困ったちゃんだった雫井脩介が放つ、会心の一撃である。
どうも。読書ブロガーのひろたつです。いつも羊のように震えています。羊が震えてるところ見たことないけど。
今回紹介するのは、日本のミステリー史上において最も格好良い決め台詞が登場する作品である。
内容紹介
闇に身を潜め続ける犯人。川崎市で起きた連続児童殺害事件の捜査は行き詰まりを見せ、ついに神奈川県警は現役捜査官をテレビニュースに出演させるという荒技に踏み切る。白羽の矢が立ったのは、6年前に誘拐事件の捜査に失敗、記者会見でも大失態を演じた巻島史彦警視だった―史上初の劇場型捜査が幕を開ける。
“史上初の劇場型捜査”とは何とも素晴らしい言葉である。これだけでもうワクワクするじゃないか。
私のような小説愛好家というのは、まだ見ぬ新たな面白さを求めると同時に、「待ってました」と言わんばかりの痒いところに手が届くような面白さも求めている。
つまり、格好良い主人公が苦しみながらも、格好良く勝つ、という王道の物語である。
このパターンはそれこそ紀元前から繰り返されてきた物語のパターンなのだが、人間というのはいつまでも進化しないのか、いつまで経っても同じことで大喜びしている。平和な話だ。
ということで、今回紹介する『犯人に告ぐ』は、正真正銘の王道ストーリーであり、万人が楽しめる作品になっている。
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ミステリー史に残る決め台詞
もうね、このセリフを読めただけでもう十分。ってくらいに格好良い。マジで読んでるときに思わず「おおっ!」って声出したもん。
なかなかないと思う。声が出てしまうぐらい興奮させるセリフって。
元々雫井脩介はストーリーテリングが巧みで、読者を引っ張るのが上手い作家だったけど、夢中になっているところへこんな強烈なパンチを御見舞されたら、そりゃあもうヘロヘロ、いやメロメロになるわな。
ちなみに、わざわざここにそのセリフを書くような野暮はしないので、各自でご確認くださいな。
昔は困ったちゃんでした…
『犯人に告ぐ』はとんでもないヒットを飛ばし、2004年のミステリー界は完全に『犯人に告ぐ』の一人勝ちだったように思う。
実は私は運良くかどうか分からないが、雫井脩介が『犯人に告ぐ』を執筆する前から、彼の作品を読んでいた。まあファンと言ってかまわないレベルだったと思う。
でもそのとき私の中で雫井脩介という作家は、ある種「困ったちゃん」という認識だった。
先程も書いた通り、デビュー当時から非常にストーリーテリングが巧みで、圧倒的なリーダビリティを備えており、多くの人が魅了されるのも納得の作家だった。(2ちゃんねるのミステリー板ではすでに知られた存在だった)
そんなに上手な作家さんなのに、なぜか作品のところどころで、「ん?」と首を傾げてしまうような描写が見られた。
そこまでは最高に楽しんでいたのに、いきなりなんか…そう、言い方が難しいのだが、読者を悪い意味で翻弄してくるのだ。
いや、ごめん。実はちゃんと言える。つまり、たまに「クソサムい」作家だったのだ。
「ここでこんな表現使うかー」と頭を抱えてしまうようなことが多々あった。
具体的なことは書かないが、売れまくったこちらの作品なんかは特にその傾向が強かった。
勘違いしてもらいたくないのは、彼は確実に面白い作品を書く。それは間違いない。ただ、たまにどスベリする悪癖があるだけなのだ。ホームランは打つけど、覚醒剤も打っちゃう清原みたいな存在だったのだ(違う)。
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悪癖改善
そんな困ったちゃんだった雫井脩介だが、作品を重ねるごとにその悪癖も抜けてきたのか、それとも編集さんが頑張ったのか知らんが、とにかくどストレートに楽しめる作品を書けるようになったのだ。いや、書けるようになってしまった、という言うべきか…。
というものも、私は以前の困ったちゃんなところも好きだったのだ…。ダメな子を愛でるような気分であり、とてもマニアックな楽しみ方だ。万人にオススメできるようなものではない。
すまん、あくまでも独り言である。気にしないでもらいたい。よちよち歩きだった雫井脩介はもういないのだ…。
そして満を持して登場したのが『犯人に告ぐ』である。
前作の『火の粉』も映像化されて話題になったが、こちらは映画化である。主役は豊川悦司だったのだが、ハマリ役もいいところである。雫井脩介もトヨエツを意識して書いたんじゃないかってぐらい、ぴったりな役どころだった。映画観てないけど。
最高のオムツ小説!
作品の紹介をしてるんだか、雫井脩介をバカにしてるんだかよく分からない記事になってきてしまったので、軌道修正したいと思う。
『犯人に告ぐ』なのだが、まあとにかく面白い。ミステリーとしての要素はかなり抑えめ(完全なる謎解きものではない、という意味)だが、エンタメとしては100点である。
みんなが「面白え!」とか「こんなのが見たかった!」と思うような要素をこれでもかっ、と詰め込んでいる。面白すぎて、興奮しっぱなしである。
とまあ、そんなストーリーだけでもう十分に興奮して、犬だったら嬉ションしてしまうレベルなのだが、そこへあのセリフである。
ここまで来たら人間だって失禁するだろう。読むのであれば、大人用オムツの着用は必須である。漏らすのが好きな人は別に気にしなくてもかまわない。尿もれひとつとっても、それぞれの楽しみ方があるだろう。
ということで、私は『犯人に告ぐ』を最高のオムツ小説と位置付けたい。こんな作品は『犯人に告ぐ』以外に知らないし、これからも知ろうとは思わない。そんな変態的な作品はこれひとつで十分である。
『犯人に告ぐ』の総評
色々ふざけたことを書きすぎて、私が何を伝えたいのか分からなくなっている人も多いかと思われるので、ここに私なりの『犯人に告ぐ』の総評をまとめておく。というか、この記事の価値はここだけしかないと今では思っているぐらいだ。
ミステリー…70点(犯人…)
エンタメ…100点(あの決めゼリフ!)
人物描写…95点(ここまで書き込んでいるからこそ感情移入できる)
以上。
あぁ、リンクを貼り間違えた。
正しくはこちら。
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