どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。
毎月恒例の月イチまとめ記事である。
先日、編集者の方と初めておしゃべりしたんだけど、出版業界の厳しさはかなりのものらしい。それでも読書の文化を残すためにも、必死に頑張ってるのが伝わってきた。
その一方で、完全なる消費者である私から見ると、めちゃくちゃ面白い本が読みきれないほどあるので問題なかったりするのは、嬉しいやら悲しいやら。
出版に限った話じゃないんだろうけど、好きな人のところには十分にコンテンツが供給されてて、でも興味ない人には広がっていかない。なぜなら興味ない人もまた、別のコンテンツで埋まっているからだ。
そうなるとどうやって興味を引くか合戦になっていく。うるさくて下品な戦いだ。
じゃあどうすればいいかの答えを私は持たない。
だけど私というn=1を参考にしてみると、やはり誰かが夢中になっていたり熱狂している姿がポイントになっているように思う。
純粋だったり、上品な熱意は感染しやすい。逆に下品な熱意には引く。あなたみたいになりたくないと思わされる。
その点、読書家は分かりやすく熱狂しない。
どんだけ純粋に興奮していても、下品に昂ぶっていても(実はほとんどがこちらだ)、はたから見るとじっと座って本に目を向けているだけの根暗でしかない。これでは感染しないだろう。嫌われもしないけれど。
ではどうすればいいのか、と考えてみると少し見えるものがある気がする。
まあそんな小難しいことを考えるのは、売り手の皆様に任せることとして、私は膨大なページの海で存分に溺れるとしよう。お客さんはラクだねー。
ということで、毎日ぶくぶくと文字情報に溺れている私が、2023年4月に見つけた面白い本たちの紹介である。
行ってみよう。
ストーンサークルの殺人
信頼できる読書仲間から激烈なオススメをされた作品。
ちょっと前からこちらの“ワシントン・ポーシリーズ”がめちゃくちゃ面白いってのは聞いてたんだけど、遂に身近な人間からも勧められるようになったかと手に取った。
ちなみにその友人に「どこがいいの?」と訊いたら、「とにかく面白い」という読書好きとは思えない絶望的な語彙力で説明してくれた。逆に伝わるものがある。
で、感想。
異議なし!!
おもしれー。しかもずっと読んでられる面白さ。本が分厚くで嬉しくなっちゃうタイプ。
シリーズものだからあと2冊もこれを楽しめると思うと、それだけでテンション上がりますわ。
いやー、ほんと最近のイギリスミステリーは優秀だわ。
本のエンドロール
今月のベストは満場一致でこれ。(会場にいるのは私のみ。念のため)
あなたは本の奥付を読み込んだことがあるだろうか。もしあったとしても、奥付を読んで涙したことはあるだろうか。
私はした。この作品で。こんなの初めてだ。
読み終えたときに、思わず深い溜め息をついちゃったんだけど、本当に充足の溜め息だったね。
こんなに心がいっぱいになる体験って、そうそうできない。
素晴らしい作品を生み出してくれた作者様に感謝。
そして、私の血肉となっている本を“造って”くれている出版業界の皆様、ありがとうございます。
最高だと噂には友人から聞いてたけど…まさかここまでとは…。
期待してたのの10倍は面白かったし、胸が熱くなった。
ほぼ確実に今年のベスト10冊に入るな。紙の本が好きな人なら、これは必読。
そして本屋大賞に引っかからなかったのは、なぜなんだぜ!!
気が遠くなる宇宙の話
バカの味方。それは宝島社。
細けえことは置いといて、とにかく分かりやすく噛み砕いして色んな知識を供給してくれる本というのは、無知の極みである私のような人間からすると知識のオアシスである。お陰様で今日もまともな大人のフリができています。本当にありがとうございます。
で、宇宙に関する本である。
宇宙の話は身近なようで、ちょっと足を踏み入れると途端に意味不明な概念や数字が登場してきて、「不思議だなー、ちょっと興味あるなー。それに綺麗だし」と安易に近づいた私みたいな人間を軽々と弾き飛ばしてくる。だって、10の100乗年後の未来だよ?小学生が適当に考えた数字じゃん。
これを読むと人生というか、人類という生き物が宇宙的時間軸で見るとどれだけ微量な存在かよく分かる。
地球環境が~とか言われてるけど、もっと長尺でみたら太陽風とかで地球環境は一変(生き物全滅)しちゃう運命が確定している。
恐くもあり、虚しくもあり、それでいてなんか達観して身軽になったような気分だ。
俺ではない炎上
燃えたー。
完全に炎上した。燃え尽きたよ。
主人公がとにかくめちゃくちゃに引きずり回されてた。私と似たような属性の主人公だったから、私も物語に市中引き回し食らった気分。ちなみに市中引き回しって、馬に引きずられる拷問だと思ってたけど違うらしい。
作者の朝倉秋成は今どきのテーマを華麗に調理するのが抜群に上手くて、その腕前は大ヒットした『六人の嘘つきな大学生』で十分知れ渡っていたと思うけど、今作でも存分に振る舞ってくれている。
読者の思考を誘導したり、先回りする手練具合が心地よくて、なんというか“こなれてる”空気がある。簡単に読者を手玉に取る感じが、伊坂幸太郎っぽいなと思ったり。
力業でぐいっと持っていくミステリーも好きなんだけど、こういう軽々と放り投げてくれる作品も大好物です。
われら闇より天を見る
おぉ…!! ダッチェスよ、君の人生に幸多からんことを…!!
母親を殺されてしまい孤児となった姉弟の話。なかなか凄い作品である。どっしりと食らってしまった。
子供が不幸になる話って、本当に私は無理なんだけど、こちらに関しては主人公のダッチェスが13才の少女ながらに自らを“アウトローの末裔”と称し、鋼鉄の強さを発揮し続けてくれるから読めた。
彼女の強さは最愛の弟を守るためだったけど、私も一緒に物語という暴力から守ってもらえたような気がする。
アメリカの貧困地域特有の空気感とかが分からなくて、ピンと来ないまま読んでいた部分もあったけど、分厚い物語をけっこうなスピードで読んでしまった。
戦うことで生き抜いてきた子供にとって、甘えることはひどく難しい。
世界は自分たちにとって都合よくできていないし、考慮してくれない。なのに失敗した代償はきっちり支払わせる。世界は残酷、というよりもタチの悪い金貸しみたいな側面があったりする。
そんな世界と戦う命の物語である。苦しみと戦いの先に待っているラストには…もう泣くしかないでしょ。
「2023年本屋大賞の翻訳小説部門1位」にも大納得な、心に深く刻まれる救いの物語である。
以上。来月もお楽しみに。