どうも100人部下を抱える中間管理職のひろたつです。嫌いなものは干しぶどうです。
今回は部下育成のお話。
どうしても苦手な部下
私には100人を超える部下がいる。
それだけ揃うと、それこそ自分よりも遥かに優秀な人材もいれば、猿よりも劣る人材もいたりして、毎日動物園にいるみたいな気分です。休日に出かける必要がない。
で、優劣であればそれなりに対処法(フォローするとか、負荷の高い仕事を任せないとか)があるのだが、どうしてもこいつだけは…という部下がいる。
それが文句を言う部下である。
職場に対し、仕事内容に対し、私の仕事ぶり対し、などなどとにかく全てのことに文句を言わずにはいられないタイプの部下がいる。
私はこれが非常に苦手で、いつも悩みの種だった。
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苦手から逃げるべきではない
ただ、私も長らく部下を抱える仕事をしているので、そんな「苦手だな…」と思うときほど、あえて近づきコミュニケーションを取るようにしていた。
なぜなら、苦手なものから逃げるとコンプレックスになるからだ。
これは仕事をする上で非常に大事な考え方だ。まだ“苦手”のレベルであれば取り返しがつく。修正しやすい。
ということで、私はできる限り(吐きそうなほど忙しい時間の合間を縫って)その部下の話を聞くようにしていた。彼女の口から吐き出される数々の悪態(よく言えば指摘)を、頷きながら、ときには相槌を打ちながら聞いていた。
その繰り返しの中でいつかは、彼女の文句も次第に減っていくことを期待していた。
人の感情というのは水の入ったコップのようなもので、中に入っている感情を吐き出せば余裕が生まれ、こちらの言葉、例えば助言(文句じゃなくて自分で変えて行こうよ、といった)を受け入れられるようになる。
決定的な一言
しかしその私の考えは甘かった。
彼女の溢れ出る文句はとどまることを知らず、いくらで湧き出るようだった。文句の油田である。マイナスをかけたらどれだけの価値を生み出すのか想像できない。だれかそんな道具作ってくれんかなぁ。
そんな折、私の部署にひとりの異動者が来た。
彼曰く、「あの文句しか言わない子って、他に何か喋るの?」
私は衝撃を受けた。確かに文句以外のことを喋っていた記憶がない。
その事実に気付いた瞬間、私の中で最悪の感情が生まれた。
「あの子、嫌い」
上司として、絶対に持ってはいけない感情であった。
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死んでほしい
私は自分の感情と、理性の間で板挟みになった。
わざわざ嫌いな人間について考えるほど、人生に時間はない。もっと自分の好きなことや気の合う仲間と時間を過ごすべきだ。
しかしその一方で、「部下とは上司にとって子供のようなもの」という私が尊敬する先輩の言葉もある。
どちらも真である。でも相反してしまう。
これでかなり悩んだ。
苦手な部下の相手をしないことも可能である。でもそれはラクな道であり、逃げだ。
もちろんその部下と向き合い続けることもできる。でもそれは非常に苦痛を伴う。
そもそも私は部下に対して「嫌い」という感情を抱いてしまったこと自体で、自らを責めていた。上司なんだから、そんなことを考えるべきじゃない、と。
でも感情を止めることはできない。
本気で「死んでくれないかな…」なんてことも考えた。それくらい私は思い詰めていた。
考えた末に得た結論
この経験から私が得た結論を書く。
まず、自分の感情を否定しても得るものはない、ということだ。むしろ失うものしかない。
自分がそう感じてしまったのであれば、それを無理に押さえつけても自分が歪むだけだ。歪んだ心は身体に異常を発生させることもあるだろう。私の場合、睡眠不足に陥った。
だから自分の感情は否定しないこと。つまりこの記事で言えば、「部下を嫌いになってもかまわない」ということである。
だがその一方で大事なことがある。
上でも書いたが、上司は部下にとって親のようなものである。いくら文句を言おうが不満があろうが、部下にとって上司は1人しかいないのだ。どれだけ反抗的な態度を取ろうとも、根底には依存が存在する。ただ部下はそれに気付いてはいないだろうが…。
なのでこれを親子関係に例えるとよく分かる。
自身の子供が苦手だとして、その気持ちに蓋をする必要はない。どこかしらで吐き出してもいいし、休憩してもかまわないだろう。
だが、だからといって「あなたが嫌いです」と伝えることは絶対にNGだ。
そこで受ける心の傷は半端なものではない。
部下も同様で、どれだけ上司に不満があっても、その上司から直接的、間接的に関わらず「お前のことが嫌いだ」と言われてしまったら、やはり絶望的な気分になるだろう。
見捨てられた先、どうなるか
見捨てられた人はどうなるだろうか。
子供であれば、必死で親に取り入ろうとするかもしれない。でもそこで受けた心の傷はいつしか大きな歪みを生むだろう。
虐待を受けた子供が親になったときに、また自らの子供に虐待をしてしまう話はよく聞くだろう。
では部下は?
もう上司との関係を修復しようとは思わないはずだ。もう子供ではないのだ。相手に依存しなければ生きていけないほど弱くはない。ただただ上司の元から離れていくだけだ。
それが物理的なのか、心理的になのかは分からないが、きっと永遠に交わることはないだろう。
だから、絶対に上司はどんなに嫌いな部下でも、見捨てることだけはしちゃいけないのだ。部下の成長をいつまでも信じ続けるべきだ。
文句を言ったり、不満を漏らす姿は非常に醜く、見るに耐えないかもしれない。死んでくれと思うこともあるかもしれない。
だけど、そんな部下の態度の根底には上司であるあなたを「信頼している」気持ちがあることを忘れないでほしい。あなたに甘えているだけなのだ。
あとはどれだけその“甘え”に気付かせてあげられるか、なのだ。
上司が自分の内側で嫌いになっているだけならまだ関係性は続けられる。育成できる可能性もあるはずだ。
でも部下からも嫌われてしまえば(表面的な、という意味じゃなく)、もう終わりである。
関係性の終わった人と同じ空間で過ごすことのツラさは、誰にでも分かることだろう。
以上。