これは…いいぞ。
めくると危険
コピーライターがいい仕事をしましたね。この本の帯には『めくると危険』 とでかでか書いてありました。
この作品を象徴する刺激的なフレーズになっております。
まあ題名を見れば分かるのですが、この作品は徹底的に幸福な結末を排除した内容になっています。
もうね、これが効くのなんのって、読んでて頭がクラクラします。私は小さい子供がいるので、絵本の読み聞かせなんかをしているのですが、その後にこの『ハッピーエンドにさよならを』を読むと、振れ幅で余計に倫理観がぐらんぐらん揺さぶられます。
こんな不健全な物語を楽しんじゃう私、なんていけないのかしら。的な。
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ブラックな結末はお好きですか?
他人の不幸は蜜の味。
人間には自分とは関係ないところでの悲劇を楽しむ習性があります。当然、みなさんそれが健全でないことは重々承知でしょうが、それでも不幸を見たい欲求には嘘はつけないでしょう。
バッドエンドを備えた作品には、ハッピーエンドにはない甘美な味わいがあります。そして今作品の作者は稀代のトリックメイカー歌野晶午です。ただのバッドエンドで終わるわけがありません。そこには私たちを欺くための企みがそこかしこに張り巡らされています。それはそれは極上の味わいです。
全編不幸に彩られています
『ハッピーエンドにさよならを』は作者の性格の悪さがよく表れた短編集になっています。
どれもこれも幸せな結末などひとつもなし。すべてが不幸に満ち満ちています。ここまで徹底していると、不快感はまったく感じずにむしろ中毒性さえ感じます。ページをめくる手が止まらないってやつですね。
せっかく才能にあふれた作家が趣向を凝らして作り上げた虚構の小説世界です。倫理観と闘いながら、ぜひこの快感を味わっていただきたいと思います。
ハッピーエンドにさよならを (角川文庫) | ||||
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