どうも、読書屋ひろたつです。娘が宿題で"親友"を"心友"って間違えているのを見て感動してます。間違いが美しい。
さて、毎月恒例の月イチまとめ記事である。
今年は年頭に「昨年の倍の量の本を読む。なぜなら読書ブロガーの本懐は読書にあるから」と宣言した。卑怯な手段(Amazonのオーディブル)を使いつつも、新刊や積読たちと真剣に向き合った結果、ちゃんと倍を上回る量を読んでいる。
それで分かったことがある。積読についてだ。
まず去年までの私は、ブログやTwitterなどアウトプットを最優先にしていた。
すると面白い本を見つけても文章を書く方に時間が消費されてしまう。読書する時間は減る。結果、積読は増えた。
その一方で読書時間を増やした今年はどうだったかと言うと…その通り!! 積読は増えたのである。不思議!!ふざけんな。
ちゃんと理由を説明しよう。
「今月こんなに読んじゃった~~~!!積読減った!!私えらすぎ!!」となるでしょ。そしたら「じゃあ、あれもこれも買っちゃっていいよね~~~~」と積読リバウンドが発生するのよ。人間は本当に愚かな生き物。
そういえば以前読んだ本で似たような実験が紹介されていた。
慈善的な行動をしたあとの方が、不道徳な選択をしやすくなるそうだ。多めにもらったお釣りをちょろまかす割合が増える、とかだった気がする。
分かる。今の私は分かるぞ!! その気持。今これを読んでる君も分かるだろ?!このまま一緒に積読の地獄に落ちようぜ!! ハッピー。
本の真の価値は読むことにある。積読をいくら増やしたところで、読まなかったらただのディスプレイである。ディスプレイが悪いとか価値がないとは言ってない。(最近は言葉尻で批判されることが増えているので予防線…ということを書くとまた嫌われる理不尽。人間は本当に愚かな生き物2)
読み終えるよりも早く本を新たに購入してしまう私は、つまるところ本をディスプレイしたいだけなのかもしれない。こうなってくると私は本好きというよりも、本という物体自体が好きなだけという可能性が濃厚である。
人への愛は究極になると「存在するだけで愛しい」となる。美醜や能力などに関係なく、存在そのものが愛しいと感じられるのだ。
もしかしたら私も本に対して同じ境地に達しているのかもしれない。
読まずともそこにあるだけで満足する。作品の良し悪しも求めず、面白かどうかに囚ワレズ、そういうものに、わたしはなりたい。
さあ、いつも通り脳内ドラッグに身を任せてキーボードを叩いただけの駄文を披露したところで、2023年10月に見つけた面白い本たちを紹介していこう。みんな人生を大事にしろよ!! もっと宮沢賢治とか読もうぜ!!
では行ってみよう。
戦争は女の顔をしていない
ぶっちぎりで今月のベスト。こんなに強い作品に出会ってしまったら、ベストに選ぶ以外の選択肢はないだろう。
ソ連では第二次世界大戦で100万人をこえる女性が従軍した。後援部隊だけに限らず、最前線(しかも自ら志願する人が殺到)で戦った人もいる。そんな女性たちから見た戦争についてのインタビューをまとめた作品である。
読めばすぐに分かるのだが、その証言の数々は明らかに今まで私たちが触れていた戦争とは違う"顔"を見せている。戦局がどうだとか作戦がとか思想とか、そういった包んでいる部分の話ではなく、もっと人間の心や、見ていた景色、戦場での成長などの非常に手触りの感じられる話が大量に載っている。(身長が何センチ伸びたとか、些細だけど真に迫るエピソードが多い)
当然戦争を賛美する気は一切ないが、凄惨な状況の中でも人の輝きがあったことが分かって、なにか救われる思いがした。
そしてそれと同時に、やはり自らの行いを正当化してしまう正義というのはどこにでもあって、戦争は永遠に無くならないのだろうな、という諦めを新たにした。
キリンに雷が落ちてどうする
大好きなダ・ヴィンチ・恐山の著書である。彼の品田遊名義の作品はこれまでにも読んでいるが、今作が一番好き。彼が2018年から毎日欠かさず投稿を続ける日記からの厳選集。
私は好きな人の思考に触れる感じが一番好きで、その人の魅力の源泉を浴びるような悦びがある。
練りに練った作品もいいんだけど、粗削りの取って出しだからこそ失われていない魅力があるというか。同じ理由で森博嗣の『クリームエッセイシリーズ』が一番好き。
印象的なタイトルの意味もちゃんと中身で説明してくれるんだけど、その不条理さというか、ねじ曲がった感性がたまらなく愛おしい。
熱源
第162回直木賞受賞作。
このブログではしつこいぐらい「直木賞受賞作はそんなに面白くない」と主張し続けていたが、最近読んでる感じだと完全に覆されてる感がある。作者の代表作に贈られることはほとんどないとは今でも思うけど。
文化の到来によって、あらゆるものを奪われていくアイヌの人々と、それに寄り添おうと葛藤する樺太に送られた苦役囚のポーランド人の物語。主人公として登場する2人は実在した人物。
読後、「熱源」というタイトルに込められた意味に胸が熱くなり、私自身のアイデンティティを顧みずにはいられなくなる。そして文化とは暴力だったのかと。
色んな要素が絡み合いつつ、とても一言では表せない面白さを内包している。心を深く、そして広い視野で満たしてくれる作品である。これは圧倒されたわ。
あなたには、殺せません
石持浅海がどれだけミステリーというジャンルを自由自在に扱えるかを示した作品。軽やかすぎる。
場所はとあるNPO法人。完全無料のこの相談所にやってくるのは、これから殺人を犯そうとする人のみ。そして相談員は依頼者たちの犯罪計画を尽く論破していく。
前代未聞の"起こっていない犯罪を解決してしまう"異色ミステリー。
連作短編集になってるんだけど、元々の設定からして面白いのに、さらには一話一話で趣向がどんどん変わっていくから、そりゃあもう手のひらの上でコロンコロンされますよ。
ちょっとブラックな笑いと、鮮やかな論理が冴え渡る見事な作品である。
寝る脳は風邪をひかない
著作を発表するたびに面白い脳のトピックスを提供してくれる池谷先生の作品。
今回も目白押しで読んでる間、知識欲がずっと満たされてて本当にありがたかったです。私のようにちゃんとした論文とか読めない人間には、池谷先生のような存在は本当にありがたい。バカに優しい。これからも優しくして。
山ほど面白いトピックだらけなので、いくつか抜粋。
・記憶力が年齢とともに低下するというのは誤った常識
・ヒトは能力を失うことで進化した(個人的にこの話が一番面白かった)
・O型が一番自殺率が低い。これは世界的な傾向。
・エリートほど不平等に寛容
などなど…
脳の話って、すぐに新しい研究結果が出てくるので、もしかしたら今後覆されてるかもしれないけど、現時点での最前線として知っておくと楽しい。
以上。来月もお楽しみに。