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【月イチまとめ】2023年7月に見つけた面白い本

 

どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。日差しと書いて“殺意”と読む毎日です。

毎月恒例の月イチまとめ記事である。

 

 

いきなりだが、このブログは本当に全然読まれていない。

そもそも読書自体がマイナーな趣味になりつつあるし、さらに「面白い本を紹介しているオッサンの文章」なんていうのを誰が読むのか。人生は有限なのに、世の中には無限にコンテンツが溢れかえっている。

 

なのにだ、先日信じられないほど記事がバズった。

 

www.orehero.net

 

もちろん一時のことだとは分かっている。現に爆裂したPVも3日と保たんかった。現代人は一瞬で見切る。

だがそれでも私の生み出したコンテンツが、世の多くの人の需要とマッチできたという事実は、少なからずブロガーとしての私の誇りである。

 

そしてバズに乗じて私と作品たちを口汚く罵った皆様、どうかその惨めな人生が惨めなまま終わりますように。

 

 

それでは素敵な願掛けをして気分が良くなったところで、2023年7月に見つけた面白い本たちを紹介していこう。

 

 

行ってみよう。

 

 

火星の人類学者

 

早速だけど、今月のベストはこちら。

 

 

すべてが白黒に見える全色盲に陥った画家。

しかも、脳内でも色彩をイメージすることができなくなってしまった。

 

激しいチックを起こすトゥレット症候群の外科医。

電灯のカバーを見ると複数回ノックせずにはいられないなど、謎の衝動を抑えられない。それでも日々、外科手術を行なっている。

 

「わたしは火星の人類学者のようだ」と漏らす自閉症の動物学者。

動物の気持ちは理解できるのに、人の心の機微はまったく理解できない。

 

そんな奇妙な患者たちと、精神科医である著者の個人的なやり取りを温かな筆致で描いたノンフィクションである。

 

ちょっと想像できないような摩訶不思議な症例の話も興味深いし、奇特な症状を抱えながらどうやって一般社会と折り合いをつけているかも、感心させられるとともに深く考えさせられてしまった。

彼らの症状は本当に極端かもしれない。だからこそ、人という生きものの本質に触れたような感覚があった。

読み終えたときになぜか涙が流れてしまったのだが、あの感動の正体が未だに掴めていない。きっと言葉という表層ではない部分に届くものがあったのだと思う。

 

名著でした。

 

 

瓢箪から人生

 

夏井先生が大好きになってしまいました。

 

「なんか辛口を売りにしてる俳人」ぐらいの認識しかしていなかったのだが、プレバトでの添削をちゃんと見たら、その鮮やかな手品のような手腕に見事に魅了された。きっとみんなも同じだと思う。

こちらのエッセイを読めば分かるが、夏井先生はずっとプレバトみたいなことをしていて、たまたまそれがテレビマンの目に留まっただけなのである。

 

彼女の添削があんなにも人の心を捉えるのは、それだけ素敵な方だからである。彼女の文章を読んでいると、その豊かな心の動きや、快活で竹を割ったようなカラッとした人柄が滲み出るどころか、紙面から出てきて目の前で喋っているかのようである。そして単純に面白いぞ、この方。

 

 

この素晴らしき世界

 

芸能人本を連発で申し訳ない。しかもこんな不快な人物の顔をでかでかと表示されたら、最悪なあまりブラウザバックしてしまうだろう。自然の摂理である。

だがだ。どれだけ不快でも、嫌われ者だったとしても、面白ければそれでいい。それが芸人だし、読書も同じである。

 

こちらの作品は、東野幸治という品性下劣、だけども確かな観察眼とお笑いIQを兼ね備えた人物による“面白芸人報告書”である。

そもそもまともな神経をしていれば、芸人になんかなるはずもなく、出てくる人すべて異常者である。文字で読む分には最高に面白い。でも隣にいたら間違いなく大嫌いになる類の人間が次々と出てくる。やはり芸人は異常者である。檻の中にいてくれるから笑えるのだ。でも中にはそれでも引いてしまうレベルの御方もいらっしゃるけど…。

 

最初っから最後まで声を出して笑っちゃうぐらい楽しんだんだけど、やっぱり一番はキンコン西野とのやり取り。基本的に再読しないタイプなのに、ここは3回ぐらい読んでしまった。ほんと大好き。一生喧嘩しててほしい。

 

 

世界でいちばん透きとおった物語

 

これはもう、一言だけ。

 

 

 

あっぱれ。

 

 

※杉井光氏に大きな影響を与えたであろう、あの作家に最大の敬意を

 

 

八月のくず

 

さてさて、7月のまとめを締めくくるのは、タイトルからも分かるとおり、とっても爽やかな作品である。

私が思うに、平山夢明という作家は「これをすれば売れる」とか「読者が喜ぶ方法はこれだ」的な考えがない。あるとしてもそれは彼の中でそこまで重要な要素ではなくて、彼の創作の基本は「自分がなんかいいと思えるもの」を出力することではないだろうか。

彼の作品を読んでいると、我儘な友達に振り回されているときのような気分になる。

もちろんそれは悪い気分じゃなくて、「自分だったら絶対にこの道には進まないな」というような新鮮なウザさである。伝わるだろうか。

 

なので、私がオススメしているかといって、簡単に鵜呑みにして読んでしまうと「は? 完全なるクソ作品なのだが」という目に遭うかもしれない。そしてその感想は私の感想とほぼ同じである。最高。

 

 

以上。来月もお楽しみに。