俺だってヒーローになりてえよ

何が足りないかって、あれだよあれ。何が足りないか分かる能力。

読書中毒ブロガーが2019年に読んだ年間ベスト10冊を発表する

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どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。

 

私はブログを使って、面白いと思った本や、ほんのごくたまにだが、つまらなすぎて殺意の湧いた本を紹介することを生業としている。

そうやって紹介するときにいつも気をつけているのは、順位を付けないことである。

面白さというのは、とても不安定な感覚で、ちょっとした要素で面白いがつまらないになってしまうこともあれば、逆もまた然りである。

なので、私が下手に「これが一番面白い!」などと言ってしまうと、その先入観によって面白さが半減してしまうこともありえるのだ。オススメするときは、他の作品と比べてどうか、というよりも、読んだ私の感動や見解などで興味を持ってもらえるようにできるだけ気を付けている。

 

ただその一方で、ランキングに需要があることも理解している。

人は「結局どれが一番なのよ?」と聞きたがる生き物である。分かりやすい答えを求めている。

ということで、その少なくない需要に1年に一回だけ答えるのが今回の記事の趣旨である。

 

1年の間に読んできた本の中で、特に面白かった10冊をランキング形式で紹介していこう。

 

ただ、これはあくまでも私の個人的な見解であり、自分で選出しておきながら「絶対にみんなには分かってもらえないだろうな」と思ってランキング付けしている。

私にとっての傑作が、あなたにとっては壁本(つまらなすぎて壁に叩きつけてしまう本の総称)だったりするのは、よくあることだ。それもまた一興である。


ということで、話半分で参考にしてもらえたら最高である。

 

あなたにとってまったく興味のない本や、まったく評価できない本もあるかもしれない。

それは逆に言えば、あなたにとってまだ未開拓の面白さが潜んでいるということでもあるのだ。 

 

人生のすべてをかけても読みきれない本の海。どの本を選ぶか、どの分野を開拓するか。すべては私たちの自由である。

 

では行ってみよう。

 

 

10位 『言ってはいけない』

 

日本で一番読者の「それが読みたい」を書くのが上手い作家、橘玲の真骨頂とも言える一冊。

経済系の話題を得意とする著者だが、今回は多数の論文を漁って「世間的には言ってはいけない」とされているタブーをガンガン書いていく

正直、最初にこの本を見たときは「今どき流行りのタイトルだけ過激にして売るパターンのやつだな」と思っていたのだが、いざ中身を読んだら、引いてしまうぐらいに強烈な内容になっていてびっくりした記憶がある。

もちろんここに書いてあることを鵜呑みにするつもりはないが、「そういう調査結果があるんだよ」という程度のトリビアとしてはかなり楽しめる内容である。

 

ちなみに、私はこの本に書いてあるエピソードが気に入りすぎて、すぐに会社の同僚たちに話したのだが、あまりにも強烈すぎて完全に引かれた経験がある。みなさんもぜひやってみてほしい。

 

 

9位 『ヒートアイランド』

 

超傑作『ワイルド・ソウル』 の垣根涼介が送る、東京を舞台にしたバイオレンス・コンゲーム小説である。

個人的に、危ない組織が出てきて、ヒリヒリするような頭脳戦をする作品が大好きで、『ヒートアイランド』はまさにドンピシャの作品である。緊張感と開放感が最高である。めくるめく展開に頭を使いながらも、夢中で没頭できるスピード感はさすがの一言。読ませるのが本当に上手い作家である。

結構前の作品なので、携帯電話の描写など時代を感じる部分はあるが、作品の面白さにはまったく影響なし。ただただひたすらに面白い。

垣根涼介自信も『ヒートアイランド』の出来やキャラクターに愛着があるのか、4冊ほどシリーズになっている。しかし私が読んでいるのは1作目のこれのみである。続編は良くも悪くも、作品の後味を変えてしまうものである。大好きな『不夜城』の3作目を読まないでいるのも同様の理由からである。

 

 

8位 『誰もが嘘をついている』 

 

人は誰にも本心を言わないし、自分にだって嘘をつく。けれど、検索窓にだけは本音を吐露する。

 

元グーグルの分析担当の著者が、グーグルが持つ膨大な“検索傾向”を元に、人間の本質に迫る一冊。

これもまた10位で紹介した『言ってはいけない』と同様に、人間の普段は見えない一面が見えて、知的好奇心をグリグリと刺激してくれる本である。

『言ってはいけない』に比べて私の中で上位に評価しているのは、「研究結果」という私の立場からは少し遠いものよりも、「みんなの検索傾向」なんていう身近なものを取り扱っているからだろう。実感が半端ではない。

面白い話題に事欠かない本なのだが、一部紹介しよう。

 

・男が女性をいかせる方法と同じぐらい自分にフェラする方法を調べている

・男性は身体のどの部分よりも性器についてググっている。肺肝臓足耳鼻喉脳関連の検索を全てを足したよりも多い

・XVIDEOでの検索傾向は、世界的に見ると1位が「ベビーシッター」2位が「教師」。みんな子供の頃の憧れを引きずりすぎである。

 

などなど、下ネタも盛りだくさんだし、真面目な話題も豊富である。

それにしても、男の愚かさよ…。私も男なので、なんとも身につまされる統計結果である。

 

 

7位 『世にも奇妙なマラソン大会』

 

誰も行かないところに行き、それを面白おかしく記すことを生業とする作家、高野秀行。

以前から常々どうしようもない男だとは思っていたが、こちらの『世にも奇妙なマラソン大会』を読んで確信に変わった。というか、私が思ってた以上にはるかにどうしようない男だった。

だって、「真夜中の妙なテンションで、思わずワンクリックでサハラ砂漠でフルマラソンに参加」 とかまともじゃないでしょ。

そんな表題作を筆頭に、高野秀行の魅力がこれでもかと凝縮された短編集である。

高野秀行の作品はどれも最高に面白いのだが、分厚いことが多くて、彼のエッセンスを試してみたい人にはハードルが高い。

その点、『世にも奇妙なマラソン大会』はタイトルが意味わからないぐらいで、内容はかなりとっつきやすく、高野秀行の面白さを手軽に楽しめる一冊である。

 

 

6位 『お前の罪を自白しろ』

 

有名代議士の孫が誘拐された。犯人の要求は「記者会見でお前の罪をすべて自白しろ」という前代未聞のもの

 

…このあらすじだけで間違いないことが分かる作品なのだが、中身も期待を上回るレベルで面白いから安心してほしい。真保裕一はできる子だ。

この作品の最大の見所は、政治家連中の間で行われる、手練手管極まる心理戦だろう

政治家が長い時間をかけて積み上げてきたものを、倒されないようにヒリヒリしながら交渉し続ける姿には、読んでて胃が痛くなりそうになるぐらい臨場感たっぷり。

一筋縄ではいかない物の怪たちの攻防に、歯ぎしりしながら読み進めてもらいたい。

中身の濃さに対して、結末が若干軽いのが少々物足りない感じはするが、読んでいる最中の熱中度では今回のランキングでもぶっちぎりの1位である。

いやー、すげえのを読ませていただきました。

 

 

5位 『サイレンと犀』

 

今、短歌が熱いことをご存知だろうか。

想像を遥かに超えた作品が次々と生まれてきている。短歌というものの概念が更新されている真っ最中だ。このビッグウエーブに乗らない手はない。

そもそもこのブログで私は数え切れないほどの良書を紹介してきたが、短歌集というのは初めてである。興味がなかったのもあるけれど、私の所までその凄さが届いていなかったのが一番だろう。地味だし、話題性がない。老人が楽しむようなイメージがある。

それがどうだろう。ツイッターによる短文文化に呼応するように、新しい感性で紡がれる珠玉の言葉たち。むしろ老人には理解し難いものになっているかもしれない。

というわけで、そんな最近の短歌の凄まじさを教えてくれたのが、こちらの作品である。あまりの感性の鋭さ、取り出す言葉の巧みさに、読みながらゾクゾクが止まらなかった。こんな経験はなかなか味わえんよ。

中身をバラすのは気が引けるのだが、少しでも多くの方に魅力を伝えたいので、3首だけ紹介しよう。

 

“道ばたで死を待ちながら本物の風に初めて出会う扇風機”

“散髪の帰り道で会う風が風のなかでいちばん好きだ”

“もういやだ死にたい そしてほとぼりが冷めたあたりで生き返りたい”

 

すごすぎる。

 

 

4位 『そして、バトンは渡された』

 

瀬尾まいこは巧みな作家だ。

言葉に上手く表せない感情や、シチュエーション、機微などを描くのが抜群に上手い。彼女の文章に何度悶えさせられたことだろうか。こんなオッサンをつかまえて悶えさせるなんて、なんてどうしようもない奴なんだ、瀬尾まいこ。

そんな悶えさせ魔の真骨頂とも言える作品が、2019年の本屋大賞をかっさらった『そして、バトンは渡された』だろう。

親が4回も変わった少女、というかなりトリッキーな設定で、「そんな設定に誰が感情移入すんじゃい」と思ったのだが、いざ読み始めてみたら、案の定やられた。文句なしの瀬尾まいこクオリティ。持ってかれたよ。最後のシーンなんて、涙で読めなくなったし。なんでこんな訳のわからない物語で泣けるんだよ。説得力がカンストしすぎ。

 

このように、オッサンを悶えさせたり泣かせたりする、とっても罪な作品である。

装丁はちょっとあれだけど、中身は間違いないから安心してほしい。

 

 

3位 『空が青いから白をえらんだのです』

 

奈良少年刑務所で、少年たちの更生教育の一環で行われた“詩の教室”。 そこで詠まれた、受刑者たちが実際に綴った作品をまとめたものである。

詩の教室を担当し、本書の編者も務めたのは作家の寮美千子氏。

重犯罪者もいるという少年刑務所に不安を感じながらも、勇気を振り絞って大役を果された。そしてこの傑作が生まれたのである。感謝に絶えない。

犯罪者と聞くと、しかも若年の犯罪者と聞くとどんなイメージを持たれるだろうか。私は「自分とはまったく違う世界のいきもの」という認識だった。この本と出会うまでは。

 

この本で詠われた詩には、技巧もなければ、知識もない。乱暴な表現をするならば、「ただの言葉の羅列」である。だが、なぜかそれが恐ろしく心に響く。揺さぶられる。

中には「宿題」という概念を知らない少年もいるという。そんな、私からしたら“異世界の住人”である彼らの紡ぐ言葉が、想像もしなかったぐらいに素晴らしいのだ。

この事実には本当に価値観を壊された。

人間というものの複雑さ、多面性、そして素晴らしさに思いを馳せずにはいられなかった。

 

取り返しのつかない罪を犯してしまった彼ら。傷つけられた人のことを思えば、許されるものではないのかもしれない。分からない。

だがそんな彼らに愛情を注ぐ刑務官の方がいて、味方になってくれる人がいて、心を耕す環境がそろえば、こんな素晴らしい詩を生み出せるのである。

少なくとも私は、そこに希望を感じてしまうし、信じたいと思うのだ。彼らもまた、自分たちと同じ人間であることを。

 

 

2位 『顔ニモマケズ』

 

人は見た目で判断される。

これは厳しいけれど現実である。人と見た目の問題は切っても切れない。

では、見た目に問題を抱えている人はどうやって生きていけばいいのだろうか。

どれだけ内面を磨き、実績を作ったところで、自分のことを知らない人から見れば、「見た目に問題のある人」にしかならない。 

とても残酷な話である。

 

そんな厳しくて、残酷な世界と戦う人たちがいる。

ベストセラー作家の水野敬也が、直接「見た目に問題を抱える人」にインタビューを行なった対談集である。

 

これがもう…本当に…感動する。人って、なんて素晴らしいのだろう。なんて強いのだろう。立ち上がる人の姿はなんて美しいのだろう。

 

私が本を読むのは、新しい世界を知りたいという欲求が一番の理由である。

新しい世界を知ることで、自分の知識や価値観が更新される。すると、今まで見ていた世界が一変するのだ。これは大げさな話ではなくて、本当に見え方が変わるのだ。

 

人の出会いと同様に、本との出会いも、ほとんど偶然である。出会える本よりも、出会えない本の方がはるかに多いのだ。そんな頼りない出会いの中で、自分の価値観を更新してくれるような作品に巡り合う。

これを幸福と呼ばずになんと呼ぼう。

 

出会えたことに感謝したい作品である。

 

 

1位 『竜が最後に帰る場所』

 

さあ、このランキングもこれで最後である。最後、つまり私が2019年に読んで一番ヤラれた本は『竜が最後に変える場所』である。

もうね、タイトルですでに優勝してるよね。装丁は若干残念だけれど、タイトルから期待できるものが凄い。

 

で、中身はと言うと、とてもしっとりとした半ファンタジーである。わざわざ「半」を付けたのは、なんとなくそんな感じがするからだ。

簡単に説明できない。良さを表現しきれない。でもそれが恒川光太郎の良さなのである。彼の作品を説明する語彙は、この世にまだ存在していないのである。

 

読んでいて、分かりやすい興奮があるわけでもなければ、メリハリのある起承転結があるわけでもない。でもなぜか陶酔するような没頭感がある。“あっちの世界”に連れ去られる。

読み終えたときの「現実に帰ってきた感」を味わってもらえれば、どれだけ自分が遠くまで飛ばされていたか、どれだけ深く物語世界に潜っていたかを思い知るはずだ。 

 

私は小説において大事なのは常々「その作品、作家でしか味わえないものがあること」だと思っている。オリジナリティこそが作品の命であり、魅力そのものなのだ。

その点で『竜が最後に帰る場所』はもちろんだし、恒川光太郎は完全に確立している。

ああそうか。この作品を表現する言葉をやっと見つけた。

 

唯一無二。

 

これである。

 

 

以上。2020年も新しい作品との出会いを期待している。