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【積読タワー建設】2023年の本ベスト約10冊を集計してみた

 

どうも、読書屋ひろたつです。漢字の三本線の向き(修とか寒とか)が永遠に覚えられません。

 

今回は至高の企画です。

 

(ランキングだけさくっと知りたい方はこちらの記事へ

 

 

いらん前置き

 

さあ来ました!!個人的に一番楽しみな記事である。

こんな大して読まれていないブログだが、なぜだかXの方でフォロワーが増えすぎてしまったために、瞬間的に注目される機会が増えた。その結果、まあ嫌われること、嫌われること。元々品性下劣などうしようもない人間だったのだが、白日のもとに晒されて本格的に嫌われが加速した感がある。えへへ。

とはいえ私も人の子、紛れもないホモサピエンスの一員である。仲間はずれになっている状態をいつまでも放置できるほど生存本能は失ってはいない。なのでここいらで一発逆転。皆様に素敵な記事を提供して、全力を媚びを押し売りして、ご機嫌伺いの頂点を目指したいと思う…ってこういうこと書いてるから敵が増えるんですね。私よりも賢明な皆様に置かれましては、どうか私を反面教師にしていただいて、屍の私を踏みつけながら素敵な未来に向かってほしい。

 

とまあこんな感じでひと通り醜態を晒したところで本題だ。

 

今回は「#2023年の本ベスト約10冊」をまとめてみたランキングである。

 

 

記事の概要…のフリをしたいらん前置き

 

一応ご存知ない方のために説明しよう。

 

「#2023年の本ベスト約10冊」とは、読書アカの方々がその一年で読んできた本の中で、特に面白かった作品を無理やり&作品たちへの罪悪感を押しつぶしながら、魂を吐き出すように10冊に絞ったタグである。

 

で、このタグを実際に追ってもらうと分かるのだが、端的にいって最高る。

 

同じ読書好きといっても、守備範囲も性癖も様々である。

「分かる!!」という10選もあれば「全然知らん!!」というものもあるし、店頭で平積みされてて気になってた作品を見かければ「やっぱり面白いのか…じゃあ買うか!」となったり、自分にとっていまいちだった作品を見かけては「自分の読み方が悪かったのかも…」と省みたりと、人生で味わえる悦びのほぼすべてを体験できる。ずっと眺めていられる魅惑のタグである。

そして魅惑的がゆえに、我々読書家がこしらえた罪深き建築物バベルの塔こと、積ん読タワーをさらに高層にしてしまうのである。神の裁きは間もなくだろう。

さすがに言い過ぎかもしれないが、こんなに永遠に見てられるものって、ちょっと他に思いつかない。可愛い動物動画の詰め合わせとかぐらいかも。さっそく思いついてしまって申し訳ない。可愛い動物は最高である。

とりあえず、読書アカの罪深さを集計してランキングにしたのが、今回の記事である。

 

 

いらん前置き3

 

冒頭で自己紹介した通り、私は品性低め男子なのだが実はアナログ系男子も兼任しているので、今回の集計作業はすべて原始人のように手作業で行なわれている。ウホウホ。持ち前の強靭な精神力を駆使して、トータル1963人分のポスト、約2万冊分をポチポチ、コツコツ、ごろごろ、すやすやと長時間に及ぶ厳しい作業を経て完成させているのである。オレエライ。

集計に際しては、タイトルの表記ゆれや、シリーズもののカウント方法、同タイトルでの困惑など、数えきれないほどの苦労があった。正直ここで全部ぶちまけて愚痴りたい気持ちはあるが、冒頭から皆様にはずっと無駄で不愉快な文章ばかり提供しているので、持ち前の強靭な精神力に再び活躍してもらいぐっと堪えたいと思う。数字だけのタイトルとか紛らわしすぎるだろ。村上春樹の新作なのか、以前発表されてた中編なのかも分かりにくいし…

 

 

ということで茶番もさすがにこれくらいにして、そろそろランキングに移ろう。

毎度膨大なランキングを提供しているのだが、今回は25位からの紹介になる。

 

1963人分のベスト10冊。投票されたのは全部で約2400作品。

その頂点に立つ31作品である。とくとご覧あれ。

 

 

では行ってみよう。

 

 

 

 

25位

47票を獲得した25位は2作品がランクイン。

 

 

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『逆転美人』

 

 

ちゃんと話題作がランクイン。皆さんTL上で散々見かけたことだろう。

飛び抜けた美人であるがゆえに、不幸に満ちた人生を送ることになった女性の手記の体裁を取った作品である。

かなり煽りの強い帯や触れ込みで、こういうパターンは肩透かしを食う事例が多いのだが、しっかりと評価されててなんか安心している。

元芸人さんということもあり、サービス精神に満ちた作品である。"ミステリー史上初の伝説級トリック"をぜひその目で確かめてほしい。

 

 

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『あなたが誰かを殺した』

 

 

高級別荘地で起きた複数の殺人、逮捕された被疑者は「相手は誰でもよかった、死刑になりたかった」としか語らない。

そんな中、残された遺族たちは事件の起こった別荘で"検証"を行ない、真実を明らかにしようとしていた。そしてそこに現れたのは長期休暇中の加賀恭一郎…。

 

嘘が通用しない男、加賀恭一郎シリーズの第12弾。

邦ミステリー界を司る東野圭吾の人気シリーズが軽々とランクイン。東野圭吾は永遠にウケすぎである。

どれだけ期待値が高まっても、ちゃんと読者を魅了するクオリティと、軽やかに欺く手腕は人外のそれである。ここまで来るともはや小説界のインフラである。

マエストロが存分に腕をふるった極上のミステリーをご賞味あれ。

 

 

24位

48票を獲得した24位も2作品がランクイン。

 

 

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『しろがねの葉』

 

 

第168回直木賞受賞作が堂々のランクイン。

「濃厚な鈍器のような文章で読者をぶん殴りたかった」と千早茜が語っているとおり、読者に濃厚な読書体験をもたらしてくれる極上の作品。

光が一切届かず、何も見えない闇の中で行われる銀掘りの描写は、文章だからこそ表現が許される世界だ。改めて小説という媒体の無限の可能性を感じられるはず。

 

シルバーラッシュに沸いた戦国末期の石見銀山。その地で男は体を極端に蝕み、女は生涯に3人の夫を持つと言われた。

銀の山師に育てられた女が、欲望に満ちた銀の山を見つめ、痛みとともに生きた物語。

 

人が生きる理由がここにある。

 

 

 

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『爆弾』

 

 

くだらない傷害事件で捕まった、しょぼくれた謎の男"スズキタゴサク"。

取調室に連れてこられても、とぼけた言動を繰り返すが、突然「十時に秋葉原で爆発がある」と予言をする。直後、廃ビルで爆発事件が発生してしまう。

取調の最中に不愉快な言動を繰り返し、異常な搦め手で警察を翻弄する謎の男"スズキタゴサク"。この男は本物なのか、それともただの狂人なのか――。

 

はい出ました、爆弾級にあれなやつ。

私は毎年恒例で夏旅行をしているんだけど、そのときのお供が『爆弾』。

けっこうな長距離ドライブ&連日の海水浴でホテルでの睡眠時間は非常に貴重なんだけど、こいつのせいで無駄に深夜までギンギンになってしまった。なんでこんな不愉快なやつのため睡眠不足になんなきゃならんのよ。スズキタゴサクが女性刑事から責められたときのあのシーンとか…もう最悪すぎるのに、だからこそ読み進めざるを得ないっていうね。

超不愉快なのに面白くてアドレナリンがじゃんじゃか出てしまうという、極限の体験ができるぶっちぎりのエンタメ小説である。

さあ、あなたも一緒に言おう。「スズキタゴサク、うるせぇ!!」

 

 

23位

 

49票を獲得した23位も2作品がランクイン。

 

 

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『ワシントン・ポーシリーズ』

 

 

私の大好きなシリーズがランクイン。

ワシントン・ポーシリーズはそれぞれの巻でちゃんと事件が完結しているので、実際にはどれから読んでも大丈夫。

だがコアファンである私はシリーズを通してこそ最大限に楽しめると確信しているので、あえてシリーズとしてまとめてさせてもらった。ランキングを私物化しております。よろしくどうぞ。

 

第一作の『ストーンサークルの殺人』は、英国推理作家協会が選ぶ、最優秀作品に選ばれており(ゴールド・ダガー賞)、世界基準のエンタメを摂取できると話題である。

何が良いって、

 

「単純にひたすら面白い」

 

これである。

色んな魅力がたくさんあるけれど、まとめると「ただただ面白い」。もう私なんかはハマりすぎて、翻訳者である東野さやか氏の名前を見るだけで、脳内に若干快楽物質が分泌されている。イギリスの方ではすでに続刊が出ているそうなので、今からすでにめちゃくちゃ楽しみである。

毎度趣向を凝らしまくっているので、直にアイデアが枯渇しそうなので、ぜひとも作者様には脳みそが擦り切れるまで頑張ってほしいと願っている。いやー、読者は口開けて待ってればいいだけだからラクだわー。

 

 

(余談:早川書房様から最新作の献本を打診されたんだけど、私がファン過ぎて自分で買いたいから丁重にお断りしたことがある。これが愛だ)

 

 

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『それは誠』

 

 

少し大人びた高校2年生の主人公が、修学旅行のある一日のできごとをパソコンで文章に起こした形式で語られる物語。

大好きな生き別れたおじさんに会うため、コースを外れて小さな冒険に出た少年たちの瑞々しいやり取りや会話を通して、胸いっぱいに青春を味わえる作品である。

 

著者の乗代雄介が塾講師の経験者ということもあり、やり取りのリアリティが高くて、思わず「うわぁ…これぇ…」と心が締め付けられるような想いになってしまう。経験していないのに、まるで自分がそこにいたかのよう。

劇的な出来事や、激しいやり取りがある訳ではないのに、なぜか強く心に響いて、泣き笑いしてしまう作品である。なんでもないいつかの日が、実は思い出したときにとても青春だったことを思い出させてくれる。あぁ、加齢を積み重ねて青春から遠く離れてしまったオッサンには、切なすぎるよ…。

 

ちなみに今作で芥川賞次点を獲得した乗代雄介だが、彼は自分の作品に対しての選評や評価について一切興味がないそうでまったく読まないそうだ。授賞式で選評者の方に「選評にも書いたけど…」と話しかけられて、さすがに危機感を抱いて読むようになったとのこと。おもろ。

 

 

22位

 

50票を獲得した22位は、とんでもない勢いで人気をかっ攫った、こちら。

 

 

 

『地雷グリコ』

 

 

 

「地雷グリコ」「自由律じゃんけん」「だるまさんがかぞえた」など、誰もが知る遊びに特殊設定を加えて真剣勝負に昇華させ、女子高生が極上の頭脳戦を展開するお話

 

このランキングって、売上の影響もかなり出るから、年初に出たものとか、すでにベストセラーになっているものが上位になりやすい傾向があるんだけど、こちらの『地雷グリコ』は昨年末に登場したばかり。

なのに一気に50票も獲得しちゃってるんだから、その勢いっぷりがよく分かる。21年のときの『同志少女よ、敵を撃て』に近いものを感じる。

 

青崎有吾はここ最近、『体育館の殺人』『早朝始発の殺風景』『11文字の檻』と着実にパンチのある作品を連発して、ミステリーファンの信頼を獲得していたけど、ここへ来てミステリーファンのみならず、完全に大衆の心を掴むツボを捉えたっぽい

『嘘喰い』や『カイジ』が好きな、著者の発想力に翻弄されて、手のひらの上で踊らされる快楽に溺れたい人にはオススメ。なんも手につかなくなるよ。これは売れるでぇ。

 

 

21位

 

51票を獲得した21位は、絶対の作家の絶対のやつがランクイン。

 

 

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『777 トリプルセブン』

 

 

 

 

大当たり。

伊坂幸太郎にハズレなし。殺し屋シリーズは絶対に面白い。エンタメ成分を補充したかったら伊坂幸太郎で決まり。面白さの命綱。それが伊坂幸太郎。

 

 

 

20位

 

54票を獲得した20位は、小説巧者による絶妙を極めたミステリーがランクイン。

 

 

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『可燃物』

 

 

主要ミステリーランキングで3冠を獲った作品。

物語としての面白さは安定の米澤クオリティで間違いないんだけど、それ以上にミステリーとしての難易度が絶妙。ちょうど読者の頭上すれすれを超えていくような展開で、「もうちょっとで届いたはずなのに、なぜ分からなかった?!」という身悶えを楽しめる。解決条件が揃ったあとのスルスルと推理が進んでいく感じは最高である。そしてもちろんちゃんと後味悪めっていうね。黒くしないと気がすまない男、それがほのぶタンである。愛して。

 

話題の作家が次々と現れるけれど、米澤穂信は常に自身が新たな挑戦をしてちゃんと読者をボッコボコにし続けてるから凄い。いつの間にこんな化け物になっちまったんだ。東野圭吾のお株を奪うのは米澤穂信だと私は長らく信じている。

それにしても渋い作品が3冠を獲ったもんだ。

 

 

19位

 

56票を獲得した19位は、鮮やかに登場した人気シリーズの3作品目である。

 

 

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『卒業生には向かない真実』

 

 

『自由研究には向かない殺人』に始まる、"ミステリー史上最も衝撃的な三部作"という触れ込みで話題になっているシリーズの完結編である。

私の周囲でも大絶賛の声がたくさん聞こえていたので、気になってはいたのだが、残念ながらまだ未読。それにしても友人たちの#読了ポストは目の毒だわー。全然人生が足らない。

集計の際に、シリーズなので作品ごとに入れられた票をまとめようか迷ったのだが、既読の友人に相談したところ、強い要望があったので今回は作品ごとに別で集計させてもらった。

 

「三部作一気に読むことを強くオススメする」との声が多数である。私もそろそろ飛び込もうかな。

 

 

18位

 

57票を獲得。

 

 

『52ヘルツのくじらたち』

 

 

映画化もされた2021年本屋大賞受賞作。

印象的なタイトルは「鳴き声の周波数が違うため、仲間に声が届かないクジラ」のことで、虐待された過去を持つ主人公たちのメタファーとなっている。

本屋大賞を受賞しているぐらいだから、誰にでもオススメできる全方向に強い作品かと思いきや、序盤からけっこうキツくて、人によっては心が痛すぎて厳しいと感じるかも。

しかしこれもまた本屋大賞作品の傾向だけど、書店員さんの「これを読んでほしいんだ」「感じてほしいんだ」という願いが乗っかった作品である。ツラいからこそ、痛いからこそ、だからこそ得られるものがある、という願いが。

フィクションというのは現実を受け止めるための手段である、というのは村上春樹の言葉だ。

『52ヘルツのクジラたち』は町田そのこによる創作物だけど、確かにそこには現実に対する私たちの覚悟を促す力があるように思う。

私たちも52ヘルツで叫ぶこともあるだろうし、誰かの52ヘルツが聞こえないか、耳をすまさないといけないのかもしれない。

 

一応フォローしておくが、決して気分の悪くなる話ではなく、紛れもない感動作である。

濃く、胸に刻まれるような読書体験をしたい方に、ぜひともオススメしたい。

 

 

17位

 

60票を獲得した17位は2作品ランクイン。

 

 

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『ハンチバック』

 

 

パンクな芥川賞受賞作が登場。私も読んだ。紙の本で。最高だった。

 

受賞会見の衝撃っぷりが話題になっていたけど、作品の中身もまったく一緒で、本当に世の中に中指を立ててるというか、思慮浅い読書好きたちに砂をぶっかけるというか、とにかくパンクで最高である。

これは完全に私の偏見によるものだけど、障害者が障害者を主軸に据えて物語を描いたら、どこかに弱者を労うような読み味を予想してしまうのだけど、『ハンチバック』には完全に良い意味で裏切られた。背骨が強くて、真正面からこっちに喧嘩を売ってきてるから読んでて本当に頼もしかった。

とはいえ著者や主人公の抱える障害は、健常者の私から見ると生半可なものではなく、日常的にその障害と向き合うことの厳しさには、ついつい思いを馳せてしまう。きっと「そんなもんいらねえよ」と言われそうだけど。

色んなものがむき出して、生々しくて、ちょっと他ではとても読んだことがないタイプの作品だったので、強烈に刻まれてしまった。パンチが強いから気付かなかったけど、めちゃくちゃ短い話なんだよね。短いのに強すぎ。ブレイキングダウンかよ。

 

 

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『傲慢と善良』

 

 

こちらも凄まじい勢いで売れている文句なしのベストセラーである。

辻村深月ブランドで売れているのかと決めつけていたけど、そんな生ぬるい作品じゃなかった。現代の空気や価値観、倫理観を敏感に読み切って、みんなの一番痛いところに思いっきり千枚通しみたいなのをぶっ刺してくるタイプの作品です。

だからこの作品を他人事として読むのはかなり難しくて、誰しもが自分の嫌なところを見るような思いになってしまうはず。逆に他人事で済ませられちゃう人は、とっても善良な方なんでしょうね。

 

みんなの感想を読んでて気がついたけど、これって一応ジャンルとしては恋愛小説なのか。その割には甘い部分がまったく語られない。甘さのない恋愛ってなに?水商売でも人工甘味料的な甘さはあるよ?

 

こちらの『傲慢と善良』も何か賞を獲ったわけでもないのにAmazonでの評価数がとんでもないことになっている。

以前からこのブログでは「人に影響を与えるものこそ本当に凄い作品」と書いてたけど、これだけのレビューであふれるのは、やっぱり「感想を残したい!」と思わせる影響を与えたからなのだろう。

最近の辻村深月は投げた玉の影響力が桁違いになってきて怖い。

 

ちなみにだが、『かがみの孤城』を読んで感動した方が、「人気があるから」という理由だけでこちらを読もうとしているのをよく見かけた。とっても微笑ましい光景である。ぜひとも甘美な叫び声を聞かせてもらいたいものである。

 

 

16位

 

61票を獲得。

 

 

『ラブカは静かに弓を持つ』

 

 

著作権法違反を調べるため音楽教室にスパイとして潜入した青年の物語。

文章から聞こえてくるチェロの音色と、揺れ動く青年の心情。そして爽やかで幸福感のあるラスト。2023年本屋大賞2位はダテではない。

音楽の表現が色彩豊かでありつつ繊細さもあって、音楽をやっていた人には堪らない作品で、また楽器を触りたくなってしまうはずだ。私も学生時代に吹奏楽にのめり込んだタイプ(朝練だけやって授業はせずに帰ったりしてたクズですが)なのでよく分かる。

 

こまやかで優しい心理描写が上手くて、細い希望の光にすがるように、主人公をついつい応援したくなって、ぐっと入り込んでしまう。

派手な展開がある作品ではないのに、強く胸に迫るものがあって、深い感動と余韻を味わえる。

実際の著作権問題を元ネタにしているそうなので、そういう社会的側面の面白さも兼ねてるからより強い。

 

あとここまで売れたのは、私の勝手な印象だと装丁のパワーによるところが大きいと感じる。

同年に本屋大賞を獲った『汝、星のごとく』もそうだけど、店頭で展開されてるときの存在感が凄い。良質な物語じゃないと纏えない雰囲気が出てた。そういう意味で手に取りたくなる作品だったし、ちゃんと中身も伴ってたからこそだと思う。

 

 

15位

 

62票を獲得。

 

 

『木挽町のあだ討ち』

 

 

雪の降る木挽町の夜。父親を殺した下男を切り、首まで落としたその事件は、木挽町のあだ討ちとして有名になっていた。そのあだ討ちの真相を探るべく、事件を目撃した当事者たちに話を聞きに行くが――。

 

最近、時代小説が熱い。

 

と感じるのは私が加齢によってそういう層になったのか、本当に盛り上がっているのか当事者である私には一切判断ができない。とりあえず嬉しい。

こちらの『木挽町のあだ討ち』も読んだのだが、それはもう気持ちよく楽しめる一品である。まだまだ私は時代小説ビギナーだと思っているのだけど、そんな私でも読みやすくて、それでいて時代小説ならでは粋に満ちてて、存分に楽しんでしまった。

この作品に限らず私が時代小説に感じる大きな魅力は、現代の要素がないからこそ、すっきり読めることである。

もちろん作品によっては時代小説特有の倫理観の違い(主君を裏切ったりとか、命の軽さとか)でストレスになる部分はあるのだが、だとしても現代が舞台の作品で感じていたものがないだけで、全然違った感覚で読めるのが楽しい。脳みその違う部分で楽しめるとでも表現しようか。

現代を描くだけでどこかで自分の足元に続くような感覚がある。時代小説はそれがないから、もっとフィクションとして軽やかに楽しめるのかもしれない。

 

現代人はみんな疲れている。だからこれからもっと時代小説が必要とされる。

私はそう確信している。

 

 

14位

 

64票を獲得。

 

 

 

 

『透明な夜の香り』

 

 

人の秘密を「香り」に変えてしまう、天才調香師の物語である。

 

千早茜がまたしてもランクイン。来てるよ時代が。

さきほどの『しろがねの葉』では"暗闇"を克明に描くという離れ業をやってのけているが、こちらではなんと"匂い"である。小川洋子の解説にも「言葉の意味を越えて、嗅覚が際立つという稀有な体験をさせてくれる小説である。」と書いてある通り、濃厚な"匂い"を体験させられてしまうのである。筆巧者にもほどがある。なんなの?書けないものないの?

 

「匂いが五感の中で一番強く記憶に残る」というのをご存知だろうか。私は知らなかった。この作品の評判をさっき検索したときに出てきて驚いた。どうやって実証したのだろう。せーのって一斉に五感を刺激してみたのだろうか。なんか拷問じみたイメージが…。

とそれは置いておくとして、たしかに私も匂いに関する記憶で色々と思い当たるフシがある。私はお酒がまったく飲めない人間なのだが、その理由が匂いにある。子供の頃、父親がいつもお酒を飲んでいて、知らず知らずのうちに「お酒の匂い=父親の匂い」になってしまって、アルコールが苦手になってしまったのだ。

これは素敵な作品を紹介しようとしているのにまったくもって相応しくない例えを持ち出してきてしまって本当に反省しているのだが、とにかく匂いの記憶が強烈に残る、というのはよく分かる。

 

そんな"匂い"を題材にした作品なんだけど、これがまあ強い

ページを捲るたびに匂いが香るような感覚がある。これが文章で行われるのだ。小説であると同時に、曲芸じみた凄みを感じる。

きっと読みながらあなたも色んな匂いや、思い出が蘇ってくるはずだ。

 

小説家による魔法をご堪能あれ。

 

 

13位

 

66票を獲得。

 

 

 

 

 

『十戒』

 

 

 

非常に残念なお知らせをしたい。

ここまであらゆる作品で饒舌に語り倒してきた私だが、実はこちらの『十戒』に関しては何も語ることができない。理由も言えない。それでもひとつだけ許されるなら…

 

 

 

夕木春央やばすぎ。

 

 

 

以上。

 

あ、そうそう「じゅっかい」じゃなくて「じっかい」です。

 

 

12位

 

だいぶ煮詰まってきました。ランキングも後半戦、みんな興味津々のベスト10まで間もなくである。楽しみですねー。私も最高に楽しい。積ん読なんてマジで山ほどあるけど、それでもまだ新しい本との出会いは最高であり続けてるからね。死の間際まで本買ってそう。

ちなみにだがこのランキング。集計作業自体は数日で終わっていて、こうやって余計な文章を撒き散らすのに一ヶ月以上かかっているのである。「だったらランキングだけで公開すればいいのに」と言われそうだし、私もめちゃくちゃ同意するのだが、なんかもう降りられないというか、余計なことを書くことでしか発散できない心の澱があるのだ。完全にブログの病に罹っている。ご愁傷さま、私と読者の皆様。

 

 

 

それでは第12位。

 

67票を獲得。2作品がランクインである。

 

 

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『六人の嘘つきな大学生』

 

 

舞台は企業の就職試験。内容は「候補者同士で話し合い、採用者を一人だけ決める」という前代未聞のもの。

誰も見たことのない、嘘つきだらけの最高にヒリヒリできる就職試験がいま始まる!!!

 

いま一番読者を手玉に取る男、浅倉秋成の名前を世に広く知らしめた作品。

浅倉秋成は他の著作を読んでみても良く分かるが、とにかく読者に一杯食わせたい気持ちが溢れまくっている。ミステリーの快感を提供することに才能の限りを尽くしていて、ミステリー好きの私としては非常に信頼できる作家である。

そしてこちらの『六人の~』は多くの方にとって共感できる就活をメインに据えていて、堅苦しくないミステリーとして広くウケる内容になっている。

万人受けする作品であると共にそこは浅倉秋成である。一癖も二癖もある展開には、思わず黒い笑みがこぼれてしまうことだろう。読後私は面白さもそうだけど、作り込みっぷり感心する気持ちの方が強かった。「どこまで頭を使ったら、こんなもん練り上げられんだ」って。

 

文庫化され手に取りやすくなっているので、刺激的な嘘つきを浴びたい方はぜひ。

 

 

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12位のもうひとつは、こちら!

 

 

 

 

 

『アリアドネの声』

 

 

巨大地震の発生により、目も見えず、耳も聞こえない女性が地下に取り残されてしまった。光も音も届かない迷宮で、残された時間はたったの6時間。人類の叡智と希望が紡ぐ、2023年屈指の感動作!!

 

こちらも話題のミステリー作品がランクイン。

私のミステリー仲間たちの間でもかなり話題&高評価を獲得していた作品で、発売当初から凄い勢いて売れた感があるけど、しっかり年間ベスト12位まで付けていたとは。

そもそも井上真偽の覚醒っぷりが最近ヤバい。東大卒の頭脳を活かして、完全に大衆のツボを掌握しつつある。『アリアドネの声』で大爆発させておいてしばらく大人しくなるかと思いきや、そっからすぐに『ぎんなみ商店街の事件簿』でしょ。止まらなすぎ。

 

不可能状況の中で、繰り広げられる自然最大との知恵比べ、そして人間ドラマは、熱さ×熱さで極上である。井上真偽を喰らえ。

 

 

11位

 

74票を獲得。

 

 

 

 

 

『この夏の星を見る』

 

 

 

辻村深月作品がまたしてもランクイン。強い!!

個人的にこれはベスト10に確実に入るかと思ったけど惜しかった~。ちなみに「コロナ禍が生んだ傑作」とか書くつもりないのでご安心を!(よく分からない方はスルーしてください)

 

コロナ禍によって青春を無惨にも破壊されてしまった学生たちが、天体観測を通じて新たな繋がりを見つける、心が漂白される純度100%の青春小説。

心が汚物でどろんどろんになってる精神的ゾンビのオッサンである私みたいなのが読むと、生きてるのに除霊されてしまうレベルである。これぞ読む聖水。

 

とまあふざけるのはここまでとしても、私も3人の子供たちがモロにコロナ禍の影響を受けていて、特に一番上の子は小学校のメインイベントをほぼ経験できずに終えることとなってしまった。

なので正直なことを書くと、どれだけ素敵な物語だと分かっていても私はコロナ禍を扱った小説を読むのがキツかったりする。学校に通うことさえできなくなって、日々憔悴し、表情が固くなっていった息子の姿があまりにも痛々しかったからだ。

 

きっとそれは本当に日本中で見られた光景であり、誰かの心の傷だ。

フィクションなんて作り話だ。わざわざ読む必要はない。

でもそれでも、フィクションには私たちの生きる世界を写し出して、現実を受け入れるための力になってくれることも揺るぎない事実である。

コロナ禍で失ったものは多い。思い出すことさえ嫌になることもあるだろう。

しかしだからこそ目を向け、コロナ禍だからこそ得られたものを改めて考えない限り、ずっと心に纏わりつく"傷"であり続けてしまうのかも、と思ったりする。

 

失ったものがあれば、得たものもある。

そしては人はそれを希望と呼ぶはずだ。

 

あの頃を失った学生たちの希望の物語は、きっと私たちの希望にもなるだろう。

そう信じさせてくれる作品である。

 

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さて皆さんお待ちかね、ベスト10の発表である。

いつもどおり同時ランクインがあるので、ベスト10とか書きつつ、11作品がランクインしている。「ベスト10じゃねーじゃん」とよく指摘を受けるのだが、よくそんな細かいこと気にしてられるなと心配になる。この世にはもっと有意義な指摘があると思う。こんな場末のブログに指摘しても生産性は皆無どころかマイナスである。だけど考えてみれば、生きていることそれだけで人生を消費している意味ではずっとマイナスなので、まあいっか。死ぬまで生きようぜ。

あと今更なんだけど、このランキングは当然ながら小説以外も投票されているのだが、過去回を見てもやはり小説以外が入ることはほとんどない。小説に比べると票が固まりにくいというか、あまりにも興味がバラけてしまうのかもしれない。なので小説以外での積ん読に影響があんまり及ぼせていないのが、個人的にちょっと寂しかったりする。

 

とはいえ、昨今の小説市場は本当にいい作品がゴロゴロしてて、かなり熾烈でハイレベルな戦いを繰り広げているので、ここで上位に入った作品を読めば、ほぼほぼ現代小説のレベル感は十分味わえると思う。

 

ではでは、2023年に読まれた本たちの中のトップオブトップ。頂点に君臨する11冊を紹介していこう。そして1位に輝くのは?

 

 

行ってみよう。

 

 

 

10位

 

76票を獲得した第10位は2作品がランクイン。

 

 

まずひとつめ。

 

 

 

 

『世界でいちばん透きとおった物語』

 

 

 

 

はい、ノーコメントで。

 

 

※色んな事情に配慮して特に紹介文は書きません。

ひとつだけ言わせてもらうなら、私は大好きです。

 

 

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第10位、ふたつめはこちら。

 

 

 

 

 

『正欲』

 

 

 

 

強い強い!!

私がランキング記事を書く度にランクインしている気がする。話題性的にもテーマ的にも作品自体の純粋の強さ的にも妥当でしょう。何度もひと目に触れられるべき作品。

 

人を生かしもするがときに殺しもする、厄介な欲望である"性欲"を直木賞作家が真っ向から書ききった強烈な怪作。

多様性という言葉の本当の意味を知りたかったら、ぜひ『正欲』を食らってほしい。そして朝井リョウがあえて書かなかった部分まで思考の羽を広げてみてほしい。そうすれば気付くと思う。多様性で不愉快さを飲み込むことなんだって。

 

マイナーすぎる性癖を持った彼らたちの姿が、生ぬるい私たちの常識に大きなヒビを入れてくれるはずである。

 

 

9位

 

77票を獲得。

 

 

 

 

 

 

『方舟』!!

 

 

 

 

謎の地下施設に閉じ込められてしまった6人の大学生と、ひと組の家族。絶望的な状況のなか発生したのは、首の切断殺人事件。

なぜこんな極限化で殺人を行う必要があったのか?その目的は?犯人は誰なのか?

生き延びるために犯人を生贄にせよ!ミステリーの雄が放つ、新感覚ミステリーの傑作。

 

 

大好きです。

 

「2022年の本ベスト」でぶっちぎりの1位を掻っ攫った悪魔的作品が、いまだにベスト10に食い込んでるっていうね。私があんまり検索してないせいもあるだろうけど、いまだにちゃんとネタバレしないようにみんな守ってくれてる感じがある。方舟のヤバさを知ったら沈黙、これがマナーだからね。

 

マンガ化もされたし、順調に売上を伸ばしているようなので、あとはハリウッドで映画化されて『セブン』とか『CUBE』みたいなカルト的人気を博してほしい。会場の悲鳴を想像するだけで堪らんわ。

マジで絶対に人気出るから、誰か偉い人お願いしゃすっ!!

 

 

8位

はい、どんどん行きましょう!!

 

79票を獲得した第8位はこちら!!

 

 

 

 

 

 

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

 

 

 

またしても私の大好きな作品が登場。垂涎すぎる。

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は今回ベスト10で唯一の海外勢。『三体』も入ってくるかと思ったけど、文庫化が一足遅かったか。

 

SFでハードカバー、さらには上下巻なので普段本を読まない人からするとちょっと敷居が高いだろうし、本好きの人でもハードルが高く感じてしまうと思う。

でも言わせてほしい。実は、現時点で世界一面白い小説はこれである。

細かいことを書くとネタバレになるので避けるけど、舞台設定もあって、読んでるうちに周囲の風景が消えていってしまう。あっという間に全身が浮遊感に包まれて、夢中で読み耽ってしまう。なんなら読み終えたときに、自分がいつもの自分の家にいること自体に違和感があったぐらいだもん。

「小説欲」がもしあるとするならば、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』で満たされてしまった感がある。しばらく何も必要ないぐらい万能感があったから。

こちらは著者の実績もあって、すでに映画化が進行中だけど、私としてはぜひともまずは紙で楽しんでもらいたい。

 

小説で味わえる面白さの限界点を体感せよ。

 

 

7位

 

あと7冊のみ!

 

 

80票を獲得した第7位は、こちら!

 

 

 

 

 

 

『街とその不確かな壁』!!

 

 

 

 

もう日本人であれば村上春樹は避けて通れないというか、きっと数年後の国語の教科書には、太宰とか夏目漱石と並んで村上春樹が掲載されているのではないだろうか。

私としては、村上春樹は好きだし、面白くて何冊も読んでるんだけど…やはり…うーん難しい。なんて表現すればいいのか皆目見当がつかない。

彼の魅力をちゃんと咀嚼して言葉に落とし込もうとすると、まるで彼の文章の模造品みたいなポエミーな劣化物ができてしまう。つまんない自分語りを初めてしまいそうで怖い。なので安易に手が出せなくて困っている。

 

ということで、端的にオススメポイントをふたつ。

 

①読んでて気持ちいい

ノーベル文学賞候補と毎年のように噂されているけれど、いわゆる「お高い文章」では全然なくてするすると脳内に入っていく文章。正直意味はよく分からなかったりするんだけど、読んでるだけで酔ってしまうような独特の文体は、それだけで体験する価値があると思う。

 

②母語で村上春樹を味わえる贅沢

というか、これに尽きると思う。

村上春樹は世界中で読まれてて、母語で味わいたいと思ってる人がこの世界にどれだけいることか。そしてそれをちゃんと味わえる私たちの幸福について認識した方がいいだろう。

 

 

6位

 

いやー、ほんとに凄い作品ばかりがポコポコ出てくるから、なんて贅沢なランキングなんでしょう。自分で書きながら幸福感が凄い。

 

 

続いては、85票を獲得した第6位!!

 

 

 

これだっ!!

 

 

 

 

 

 

白井智之!!

 

 

 

 

 

 

 

『エレファントヘッド』!!

 

 

 

 

 

 

うわー、来てしまった!遂にこいつが!!

 

2023年のベスト作るって次点でいつかは紹介しなければいけないときが来るって覚悟してたけど、いざ紹介文を書こうと思うと筆がまったく進まん。大体にして未読だし…。

 

だってさ、公式に書かれてるのがこれでしょ。

 

謎もトリックも展開もすべてネタバレ禁止!
前代未聞のストーリー、尋常ならざる伏線の数々。
多重解決ミステリの極限!

 

ミステリー好きの方であれば、これを垂涎の惹句と捉えるか、地雷臭ぷんぷんの過剰宣伝と捉えるか結構分かれると思う。私も作者が白井智之じゃなかったら普通に地雷確定してる。

しかし、信頼のおける友人たちが次々に『エレファントヘッド』の前に陥落している様子を見る限り、相当やべえのが出来上がってるっぽい。去年猛威を振るってた『名探偵のいけにえ』も大概だったけど、さらに超えてる感がある。

いまミステリー界のトップランナーは間違いなく白井智之。その迸る才能を味わうなら今だ。

 

 

5位

 

さあ残すところあと僅か。ベスト5の顔ぶれやいかに?!

 

 

それでは、88票を獲得した第5位の発表だ!!

 

 

 

 

帝王降臨。

 

 

 

 

 

凪良ゆう!!

 

 

 

 

 

 

 

『星を編む』!!

 

 

 

 

 

圧倒的すぎてため息が出ちゃうよ。凪良ゆうは小説界を蹂躙しすぎ。

最近の凪良ゆうの無敵感は2020年本屋大賞を獲った『流浪の月』からずっと続いてて、2023年の本屋大賞『汝、星のごとく』の続編、しかも発売してからそんなに経ってない作品が並み居る作品たちを押しのけて5位に食い込むとは…。完全に帝王ですわ。みんなでひれ伏そう。

 

『汝~』の続編という紹介をよくされるんだけど、続編であり、番外編であり、前日譚でもありと、完全に『汝、星のごとく』と繋がった作品になっているので、2冊でひとつの物語、というのが正確な所だと思う。

 

それにしても、今回も装丁が格別に美しいなぁ。本棚に2冊並べた姿が映えること映えること。ここでも帝王の風格が出ててよろしい。

 

 

4位

 

惜しくもベスト3を逃してしまった、第4位はこちら!!

 

 

89票獲得。

 

 

 

 

多崎礼!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

『レーエンデ国物語』!!

 

 

 

 

 

入国される方続出。

突然現れたファンタジーの傑作で、あまりの勢いにパニックになった人も多いと思う。私もそのひとりで突然TLで『レーエンデ国物語』の評判が膨大に増えて「なにこれ?」と戸惑っているうちに、あれよあれよと周囲がファンだらけになってしまった。そこからの刊行ラッシュ、そして出るたびにみんな大満足してるっていうね。

 

個人的にファンタジーの超大作って、日本の作品でバカ売れしてるところをほとんど見たことがなかったので(『十二国記』もあるけど最近の作品のイメージにない)、この爆発っぷりには本当に意外。なんなら日本人ってファンタジー嫌いなのかと思ってたぐらいだったから。

この記事を書いてる時点で3巻まで発表されてて、すでに「全5巻」と公式からアナウンスされているので残り2巻。最後まで勢いを保って、伝説を残すのか楽しみなところ。

 

本屋大賞を見ても、売れ線の小説ってやっぱりゴリゴリのミステリーとか、濃厚な人間ドラマものばかりが占めがちなので、こうやって新しい風が掻っ攫っていくのは、いち本好きとして、そして業界のウォッチャーとしてとても楽しい。本って、色んなジャンルとか面白さがあってこそだし。

 

とまあごちゃごちゃ書いたけど、私も未読なので手を出したいところ。

ただ完結していない作品を読むのがめちゃくちゃ苦手(大好きになったときに、続刊が出るのを我慢できない人間)なので、あと2冊を大人しく待ちたい。傑作だといいなー。

 

ちなみに2024年の本屋大賞は確実にこれだと予想してします。外れたら坊主にしてもいい。しないけど。仕事に影響出るから。大人なので。

 

 

3位

さあさあ、遂に残すは3つのみ!

2023年に大量に読まれ、愛された本たちの中の頂点に君臨する3作品である。

果たしてどんな傑作が出てくるのか。皆さんの予想は当たるのかどうか。ぜひとも一喜一憂しながら楽しんでいただきたい。

 

 

それでは~、第3位!!!

 

 

91票を獲得。

 

 

 

 

 

 

川上未映子!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『黄色い家』!!!!

 

 

 

 

 

2023年で一番有名な家。

 

芥川賞作家が放つ、怒涛のクライムノベルが登場!!これも私が大好きなやつ。

運にも家族にも見放され、知恵と勇気の限りを尽くして金に執着し、必死に生きようとする少女の姿を描ききった作品で、まるでその場に居合わせているような臨場感と、むき出しで生々しい心理描写の連続で、息つく暇もないほどの面白さ

不幸に満ちた作品だし、重いテーマをいくつも抱えてるので、読み味は決して爽やかとは言えないんだけど、主人公たちの必死さとか執念が乗り移ってしまい、駆け抜けるように読んでしまう。特に後半からの尻上がりっぷり、容赦のなさ、カタルシスは一見の価値あり。凄まじい読書体験をもたらしてくれる。ほんと、精神を吸い取られるような感覚に陥る。

 

あと蛇足だけどどうしても言いたいことが。

『黄色い家』のオーディブルがマジで凄い。危険。

女性の方が朗読されてるんだけど、少女たちが死にものぐるいで言い争ってるシーンとか鬼気迫りすぎて…。夢中になりすぎて忘れてたけど、そういえばこれ全部ひとりで朗読してたんだ…ってなったからね。

あまりの迫力に演者さんのことが心配になるレベル。魂込めすぎて寿命縮んだんじゃないかな。この仕事したあと。そもそもちゃんと現実世界に無事に帰ってこれたのだろうか。それくらい作品世界に憑依されてたから。

 

今までオーディブルって「なに勝手に朗読してんだよ」とか「感情の込め具合はこっちで決めるから」とか思ってたけど、全然違う読書体験なんだと理解しました。演者さんってすげえ。

 

 

2位

ラスト2!!

 

2023年を代表する本の準優勝は、こちら!!!

 

 

 

遂に3桁に到達。114票獲得。

 

 

 

 

さあ、どっちだ!

 

 

 

 

 

滋賀の宝が登場!!

 

 

 

 

宮島未奈!!!!

 

 

 

 

 

 

 

『成瀬は天下を取りにいく』!!

 

 

 

 

 

 

これは大躍進でしょう。おめでとうございます!!

2023年は初頭から成瀬が席巻してたから、これを1位だと予想してた方も多いと思う。

ただね、こういうランキングに限らずだけど、短編集とか連作ものってなかなか頂点を取らんのよ。あとこれから天下を取りに行く成瀬としては相応しい順位ではないでしょうか。獲っちゃったら終わっちゃうからね。

 

学業優秀、性格は大人びてて、でも突拍子もない挑戦をしだして周囲を困惑させる。誰にも振り回されない揺るぎない価値観を持った成瀬。そんな彼女を中心に巻き起こる出来事を、心爽やかに描いた青春群像劇である。

あんまりにも一から十まで完璧に爽やかで、久々に心が洗われた感じだった。私の普段の選書の癖のせいもあるけど、いつもドロッドロの重めだったり、人間のきったない部分にばかりフィーチャーした作品を読みまくってたので、「世界ってこんなに美しかったのか…」と戦場で花畑を見た兵士みたいな気分になってしまった。いやほんと救われるよ、こういう作品って。

 

あんまり暗い話はしたくないけど、やっぱり社会がこういう作品を求めてるんだろうな、とも感じる。

社会がどんどん貧しくなって、治安も悪くなっていくだろうし、世界情勢も悪いニュースばかりだし、人の心を蝕む要素がそれこそ限りなくある現代だからこそ、フィクションには希望があってほしいっていうか。

 

ぜひとも成瀬にはこれからも前を向き続けていてほしい。日本にはあなたが必要なのだ。

 

 

1位

 

ということで、毎度毎度膨大な長さになってしまうこのランキング記事も、遂にラストである。さすがに多くの方が予想通りの作品が残ってしまったと思うが、ちゃんと紹介しよう。

 

得票数…122票!!

 

 

 

 

2023年の本ベストのベストに星のごとく輝いたのは…これだ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またしても帝王!!

 

 

 

 

 

 

 

凪良ゆう!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

『汝、星のごとく』じゃい!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

パチパチパチパチ…。素晴らしい!!!

 

輝ける2023年本屋大賞受賞作が見事頂点に君臨。相応しすぎてぐうの音も出ませんわ。

以前も書いたけど、『汝、星のごとく』は発売開始されて書店で平積みされてるときから存在感が際立ってて、明らかに王者の風格が出てた。本屋大賞を獲る前から獲ってるような顔してたよ。私には確実にそう見えた。

で、皆さん読みましたでしょうか。そして凪良ゆうの筆力がどんだけ暴力に近づいているかを思い知ったでしょうか。

彼女の筆の凄まじさは『流浪の月』のときから分かってるつもりだったけど、ここへ来てさらにレベルが上がってきてるように感じる。もう読者の心の振り回し方が全盛期の吉田沙保里みたいになってるもん。ぐるんぐるんですよ。現時点で霊長類最強系女子の称号は凪良ゆうに与えるべき。

あんまり内容に触れるとネタバレになっちゃうから避けるけど、この物語って読んでると物凄い体験をさせられちゃうから気づかないけど、読み終えて物語を俯瞰すると、信じられないぐらいシンプル。突飛な要素なんてほとんどなかったりする。

なのに読んでるときの感覚はめちゃくちゃ鮮烈で、悲痛で、息苦しくて、でも光が差し込むような救いもあって、心のすべてで楽しめる作品になっている。そしていくらでも語りどころのある作品でもあると思う。

私はかなりストーリー展開とか新アイデアばかりに価値を置くタイプだと自認しているんだけど、そんな私でも『汝~』には完全にヤラれてしまった。読み終えたときに完全にHPゼロ。心をボッコボコにされて、羅生門なみに身ぐるみ剥がされた感じ。「凪良先生…私にどうしろと…?」と倒れ込むことでしか、読了後の感情を処理する方法が無かったよね。

いい年したオッサンでこれなんだから、もっと多感な時期に出会っちゃってたら、一生凪良ゆうに忠誠を誓うか、逆に一生受け付けられないレベルのダメージを受けてると思う。良くも悪くもパワーがありすぎる。

たぶんだけど、この「どうしろと…?」という感覚がみんなもあるからこそ、続編である『星を編む』がこんなにも広く受け入れられた部分もあると思う。『汝~』で心に開いた穴を何かで埋めずにはいられないっていうか。

 

ちょっとだけ紹介を書いて終わりにしようと思ったのに、信じられないスピード感で言葉を綴ってしまった。たぶんここまでの文章2分ぐらいで書いたわ。いやほんと凪良ゆう、恐るべし…。

 

ということで、2023年の本ベスト約10冊ランキングの頂点に輝いたのは、我らが最凶の女王凪良ゆうの『汝、星のごとく』でした。改めておめでとうございます!!!これからも我らの心を蹂躙してください。

 

 

 

以上。長い記事に最後までお付き合いいただき感謝!!

 

 

 

ぜひXでコメントとか、記事を拡散していただけると助かります。

 

 

 

 

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