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Twitterの叡智集合。#名刺代わりの小説10選を1300人分まとめてみた

【2021年版】 #名刺代わりの小説10選 を集計してみた!!【後編】

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それではランキングの後編である。引き続きお楽しみあれ。
 

 

36位      (30票)

 

ここからほとんど1、2作品ずつしかランクインしていません。

正真正銘の「名刺本」選抜作品たちである。

 

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『春琴抄』

 


私は未読なので詳しい説明や解説はできないので、とっつきやすい話題だけ。

谷崎潤一郎を生み出した耽美主義の傑作。限界まで、というか限界を超えてまで句読点や改行を廃した独特の記述方法で有名な作品である。ネット文章のまるで逆である。

 

 

35位      (31票)

 

 

『アルジャーノンに花束を』

 

 

 

『海辺のカフカ』

 

 

世界的な評価を受けている2作品がランクイン。

『アルジャーノン』に関しては、私は中学で出会ったのだが、あの衝撃ったらね。知能指数の変化に文体を合わせるっていう仕掛けに感動した。だから正直、内容はあんまり興味なかった。

思えばこの作品のせいで「小説にドラマはいらん。トリックとか仕掛けのみが小説の価値」という極端な価値観に傾倒したのだろう。しばらくただの物語を読むと「は?なにこれ。なんの仕掛けもねえの?」と思うようになってしまった。

多感な時期にどんな作品と出会うかによって、後々の性癖が方向づけられるわけだ。さすがに最近はその呪いも解けてきたけど。

 

『海辺のカフカ』もこれまたちょうどいい多感な時期に読んでて、かなり自己陶酔しながら作品世界に入り込んでいた。

…のだが、「私は村上春樹を読んでいる」という状態に酔ってただけで、作品自体は訳分かってなかった。今となってはファッションでしかなかったと自己分析している。

とはいえ、村上春樹をファッションにできる幼さというのも貴重な時間だ。全部ひっくるめて、いい思い出である。

 

 

34位      (32票)

 

 

『阪急電車』

 

 

 

 

 

『精霊の守り人』 

 

 

ちゃんとカウントしていないけど、このランキングに入ってる作品数でいえば、たぶん有川浩と辻村深月がトップに並んでいるだろう。その次が伊坂か。

特に稀代のストーリーテラー有川浩は、あの作風の広さがあっても、全般的に人気を得ているのは、素晴らしい能力だと思う。筆が器用だよね、あの方。

 

『精霊の守り人』に関しては、 『守り人シリーズ』や他の巻(特に闇の守り人)へと票がバラけてしまったので、実際の人気よりも低めの順位になってしまっている。

私は30を過ぎてから読んだのだが、圧倒的なまでに作り込まれた設定のおかげで、久しぶりにファンタジーに没頭する感覚を得られた(超能力的なものが出てくると、若干引くようになった。つまんねえ大人になってしまったものだ)。

もし子供の頃に出会ってたら、忘れられない出会いになってただろうと想像する。

 

 

33位      (33票)

 

 

『金閣寺』 

 

 

33位には三島文学の最高傑作とも呼び声高い『金閣寺』のみがランクイン。

実際に起きた金閣寺放火事件を題材に、犯行に及んだ若い僧侶の内面が丁寧に、そして鋭い感性で描かれている。これやばいよね。真剣に読むと心が持ってかれるというか。

 

世界一美しい変態の独白である。

 

 

32位      (34票)

 

 

『52ヘルツのクジラたち』

 

 

 

『砂の女』

 

 

 

 

『殺戮にいたる病』

 

 

 

いやー、これは意外だわ。今年本屋大賞を受賞したばっかの『52ヘルツのクジラたち』はもっと上になると思ってた。やっぱりこういうランキングは、良くも悪くも旬なものは強いから。時間の洗礼を受ける前だからさ。

あとは、今年までの本屋大賞が強すぎた感もあるから、10選の中の本屋大賞枠がすでに埋まっていたのかもしれない。

 

あとは『殺戮にいたる病』ね。『ハサミ男』といい、みんな殺人鬼好きすぎ。私も大好きだけど。

ネタバレになるので、これ以上はノーコメントで。未読でグロ耐性がある方は、死ぬまでに読んでおいた方がいい。

 

『砂の女』に関しては未読だし、安部公房は『箱男』を読んで「あぁん?!」となったクチなので、語る言葉と資格を持たないのでノーコメントで。来世にでも読む。
 

 

31位      (35票)

 

 

『Another/綾辻行人』

 

 

 

 

『魍魎の匣』

 

 


綾辻行人が館シリーズと並行して挑戦し続けてきたのが、ミステリーとホラーの高次元での融合。たくさんの野心作を作り出してきた末に生まれたのが『Another』という天才児である。

『Another』発表前の時点ですでに数々の名声を手にしていた綾辻行人だったが、ダメ押しの一撃といった感じ。「まだこんな面白え作品を生み出せんのかよ?!」って発売当時は思ったものだ。しかもまだシリーズ出てるし。 いつまで活躍し続けるつもりなのか。『十角館の殺人』だけでも十分すぎるほどの功績があるだろうに。

 

京極堂シリーズには一貫して、怪しい雰囲気が漂っていて、奇妙な読み味が特徴である。

心置きなく身を任せられる、卓越したストーリーテリングによって、怪しさと奇妙さを効率よく摂取できる。人気が出るのもよく分かる。

でも私は京極堂シリーズをバカミスだと思ってるし、そんなところが愛すべき要素だと思っている。

結局は小説なんて嘘の話である。どこまで読者に嘘を信じ込ませられるか。フィクションの真価はそこで問われるものだと思うが、そういう意味では『魍魎の匣』は完璧だろう。

ちなみに『魍魎の匣』もタイトルも微妙な間違いが相当に多い作品だった。

ざっと見ただけでもこれだけあった。

 

魍魎の

魍魎の

魍魎の

魍魎の

 

みんな憑き物にやられすぎである。京極堂に祓ってもらったらどうだろうか。

 

 

30位      (36票)

 

 

『変身 / カフカ』

 

 

このランキングもついに折返し地点である。

30位に単独でランクインしたのは、カフカの超名作『変身』。

これもヤバい作品で、人間関係とか人間の本質みたいなものを作品の裏に膨大に感じさせられる。しかも主人公を突然、虫にしちゃうっていう異常設定。なにそれ。私だったら100回生まれ変わっても思いつかない自信あるわ。
 

 

29位      (37票)

 

29位だけ突出して多くて、5作品が同時ランクイン。

 

 

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『キッチン』

 

 

日本が世界に誇る天才作家、吉本ばななのデビュー作である。

尖すぎる感性と、相反するような柔らかい文章の組み合わせは、まさに唯一無二である。

個人的な話なのだが、こういう単語だけタイトルの作品って、The 小説という感じがして、めちゃくちゃかっこいい。語らない佇まいとでも言おうか。

 

Amazonレビューにあった、イタリア在住の日本人の方が、現地のイタリア人から「ばなな知らんの?! 日本人なのに?!」と言われたエピソードが好き。

 

 

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『そして、バトンは渡された』

 

 

これ、めっちゃ泣いたなぁ…。

おっさんになったせいで、涙腺がたるみまくってるのもあるだろうけど、心理描写が素晴らしすぎるよね。ありゃ泣くよ。

あと、言語化能力の高さね。私も不完全ながら父親をやっているので、子供がいる楽しさというのは分かってるんだけど、「親になると明日が2つになる」とかガンフィンガーしたくなるレベルでうまい表現だった。

本屋大賞受賞も納得の名作です。

 

 

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『そして誰もいなくなった』

 

 

ミステリー界の偉大なる蹂躙者、クリスティ御大のたぶんだけど最高傑作。

いやー、この順位でも十分でしょ。素晴らしすぎる。だって、1939年に発表された作品でしょ。未だにミステリー界の最高峰だからね。

あの読んでるときに「え、え? いいの? だって、それじゃ…」って焦る感じ。振り回されたわー。もう100年ぐらい人類を弄んでそう。

 

 

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『はてしない物語』

 

 

こちらも超天才。ミヒャエル・エンデの傑作である。映画好きには『ネバーエンディング・ストーリー』で知られていることだろう。でもエンデ的には納得の出来じゃなかったそうだけど。

変則的な作中作の体を取っていて、この本自体が作品の中にも出てきて主人公が読んでいるので、読者が作中に入り込みやすい仕掛けが施されている。そのため、異世界感を出すために装丁にめちゃくちゃこだわって豪華にしていたりするんだけど、現代の出版不況では許されない演出である。

 

 

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『罪と罰』

 

 

世界で一番有名な挫折本、『罪と罰』である。私は未読なのでどれだけキツイのか知らない。

こういう名作系って、読んでいないことに読書を趣味とする人間としては若干の罪悪感を覚えるんだけど、意外とプロの方でも読んでなかったりするので、そんなに気にしなくてもいいのかもしれない。

 

 

28位      (38票)

 

 

『本日は、お日柄もよく』

 


これはヤラれたなぁ…。

冒頭で繰り出されるスピーチは、言葉の持つ力と可能性の素晴らしさを、まざまざと見せつけられた。

私は読書ブロガーという特性上、作品とか文章を分析しちゃう癖があるんだけど、あの冒頭のスピーチに関しては、なんであんなに感動できちゃうのか全然分からなくて不思議なままである。あれは一読の価値がある。

 

ちなみに全然関係ないけど、99%同じタイトルのBL作品があるから、よろしくどうぞ。

 

 

27位      (39票)

 

 

 

『四畳半神話大系』

 

 

パラレルワールド×青春×汗×腐敗×カビ×陰湿=四畳半神話大系

この式で大体説明できると思う。アニメ化で人気に拍車がかかってるとは思うけど、それにしても皆さん、ほんとに好きですね。やっぱり小津かな。

これまで数多くの小説を読んできたけど、『四畳半~』の小津ほど最悪なキャラは見たことがない。なんだよ「運命の黒い糸」って。最高すぎるだろ。

 

 

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『斜陽』 

 

 

元々あった“斜陽”という言葉に新たな意味を加えるほどに影響力を持った作品。というか、元の斜陽の意味で使われることの方が少ないんじゃないか? 改めて凄まじいセンスである。

ちなみに集計してるときに、太宰のこと「大宰」と書いてる人が結構いて、それを繰り返し見てるうちに、私までどっちだか分からなくなってしまった。

名刺代わりに選出してるぐらいなんだから、作品名だけじゃなくて、作者名も大事にしてくれ。分かるけども。

 

 

26位      (40票)

 

 

『スロウハイツの神様』

 

 

辻村深月の最高傑作とも呼び声高い『スロウハイツ~』は40票の大台を獲得し、26位にランクイン。

彼女の作品は、好きになればなるほど、愛せば愛すほど、見返りが用意してあるから、素晴らしいと思う。そりゃみんな好きになるわ。

 

だいぶその印象はなくなってるけど、メフィスト賞出身なんだよなぁ。なのにメジャーな売れ方をしてるから、ある意味じゃ異端の作家だと思う。闇から這い上がってきた天使って感じ。

 

あと、みんなが気になっているだろう“あの作品”の順位は、楽しみにしてもらって構わない。

 

 

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『姑獲鳥の夏』

 

 

『姑獲鳥』が40票も獲得するとは…凄いな。

京極夏彦の鮮烈なデビュー作だけど、オチも鮮烈すぎて、私なんか呆気にとられてしまったクチなんだけど、皆さんああいうのがお好きなんですか?

ちなみに『姑獲鳥』が京極作品のトップ。やっぱり初見のインパクトでみんなヤラれたのかな。

 

そういえば映画化してたけど、あれを実写化しようとしたその野心は素晴らしいと同時にとても無謀で好き。

 

 

25位      (41票)

 

 

『砂漠』 

 

 

「伊坂幸太郎の隠れた名作!」と書店やメディアで言われすぎて、隠れることが全くできなくなった名作。伊坂幸太郎という万能作家が、キャラ造形とドラマにその余りあるステータスを全振りした結果である。

数ある伊坂作品の中でも、めずらしい構成をしていて、一番好きと公言する方も多い。分かる。というか「一番好き」って言いたくなる作品だよね。私も大好きなんだけど、私には『陽気なギャング』という許嫁がいるから…。

 

 

24位      (42票)

 

 

『虐殺器官』

 

 

夭折した天才、伊藤計劃である。

死してなお根強い人気を見るに、彼の作風がどれだけ唯一無二だったかがよく分かる。本当に惜しい才能を無くしたものだ。

『虐殺器官』はよく会社で読んでたんだけど、タイトルを見た部下の子がどんな内容か聞いてきて、相手にするの面倒だったんだけど仕方ないから「人間には虐殺する器官があって~」と説明したんだけど、話し始めたときのあの顔ったら、みんなに見せてあげたかったな。

 

 

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『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』

 


さあ、またしても村上春樹である。

村上春樹作品はその特徴ゆえに、みんなの感想やレビューがほかの作家に比べて、バラエティに富んでいて、とても面白い。高評価も低評価もどちらも面白いから、ぜひ確認してほしい。

傾向を見てると低評価の方には、敷居の低すぎるセックス描写や、分かりやすくないストーリーに不快感を示す人が多いようである。

高評価の方は、あの酩酊感にも似た読み心地など、意味とかよりも空気感をそのまんま受け入れているような印象がある。どちらにしろ、いい読書体験だと思う。ハズレ本に当たるのもまた読書人生の貴重な1ページである。

 

ちなみに、『世界の終わりと~』は村上春樹作品の中では2位。1位は…後ほど判明するのでお楽しみに。まあ、予想通りのあれで決まりですよね。 

 

 

23位      (43票)

 

 

『風が強く吹いている』

 


普段からマラソンをしている私からすると、この作品のジャンルはファンタジーの部類に入ってしまうのだが、皆さんが絶賛している通り、ど真ん中んして超爽快な青春小説であることは完全に同意。

何よりも、走っているときの描写が素晴らしい。読んでいて、体が沸き立つような、心が弾んでくるような、いますぐ走り出さずにはいられない気分になってくる。

読ませるだけじゃなく、体までハックしてくる。とんでもない作品である。

 

 

22位      (44票)

  

 

『夜のピクニック』 

 

 

私はどうも恩田陸と相性が悪いようで、『夜のピクニック』もそこまで「ずどんっ!」という感じではなかった。いや、作品的にそんなに興奮するような面白さじゃないのは分かっているのだが、心のど真ん中を掴まれるような感覚はなかった。いい作品だとは思うけどね。

しかしこうやってランキングとして紹介する以上、作品の美点を皆様に伝えたい。なので、色んなサイトでレビューを確認したのだが、これが不思議なぐらい、皆さんの感想がシンプル。または、あらすじ紹介に終始しているパターンもあった。

思うにこれは、シンプルに作品が良すぎて、みんな「言葉にならない」のではないだろうか。食らった人ほど。

上手いところを突いた作品というのは、形容しがたい魅力を発揮するものだ。『夜のピクニック』で語られるドラマは、まさにそんな「言葉にならない感情」を強く、揺さぶったのだろう。

 

 

21位      (46票)

 

 

『ハーモニー』 

 

 

またしても伊藤計劃…! 『ハーモニー』派の方が多いとは体感であったけど、やっぱりランキング結果も同様だった。

伊藤計劃単独で見れば、彼が最後まで書いた遺作となる。ここで彼にハマっても、次の作品が読めない悲しみに暮れるはず。

残された我々にできることは、伊藤計劃という比類ない才能が生み出した想像の羽に乗り、見たこともない世界を旅することだけである。日本SFの最高峰はここにある。

 

 

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さあさあ、長々と綴りすぎているこのランキングも残すところ、ベスト20となった。皆さん、いい加減疲れてきただろうか。私はむしろ盛り上がってきてるぐらいだ。やっぱり小説の話って楽しい!

 

ということで、永遠に小説について楽しめる変態さんだけ付いてきてほしい。

 

大波乱のベスト20開幕である。

 

 

20位      (49票)

 

 

 

 

『銀河鉄道の夜』

 

 

おぉっっとぉ?!! これは番狂わせ。なんと前回4位にランクインした『銀鉄』がまさかの20位。関係者になんか不祥事でもあったのか。

 

私は未読なのだが、信頼している読書仲間に訊いてみたところ「自分は好き」という答えだった。それ完全に人を選ぶ作品のときに言うやつじゃん。

とはいえ毎年全小学生を惑わし続けている、天才宮沢賢治の代表作である。味わおうと思えば思うほど、それに応えてくれる作品の強度があるからこそ、世代を超えていつまでも愛されているのだろう。

未読だけど、タイトルの素晴らしさは最強のレベルだと認めています。

 

 

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『獣の奏者』 

 

 

私が常々、「ハリー・ポッターよりも面白い」と豪語している傑作である。まあ、ハリー・ポッターはほぼ未読だから、そんなこと言う資格は私にないんだけどさ。

セブンでレジ横に並んでたのが初見だったんだけど、すぐ分かったよね。「これ絶対のやつじゃん」って。だが当時の私はセブンで売ってる小説は、ろくでもないものばかりだと決めつけていたので(KAGEROUの悪口は止めるんだ)、『獣の奏者』も結局スルーしてしまった思い出がある。

数年後に読んでみたら、どちゃくそ面白かったから、やっぱり決めつけるのは良くないな。

 

『獣の奏者』は、魅力を改めて語る必要がないぐらい評価されているから、ひとつだけ。主人公の成長のみならず、加齢から逃げずに書いているところが、とても素晴らしいと思う。

 

 

19位      (50票)

 

 

 

『コンビニ人間』

 

 

出ました、50票の大台。

日本で一番「普通」という概念をぶっ壊せる作家、村田沙耶香を世に知らしめた作品である。

芥川賞を受賞して、さらにここまで広く受け入れられている作品って、ちょっと他には思い付かない。売れる天才って、稀有すぎる。

 

評価レビューを見てると、当然ながら賛否両論なんだけど、私は否の意見を見るのが大好きである。理解できなかったり、合わなかったりする作品に対して、言葉の限りを尽くしている姿に、とてもドラマを感じる。被害者を生み出したという、それも込みで作品の面白さだと思う。

 

 

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『モモ』 

 

 

天才ミヒャエル・エンデの正真正銘の最高傑作。

児童文学の皮を被ってるけど、実態は心を抉ってくる凶悪な作品である。『モモ』の何が凄いって、その普遍性だろう。たぶん来世紀になっても、人類も心も抉り続けてると思う。

シンプルがゆえに逃れようのないメッセージ。この破壊力は、ぜひとも死ぬまでに体験してほしい。

 

 

18位      (52票)

 

 

 

『カラフル』

 

 

私の10選にも入っている『カラフル』である。これを読んで、森絵都が天才だって確信したよね。超好き。

一応、児童文学に括られる作品なんだけど、テーマとかストーリーを考えると、むしろ大人の方が引いちゃうし、食らっちゃう内容かもしれない。

 

このシンプルなタイトルに込められた深い深い意味に気付いたとき、マジで震えたよね。作家ってバケモンだなって。

 

 

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『新世界より』

 


小説の才能にステータスを全振りした結果、毛根が死に絶えた最高の作家、貴志祐介の最高傑作。去年と同じ18位にランクイン。

こちらも私の10選に入ってる作品で、エンタメ系の面白さでこれに勝るものは、今のところ見つかっていない。いい勝負したのが『マリアビートル』と『ジェノサイド』 かなぁ。

 

そういえば、噂で聞いたけど『旧世界より』ってのを構想中らしいじゃん?!いつよ、いつ?倍額でも買うけど!!

 

 

17位      (53票)

 

 

 

『君の膵臓をたべたい』

 

 

いやー、『膵臓』もずっと強い。感動作の新たなスタンダードに定着した感がある。

最初は猟奇的なタイトルで餌撒きしてるタイプの作品だと決めつけてたけど、全然ちゃうかった。完全にモノホン。

この圧倒的な表現力にヤラれる読書家が続出中である。住野よるを体感せよ。

 

どこかのレビューで見たけど、実写映画化に対して、「ストーリーを追うだけなら可能だけど、この作品の“良さ”を伝えるという意味では、映像化は無理」というのは至言だと思う。

 

 

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『白夜行』 

 

 

去年は24位と微妙なラインにいた『白夜行』が一気に順位を上げて、17位にランクイン。無冠の作品だけど、ずっと売れてんの凄すぎ。

読むと分かるけど、爆発的な売れ方とか人気っぷりとは、全然似つかわしくない落ち着いた筆致のストーリーで、地味と言ってもいいぐらい。

だけど、その独特の読み味が異常に心地よくて、ずっと読んでいたくなるという不思議な魅力を持っている。

派手な展開があるわけでも、意外な真相が用意されてるわけでもない。だけど淡い愉しさをじわじわと供給してくれて、まさに白夜のようである。

 

 

16位      (54票)

 

 

『西の魔女が死んだ』

 

 

そうか、感動作といえば『西の魔女』があったか…。短編なのにすんごい人気で、びっくりである。

登校拒否を克服するため、繰り返される孫と魔女の心温まる交流。ただそれだけの話なんだけど、万人の琴線を震えさせる力がある。

図書館で借りたものの気に入りすぎて購入、というパターンをよく見かけてたから不思議に思ってたんだけど、国語の教科書に載ってるのか。なるほど。

 

心の浄化をしたい方にオススメである。

 

 

15位      (55票)

 

 

 

『博士の愛した数式』

 

 

本屋大賞の記念すべき第一回大賞受賞作である。去年の順位が16位だったから、完全にこの辺りの地位を確立してますな。

前回のときも書いたけど、『博士の~』の最大の魅力は、少年と博士のやり取りにふんだんに含まれている、理系エッセンスである。完全に文系(というかアホ)の私は、こういうのにとっても弱い。世界の新しい見方が得られるようで、なんか頭が良くなったような気になってしまう。幸せである。

 

見ようによっては、とても悲しい話だし、幸福な話でもある。色んな感情を受け止めてくれる名作だと思う。

 

 

14位      (57票)

 

 

『容疑者Xの献身』

 


来ました、『X』。

並み居る東野圭吾作品の中でも1位となりました。パチパチ…。

個人的には『白夜行』とか『秘密』の方が傑作だと思ってるし、もっと言えば『仮面山荘殺人事件』が一番なんだけど、『X』が一番人気なのも別に不思議だとは思わない。それだけの力を持った作品である。

 

直木賞も、本格ミステリベストも、このミスも獲って無双状態になってる一方で、「これは本格なのか」とか、トリックに関わるある要素によって、この作品を感動作と謳うのはおかしいなど、外野の論争が激しい。

しかし当の東野圭吾は「読み手が決めること」と一切関わろうとしない所が一番好き。

 

 

13位      (58票)

 

 

『舟を編む』

 


こちらも本屋大賞受賞作。

小説好きということは、そもそも言葉が好きなわけで、となると辞書を編纂されている方には、当然敬意を払いたくなりますよね? ね?!!

 

それにしても、三浦しをんときたら、こんなポップでみんなから愛される作品を書く一方で『』みたいな邪悪な作品も、さらっとこしらえちゃうんだから。脳ミソどうなっとんじゃ。

 

 

12位      (60票)

 

 

 

『すべてがFになる』 

 

 

森博嗣のデビュー作にして、第1回メフィスト賞受賞作。

クオリティ的にそこまで飛び抜けてる作品だとは思わないんだけど、やっぱり初見のインパクトは凄まじかったかねぇ。理系のエッセンスをここまでたっぷり入れてきた作品って、それまでなかったから。

教員時代に教え子から「読みましたよ」って言われたときに、「きみ、理系なのにミステリー小説なんか読んでるの?」と言い返したエピソードが好き。

 

 

11位      (63票)

 

 

『ハリー・ポッター』 

 

 

説明不要の世界的ベストセラーは、惜しくも1票差でベスト10入りならず。

『ハリー・ポッター』は出版までに12の会社から断られていて、出版の決め手となったのは、編集者の8歳の娘だったという話は有名である。この記事を書いている現時点で、世界で4億部を売り上げているというのだから、断った編集者はさぞ悔しい思いをしているだろう。

結局、編集者は作品を評価するプロではあるけれど、児童文学を本当に評価できるのは子供だったわけだ。とても示唆的なエピソードである。

 

 

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さあさあ、この膨大すぎる記事も佳境を迎えている。情報量が多すぎたから、文字慣れしている皆さんでもさすがに疲れてきているかもしれない。でも大丈夫だ、私の方が疲労困憊しているから。←なんの勝負?

ベスト10には全部で12作品がランクインしている。まで出てきないあれやこれや、ぜひ予想しながら楽しんでもらいたい。

 

 

10位      (64票)

 

 

『ノルウェイの森』 

 

 

やっぱり世界の春樹は強い。ノーベル文学賞候補で盛り上がるのは、もう風物詩になっている。

彼の作風的に、雰囲気で持っていくところがあるから、音楽のイメージを付与されると、より愉しさが強化されるのだろう。ビートルズを使ったことで、読み手のイメージが喚起しやすかったのかもしれない。

 

それにしても、この作品でバカ売れてしたら「逆に孤独になった」というコメントをする辺り、本当に天才性を持った方だな、という感じがある。

 

 

9位        (68票)

 

 

『流浪の月』

 


おぉ! これは凄い!

このブログでも過去に大絶賛している『流浪の月』が堂々の第9位である。何の影響力もないけど、「私は前から認めてた」って言いたくなる。

大好きな作品だけど、実は分かりやすい物語ではないと評価している。これはつまり、人にその素晴らしさを伝えにくいという意味にもなる。Amazonの紹介文を読めば分かる。なんかポエムが書いてあるんだけど、そうなるしかない気持ちもすげえ分かる。

この作品の良さを上手く言語化できないけど、でも確かに「これはやべぇ!」と思ったわけで、そんな人たちが数多くいたからこその9位である。

 

 

8位        (69票)

 

 

『十二国記』

 


ここでカウントしているのは『十二国記』や『十二国記シリーズ』と書かれているもののみ。各巻に票が割れたにも関わらず、それでも8位という大健闘。凄いな。

繰り返すけれど未読のシリーズなので語る言葉を私は持たないのだけれど、レビューにあった「試練ファンタジー」という惹句が素晴らしかったので、興味津々である。

 

 

7位        (75票)

 

 

 

『告白 / 湊かなえ』

 

 

これまた性格の悪い作品がランクインしてしまった。しかも75票も入ってるし…。こんな邪悪作を名刺代わりにしてて、皆さん倫理観とか大丈夫なのでしょうか。いっそ痛快です。

ちなみに過去の本屋大賞で、感動ものに分類されないのは『謎解きは~』と『告白』のみ。もうこんな攻めた大賞受賞作は出てこないかもしれない。そういった意味でも規格外の名作である。

 

 

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『図書館戦争』

 


有川浩の超人気シリーズも第7位にランクイン。

表現規制の問題に踏み込みつつも、基本的にはなんも考えずに楽しめると評判の図書館シリーズ。

こういった荒唐無稽な作品に対して「設定が~」とか「軽すぎる」といった批判は、ディズニーランドに行って「ネズミが立ってる!」と怒るのと同義だと思っている。つまり、面白いからもっと言って欲しいという意味である。

 

 

6位        (79票)

 

 

『夜は短し歩けよ乙女』 

 

 

日本を代表する黒髪の乙女は堂々の第6位である。

最近のモリミーは創作にだいぶ苦労しているみたいだけど、この名作を産み落とせただけでも、作家としては十分すぎる功績だと思っている。

可愛らしさを凝縮したような作品で、心を射止められてしまう方が尽きないようである。でも『有頂天家族』も可愛いけどな! 

 

 

5位        (80票)

 

 

『人間失格』

 

 

前回は2位につけていた『人間失格』は5位。まあ十分すぎるでしょう。

別の作品でも書いたけど、色んな読み方に耐えられる作品ってのは名作だと思っているんだけど、『人間失格』はまさにそれ。私が読んだ当時は、ミステリー小説にハマっていて、『人間失格』のラストで出てくる喫茶店のママのセリフがあまりにも衝撃的で「これ、完全にミステリー小説じゃん!」と思っていた。

暗く、読み終えても何かが解決するような作品ではないけれど、読んだ人の心に確実に強烈な何かを残す作品である。

言葉で綴られているのに、言葉で表現しきれない感情が湧き出てくるって凄い。

 

 

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『星の王子さま』 

 

 

『人間失格』と同着の『星の王子さま』である。きっと優しい王子のことだから、素直に喜んでくれているだろう。

海外勢ではぶっちぎりの1位で、子供から大人、さらには人種の壁まで飲み込むその作品力は、他に類がない。

私の敬愛するある作家が「抽象化することが一番大事」だと語っていて、『星の王子さま』の愛され具合や、多くの称賛レビューを読むと、確かにと思う次第である。

 

 

4位        (86票)

 

 

『蜜蜂と遠雷』

 


去年の7位からぐっと順位を上げた『蜜蜂と遠雷』である。

私は最近読んだばかりなのだが、むしろこれからさらに人気が出てもおかしくない作品だと考えている。

というのも、最近のコンテンツに見られる「解説」という流行を取り入れている点がポイントなのだ。

最近は、ファスト映画や考察系動画など、作品を効率良く楽しむ方法に対して、かなりの需要がある。『蜜蜂と遠雷』では「ピアノコンクール」という素人には分かりにくいレベルの戦いが、読み手に分かりやすく(分かりやすいと思わせるように)表現されている。

ちょっと意地悪な言い方になってしまうが、『蜜蜂と遠雷』の感想で「音楽が聴こえる」というものが多いのも、作中における解説の効果によって、音楽を理解した気分になった感覚に対してのものだと思う。

 

…という感じでいくらでも感想を書き連ねてしまえるので、このぐらいで控えておきます。

それにしても久々にハマった作品である。改めて恩田陸はバケモン。

 

 

3位        (87票)

 

ラスト3作品!!

 

 

堂々の第3位は…

 

 

 

 

『こころ』!!!

 


これは番狂わせか?

去年はぶっちぎりの1位だったけど、今回は惜しくも3位。絶対に今年も1位だと確信してただけに、 私としてはかなり意外。この名作を超えるあと2つとは…?

 

 

 

2位        (93票)

 

残るはふたつ!!

 

93票も大量獲得した第2位は…

 

 

こいつだ!!!

 

 

『かがみの孤城』!!!!

 

 

 

去年の10位から大躍進。まだまだ人気かい。辻村深月、恐るべし。

最近の本屋大賞の「孤独に寄り添う」の流れを作った作品だと勝手に思っている。優しいが評価されるって、とっても良いと私は思うんだ。大体にして読書がそもそも孤独な行為だし。もちろん『告白』みたいなのが割り込んでくるのも痛快だけど。なにがもちろんなのかは知らんが。

この記事を書くにあたって集計した時期と、文庫化のタイミングが合ってたのも大きいかも。とはいえ、ここまで出てきた超強力作品たちを抑えての2位は、本当に素晴らしい。

来年もこのランキングはやるつもりなので、またその結果も楽しみにしたい。

 

 

1位        (102票)

 

遂に遂に、この長過ぎる記事も終わりである。作業量が多すぎて、私の精神力もそろそろ限界を迎えている。わはは。

 

ではでは、皆さんお待ちかねの第1位の発表だ。どうだろうか、予想が付いているだろうか。ちなみに私はまったくもって予想外の1位だった。

 

 

発表しよう。

 

 

2021年版、#名刺代わりの小説10選 ランキング…!!

 

 

第1位は…

 

 

これだっ!!!!

 

 

 

 

 

『十角館の殺人』!!!!

 

 

 

 

 


おめでとうございます…!!

Twitterで一番愛されている殺人事件が決まりました。 

こちらも私がいまさら紹介する必要がないほど知れ渡っている名作で、ミステリーの神が微笑んだとしか思えない唯一無二のトリックは、まさに殺人級である。これ思いついた瞬間って、どんな気分なんだろう。

 

 

いやー…それにしても…ねえ。

まさかの『十角館』ですよ。殺人が1位になるとは…。うん、確かに傑作だし、みんながこれを10選のひとつに入れたくなっちゃうのも分かるんだけどさ…ね?

 

得票数がなんと102票。唯一の3桁。2000人分集計してて、実際に10作品挙げてない人もいるから、20人に1人以上が入れてる計算になる。やべえな。

 

 

ということで、2021年「名刺代わりの小説10選ランキング」の第1位は『十角館の殺人』でした。おめでとうございます。これからも、人々の脳内で殺人を繰り広げ続けてください。

 

 

以上!! 

長大すぎる記事に最後までお付き合いいただいた皆様、適当に読み飛ばされた賢明な方々、ありがとうございました。そして最後まで書ききった私、偉いぞ。

 

ではでは。

 

 

こいつ頑張ったな、と思われた方。

支援してくださると、今後も読書家のために奴隷のように記事を書き続けられます。

記事へのコメント、リツイートも泣いて喜びます!なにとぞ!!

 

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おまけ

 

記事の冒頭でも書いたが、今回の集計で何が辛かったかって、皆さんの“誤タイトル”である。ひとつひとつ読み解いて集計するのが、どんだけ手間取ったか…。

 

散々苦しめられた“誤タイトル”だが、中には絶妙な味わいを醸し出しているものもあった。

長大な記事にお付きたいいただいたお礼として、この“誤タイトル集”をおまけとして共有したいと思う。小説好きの皆様なら、この妙味が理解できるものと信じる次第である。

 

 

 

では行ってみよう。

 

 

※繰り返すが、どれも全て #名刺代わりの小説10選 のタグ付けがされており、本人もそのつもりでTweetされていたものである。

 

 

……

 

 

まずはこれ。

 

 

 

 

『ぼくらのメジャースプーン』

 

 

 

宗田理かな?

 

 

 

 

~~~~

 

 

 

次。

 

 

 

 

『猫を抱いて像と泳ぐ』

 

 

 

過酷。荷物多すぎん?

 

 

 

 

 

~~~~

 

 

続きまして。

 

 

 

 

『岸団長殺し』

 

 

一気に庶民派になったな。

応援団長でしょうか。

 

 

 

 

 

~~~~

 

 

どんどん行こう。

 

 

 

 

『十画館の殺人』

 

 

 

この発想は無かった。

 

 

 

 

 

~~~~

 

 

お次。

 

 

 

 

『東野圭吾のなんか刑事のやつ』

 

 

 

大体そうだから。

 

 

~~~~

 

あともうちょい。

 

 

↓ 

 

 

『一瞬の風になれ/あさのあつこ』 

 

 

なんか分かるけどさ。

 

 

 

 

~~~~

 

 

 

次は「曖昧系」をまとめて行きます。どこが間違ってるか気付けるかな?

 

 

 

 

『すべてはFになる』

 

助詞って難しいよね。

 

 

 

『夏の花火と私の死体』

 

これはこれで。

 

 

 

『銀河鉄道の夜の』

 

…の、何?

 

 

 

『虚構船団』

『鏡の孤城』

『死屍荘の殺人』

 

存在しない言葉を使ったタイトルだと、こういうのが増える。まあこれは仕方ないかなと。

 

 

『昨夜のカレー、今朝のパン』

 

やる気ない朝食の話。

 

 

 

『蜂蜜と遠雷』

 

これ多すぎ。美味しくしないで。

 

 

 

『夜は短し歩けよ少女』

 

合ってるけども。

 

 

 

『夜のピックニック』

 

合ってるけども2。ごきげんな感じになるからやめて。

 

 

~~~~

 

そろそろ打ち止め。

 

 

 

 

『君の膵臓をたべた』

 

 

後日談。

 

 

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もういっちょ。

 

 

 

 

『君の膵臓がたべたい』

 

 

なんでそんな前向きなんだよ。

 

 

 

 

~~~~ 

 

最後。一番好きなやつ。

 

 

 

 

『黄桜の季節に君を想うということ』

 

 

アル中の話かな?

 

 

 

 

これにて、本当におしまいです。

最後までお読みいただきありがとうございました!!