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【月イチまとめ】2023年9月に見つけた面白い本

 

どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。一年中家の中に蚊がいます。

毎月恒例の月イチまとめ記事である。

 

読書好きあるあるなのだが、学校や会社などで読書好きであることが知られていると、ときおり「なんか面白い本ない?」と聞かれることがある。

以前の私はこの質問が本当に嫌いだった。嫌いすぎてそのネタ一本で記事を書いたことがあるぐらいだ。

 

「オススメの本を教えて」って言うから「どんなのが好き?」って聞くと「何でもいい」って答える奴って何なの?初デートの彼女なの? 

 

だが私も大人になったと言うべきか、老化が加速していると言うべきか、そこまで他人の挙動に対していちいち腹を立てる機会も少なくなってきた。

無料コンテンツが無限に溢れた出版不況時代である。むしろ本に興味を持ってくれるだけでも、いち本好きとして歓迎すべきだろう。なので最近は「なんか面白い本ない?」と聞かれたら、全力で自分の性癖をさらけ出したラインナップを後悔…じゃなかった公開するようにしている。それでこちらに引きずり込めれば万々歳。引かれて読書嫌いになってしまったら大笑い。どちらにしろ最高である。

ということで、本好きの皆様におかれましては、これからも読書沼に引きずり込む案内人として、もしくは最悪な毒書体験コンシェルジュとして活躍されることを願う次第である。

 

それでは、2023年9月に見つけた面白い本たちを紹介していこう。

 

 

行ってみよう。

 

 

イラク水滸伝

 

ジャンルなに?

 

待ちに待った辺境作家高野秀行氏の最新刊。

入荷されてるか確認するために何日も書店に通ったのは久々。いつも目的なしに書店に行ってるし、目的の本はすぐに見つかるもんだし。

「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをし、誰も書かない本を書く」というポリシーをど真ん中から貫いたような本書。いつも彼の著書を読むたびに「なにこれ?」と思うんだけど、今回はさらにディープさが増している。どこの需要に狙いを定めているのか皆目検討がつかない感じがさらに面白い。

イラクの幻の湿地帯について調査した本なんだけど、それ自体の面白さはもちろんなんだけど、私はやっぱり「人間高野秀行」への興味が一番で、訳の分からないものに突き進んでいく感じとか、そのために信じられないほどの労力・時間・資金を投入してるところとか、突き進みすぎて後悔してる姿を見るのがたまらなく好きだ。

過去に色んな珍獣を追い求めていた高野秀行氏だけど、私にとって一番身近で魅力的な珍獣は彼自身である。

 

 

家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった

 

踊るような文章というのがある。読み手を心地よく舞い上がらせる文章だ。

それはリズムだったり、文体だったり、細かいことを言えば漢字にするか平仮名に開くか、といった作家のこだわりによって生み出される。

岸田奈美氏の場合、それは“思考”である。

彼女のポップで軽やかで、ときに人生の苦味に対する価値観、そして溢れ出るオタク素養によって繰り出される思考の数々が、彼女の筆を踊らせる。そして私たち読者も巻き込まれてしまう。

 

人生というのは一筋縄ではない。文才に溢れ、常に満面の笑みを浮かべている岸田奈美氏もまた然りである。

人それぞれの苦しさがあるだろうし、難しさがあると思う。

それでも彼女の文章を読んでいると、人生というのは何とかなってしまうのではないか、そんなに悪いものじゃないのではないか、というかけっこう素敵なもので満ちてるのかもしれない…なんて思ってしまうのである。

 

本なんてただの文字情報であり一時の娯楽である。

それでも人生を少しだけ彩ったり、前に進ませる力を持っているものなんだと、改めて実感した。

素晴らしい言葉の数々を紡いでくれた岸田奈美氏に感謝を。

 

 

あ゛ 教科書が教えない日本語

 

吐きそうになるぐらいXでバズらせていただくキッカケになった本。

(吐き気の原因は誹謗中傷によるもの。最高かよ)

 

 

色んな意見や感想が飛んできたし、私がめちゃくちゃおバカさんなので、この本の中身が陰謀論的なトンチンカンなものなのか、それとも諸説アリ的なものなのかは判断つかない。

でも面白かったのは事実なのでご紹介。繰り返すが、正しいかどうかはひとまず置いておいて、ということで。

考えたこともなかったが、はるか昔から今の喋り言葉だった訳ではないのだ。地域や気候なんかが影響することもあるだろうし、諸外国との文化交流によっても変化していく。その遷移に思いを馳せられるようになっただけでもこの本を読んだ価値があったと思う。

とりあえず色々と燃焼した作品なので、中身の具体的な言及は避けておきます。各々で判断していただけると幸い。私は判断力を完全に失ったので、これからは屍として元気に生きていきます。

 

 

ルポ 誰が国語力を殺すのか

 

 

石井光太作品という時点で、絶対に心に重いものを差し込まれるような内容だとは覚悟していたが、やっぱりキツいっす…。

 

著者が子供の実態に迫るのを得意としているので、その視点から国語力を通して子どもたちの実態を見せてくるから、シリアス度がもう堪らんことになっている。日本ってもうダメなんでしょうか…?

日常的に本を読み、それなりの国語力を持っている(と自認している)私からすると、信じられないようなエピソードのオンパレードなのだが、公教育に関わっている方々からすると普通の話らしい。

 

もちろん絶望ばかりではなく、希望の話もたくさん載っている。この国の教育はただ屈伏だけじゃ終わらないようだ。

 

本当に末席も末席だが、私も読書を愛する人間として少しでも国語力を補うお手伝いができたらと、今後も良い本の紹介をし続けていきたい。

ちなみに『あ゛教科書が教えない日本語』でプチ炎上したのは内緒だ。

 

 

おいしいご飯が食べられますように

 

最高にニヤリ…としちゃう芥川賞受賞作。

 

私は芥川賞を「文章による芸術の最前線」だと認識している。

なのでときに尖った芸術作品がそうであるように、良さがまったく理解できない作品が飛び出してくる。それもまた芥川賞の良さだと思う。

その一方で、芸術という表現の皮を被って、思いもよらない方向から人間の内面を見せつけてくるのもまた芥川賞作品である。

こちらの『おいしいごはんが食べられますように』は完全に後者である。

 

はっきり言って嫌な話である。なのに蠱惑的な魅力があって読み進まずにはいられない気分になる。

それにしても、なぜこんなにも読みたくなってしまうのか。

この作品の“嫌さ”というのを私は確実に知っている。間違いなく自身の中で見たことがあるものなのだ。その“嫌な部位”が文章によって綺麗に取り出されていく瞬間に、どうしても怖いもの見たさが湧き上がってくるのだ。

 

そういえば、読み終えたときにふと思った。

道徳が大事なものだと感覚的にも知識的にも我々が理解しているのは、私たちの根っこには善ではなく悪があると自覚がしているからではないだろうか。

自らの醜さを一番上手に化粧してくれるもの。それが道徳なのだ。

 

 

以上。来月もお楽しみに。