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君たちはいつまでフランスパンの横暴を許すのか?

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30数年生きてきて、ここ最近で気が付いたことがある。

 

 

フランスパンが硬え。

 

 

あなたは「そんなこと当たり前じゃないか」と思われるかもしれない。

それは違う。

きっとみんなフランスパンが硬いことは分かっているかもしれないが、その硬さに大人しく従っている。つまり、「硬い」という属性を認識しているだけで、フランスパンを食べる上で何の不満も持っていない。もっと言ったら、あの日本人の永遠の憧れである「フランス」の名を冠したパンに対して、ささやかながら畏敬の念を持っているフシさえある。

私はそんなみなさんとは違う。完全に目が覚めた。フランスパンの呪いから。そう、これは呪いと言ってもいいかもしれない。

 

みんないい加減に気付け。自分たちがどれだけフランスパンの言いなりになっているのかを。

 

きっかけはフランスパンのサンドイッチを食べたこと

私には行きつけの超美味しいパン屋さんがある。手頃な値段なのに悪魔的に美味しいパンを提供してくる、イカれたパン屋だ。麻薬が配合されていると言われても納得できそうなぐらい美味い。

そこで普段なら食べないオシャンティーなサンドイッチを買った。

いつもなら何の考えもなしに「あげパンでしょ~」となっているところだが、その日は自由が丘のマダム的な気分だった。おしゃれなサンドイッチを食べてみたくなった。

サンドイッチと言っても、私が普段食べているような、食パンの皮を剥いだものに卵だけを挟み込んだものではなく、フランスパンに100種類ぐらいの具材を色とりどりに詰め込んだものである。

 

※イメージ画像

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それをパン屋から家に帰る車中で食べた。(食べながら運転って違反だったかも)

 

当然ながら味は最高だったし、「こんなオシャレなサンドイッチを食べちゃう自分」さえも噛み締めながら楽しんだ。至福の時間だった。

 

あっさりと食べ終え余韻に浸っていると、渋滞に巻き込まれた。

暇を持て余したそのときに、ふと気が付いた。

 

 

口の中がボロボロ。

 

 

そう、フランスパンが硬かったのだ。硬いと言っても食物の範囲の話である。芸人が誇張するような「釘が打てるぐらい硬かった!」みたいなことを言うつもりはない。普通に硬かっただけだ。だが、私の口腔内を簡単に切り裂くぐらいの硬さではあった。

 

傷つかないと食べられない料理なんてある?

考えてみると、これは異常である。傷つきながら食べないとといけない料理なんて、他に見たことがない。

 

強いて言うなら、

こっそり好きだった女の子が、親友と結婚してしまって、もちろん好意はずっと持ち続けていたけれど、親友の手前、顔では「おめでとう!」なんて笑顔を作っておいて、でも心では泣いてて、それからしばらくしてからその親友の家に呼ばれたりなんかして、部屋の端々に二人の仲睦まじさみたいなのが出てて「あー、ほんとに結婚しちゃったんだ」とかこっそり寂しく思ってるときに出される好きだった女の子の手料理。

これぐらいしか思い付かない。

これなら「傷つきながら食べないといけない料理」と言えるかもしれない。だがこれだってあくまでも傷つくのは心だけで、身体的に傷つく訳ではない。

 

一般成人男性である私の口の中がボロボロになってしまうのだから、きっとフランスパンを食べたことがある人はみんな同じ目に遭っているはずだ。

他人と口腔内の硬さを比べた経験がないので予測でしかないが。きっとそこまで大差はないだろう。口腔内なんて、ほぼ内臓だ。内臓に硬いも柔らかいもないだろう。たぶん。

でもみんなは口の中がボロボロになってもニコニコしながら暮らしている。これはおかしい。異常事態だ。それとも私が知らないだけで、みんな口の中カッチカチなのか。

 

ちなみに、試しに我が家の末っ子(2才)に初フランスパンを与えてみたところ、口に含んだ瞬間に「いたい」と言っていた。食べ物の感想ではない。つまりそういうことだ。

我々はフランスパンという裸の王様を讃えているのである。食べると口の中がボロボロになるのに「おいしい!」と叫んでいる。

真実を語れるのは、心が汚れていない子供だけなのである。

 

他にもある

食事をするだけでこちらを傷つけてくるという、DV旦那みたいなフランスパンだが、不満はそれだけではない。肉体的だけではなく、精神的にもこちらを追い詰めてくるフシがある。

 

これもまたパン屋でのことだ。

 

さきほどから私が連呼している「フランスパン」だが、実際にパン屋に行くとそのまんまの名称で売られていることはほとんどない。

あるパン屋で、私がレジの裏に並んでいるフランスパンを指差し、「フランスパンを1本ください」と店員さんに声をかけたところ、「バタール1本ですね」と返された経験がある。

 

なるほど。パンにも呼び名の流行り廃りがあるのか。今どきのフランスパンはバタールと呼ぶのか。ふむふむ。そうか、じゃあこの流れに従うとしよう。

 

「バタールください」

バケットですね」

 

はあ?

 

なんじゃそりゃ。何回訂正してくれば気が済むんだよ。名称が日替わりなのか。いや違う。どうやらサイズで名称が変わるらしい。いきなりルールが増えてる。ふざけんな。ほとんど同じじゃねーか。どれもこれも同じ姿形なのに、なんで名前が違うんだよ。興味ないアイドルグループのメンバーかよ。めんどくせえ。しかもあれかよ。「バケット」じゃなくて「バゲット」だし。ゲットの方かよ。私の中でゲットが付く食べ物はナゲットしか認めてませんから。

分かった。そんなんで来るならもういいよ。明日からお前ら全員「小麦粉」な。これ以上人間様を振り回すんじゃねえ。それが嫌なら「炭水化物」な。それがお似合いだから。

 

 

…。

 

ふう。

 

このように、名前さえも安定しない食べ物に、一体何を気を使う必要があるのだろうか。よく家庭内暴力をされた被害者が「気が付けば、逆らうことができなかった」なんて語ることがあるけれど、まさに日本人がそれ。フランスパンにやられてる真っ最中。気付け。口ん中ボロボロにされてる場合じゃないから。名前が変わるたびに素直に対応してる場合じゃないから。

 

以上。