俺だってヒーローになりてえよ

何が足りないかって、あれだよあれ。何が足りないか分かる能力。

全部同じだけど、無理やり馳星周のオススメ作品を教える

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呂布カルマではない。

 

どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。

 

 

小説家には2つのタイプがいる。

 

ひとつは、面白い物語で読者を魅了するタイプ。

 

もうひとつは、文章で読者を魅了するタイプ。

 

今回の記事の主役である馳星周は、完全に後者。独特の文章回しで読者を中毒患者に仕立て上げる作家だ。

なんてったって、彼の作品はどれもこれも同じ。「セックス・ドラッグ・暴力・犯罪・頭の中で警報」である。これらのワードを混ぜ合わせると馳星周作品ができあがる。

それくらい単純なのに、なぜか超面白い。超読んじゃう。めっちゃ分厚い作品でも、のめり込むように読み込んでしまう。しかもめっちゃ気持ちいい。キツめのホモシーンとか出てきても関係なしに読んじゃう。カイジだったら完全に言ってるよ。悪魔的文章力…っ‼って。

 

 

オススメ作品を紹介したい

 

で、そんな「どれもこれも同じような作品」な馳星周なのだが、全部同じなのであればわざわざオススメ作品なんぞ紹介しなくてもいいのではないか。そんな声が聞こえてくる気がする。間違いなくそれは私の内なる声である。もしかしたら皆さんも思っているかもしれない。でも声は聞こえない。だって私は今ひとりでこれを書いているから。聞こえてきたら怖い。

 

私はけっこう粘り強いタイプのファンなので、一回ファンになると駄作を放り込まれても「次は大丈夫かも」みたいな希望を捨てられなかったりする。ダメ男を庇っちゃう女みたいなファンなのである。または、ダメ作品だったとしても、「前よりもここの部分が成長してる」なんていう育て上手な上司みたいな受け取り方をするので、見捨てることがほとんどない。

なので彼の作品はけっこうちゃんと読み込んでいると自負する。

 

ということで、そんな「同じようにな話ばっか書いてる作家に甘々なファン」というどうしようもない私が責任を持って、馳星周のオススメ作品を教えたいと思う。

別に過保護なわけじゃなくて、マジでちゃんと面白い作品を教えたいだけなので、付き合ってもらえたら幸いだ。

 

では行ってみよう。あなたも馳星周の魅力に溺れるがいい。

 

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『不夜城』

 

 

アジア屈指の歓楽街・新宿歌舞伎町の中国黒社会を器用に生き抜く劉健一。だが、かつての相棒・呉富春が町に戻り、事態は変わった。生き残るために嘘と裏切りを重ねる人間たちの危険な物語。

 

 

言わずと知れた馳星周のデビュー作にして最高傑作

もうオススメする必要がないぐらいのオススメ作品である。このブログでも散々売れてる。本当にありがとうございます。

馳星周を楽しみたい方は絶対にこの作品から入るべきだと思うし、なんならこれさえ読めばあとはもう読まなくてもいいレベルである。

 

ただ、ちょっと気をつけてもらいたいのは、ホモ耐性がないとキツイ描写が若干あるので、そこだけ。 

 

超面白いし、「文体で酔う」という体験をするにはもっていこいの作品なんだけど、名作過ぎて、馳星周は完全にこれで呪いにかかったっぽい。同じような作品しか書けなくなる呪いに。

 

 

『雪月夜』 

 

 

根室でくすぶる幸司のもとへ、東京でやくざになった裕司が突然姿を現した。組から数億の金を掠めとり、ロシア人娼婦を連れて根室に消えた敬二を捜すのに手を貸せ、という。ガキの頃から憎み合いながら繋がっていた幸司と裕司。互いに激しい殺意を抱きつつも大金のため、二人は敬二の足取りを追う――。抒情と悲壮美に満ちた馳ノワールの新たな到達点。

 

馳星周の全作品の中で、一番主人公がドロッドロにヤラれる作品。

ピンチにピンチが累乗され、疲労も眠気も凄まじいけど、動かないと死ぬからボロくずみたいになってる。

物語で主人公が追い詰められるのはよく見かけるけれど、ここまでボロボロになっているのは見たことがない。ヤラれすぎて、読んでるこっちが疲れるぐらい。

でも主人公がピンチになって、追い詰められれば追い詰められるほど、読者は楽しめる不思議。

 

北海道を舞台にしているのだが、あまりにもしつこい方言の「はんかくさい」にウンザリするのが玉にキズである。

方言を連発しておけば地方の空気感が出ると思い込んでる馳星周は可愛い

 

 

『鎮魂歌 不夜城Ⅱ』

 

 

チャイナマフィア同士の銃撃戦から二年、新宿歌舞伎町の中国系裏社会を牛耳るのは、北京の雀虎、上海の朱宏、そして、銃撃事件で大金を手に入れた台湾の楊偉民だった。勢力図も安定したかと思われた矢先、雀虎の手下が狙撃され、街は再び不穏な空気に包まれた! 雀虎は日本人の刑事に犯人を探し出すよう命じるが、事態は思わぬ方向へと展開していく……。事件の混乱に乗じ、劉健一は生き残りを賭け、再び罠を仕掛けた! デビュー作『不夜城』の二年後を描いた、傑作ロマンノワール!

 

名作『不夜城』の続編にして、実質完結編である。本当は『不夜城Ⅲ』みたいなのがあるのだが、完全に黒歴史なのでそっとしておいてあげてほしい。いいか、絶対に手を出すなよ!

『不夜城』を読了した方であれば絶対に馳星周中毒に罹患していると思う。その欲求を存分に満たしてくれるのは、間違いなく『鎮魂歌』である。これを読まずには死ねないはずだ。

他の作品も似たような感じなのだが、やはり私たちには劉健一が必要である。

 

 

 

 

『生誕祭』

 

 

バブル真っ盛りの東京。ディスコでバイトをしている彰洋は、地上げの神様・波潟の愛人になった幼なじみの麻美と再会する。麻美から青年実業家・齋藤美千隆を紹介され、齋藤の下で、手段を選ばぬ土地の買上げや地上げをすることに。一時は大金を動かす快感に酔いしれるが、周囲の人間の欲がからみあい、次第に身動きが取れなくなっていく。一方麻美も、波潟と齋藤の双方から裏切られていることに気づき……。金に対する人間の果てない欲望が産み出す破滅を描く傑作長篇! 

 

この作品の特徴は、常に男臭い馳星周作品としては珍しく、なんと女性主人公(2人いるうちの片方)なこと。

最初にそれを知ったときは「馳星周に女性なんて書けるわけないじゃん」と勝手に決めつけていた大ファンの私。しかしその予想はいい意味で裏切られた。意外と行けるじゃないか。舐め腐ってゴメンね、馳。

 

バブル期の金がバサバサ動く感じと共に、バブル終焉に向けてのヒリヒリ感が最高のリーダビリティを生んでいる。上下巻でトータル1000ページを余裕で超えちゃうけど、長さは全然気にならない。というかいつまでも読んでいられるぐらい。

騙し騙されの汚さも、馳星周作品の中でも屈指である。

 

残酷だけど、ちょっと切ないラストがめっちゃ好き。

 

 

『漂流街』

 

 

反対する祖父を殴り倒して日本に出稼ぎに来た、日系ブラジル人マーリオ。しかし希望は裏切られた。低賃金で過酷な労働を強いる工場から抜け出し、今は風俗嬢の送迎運転手をやっている。ある日マーリオは、中国マフィアと関西やくざの取引の隙に、大金と覚醒剤をかすめ取ることに成功。怒りと絶望を道連れに、たった一人の闘い──逃避行がはじまった! 第1回大藪春彦賞受賞作品。 

 

映画化もされ(ボロクソに批判されてるけど)、大藪春彦賞を受賞した(大藪春彦あんま好きじゃないけど)名作である。

『不夜城シリーズ』もそうだけれど、馳星周のすれた作風とマイノリティ側の主人公というのは相性が非常に良い。社会的弱者がさらにどうしようもない状況に追い込まれて、それを読者が楽しむ。これが馳星周作品である。素晴らしくどうしようもにない。

 

独特の文体とスピード感で読者を酔わす馳星周だが、こちらの『漂流街』を書いているときが、その実力のピークだったように思う。一番やりすぎてるとも言える。そして一番救いがない作品。だがそれがいい。

 

『漂流街』みたいな作品を楽しんで読んでいると、まるで自分が悪人になったような気分になってしまうが、これこそが小説を楽しむ醍醐味だと思う。

他人の人生を生きるなんて、そうそうできる体験ではない。それが自分とは違う世界であればあるほど。

 

 

『ソウルメイト』 

 

 

人間は犬と言葉を交わせない。けれど、人は犬をよく理解し、犬も人をよく理解する。本当の家族以上に心を交わし合うことができるのだ。余命わずかだと知らされ、その最期の時間を大切に過ごす「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」、母の遺した犬を被災地福島まで捜しに行く「柴」など。じんわりと心に響く、犬と人間を巡る7つの物語。愛犬と生きる喜びも、失う哀しさも包み込む著者渾身の家族小説。 

 

最初っから「馳星周作品はぜんぶ同じ」と繰り返し書いてきたが、ここで訂正させてほしい。謝罪させてほしい。

こちらの『ソウルメイト』は完全に他の作品とは一線を画している。まったくの別ジャンルだ。正直、馳星周が書いたとは思えないぐらいだ。というかきっとゴーストライターだ。はい、また失礼なことを書きました。申し訳ございません。

 

動物ものに弱い人は多いと思う。犬を飼った経験がある方であればなおさらこの作品は効くと思う。ボロ泣きするはずだ。

私も子供の頃に犬を飼っていて、盛大なペットロスを経験しているので、もうペットを飼う気にならないぐらいなのだが、こういう作品を読んでしまうと、またちょっと飼いたくなってしまったりする。人間ってやつは本当に勝手なもんで…。

 

めっちゃ感動するし、実際Amazonでも馳星周の中でこの作品だけ飛び抜けて多くのレビューと高評価が付いている。

たぶんだが、私もそうだったのだが、「馳星周がこれを書いたのか」という驚きがさらにブーストをかけているフシがある。余計に感動してしまう。

 

普段の馳星周を求めると裏切られてしまうが、彼のファンであれば馳星周という作家の本当の実力を知るために必読の一冊である。

 

 

終わりに

 

なんかまとめてて気がついたのだけれど、私は初期の頃の馳星周が好きなのかもしれない。かなり偏ってる。

最近の作品も全部ではないにしろ、けっこう読んでいるのだが、やっぱり初期作品のパワーには勝てていない印象が強い。

あれだけ長くてもグイグイ読ませていたのに、最近のは「まだこんなにあんのか…」とか「全然話が進まねえ…」みたいに思うことが多い。残念無念。

 

やっぱり『不夜城』のようなエネルギーの塊作品は、若い内しか書けないのだろうか…。あれだけドロッドロの作品を生み出そうと思ったら、作者にも相当負担がかかるだろうし。

 

以上。今後も馳星周作品をチェックしていく。