俺だってヒーローになりてえよ

何が足りないかって、あれだよあれ。何が足りないか分かる能力。

【随時更新】小説中毒が厳選した最高に面白い小説1~100冊目
これまでの人生で買って良かったものまとめ
読書中毒者が選ぶ最高に面白いノンフィクション&エッセイ
Twitterの叡智集合。#名刺代わりの小説10選を1300人分まとめてみた

【月イチまとめ】2023年8月に見つけた面白い本

 

どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。お腹が減らない体質です。

毎月恒例の月イチまとめ記事である。

 

最近の私はつまらない。

いや、いい。心優しい皆さんはフォローしてくれるかもしれない。そんなに「ひろたつさんは、ずっと変わらず面白いですよ!」とか言わないでくれ。「才能の塊!!」とかもう大丈夫だから。

分かってる。私の劣化具合は一番近くで見ている私がよく分かっている。

 

原因はひとつだ。

 

怖い

 

これである。

何が怖いかって、自分の言葉がどんな影響を与えてしまうか分からないことだ。

ブログは相変わらず鳴かず飛ばずなのだが、Xの方では凄まじい勢いでフォロワーが増えてしまっている。もちろん私が望んだことなのだが…。

しかしこのネット社会、情報の伝わり方がハンパではない。特に誰かにとって悪い情報ほど駆け巡る。しかも尾ヒレ胸ビレ兜に鎧、装甲車まで付いてくるレベルで話が大きくなって駆け巡る。

これは厳しい。私のような悪口ぐらいでしか面白さを演出できない人間の場合、サービス精神満点で綴った言葉の数々が、とんでもないトラブルへと発展する可能性がある。

 

もっと言えば、今まで平気で書いてきたつまらなかった本の感想などは、一体どれだけの購買行動を阻止することになるだろうか。それは作家の方や、書店員、出版社に余計なダメージを追わせてしまわないだろうか。

 

繰り返しになるが、私は自分の低さや有り余る愚かさを棚にあげて、何かを貶したりおとしめたりすることで皆様の苦笑を勝ち取ってきた。

悪口も言えない。つまらなかった本を貶すこともできない。

これでは両手両足を縛られた状態でPerfumeのライブに放り込まれるようなものだ。もちろん演者側だ。何もできない。舞台の上でずっとつまらなく存在している。それが今の私だ。いや違うな。とりあえず放り込んだやつを捕まえろ。まず話はそこからだ。

 

これは私の思い過ごしでは決してなくて、実際長いことやり取りしてる方からも「大人しくなった」と言われているのである。

知人のよしみで見捨てないでくれているのだろうが、なんとなくでフォローしている人たちであれば、吹けば飛ぶような絆しか存在しない。あっという間に枯れ果てそうである。

もしそうなったら、その砂漠に私を埋めてほしい。枯らせてしまうぐらいなら、せめて私が栄養分になるから。誰か種を蒔いてくれ。

 

 

ということで、何かに怯え続けている私が2023年8月に見つけた面白い本たちである。

私はつまらないかもしれないが、この作品たちは間違いなく面白いので安心してほしい。

 

行ってみよう。

 

 

魔法使いの弟子たち

 

信頼できる読書仲間(性癖が似通ってるの意)が激推していた作品。

そもそも私が井上夢人の文体好きなので間違いないとは思っていたけど、期待どおり間違いなくて最高だった。

テンポよく繰り出される展開の数々と、鮮やかに読者を手玉に取る手腕はさすがの一言。

 

それにしても、陰々滅々とした作品が多い井上夢人が、まさかこんなパワフルな作品を上梓するとは…。

 

 

写真の世紀

 

 

大好物、ナショジオの登場である。

言葉が大好物な私は、結局のところ「一瞬を切り取る芸術や技」に魅了されるタチなのだろう。なので写真にも同じような感動を覚えてしまうのであーる。

 

それにしてもナショジオの提供してくれる感動ったらない。

 

わざわざ写真集を手にしなくとも、最近はSNSで玄人たちの本物の作品を簡単にお目にかかれる。本当にありがたい時代になったものだ。

だがそれでもナショジオの写真集を手にすると、その濃度と鮮度に思わずため息をついてしまう。そして心の中に新鮮な感情が沸き起こるのを感じる。ページを捲ったその瞬間に一度、そして解説を読んでもう二度三度。

 

膨大な時間を費やしまくった、その上澄みも上澄みをいただいているのだろう。こんなに贅沢な体験もそうそうない。

 

 

ハンチバック

 

読書家に中指を立てるような受賞の言葉で一躍有名になった芥川賞受賞作である。

耳障りのいい言葉だけに浸っていたかったら、読書なんて趣味にできない。むしろ思わぬ所からの急襲こそ醍醐味である。中指立てられるぐらい全然オッケー…と思っていた。

 

『ハンチバック』は本当に読書家の鼻っ柱をへし折ったと思う。

まさに私がそうだった。完全に天狗になっていた。「読書家は分かっている」という絶対に陥りたくなかった特別意識を知らんうちに持ってしまっていたのだ。それを突きつけられた。思い知らされた。

作者である彼女の体調を考えれば、執筆は苦しいものだっただろう。なんせ読書にさえ苦労するぐらいなのだから。

それだけにこの内容には執念を感じる。いや、もう怨念だろうか。それか怒り。

 

読めば思わず反応したくなる。そんな魂の籠もった怪作である。

 

 

もののふの国

 

初作家さん。

 

今年の初め頃から読み続けている『螺旋プロジェクト』の中の一冊。現在どれを読んだかは明言しないけど、とりあえず今まで読んできた中で一番好み。

螺旋プロジェクトを知らない方に簡単に説明すると、「伊坂幸太郎の無茶振りにみんなで応える」というものである。(正確な説明ができない人間なので、ちゃんとした内容が知りたい方はこちら

 

で、ここまで螺旋関連を何冊か読んできたけど、これが一番企画の趣旨に則ってるというか、めちゃくちゃ頑張ってて妙に感動してしまった。実際、巻末の作家たちの座談会でも「担当範囲が広すぎてきつかった」と語っていたし。

壮大な時間を見事にまとめあげて、さらにはテンポも良いし、最近歴史ものにハマってきてる私としては存分に楽しんでしまった。

むしろこれ一冊で螺旋プロジェクトの本懐を遂げてしまっている感もあるぐらい。いやー、お見事。

 

 

黄色い家

 

今月のベストはこれ。圧倒的

 

ちょうどAudibleの無料体験中だったからどうしようか悩んだのだけど、思い切ってAudibleで。(読んだら聴かないし、聴いたら絶対に読まないので、どっちが強烈な体験になるか賭けだった)

 

で、これが大正解。

 

親や運に見放された少女が金に執着してどんどんと身を落としていく物語で、後半からかなり激しさが加速してくる。

その加速っぷりや激しさが、モロにナレーションの女性の声で表現されるんだけど、これがヤバい。登場人物同士の口喧嘩などがすべてモノホンのテンションで聴かされるのだ。ただでさえ生々しい描写に定評がある作品なのに、本物の“声”を注ぎ込まれちまったら、そりゃ食らうよね。ダメージ増えるよね。致命傷だよね。で、瀕死でしょ。

シンプルなタイトルからはとても想像できない強烈な物語である。全然『黄色い地獄』とかでもOKだと思う。

 

それにしても、これだけ苛烈なナレーションを担当された方、仕事が終わったあとメンタル的に大丈夫だったのか心配になるわ…。

 

 

以上。来月もお楽しみに。