全然語れてない気がする。
『桜の森の満開の下』ってさぁ…ただの場所だよ? なのにこの破壊力はなんなの。
ざっくりとした分類なら、地名じゃん? 大枠でまとめたら『栃木市役所の横』と同じなわけじゃん? 『栃木市役所の横』じゃ萌えないけど、『桜の森の満開の下』は萌える。なぜなら『桜の森の満開の下』は美しいから。いや、別に栃木市役所が美しくないって言ってるわけじゃないから。
とにかくどストレートに美しい。それで十分でしょ。
第29位
『さよならがまだ喉につかえていた』
おおー、たまらん。この言えてない感じがめっちゃ青春。
そもそも「さよなら」の時点でドラマになってるのに、それが「喉につかえていた」でしょ。しかも「まだ」って。三重にドラマ。ドラマが渋滞を起こしてるから。
「まだ」ということは、ずっと言いたかったけど、ずっと言えない状態なわけでしょ。
それは、ためらっているせいなのか、相手を思いやってるせいなのか…。でもどちらにせよ、二人の関係を終わらせるかどうかの間で揺れ動いてるんだよね。
そのままなし崩しに付き合っていく方がラクだけど、それでもさよならを言い出したいってことは、どちらかというと終わらせたい気持ちの方が強いのだろう。
続きが気になってしまう、素晴らしいタイトル。
第28位
『昨日星を探した言い訳』
切なすぎて死にてえ~。
こんなに美しい言い訳ある? しかも昨日だよ。そんな直近? 普通、昨日ってもっとどうしようもないもんじゃないの? 私の昨日なんてヘソの汚れ具合確認してたけどなにか?
誰に対して、どんなシチュエーションで、星を探した言い訳をするのか。私の貧素な想像力ではさっぱり思いつかないのだが、とにかくその切実さや、寄る辺なさみたいなのは、十分伝わってくる。なんかこのタイトルを見ただけで、若干泣きそうだもん。『昨日星を探した言い訳』って眺めるたびに、内臓が出てきそうになるぐらい重い溜息ついちゃう。
きっと下手な言い訳をしちゃうんだろうなぁ。で、相手もそれが言い訳だって気付きながらも、上手に付き合ってくれてそう。なにその友達。いや恋人か? もうどっちでもいいよ。いいからくれ。くれよ!!
第27位
『幸せではないが、もういい』
これは個人的にはけっこう異色の選出。
どちらかというと、陽のタイトルが好みで、陰だとしても「切ない」とか「悲しみ」ぐらいが好みなんだけど、この『幸せではないが、もういい』は完全に陰。マイナス方向に振り切ってる。重いタイトルだ。
それでもこんなランキングとしては上位に食い込んでいるのは、その強さゆえだ。
他の最高タイトルでもそうなんだけど、「最高…!」と感じさせるタイトルには、美しさもあれば上手さもあって、同じぐらい根源的なレベルで「強い」ってのがある。理屈じゃない。ひと目見た瞬間に「強っ!」と思ってしまう。
人として生まれてきた以上、幸せを求めるのが普通だし、幸せがなけりゃなんのために生きているのか分からない。だけどそんな生きる理由にも等しい幸せに大して「もういい」と吐き捨てる。皮膚を自ら剥がすような痛々しさと、絶対的な諦めを感じさせる。うーん、やっぱり強い。
「もういい」って言い方が本当にいい仕事していて、ちょっと前までは幸せを求めていたのが読み取れるんだよね。でももう変わってしまった。諦めてしまったと。その苦しい変化がこの短い文章でぐっと突き刺さってくるから、こちらは黙るしかない。
幸せではないとしてもせめて、静かな日々がこの人の元に訪れてほしいと願う。
第26位
『そうか、もう君はいないのか』
シチュエーションが一気に完成するタイトル。完成させちゃう、と言った方がいいか。
この一文を書店で見かけようものならば、絶対に足を止めちゃうようね。一気に脳みそが映像を思い浮かべる方向へ強制展開させられちゃう。っていうか、実際私がそうだった。見た瞬間に「このタイトルはすげえな」と思ったもん。
人の死を描くのは物語の常套手段で、読み手の感情を煽るのに非常に効果的だ。
しかしながら、ドラマの最高潮になる“死”だからこそ、あまりにもあからさまに描かれ続けると食傷気味になってしまう。「どうせまた誰か死ぬんでしょ」とか思うようになってしまう。見てる側が不感症になってしまうのだ。
だから間接的な表現が生きる。読み手に物語を想起させ、その人の中で想像を膨らませる。するとそこには、見たまんまだけじゃ味わえない深みが生まれるのである。
技ありなタイトルである。
第25位
『窓辺には夜の歌』
どうやら私は「夜系」に弱いことに気がついた。星とか月とかその辺りもひっくるめて。
なんでだろう? 子供の頃に夜に命を救ってもらったことでもあるのかもしれない。
そういえば、煙草を吸い始めたころ、窓辺に腰掛けて、夜空を見上げながら真っ暗な部屋で紫煙をくゆらしたことがあった。完全に痛いやつだったけど、当時はめっちゃ自分に酔って楽しんでた。できるなら息の根を止めてやりたい。もう叶わないけど。少なくとも禁煙できて良かった。あの頃の私とは別人ということで。まあ当時はこうやって恥ずかしい文章をネットに垂れ流すようなことはしてなかったけどな! 過去の私が息の根を止めに来る可能性も頭に入れておこう。
きっつい思い出を蘇らせてくれたタイトルに感謝。
第24位
『永遠の出口』
これはちょっと共感してくれる人は少ないんじゃないだろうか。字面だけ見ても、そこまで派手な感じじゃないし、エモ要素もほとんど感じられないだろう。「出口があったら永遠じゃなくね…?」そう思われるかもしれない。
でもそれでもいいのだ。だって私が大好きなタイトルであり、作品も大好きだからだ。
肯定することに、それ以上の理由が必要だろうか。
作者の森絵都は絶妙なタイトルを付けるセンスが、並み居る作家の中でもずば抜けていて、こちらの一見地味な『永遠の出口』も作中で素晴らしい回収をしてくる。その感動が忘れられず、こうしてかなりの上位にランキングさせてしまったというわけ。完全に私情です。まあそんなこと言ったら、この記事が最初っから全部私情だけどさ。
第23位
『行く先は晴れやかに あるいは、うろ覚えの詩が世界を救う』
そうだったらいいなぁ…。なんてしみじみと思ってしまう、陽だまりのような素敵なタイトルである。
こちらは、さきほど話した「強さ」とは対極にあるタイプだ。センスでねじ伏せられるようなことはまったくなくて、心の底からほっとするような癒やしの力を持っている。
詩的だし、どこか知ってる感覚になる部分もありつつ、凡人には生み出せないセンスも潜んでいる。長さも相まって、いろんな味わいを楽しめる。 文字情報だけど、できるなら結婚してほしい。こんな子なら、素敵な結婚生活を送れる気がする。だってさ、こんな完璧な二択ある?「行き先は晴れやか」か「うろ覚えの詩が世界を救う」かって。最高かよ。いや、最高だよ。「お風呂」か「ご飯」か「ア・タ・シ?」よりも最高でしょ。
天気のいい日にゴロゴロしながら読みたい。
第22位
『春にして君を離れ』
出ました、我らがクリスティ。
春といえば出会いだったり、始まりの季節の代名詞である。芽吹く季節、それが春。
なのにあえての「離れ」。「君を離れ」と言葉には、強く自主性が出ていて「あえて離れよう」としていることが伺える。とっても切ない。クリスティの意図ではないだろうけど、やっぱり日本人の私の場合、桜の散る景色と情景が重なってしまうよね。悲しくも美しいシチュエーションだ。
それにしても、『オリエント急行の殺人』と同じ人が名付けたとは思えないレベルの最高タイトル。いや、『オリエント急行の殺人』もいいんだけどね…。
…と、調べてみたら、実はシェイクスピアからの引用だったみたい。なるほど、私は間接的にシェイクスピアにやられていたのか。
第21位
『龍の耳を君に』
静謐。素晴らしい。
そのまんま「龍の耳」と受け取っても、幻想的なタイトルだし、ストーリーに忠実に受け取ると「聾」なんだけど、それでも素敵なタイトル。どっちから味わっても美味しい。アンパンマンみたいなやつだ。
龍の耳を優しく授けてる情景は、無敵すぎるでしょ。龍の耳っていっても私の拙い想像力だとこれしか出てこないけど。
落ち着いて見てみたら、耳ないじゃん…。頭からバット出てきてるし。
今まで疑問に思ったことないけど、なんで龍の耳で「聾」なんだろう。それも物語が潜んでる気配があって、なおよろしい。
「聾」というハンディに対して、包み込むようなポジティブさを感じさせる良タイトルである。
第20位
『神様が殺してくれる』
ぜひっ!!
安定の森博嗣ね。
私は森博嗣の付けるタイトルが完全に弱点なので、どれもこれも入れたくて、遠慮しなかったら今回のベスト50がほぼ森博嗣で埋まる所だった。さすがに踏みとどまったけど。
それでもこれは入れるでしょ。だってさ、なにこのインパクト。「神様」が「殺してくれる」だよ? インパクトありすぎで、むしろ意味不明。こんなに意味不明なインパクトって、エヴァのサードインパクト以来でしょ。エヴァ見始めてから20年ぐらい経ってるけど、未だに意味分かってないから。
それに強さね。タイトルの強さ系で言ったら、ほぼ最強。煉獄さん以来の最強。映画化決定です。
神様が殺してくれること。それを期待してる心情が、なんでこんなに美しく感じてしまうんだろう。禁忌に触れるような危うさに酔える、最高タイトルである。
第19位
『百瀬、こっちを向いて。』
またまた登場。固有名詞パターンである。本来であれば、私が苦手とするパターンだ。
さっきのは『ベルカ、吠えないのか?』だったけど、やっぱり似た傾向が見て取れる。結局、固有名詞はどうでもよくて、「吠えないのか?」だったり、「こっちを向いて。」が重要なのである。感情を掴む握力が強い言葉たちだと思う。
でもだからと言ってこれが『ねえ、こっちを向いて。』とか『お願いだから、こっちを向いて。』 だとしたら全然ダメだ。やっぱり固有名詞である「百瀬」を使うからこそ、「こっちを向いて。」というセリフに感情が宿る。血肉を感じさせるのだ。
ちなみにタイトルの最後の「。」に関しては、どう説明していいのか悩んでいる最中だ。わざわざ「。」を付けたということは、作者の中田永一に「これは文章なんですよ」と伝える意図があったと思われる。それか、セリフの終わり感を出したかったのかもしれない。映画好きだし。
真実はどうであれ、『百瀬、こっちを向いて』よりも、『百瀬、こっちを向いて。』の方が私は大好きなのでまったく問題ない。
第18位
『流れ星が消えないうちに』
消えないうちに…なに?なんなの?!
と非常に続きが気になるタイトルである。
とはいえ、流れ星が消えないうちに、と来たら絶対に願い事だろう。またはそれに類することだろう。
流れ星という、頼りなくて、刹那的ものの象徴に対して、すがるような思いを感じられる。それがまた切なく、愛おしい。ぎゅっと抱きしめてあげたい。こんなオッサンがいきなり抱きついてきたら、即犯罪なんだけどさ。切ない。悪即斬。
流れ星にしか託せないような状況なのだろうか。それとも流れ星じゃないとダメなのだろうか。
どうか、消えるまでに間に合いますように。静かに祈りたい。
第17位
『ここは退屈迎えに来て』
見える…見えるぞ…! 憂いを帯びた表情でため息をつく女性の姿が。最高すぎだろ。喧嘩売ってんのか?
許されるなら、ぜひとも迎えに行きたい。でも私が迎えに行っても、向こうが迎えに来た人だと認めてくれない気がする。人間って本当に勝手だよね。お互いに。
いやー、それにしてもこれは超フェチなタイトル。女性の自分勝手さが出てるけど、でもその身勝手さが愛おしくて、狂おしく好き。ツボ中のツボ。北斗の拳だったら爆発して死んでるレベルだわ。北斗の拳じゃないから今のところ無事だけど。
短い文章だけど、圧倒的な情報量。彼女の心情とか境遇が全部伝わってくる。全部分かってる。だから俺に迎えに行かせてくれ。
第16位
『プラネタリウムの外側』
うわぁ…なんて素晴らしい…。ゆっくりと胸にナイフを刺されるような。
なんでこれ、こんなに食らっちまうんだろ?自分でも不思議。食らわない人からしたら、「だから?」ってパターンのタイトルだよね。
発想にヤラれてんのか…?いや…視点? うん、やっぱり視点だな。
プラネタリウムって単品のそれだけで、物語やドラマ上の上質なアイテムとして成り立つ。行ったことがある人は分かると思うけど、独特の充足感があるでしょ、プラネタリウムって。
なのにさらに「外側」を求めちゃう。「外側」を見ようとする、その着眼点が素晴らしい。
だって冷静に考えたらさ、プラネタリウムってただの建築物なんだから、その外側はただの外だよね。でも『プラネタリウムの外側』という言葉にすると、途端に抽象度が上がって、なにかもっと概念的なものを想像させられる。
第15位
『天の光はすべて星』
THE・そのまんまタイトル。
天の光はすべて星。その通り。その通りなんだけど、めっちゃいい。
いつも何気なしに当たり前に存在している夜空。その存在感がこのタイトルによって、一気にぐっと具体的になる。天の輝きが一味違って見えるし、星空が色づくような感覚を貰える。
素晴らしい感性に触れると、世界の解像度が上がるような感覚を得るんだけど、このタイトルはまさにそのタイプ。『天の光はすべて星』を見る前と後じゃ、世界の見え方が一気に変わる。
私の視力にまで影響を与えてしまった、強力なタイトルである。
第14位
『空が青いから白をえらんだのです』
このタイトルはちょっと卑怯かもしれない。
実は詩の中身をそのまま本のタイトルにしたものなのだ。つまり、もうすでに作品として認められているものをタイトルに流用しているので、そりゃ最高タイトルにもなるわ、ということなのである。
ちなみにこちらの本に収録されている詩というのは、少年刑務所の受刑者たちが授業の一環で書いたものなのである。
タイトルになっている「空が青いから白をえらんだのです」を書いたのは、覚醒剤依存の少年である。彼は幼い頃に母親を失っており、まともな愛情を貰うこと成長してきた。
そんな彼が亡き母のことを想い、書いた詩なのである。そして詩の題は『くも』だ。
私は初めてこの詩を見たとき、鳥肌が立った。素直に凄い発想だと思ったし、何度もこの短い文章を繰り返し読んでしまった。
色んな意味合いを持って、味わい深いタイトルで、私の人生観にも多大な影響を与えている。
第13位
『0.2ルクスの魔法の下で』
美しい…。
これまた美人ちゃんですなぁ。圧倒的な美で屈服させられますわ。
ちなみにルクスというのは明るさの単位で、満月の月明かりが1ルクスである。
ということは、0.2ルクスというのはかなりの薄明かりだ。しかもそれが「魔法」でしょ。超微弱の魔法。さらにその「下で」って。心もとないシチュエーションが切なくてたまらん。
字面の美しさも素晴らしいんだけど、この独特な“弱さ”が良いと思う。
強さはどうしても物語になりにくくて、弱さこそがドラマを生み出し良質な物語の原動力になる。問題が起きて解決する。それが物語の本質だからどうしたって、弱さは映える。
そういう意味でこのタイトルは弱いけど、最強。ぜひともその頼りなく不安定な明かりの下に私も入れてほしい。
第12位
『肩胛骨は翼のなごり』
素敵すぎんだろ。
いや、絶対にありえないのなんて分かってるよ。翼の名残りだったとしたら、うちらは元々天使だったことになっちゃうし。絶対に違うじゃん。けど、絶対にそうあってほしいよね。ロマンよ、ロマン。お分かり? オッサンの天使がいたっていいじゃん?
そもそも「なごり」っていうワードが強い。「なごり雪」も強いでしょ。「なごり」には物語を強く想起させる力が備わってる。読み手の中でだいぶ膨らむでしょ。色んな感情が。『肩胛骨は翼だった』じゃ、悪くはないけど、やっぱり物足りない。
あと字面の並びも美しい。「肩胛骨」っていう角張った感じから、「のなごり」っていう柔らかい着地の仕方。だって「なごり」は「名残り」でもいいのに、わざわざ平仮名に開いてるんだから、絶対に狙ってるでしょ。
第11位
『いのちの初夜』
『命』でも『生命』でもなく『いのち』。『始まり』ではなく『初夜』。
天才すぎんだろ。このワードチョイス。私とセンスの差がありすぎて、嫉妬に狂いそう。
ありきたりな言葉の組み合わせなんだけど、このふたつをくっつけるだけで、万人の感性をこじ開けてしまう魔法の鍵になりやがる。
生命の誕生なんてそれこそ物語の始まりで、色んな語り方をされる機会があると思うだけど、『いのちの初夜』とはねぇ…。誰も気付かなかった宝石を見つけられたような気分です。
あとやっぱり「夜」なのが良いと思う。「夜」は私のツボなもんで。
第10位
『月は無慈悲な夜の女王』
強い系のタイトルで言ったら、間違いなく最強。世界のタイトルフェチたちを皆殺しにしてきた無双タイトルだ。タイトル界の郭海皇と呼んでも差し支えないだろう。呼ばんけど。
例えば完全に私の主観だけど、弱いタイトルを選出してみたので、見比べてほしい。『月は無慈悲な夜の女王』がどんだけ強いか、よく分かると思う。
まずはこれ。
『ダチョウは軽車両に該当します』
だからなんだよ。
あと、これとか。
『華々しき鼻血』
勢いだけだろ。
あと、これなんか最弱。
『俺は君の乳首を世界一やさしく噛むために東京へきた。』
帰れ。
ご覧の通りである。やっぱり比較するとよく分かるね。
『月は無慈悲な夜の女王』は最強。それで決定。私的にはツボである「月」と「夜」が入ってるから余計である。
これだけ魅力的なタイトルだと、この期待感を失いたくないから、逆に読みたくなくなってしまうんだけど、私だけかな?
第9位
『ぼくらは虚空に夜を視る』
こいつ「夜」ばっかだな、と思われただろう。その通りだ。なんせさっきからずっと私のフェチの話をしているのだから。性癖をなめるなよ…?
こちらは私が敬愛し、世界で一番面白い小説を書く作家、上遠野浩平の作品である。
宇宙からやってくる謎の生物“虚空牙”と、人間の作り出した最終兵器“ナイトウォッチ”の戦いを描いた、中二病感満載のSFである。
もうね…好きすぎて言葉にできないのよ。私の青春そのものだし。小説にどっぷり浸かってしまったのも『ぼくらは虚空に夜を視る』のせいだから。私が「夜」という単語に萌えるようになったのも、完全にこれのせいでしょ。
第8位
『されど罪人は竜と踊る』
もうね…どセンス。
まさに天才タイトル。初見のとき、思いっきり圧倒されたもん。完璧なバランスでできたアート作品を見たような気分になる。
だってさ、出会い頭から「されど」でしょ。なに「されど」って。なんでいきなり否定から入った?
で、こっちが戸惑ってるのもお構いなしに続けて「罪人」じゃん? しかも「ざいにん」じゃなくて「つみびと」。
こっちは「何が始まったの?」って完全にパニック。感性が右往左往しちゃう。
そしたら唐突の「竜」。からの畳み掛けで「踊る」。
もうね…展開が全部意外。この短い言葉の中で、何回どんでん返ししてんのよ。タイトル濃度高すぎでしょ。
第7位
『昔、火星のあった場所』
壮大だし、かなり突拍子もないので、どこから解説したらいいのやら。
最大のポイントはやっぱり「火星」でしょ。いくらフィクションだとしても、なかなか無くせるもんじゃないのに。
そんなインパクト大な「火星」だけど、使い方によってはちょっと滑稽になりそうなところを「昔、」で絶妙な味わいにしている。
「火星があった場所」でも成り立つけど、場所感が強すぎて、ストーリー性が弱い。だけど「昔、」が付くと、途端に物語が立ち上がってくる。うーん、美味。
なにかがあった、というだけで深みが出るんだけど、それが「火星」なんて、珍味にもほどがある。
場所系タイトルの王者でしょう。
第6位
『星か獣になる季節』
本当にヤバい最高タイトルに出会ったとき、人は言葉を失う。感性が打ちのめされてしまうのだ。これはまさにそんなタイトル。
冒頭の二択からして凄まじい。「星」か「獣」って。分類からして違うのに、なぜかしっくり来る。いや、しっくりどころかガツンと来る。「おっしゃるとおりです!」と土下座したい気分だ。
星か獣になるかを選ばなければいけない状況というのは、具体的に想像するのは難しいんだけど、その分、メタファーと捉えるならゾクゾクするような世界が広がってる。
私が最初に思いついたのは、「星=死」と「獣=誰かを殺すこと」。つまり戦争ものである。
主人公たちは抗えない兵士たちだ。戦い続けることが彼らの存在理由そのものである。
生き残るためには、自らの良心を殺し、獣になるしかない。獣になりきれなかった友人はみな星になった。自分もいつかあそこに行く日が来るのだろうか。それともその前にこの地獄のような季節が終わるのだろうか。
みたいな。
超好き。
第5位
『おれには口がない、それでもおれは叫ぶ』
個人的に『ベルカ、吠えないのか?』 系の上位交換。
「吠える」もそうだけど、「叫び」って感情で起こるリアクションの最たるものだと思う。だからこそ、そこにドラマを強く感じてしまう。
「叫び」フェチな私なので、このタイトルは「それでもおれは叫ぶ」でも全然良かったと思う。めっちゃ好き。
だけど「おれには口がない」が付いてる。これによってより「叫び」の感情が強くなっている。無いからこそ「おれ」の叫びの痛切さが際立つのだ。
最強に最強を振りかけたようなタイトルだ。素晴らしい。
第4位
『月は幽咽のデバイス』
ちょっと難しい日本語が使われており、最初見たときはそうでもなかった。クラスにいるちょっと気になる子、ぐらいの好意しか持っていなかった。
しかし森博嗣にハマるうち、作品の中身だけではなくタイトルもねっとりと愛するようになった私は、ふと「幽咽」の意味を調べてみた。
するとこのような説明が書かれていた。
幽咽・・・かすかにむせびなくこと。また、そのさまや、そのような音。
それを踏まえた上でもう一度、タイトルを味わってみた。
『月は幽咽のデバイス』
…あれ?
『月は幽咽のデバイス』
なんかこの感じ…
『月は幽咽のデバイス』
好きです。
もうね、一気に美人になったね。急に意識するようになっちゃって、全然まともに目を見て話せない。そんな感じ。
月は悲しみを誘う装置ってことでしょ。なにそれ。美しすぎるし、なんか分かるし。なんでもいいから付き合ってくれ。
森博嗣のことだから、なんとなく雰囲気でそれっぽく付けたタイトルかと思いきや、最高にロジカルかつエモーショナル。見事な仕事。あっぱれ。
第3位
『竜が最後に帰る場所』
やっぱり「竜」強し。ベスト3に相応しいとなると、やっぱり自分のフェチに強く根ざしたタイトルになってくるよね。最近読んだ本に、「人の性癖は思春期から一生変わらない」って書いてあったし。それもう呪いでしょ。
「竜」だけでも好きなのに、さらに「最後に帰る場所」でしょ。なにそれ、めっちゃ知りたい。どこなの。一回だけでいいから連れてってくれ。
他の作家なら「どうせ雰囲気タイトルでしょ」と思ってしまう所だけど、恒川光太郎だと「やつなら本物の“竜が最後に帰る場所”を見せてくれるはずだ」と期待して読んじゃうから不思議。実際、竜が最後に帰る場所に連れてってくれたしね。そういえばあの世界観、最高タイトルに触れてるときと似た感覚かもしれない。
最高タイトルの良さを決める上で、大切な要素なんだけど、“距離感”というのがある。
これは完全に人によるんだけど、自分からどれくらい距離のあるものがツボになるか、という話で、私は絶妙に手が届かないものが大好物だ。「竜」とか「クジラ」とか。
さらに言うと“温度感”も大事だ。使われている単語の温度だ。少し冷たいぐらいが私は好みで、やっぱり竜とクジラぐらいの感じがとても良い。
いやー、ここまで死ぬほど文章を綴ってきたけど、自分のフェチを説明するって、本当に難しいですな。どれだけ伝わることやら。
第2位
『満月の夜、モビイ・ディックが』
完全に未読。そして間違いなく一生読まない。雰囲気タイトルだって分かってるから。
でも最高のタイトル。完全に一目惚れ。超面食い。中身には一切興味なし。
だってさ、美しすぎるでしょ。浮かぶ映像が。
満月を背にしぶきをあげながらフルークアップを決めてるモビイ・ディックって。全部揃いすぎでしょ。ストレートフラッシュかよ。やりすぎてて、こんな構図ラッセンでもやらんよ。
深みはまったく感じないんだけど、圧倒的な雰囲気とビジュアルが絶世の美女すぎたので、力負けして第二位。このビジュアルを生み出したことを褒め称えたい。
第1位
さてさて、この長過ぎる記事もようやく終わりのときを迎えることになった。
果たしてここまで付き合ってくれた方がどれくらいいるのだろうか。それとも読み飛ばしながら気になるタイトルのところだけ拾い読みしているのだろうか。全然好きに楽しんでもらって構わない。そもそも私が好きに書いて楽しんでいるのだから。
ということで、読書中毒ブロガーが選ぶ最高タイトルの、堂々の第一位である。
これじゃあ!!
『私の頭が正常であったなら』
いえーい!!!
パチパチパチパチ…
これでしょ。
もう好きすぎて説明するのも野暮な気がするので、簡潔に。
こんなに切なく悲しい願い。ないものを欲しがることで、より悲しさが胸を突くことだろう。
異常な私に苦しめられる“私”。でも正常であれたら、本当に幸せになれるだろうか?
正常と異常を分かつものがなにかなんて、誰にも分からない。それはその人自身が決めることなのかもしれない。
私はこのタイトルを見たとき、ぽっかりと体に空いた穴を、悲しげにさする。そんな弱々しい女性の姿が見えてきた。
触れないものを触ろうともがく。その姿は物語そのものだと感じるのだ。
大好き。
以上。
オマケ
では私の超個人的なフェチ全開のランキングをご覧になった方も、まったく興味なくて一気にスクロールでここまで飛ばした方もお待ちかねのオマケである。
一応説明しておくと、以前書いたこちらの記事↓
不特定多数の方にご協力いただき、素晴らしいランキング記事に仕上がったのだが、「あなたが最高だと思ったタイトルを教えて!!」と伝えたにも関わらず、出るわ出るわ
タイトル間違いが。
ということで、せっかくなので供養の意味も込めて、ここにオマケとして誤タイトル集をまとめておく。
せっかくの最高タイトルたちが、見事に台無しになる瞬間を味わってほしい。
では行ってみよう。
まずはこれ。
↓
『誰がために金が鳴る』
世襲を切ってますなぁ。
次はこれ。
↓
『容疑者Xへの献身』
登場人物増えてる…。
次。
↓
『限りなく透明なブルー』
惜しい! 限りなく正解に近いよ!
続きまして…
↓
『桜の森の満開の下で』
一文字追加するだけで、一気に「大きな栗」感が…
どんどん行こう。
↓
『神様のパンケーキを頬張るまで』
菅政権に媚びてらっしゃる?
続いてはこちら。
↓
『蜂蜜と遠雷』
プーさんのサスペンス回みたいなタイトル。
続いては…
↓
『押し絵と旅する人』
ジェンダー問題に配慮してくれたのかな…?
続いてはあの超名タイトル。
↓
『電気羊はアンドロイドの夢を見るか?』
羊のこと好きすぎ。
さらにもういっちょ。
↓
『アンドロイドは電話羊の夢を見るか』
見ません。
ラストは一番好きなやつ。
↓
『注文の多い店』
ただの人気店。
以上。最後までお付き合いいただき感謝。