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読書中毒ブロガーが2020年本屋大賞を本気で予想してみた

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どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。

今年もやってきました。この季節が。本好きの本好きによる本好きのための祭典、本屋大賞である。

この企画も早いもので3回目である。

 

1回目→読書中毒ブロガーが「2018年本屋大賞」を本気で予想してみる

2回目→読書中毒ブロガーが2019年本屋大賞を本気で予想してみる

 

私のような無名の人間が、マイナージャンルの賞レースを予想するという、誰が読むんだよ感全開の企画なのだが、世の中には奇特な方が意外と生息しているようで、概ね高評価をいただいている。大丈夫か日本。こんな記事読んでる時間があったら、もっと労働に勤しんで納税してくれ。

とはいえマイナージャンルだからこそ、読書好きの結束は固い。狭いからこそ濃度が高い。こんな酔狂記事を楽しんでくれる人も多いのも事実。なので今年もこうして筆を執った次第である。 

 

2020年本屋大賞ノミネート作品

ではまず今回のノミネート作品を紹介していこう。

過去と比較しても、かなりバラエティに富んだラインナップである。

 

『線は、僕を描く』砥上裕將

 

水墨画という「線」の芸術が、深い悲しみの中に生きる「僕」を救う。第59回メフィスト賞受賞作。 

 

5年にひとりぐらいの確率で出る、メフィスト賞出身のちゃんと優秀な作家、砥上裕將(読み方は知らない)。

水墨画というあまり馴染みのテーマだが、Amazonのレビューでは恐ろしいまでの高評価を叩き出している。

かなり期待できる作品である。唯一の不安点は、やはりメフィスト賞受賞者であることだろうか。私を始め、メフィスト賞に泣かされた読者はけっこう多いはずだ。

 

『店長がバカすぎて』早見和真

 

谷原京子(契約社員、時給998円)「マジ、辞めてやる!」でも、でも…本を愛する私たちの物語。

 

『イノセント・デイズ』 でスマッシュヒットと、いらん帯でいらん被害者を出した早見和真。新作は本屋を舞台にしたコメディミステリーである。

マジの書店員の投票によって決まる本屋大賞。本物に認められるだろうか。

 

『夏物語』川上未映子

 

大阪の下町に生まれ育ち、東京で小説家として生きる38歳の夏子には「自分の子どもに会いたい」という願いが芽生えつつあった。パートナーなしの出産の方法を探るうち、精子提供で生まれ、本当の父を捜す逢沢潤と出会い、心を寄せていく。いっぽう彼の恋人である善百合子は、出産は親たちの「身勝手な賭け」だと言い、子どもを願うことの残酷さを夏子に対して問いかける。この世界は、生まれてくるのに値するのだろうか―。 

 

こんなにどストレートに天才の作家も珍しい。世界から愛される川上未映子である。

本屋大賞のノミネートは、なんと『ヘヴン』以来の10年ぶり。

センス全開の川上節は大賞の座を射止めることができるか。

 

『熱源』川越宗一

 

故郷を奪われ、生き方を変えられた。それでもアイヌがアイヌとして生きているうちに、やりとげなければならないことがある。北海道のさらに北に浮かぶ島、樺太(サハリン)。人を拒むような極寒の地で、時代に翻弄されながら、それでも生きていくための「熱」を追い求める人々がいた。明治維新後、樺太のアイヌに何が起こっていたのか。見たことのない感情に心を揺り動かされる、圧巻の歴史小説。

 

直木賞受賞作なのに珍しくなかなか評判の良い『熱源』である。読書家界隈でも「凄い」という声がちらほら聞こえている。個人的には直木賞でけっこうヤラれているクチなので、半信半疑もいいところである。

直木賞とのダブル受賞なるか。

 

『ノースライト』横山秀夫

 

一級建築士の青瀬は、信濃追分へ車を走らせていた。望まれて設計した新築の家。施主の一家も、新しい自宅を前に、あんなに喜んでいたのに…。Y邸は無人だった。そこに越してきたはずの家族の姿はなく、電話機以外に家具もない。ただ一つ、浅間山を望むように置かれた「タウトの椅子」を除けば…。このY邸でいったい何が起きたのか?

 

年々遅筆に磨きがかかる横山秀夫の新作は、彼お得意の警察・記者ものを封印し、建築である。

「いつかは書きたかった」と本人が語る、家族をテーマに描かれた新境地。本屋大賞との食い合わせはいかに。

 

『むかしむかしあるところに、死体がありました。』青柳碧人

 

鬼退治。桃太郎って…えっ、そうなの?大きくなあれ。一寸法師が…ヤバすぎる!ここ掘れワンワン埋まっているのは…ええ!?昔ばなし×ミステリ。読めば必ず誰かに話したくなる、驚き連続の作品集!

 

これまた本屋大賞には非常に珍しいタイプの作品のノミネートである。なんか見間違えたのかと思った。ぱっと見、ただのおふざけ企画本だし。ヴィレヴァンとかで売ってそうな。

現時点での評価はと言えば、綺麗なまでにバラけている。世間で等しく好かれ嫌われ普通だと思われている作品である。

 

突飛な発想と確かな構成力で、異色の受賞作なるか。

 

『ムゲンのi』知念実希人

 

若き女医は不思議な出会いに導かれ、人智を超える奇病と事件に挑む―。夢幻の世界とそこに秘められた謎とは!?予測不可能な超大作ミステリー。

 

もう紹介の必要はまったくないほどに売れまくっている知念実希人である。

『仮面病棟』の酷評されっぷりを遠くから眺めていた私からすると、まさかここまで息の長い作家になるとは思わなんだ。先見の明がまったくないのです、よろしくどうぞ。

お得意の予測不可能もので、本屋大賞ノミネート常連からの脱却なるか。 

 

『medium霊媒探偵城塚翡翠』相沢沙呼

 

推理作家として難事件を解決してきた香月史郎は、心に傷を負った女性、城塚翡翠と出逢う。彼女は霊媒であり、死者の言葉を伝えることができる。しかし、そこに証拠能力はなく、香月は霊視と論理の力を組み合わせながら、事件に立ち向かわなくてはならない。一方、巷では姿なき連続殺人鬼が人々を脅かしていた。一切の証拠を残さない殺人鬼を追い詰めることができるとすれば、それは翡翠の力のみ。だが、殺人鬼の魔手は密かに彼女へと迫っていた―。

 

邦ミステリー界隈でとんでもない評価をされている作品である。推薦文を読んでいるだけで、ハードルが尋常じゃない上がり方をしてくるのだが、作者本人はきっと気が気じゃないだろう。ミステリーで期待させすぎるのは、よっぽどの傑作でもないかぎり禁じ手である。

その分、期待を超えてきたときの破壊力は抜群である。ガチガチのミステリーで大賞受賞に期待したい。

 

『ライオンのおやつ』小川糸

 

余命を告げられた雫は、残りの日々を瀬戸内の島のホスピスで過ごすことに決めた。そこでは毎週日曜日、入居者がもう一度食べたい思い出のおやつをリクエストできる「おやつの時間」があった―。毎日をもっと大切にしたくなる物語。

 

『ツバキ文具店』シリーズで過去に二度ノミネートしている小川糸。温かみのある作風で、気持ちのよい登場人物に癒やされるのが特徴である。

しかしそれがゆえに、インパクトに欠けてしまい、そこまで評価は得られていない。良くも悪くも「そこそこ」なのである。

今回はホスピスという「死」を間近に据えたテーマ。評価される小説の鉄板テーマだろう。

3度目の正直にして、大爆発なるか。

 

『流浪の月』凪良ゆう

 

あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。

 

本屋大賞初のBL作家である。うーん時代。

こちらも私の周りでは超絶賛されていて、来週あたりには読もうと予定していた作品である。

あらすじを読む限りでは、まったく内容が入ってこない。というか内容がない。でもとんでもないらしい。これはもう読むしかないやつだ。

 

新時代の書き手は、本屋大賞という大衆を相手にどこまで健闘できるだろうか。

 

~~~

 

以上のラインナップになっている。

色んな方面からの刺客だらけで、今回の本屋大賞は異種格闘技戦の様相を呈している。それだけに票は割れそうだし、ランキング予想も難しくなるだろう。

だがこちとら本屋大賞の第1回から親しんできた、正真正銘の古参である。古参らしく、決めつけと慣習と自分勝手な正義を振りかざして、最高のランキングを作り上げてやろうじゃないか。みんな付いてこい。 

 

予想ランキング発表

さあいよいよ予想ランキングの発表である。

 

…とその前にふたつだけ注意点を。

 

一応本気で予想はしているが、ここでのランキングは「面白さ」のランキングではなく、ノミネート作品を未読状態の私が「今までの本屋大賞の傾向からすると、こうなるよね」と考えたものである。純粋に良い作品が上位に入るわけではないことは、過去に『謎解きはディナーのあとで』が証明してくれている。

 

もう一点は、毎度のことなのだが、私はノミネート作品をまったく読んでいないことである。そう、読んでいないので完全なる私の妄想によって作品の順位を決めているのだ。だからこそ逆に余計な先入観や決めつけが排除されて、より純粋な先入観と決めつけを振りかざせるのである。

 

ということで、本当に長過ぎる前置きはここまでにしておいて、ランキングを発表していこう。

 

 

まずは…

 

第10位!

 

 

 

『熱源』

 

 

わーーパチパチパチパチ…。

 

恐れ多くも、直木賞受賞作を最低ランキングにさせてもらった。

素晴らしい作品なのは間違いないだろう。レビューや周囲の評価を見ても、かなり期待の持てる作品である。

しかしながらとても大事な点で、『熱源』を評価することができないのだ。

 

それは「賞の棲み分け」である。

 

直木賞というのは、プロの書き手が評価・選出する賞である。芥川と並んで、日本でも一番権威のある文学賞である。

その一方で本屋大賞は、書店員という本のプロではあるものの、あくまでも素人たちが純粋に「これが面白い!」と思った作品を多数決で選ぶ。

この違いは大きい。というか大きくなくてはならない。でなければ、賞としての意義がなくなってしまう。それぞれで、それぞれに評価される作品は違っているべきだと私は思うし、現実に過去の本屋大賞のノミネート作品を見ても、棲み分けはできている。(『コンビニ人間』とか)

ちなみに、恩田陸の『蜜蜂と遠雷』は直木賞と本屋大賞のダブル受賞を果たしているけれど、例外っていうか、他のノミネート作品をボコボコにしてしまうぐらい、面白さでぶん殴れる作品だった。

 

あと、本屋大賞には鉄則「投票する書店員のみんなに一番だと思われたかどうか」があるので、他で受賞している作品だと「わざわざ推す必要はないだろう」と思われてしまう可能性がでかい。

 

ということで、直木賞受賞作の『熱源』は10位で。

 

 

 

ではでは、続きまして

 

 

第9位は…

 

 

『夏物語』!!

 

 

うーん…これはですなぁ…ちょっと評価が難しいというか、分かりやすく推せる可能性が低いのではないか、という読みである。

というのも、川上未映子の作品を読んだことがある方なら分かってもらえると思うが、彼女の文章は非常に刺さる。深く刺さる

当然ながらこれは比喩の話である。

物理的な刃物であれば誰彼構わず刺せるが、文章表現において刺すためには、話者の技量・センスとともに、受け手の読解力・センスが必要になる。ここが川上未映子がベストセラー作家にいまいちなりきれない理由ではないかと思っている。←超失礼

 

例えば川上未映子の初小説のタイトル、

 

『わたくし率 イン 歯ー、または世界』

 

これを見たときに「あ、読んでみよう」と素直に思える人って、かなり限られてくるだろう。

 

例えば、本屋大賞に前回ノミネートした『ヘヴン』での、血の繋がらない母親との何とも言えない距離感や、主人公に対して繰り返される斜視への誹謗中傷描写。

私としては「すげえ作品」なのだが、人によっては「よく分からない」とか「不快」と評価されてもおかしくないだろうな、と思う。

 

この才能が評価されてほしいのは個人的にも、文壇的にも間違いないんだけど、大衆性が弱いかなと。

刺さるがゆえに、狭い所しか突けない。受け取る感性を持ってる人の数が絶対的に少ない。その証拠に、過去の本屋大賞で純文学っぽいのは、ことごとく下位に甘んじている。作品の善し悪しではなく、相性が悪いのだろう。

 

ということで、『夏物語』は9位で。

 

 

 

続いては…第8位!

 

 

『むかしむかしあるところに、死体がありました。』!

 

 

これまた難しい作品である。なんせ過去のノミネートで似たような作品が一切ないのである。

新顔をどうやって皆様が判断するか、皆目見当がつかない。

ただこのポップさは受けやすそうだし、実際売れてるっぽいし、金が絡めば高評価にもつながってもおかしくないと思う。それに日本人って、かけ合わせもの好きだし。

 

懸念点としては、新しいことをやるのは全然OKでみんなも歓迎していると思うんだけど、新しさと面白さは決してイコールではないことだ。チャレンジ精神を評価してくれたとしても、面白さで突き抜けていないと、書店員たちは「これぞ1位」とは推してくれない。新しさだけ、発想の面白さだけで獲れるほど、大賞は甘くないのである。

あと、大賞をあげるには軽すぎるかも。王様のブランチで紹介されるぐらいがちょうど良さそう。←意味深

 

ということで、新しさは評価できるものの、完成度はいまいちっぽいので『むかしむかしあるところに、死体がありました。』は8位で。

 

 

こうやって好き勝手に読んでもいない作品をボコボコにするのは、本好きとしてはかなり胸が痛むのが正直な所。でも書いてて結構楽しいのも正直な所で、本当に人間ってどうしようもないですね。(主語を大きくして問題をぼやけさせる手法)

 

 

では気を取り直して、次は第7位!

 

 

『ノースライト』!!!

 

 

実はノミネート作品の中で唯一既読だったりする。

毎度、予想記事を書くときはすべてを未読のフラットな状態で、好き勝手に妄想して順位を決めている。なので今回だけはちょっと残念だけどちゃんと評価できる。

ずばり7位。間違いない。

面白いのは間違いないんだけど、ちょっと長すぎるし、盛り上がりが足りない。

長かったとしてもドラマが濃厚であれば『クライマーズ・ハイ』みたいにぐいぐい読ませられちゃうんだけど、あれも御巣鷹山事故を絡めているからこそのリアリティとリーダビリティであって、今回の“建築”とか“家族”ではちょっと弱い。

勘違いしてほしくないけれど、面白いよ。横山秀夫だし。本人がずっと書きたいと思ってたテーマらしいし。色んな仕掛けも用意してあるし。

でもどうしても横山秀夫の過去作と比べてしまう自分がいて、そうなると評価しきれない

言っても仕方ないんだけど『64(ロクヨン)』で大賞を獲れなかったことが悔やまれる。あのときはかなりの僅差で百田尚樹の『海賊とよばれた男』に大賞を獲られてしまった。世間の空気も味方にしてたし、あのときの百田は本当に無敵状態だった。

投票する書店員の方々も、きっと横山秀夫の過去作は読んでいるだろうから、私と同じように「確かに良いんだけど、〇〇の方が好きだったな」というふうに低めの評価をしてしまうことだろう。

私は横山秀夫の大ファンなので、彼の作品を下位に据えるのは心苦しいのだが、事実なので仕方ないだろう。

 

ということで、苦渋の決断で『ノースライト』は第7位で。

 

 

 

さて次は前半戦最後の作品、第6位である。 

 

 

 

『ライオンのおやつ』!!!

 

 

 

ホスピスというかなり本屋大賞で受けそうなテーマで書かれている。その点を最大限に加味してこの順位である。(『神様のカルテ』とかぶるよね)

小川糸の作品をそこまで読み込んでいるわけではないのだが、なんとなくの印象で語らせてもらうと、柔らかく、安心できるような作風だと認識している。風変わりな登場人物が多く出てくるけれど、どの人も不器用だけど素直で良い人。そんな感じである。

優しい空気感に癒やされる。小川糸作品に求めるのはそこだろう。

で、それだと本屋大賞ではあまり上位に食い込めないのである。棘が足りない作品は読んだ人の印象にも強く残らない。癒やしは柔らかな浄化かもしれないが、カタルシスほどのインパクトは残さない。おやつにインパクトは求められない。

 

柔らかいといえば、2016年の本屋大賞を獲った『羊と鋼の森』も柔らかい作品だった。激しいドラマやスピーディーな展開があるわけではない。でも大賞を獲った。それはあの作品がなによりも「表現が鋭かった」からである。

音を文章で表現して、実際に音を聴く以上の体験を読者にさせる。並大抵の技ではない。読めば分かるが、音が鳴るシーンでは鳥肌がゾクゾク立つ。

 

私が読んだ限りでは、小川糸作品にそこまでの鋭さは見受けられない。もっとふかふかのタオルみたいな読み味である。繰り返すが、これは作品の上下を決めるものではなく、特色の話である。

愛される作品だろうけれど、多人数から熱烈に支持されるかというと疑問なのである。

 

あと、柔らかすぎて気持ち悪い、と思ってしまう人が多いのも小川糸作品の弱点で、良い人ばかりすぎても拒否反応を示されちゃったりするから難しいものである。

 

ということで、『ライオンのおやつ』は6位で。

 

 

 

さあそろそろこの記事も1万字近い文量になってきているのだが、皆様付いてきておられるだろうか。

お互いに気合を入れ直して、待望の後半戦へ向かおうじゃないか。

 

 

 

では、後半戦の一冊目である。

 

第5位!!!

 

 

ドゥルルル…

 

 

ばばん!

 

 

『店長がバカすぎて』

 

 

かなりのイチャモンになるのだけれど、コメディは本屋大賞でハネない。過去を振り返っても『謎解きはディナーのあとで』のみ。しかも超絶酷評。会社の部下が「買いましたよ」って嬉しそうに語った翌日に「10ページぐらいでつまんなくて読むの止めました…」って言ってたことがあった。『謎ディナ』の破壊力を目の当たりにした気分だった。

って、読んでもいない『謎ディナ』の話はいいとして…

 

『むかしむかしあるところに、死体がありました。』もそうなんだけど、本屋大賞をあげるにはちょっとタイトルが軽すぎる。冠と重さが釣り合わない感じ。

もちろん中身が相応なのであれば、本屋大賞のちょっと重めなイメージを刷新できるかもしれない。ポップなイメージが出れば、さらに間口も広がることだろうし。

 

まだこの人の著作は『イノセント・デイズ』しか読んでないけど、ドラマとか心理描写を書かせると強いから、あらすじに書いてあるとおり「笑って泣ける」がしっかりと成立しているのであれば、大賞でも全然おかしくないだろう。それくらい「笑って泣ける作品」ってのは成功例が少ないし、成功すれば名作になりえる。

だけど、今のところのレビューを見る限りでは、そこまで「笑って泣ける」の芯を食ってる印象は受けない。「悪くはないけれど」ぐらいのもんである。やっぱり難しいのだ。「笑って泣ける」は。

個人的には『イノセント・デイズ』であんまり良い思い出がないので、今作も疑っているんだけど、謳われてるとおりの作品なのであれば、超名作になるので、期待を込めてこの順位としておく。

 

ということで、『店長がバカすぎて』は5位である。

 

 

 

次は第4位である。惜しくもベストスリーを逃した作品は… 

 

 

 

『ムゲンのi』!!!!

 

 

知念実希人をまったく評価していない私だが、今作はかなり気合いを感じたのでこんな上位にしてやった。感謝してほしい。つまり、いつも気合いを感じていないということである。しかも今回感じた気合いも、ただ単にページ数が多いから、というだけの理由である。ダラダラと長いだけの作品の可能性もある。

 

去年の予想のときも書いたけれど、知念実希人はもうそろそろいいじゃないだろうか。薄味だけど、なんかそれっぽい感じの「驚愕小説!」みたい空気をバンバン出してるやつ。全著作に「あなたは必ず騙される!」って帯に書いてあるイメージだ。もういい加減騙されないだろう。

なんか4位にしておいて悪口しか書いていないので、上位にした理由を語ろう。

 

まず、私は否定しまくりだが、知念実希人はめっちゃ売れていて、人気が相当にあるという事実を物語っている。数字は最強だ。私がどれだけ悪辣な言葉を重ねようとも、売上の前では蚊の読経に等しい(そんな慣用句は存在しません)。

ファンが多くいれば、それだけ上位に食い込みやすくなる。当たり前の話だ。

 

さっきは批判のために書いたことだけれど、彼の作品は常にとっても「っぽい」のだ。名作っぽいし、騙されたっぽいし、感動作っぽい。

私からすると「こんなんでいいの?」と思うような作品に対して、ネットのレビューなどでは称賛の声が記されている。本当に読んだのか疑わしい。それか全然面白くなかったから、逆に皮肉として称賛しているのかもしれない。

でも、「っぽい」にヤラれる人が多いことも私はよく分かってる。雰囲気が出てれば、それだけで感情が付いていってしまう人は多い。その場のノリってやつだ。クラスにもいたよ、そういう奴。文化祭で絶対に普通に作業が終わるはずなのに無駄に学校に泊まったり、卒業式で友人と離れることを悲しんだりする奴。連絡取ればすぐに会えんだろ。どこの未開の地の住人だよ。

考えてみれば、私は学生時代からみんなの「ノリ」に乗り切れずに、教室の片隅でひたすら読書に耽っていた。教室で起こるすべてに興味がなさすぎて、持久走の日に革靴で登校してしまい、死ぬような思いをしながら革靴のまま10km走ったこともあった。まあこれは完全に私がアホなだけなのだが。

 

このように、知念実希人は私の中の何かどうしようもない部分を刺激してくるのだ。悪いのは私ではない。私は何もしていない。刺激してくる知念実希人が悪いのである。いつだってイジメはいじめる側が悪いものである。

 

ということで、売れ線であることと、大賞を獲ってほしくない私の願いを考慮し、『ムゲンのi』は4位で。もっと下位でも全然OKである。

 

ああそうだ、あと、これだけ売れまくっていると、逆に書店員の方々が「自分が推さなくても誰かが推すだろう」というような伊坂幸太郎現象が起こるので、思ったよりも得票しない可能性がでかい。

 

 

 

さあ、ひどすぎる文章もそろそろ佳境へと向かっている。

ここからは堂々たるベストスリーの発表である。

 

 

では第3位!

 

 

どどんっ!!

 

 

 

『medium霊媒探偵城塚翡翠』

 

 

わ~~~パチパチパチ…

 

 

毎度予想記事を書くたびに思うのだが、ベストスリーぐらいになってくると、もうどれが大賞でもおかしくない。あらすじを見ても、紹介文を見ても、他の方のレビューを見ても「間違いねえ」っていう作品ばかりだ。

で、こちらの『medium霊媒探偵城塚翡翠』も相当に期待できそうな作品である。豪華すぎる推薦文の羅列は、ときによっては派手な地雷になるのだが、この感じはけっこう本気で称賛されてるっぽい。

だから作品の実力においては大賞でも全然OKな作品…なんだけど、どうしても不利な点が。

というのも、本屋大賞は固有名詞の入ってる作品を嫌う傾向にあるのだ。これがゆえに『medium霊媒探偵城塚翡翠』は絶対に大賞にはならない。断言できる。

大体にして、タイトルの言葉の意味がほとんど分からない。字面だけみたら「Nittaku国際卓球連盟公認球」と変わらないレベル。とっても硬式ボールだ。

固有名詞を使うと、作品の世界観を伝える上ではとても役立つんだけど、どうしても内輪感が出てしまって、興味のない人からすると「向こうでなんかやってる」という印象を受ける。クラスの友人たちが楽しそうにすればするほど、冷めてしまう私と同じである。

 

ただし、昨年の『屍人荘の殺人』がハネたように、強力な推理小説というのは必ず評価されるので、そこを期待してこの順位である。推理小説というマイナーで狭い世界だからこそ、濃いものはウケる。愛される。同業者や有識者からのコメントもいい方向に作用するだろう。

ここ最近は、知念実希人を始めとして、薄味の推理小説ばかりなので、ここいらで特濃の一発を願いたいものである。

 

ということで、『medium霊媒探偵城塚翡翠』は堂々の第3位である。

 

 

さあ、あまりにも長すぎるこの記事もそろそろ終わりである。次の第2位を発表すれば、実質大賞も確定だ。

では行ってみよう。運命の第2位は…!

 

ばばんっ!

 

 

『線は、僕を描く』!!!!

 

 

いえー…パチパチパチ…

 

 

ということで、ほとんど意味ないけど、ついでに大賞も発表しておこう。

 

 

読書中毒ブロガーが本気で予想する、2020年本屋大賞の第1位は…

 

 

『流浪の月』!!!!!

 

いやー、おめでとうございます。 

 

ここはあえてふたつとも同時に、選出理由を語ろう。

 

まず、この2作品に関しては、今回のノミネート作品を見た瞬間に「どっちかだな」と思ったぐらい鉄板である。ノミネートされるだけあって、面白そうだったり、オリジナリティがあるのはもちろんなんだけど、さらに強いのが「弱点が見当たらない」ということ。去年の『そして、バトンは渡された』みたいに装丁がヘボいっていうこともない。


本屋大賞で上位に食い込むためには色んな要素が必要になるけれど、実は強みよりも弱みの方が順位に作用する比率が大きい。どうしても人は作品を比べるときに、良さよりも、悪さで比べた方が簡単に判断できる。減点方式の方が得意なのだ。みんな心当たりがあるでしょ?

だからここまでの作品たちを語る上ではどうしても「悪口」が避けられなかったのである。別に私だって書きたくて書いているわけではないのだ。いや、ほんとに。知念実希人のことは忘れてくれ。

現に過去の大賞受賞作を見返したときに、良さで圧倒している作品ってそんなに見当たらない。他の作品たちに弱点や、票を集めにくい理由(伊坂みたいに元々の期待値が高すぎるとか)があったからこそ、大賞として生き残れている。

 

なので、この2作品に順位を付けるのは、かなりの至難の業。頂上決戦もいいところである。

それでも決めなければならない。的確な予想を提供しなければならない。読書中毒ブロガーとして生まれ落ちた私の業である。

 

ということで、この2作品を分かつものを必死に探した。未読状態で決めるからこそ予想記事としての価値が高まるので(絶対違う)、周辺情報だけを頼りに、決めつけられるものがないかを求めた。

 

…その結果、本当に些細な一点において、『線は、僕を描く』の弱みを見つけることができた。

 

それは、

 

 

すでに売れちゃってる。

 

 

これである。

 

 

本屋大賞にノミネートされている時点で、ある程度は売れている。だけど、部数だけの問題じゃないのだ。

 

こういうことだ。

 

 

 

マンガ化である。 

 

 

 

本当に私の勝手な決めつけなのだが、本屋大賞で選ばれるべき作品は「見つけた」ものであってほしい。推す書店員さん方も絶対に「日の目を見させてあげたい」というような気持ちだと想像する。

だから、映画化だとかマンガ化だとかアニメ化だとかは、本屋大賞で注目された後であってほしい。「売れる前から知ってた」「推したのは私」「〇〇を育てたのはワイ」と胸を張って言いたいのだ。すでに売れてると、この魅惑のセリフたちが言えなくなってしまう。

 

この視点で見たときに、より『流浪の月』の強さが際立つ。

凪良ゆうの他作品のレビューを読むとよく分かるのだが、彼女のファンというのはとても濃い。愛が強い。過去に『羊と鋼の森』の宮下奈都がそうだったように、ファンの数ではなく濃度が順位に与える影響は大きい。

数はもちろん大事だ。「ファンの人がたくさんいるから~」という理由で作品を手に取る人は確かにいる。

しかし本好きというのは、そもそもマイナーを愛す変態だからこそ本好きなわけで、数のテンションに打ち負けるような常識性はとっくに失っている。むしろ大衆受けを狙えず、愚直に作品を積み上げたきた作家を評価したがる。そして、そんな作家に熱狂するファンたちの熱い熱い愛に興味を持つ。評価する。感化される。

今回もし『流浪の月』が大賞を獲ろうものなら、書店で「本屋大賞受賞!」のPOPと共に平積みされている様を見て、店頭で涙する最高に気持ち悪いファンが続出することだろう。でも、その涙は最高に本物の愛だ。気持ち悪いけどね。

 

でも、本当に『線は、僕を描く』の弱点はこれぐらいだ。他の点では間違いなく大賞レベル。

そもそも“水墨画”っていうテーマがいい。かゆいところに手が届いてる。

この辺りの「知ってるけど、深くは知らないし、深さを期待できる」というテーマは強い。

フィクションってのはつまるところ、知らない世界を他人の目を通して追体験することだ。そしてその深度は深ければ深いほどありがたい。文字を読むだけで、その世界の深部に触れられるなんて、本読みの醍醐味だ。そういう人種なんすよ、本読みって。

タイトルからして期待できる。深さを予感させてくれる。『僕は、線を描く』ではなく、『線は、僕を描く』だからね。完全にあるでしょ。深み。やっぱり「正射必中」みたいなのにこそ興奮するもんでしょ。

 

こうやって書いていると、逆に『流浪の月』がなんでこんなに大賞にふさわしく感じるのか、分からなくなってくる。『線は、僕を描く』の方がよっぽど面白さが明確だ。『流浪の月』の期待値はあまりにもぼんやりしすぎである。あらすじからは、ほとんど何も読み取れない。

でも大賞のニオイがプンプンする。

あえて言うなら佇まいだろうか。「特別な本」という空気をまとってる。単純に大賞が似合いすぎる。…ってこんなんじゃ全然納得してもらえんか。でもそうとしか言いようがないだから仕方ない。私の感性と語彙の限界である。というか、未読状態でこれだけ書いてんだから十分すぎるだろ。

 

 

ということで、第2位は『線は、僕を描く』で、めでたく2020年の大賞は『流浪の月』で決まりである。

 

 

 

 

 

いやー、今回も書き上げるのに相当時間がかかった。どれだけ需要があるのか知らんが、変態のもとに届いてほしいと願っている。

 

本家の発表は2020年4月7日だ。どれだけ的中してるか今から楽しみである。もちろん、どれだけ外れるかも、同じくらい楽しみである。

 

以上。長々とお付き合いいただき感謝。