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【月イチまとめ】2021年11月に見つけた面白い本

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どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。

毎月恒例の月イチまとめ記事である。

 

私はこうやって、ネットを使って不特定多数の方に既読の本の中から、厳選してオススメする活動を行なっている。

本好きの方であれば分かってくれると思うのだが、これが実はなかなか難しい。

実際、読書ブログを始められた方からも「どんな作品をオススメしたらいいか分からなくなってくる」という相談を貰ったことがある。

自分が好きかどうかは簡単に分かる。でもそれが他人となると、途端に「この作品は果たして本当に面白いのか…?」となってしまうのだ。それだけ他人の感性なんて想像の範囲外であり、好みという壁は分厚く高い。恐ろしいまでに多様に存在する性癖の種類を見ればよく分かるだろう。なんだよ、金粉フェチって。

 

話は変わるが以前、会社の後輩と本の情報をやり取りしていた時期があった。

全然違う部署の子だったのだが、社内のあらゆるところで無差別に読書に耽る私の姿を見て、声をかけてきたのがキッカケだった。「ひろたつさん、なにか面白い本を教えて下さい!」

まだ入社したばかりのその子は、新人らしい純粋さと人との距離の詰め方の見誤りによって、オススメの本を聞かれてもほとんどまともに教えないような私と交流を持つようになった。(ちなみにブログは始めていたので、実際に面と向かって求められると嫌になるという悪癖が出ていた)

 

その子は、まさに小説の面白さに触れ始めたばかりで、手に取る本のすべてが輝いているようだった。

それだけで十分に幸せな状況だったと思うのだが、そこへさらに私の厳選書が加わってしまい、完全に小説中毒に仕上がった。私が教えた本を読み終えるやいなや、すぐに「次は何を読めばいいですか?!」と聞いてくる始末。このペースで教えてったら、私のストックもあっという間に尽きるなぁ…と心配していたところ、状況に変化が起きた。部署異動である。

私が別の部署に異動し、その子の上司も変わった。その結果なにが起こったかと言うと、単純に時間が無くなったのである。お互いに。そして時間が無くなると、人は余裕を失う。余裕を失えば、読書するゆとりも無くなるし、楽しむ感性も鈍ってくる。

私はそれなりに経験値とやる気の無さがあったので、その期間をやり過ごすことができた。

しかし後輩の子は無理だった。変わった上司から振られる激務に耐えきれず、退職を決意してしまった。

 

数ヶ月ぶりにその子が私の元を訪れた。

 

「辞めるんです」

「聞いたよ。それもありだと思うよ」

「それでお願いがあるんですけど…」

「なに?」

「ひろたつさんがこれまでに面白いと思った本、全部教えて貰っていいですか?」

「…」

「この会社には未練ないんですけど、ひろたつさんから面白い本を教えてもらえなくなるのが辛くて…」

「そんな別れの挨拶ある?」

 

 

私の人生で数少ない、面白いと思った本を直接勧めた経験であった。

その子とはその後、一切連絡を取っていない。どんな仕事をしているのかも知らない。

このケースではたまたまその子と私の感性がばっちり合ってしまっただけで、私の選書センスが天才的だったとは毛頭思わない。あとは、読み漁ってきた数が違うので、その分のストックがあっただけだ。

 

後輩にいいように利用されたあとも私は、あいも変わらず本を愛し続け、顔も知らない誰かにオススメをし続けている。

自分の活動の価値なんて考えたことも求めたこともない。

だが、私が読み漁ってきた中で見つけた宝石が、誰かの心に刺さるという経験は、なかなか刺激に溢れ、魅力を持っている。だからこうしてダラダラと続けていたりする。

 

 

ということで自分語りもこの辺りにしておいて、2021年11月に見つけた面白い本たちの紹介である。

 

参考にしていただきたい。 

 

 

正欲

 

うわぁ~~~~~

 

やられたぁぁあああぁ……

 

と、読後に倒れ込んでしまうような傑作。ヤバいものを読んでしまった。

これまで朝井リョウのことは「おもしろエッセイスト」としか認識していなかったけど、マジもんの天才作家じゃねえか。直木賞の最年少受賞者の看板は伊達じゃなかったか…。いやー、食らった食らった。大ダメージですよ。

 

これは絶対にあらすじさえも知らずに読むのが正しいから、内容の説明はしません。ただ、この作品が響かない人間はいない、とだけ断言しておこう。マジで、なんかすげえ賞とか獲らないかな。

 

 

神の悪手

 

堪能。

 

禍々しい良タイトルに惹かれて選書したんだけど、中身はさすがの芦沢クオリティ。粘度の高い内面描写に、ダークな雰囲気の文体。そして将棋に詳しくなくても、詳しくても楽しめる緻密に構成されたストーリー。

手練な上にアイデアも豊富だからこその良質な作品集でした。さすがは小説界のホームランバッター。

  

 

デフ・ヴォイス

 

掘り出し物。こういう出会い方、めっちゃ嬉しい。

 

以前書いた記事で、この作品のシリーズ本がランクインしていて興味を持ったのが選書の理由。聞くところによると、読書メーターで絶大な評価を得たのがキッカケでブレイクしたらしいのだが、私の情報網にまったく引っかかってなかったので、「こうやってどんどん興味のある範囲が狭くなっていくのか…」と実感したところである。

かなりマイナーな立場の主人公を扱っているのだが、これがまあ沁みる。新たな世界が開けるような、知らなかった知識も盛りだくさんだった。読後に、会社とか家でめっちゃ話したからね。この本で得た知識を。

ちなみにタイトルから分かるとおり、聴覚障害者(あえてこの表現)を扱った作品である。自らの偏見に気付ける良い機会にもなると思うので、未読の方はぜひ。

 

 

ホームレス消滅

 

こんなの卑怯でしょ。

 

ホームレス調査の第一人者による、唯一無二のホームレス本…なんだけど、体系的にまとめるような調査本ではなくて、ホームレス列伝的な色合いが強い。

公の調査による数字も参照しながら、村田らむが実際に見てきて、体験してきたホームレスの実態が紹介されている。これがまあ壮絶。私のような平々凡々な人間からしたらまったく理解できない奇人変人たちが数多登場するんだけど、酷すぎて笑ってしまうぐらいだ。なんだよ、時間を教えたら包丁で刺そうとしてくる奴って。

強烈なエピソードなのに、村田らむの筆はあくまでも冷静で、そのコントラストが余計に面白さに拍車をかけているように感じた。それにしても、持ってるエピソードの質が桁違いだわ、この方。

 

 

以上。来月もお楽しみに。