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変態推理小説作家 歌野晶午のオススメ作品と地雷作品を教える

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どうも。

歌野晶午について語ろうか。

 

推理小説作家の運命

推理小説作家はたくさんいる。たくさんいるが、彼らには共通する弱点がある。

それは「年齢と共にトリックを考案できなくなる」という弱点だ。

トリックというのはアイデアそのものであり、読者をあっと驚かせるような切れ味鋭いアイデアというのは、やはり脳みそが若い頃にしか生まれなかったりする。

だからベテランになるほど、ネタの使い回しやパターンに少し変化を加えただけのトリックになりがちである。悲しいがこれは仕方のない事実である。推理小説において言えば、デビュー作が最高傑作なんてのはよくある話だ。

数学者の世界でもそうなのだが、奇抜なアイデアというのは20代の若い頃にしか出ない。あのアインシュタインが相対性理論を発表したのだって彼が26歳のときだ。

それくらいアイデアというものは年齢に依存するものだったりする。

 

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数少ない変態

そんな中でも異色の推理小説作家がいる。

 

歌野晶午である。

 

彼の特異さは、「年齢と共にトリックの切れ味が上がっている」ことに他ならない。

普通であれば枯れる一方でしかないアイデアが、年齢を重ねると共により強力になっているのだ。

個人的にこれは異色というよりも“変態”だと思っている。普通じゃない。

例えば彼の代表作と言えば、言わずと知れた『葉桜の季節に君を想うということ』であるが、彼がこれを発表したのが2003年、なんと43歳のときである。他の作家で考えたらアイデアを出し尽くしてカッスカスになっている時期だ。

そんなカッスカスの時期にあれだけの強烈な一発をかましてしまうのだから、恐ろしいというか、やはり“変態”の一言に尽きると思う。

変態作家のオススメ作品と地雷作品を紹介!

しかしそんな歌野晶午だが、実は弱点がある。悪癖と言うべきか。

数作に一度くらいの割合で、「なにこれ?」としか思えない駄作を発表してくるのだ。

しかもタイトルが明らかに「面白そう」だったりするから余計にタチが悪い。

だが私は歌野晶午が大好きだ。彼だって人間である。そう毎回毎回傑作を発表し続けられるはずがないのだ。人間味があると言えるだろう。

そこでそんな「歌野晶午大好き」な私が、彼の必読作品と地雷作品を教えたいと思う

どちらも歌野晶午でしか味わえない異色作ばかりである。ぜひどれも平等に楽しんでもらいたい。

では行ってみよう。

 

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必読作品

「歌野晶午ならこれでしょ!」という必読作品の紹介である。どれも悪魔的な魅力に満ちているので、くれぐれも乱用にはご注意いただきたい。

葉桜

「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たして―。 

紹介するのが恥ずかしくなるぐらいの有名作品。まあ鉄板ということで。

 

さらわれたい女

「私を誘拐してください」借金だらけの便利屋を訪れた美しい人妻。報酬は百万円、夫の愛を確かめるための狂言誘拐。シナリオ通りに仕事は成功するが、身を隠していた女が殺されているのを見つけて…。

誘拐ものに歌野が手を出せばこんな感じになる。極上である。

 

ROMMY 越境者の夢 

人気絶頂の歌手ROMMY(ロミー)が、絞殺死体となって発見された。ROMMYの音楽に惚れ込み、支え続けた中村がとる奇妙な行動。一瞬目を離した隙に、ROMMYの死体は何者かに切り刻まれ、奇妙な装飾を施されていた――。一体誰が何のために? 天才歌手に隠された驚愕の真相とは。 

いやー、これは説明が難しい…。ネタバレを防ごうと思ったら説明できない。ただ言えるとすれば、「ちゃんと読め」ということだけだろうか。

 

密室殺人ゲーム王手飛車取り

〈頭狂人〉〈044APD〉〈aXe〉〈ザンギャ君〉〈伴道全教授〉。
奇妙なニックネームの5人が、ネット上で殺人推理ゲームの出題をしあう。
ただし、ここで語られる殺人はすべて、出題者の手で実行ずみの現実に起きた殺人なのである……。
リアル殺人ゲームの行き着く先は!? 

人の命をゲームに使うという不謹慎極まりない問題作。面白い試みだし、トリックもキレキレなのだが、いかんせんタイトルがひどすぎる…。

ちなみにこのシリーズはどれもハズレなしなのでオススメである。

 

 

 

良作 

必読とまでは言えないものの、さすがの歌野クオリティという作品を紹介。 

死体を買う男

乱歩の未発表小説に隠された驚愕のトリック
乱歩と詩人朔太郎の名コンビが紀州白浜の首吊り自殺の謎に挑む!

乱歩の未発表作品が発見された!?「白骨記」というタイトルで雑誌に掲載されるや大反響を呼ぶ――南紀・白浜で女装の学生が首吊り自殺を遂げる。男は、毎夜月を見て泣いていたという。乱歩と詩人萩原朔太郎が事件の謎に挑む本格推理。実は、この作品には二重三重のカラクリが隠されていた。

 「作中作」というだけでワクワクしてしまうのはミステリー好きであればこそ。しかも歌野が仕掛けるのだからただでは済まないのは間違いないだろう。しかも乱歩の新作って…。絶対美味しいでしょ。

 

正月十一日、鏡殺し 

短編集だとより歌野の奇想っぷりが際立つ。後味の悪さに特化した作品集である。悪魔的な心境でお楽しみいただきたい。邪悪な笑みが浮かんでしまうのを止められないはずだ。

 

ハッピーエンドにさよならを 

タイトルから不穏な空気が漂っているが、どれもこれもバッドエンドだらけの短編集である。予想もつかない方向からのバッドエンドに、あなたの脳髄は快感に痺れることだろう。

 

そして名探偵は生まれた 

タイトルとは全然違う内容の作品ばかりが詰まった短編集ならぬ中編集。

私が特に好きなのは『生存者、一名』。ピリッと効いている作品は心に残るものだ。

 

放浪探偵と七つの殺人 

歌野晶午の悪名高きデビュー作『長い家の殺人』に出てくる名探偵“信濃譲二” を主役に据えた短編集。どれもこれも歌野のアイデアがキラリと光る作品ばかり。

個人的に名探偵ものはあまり歌野に似合わないと思っているが、この作品はそんなことどうでもよくなるぐらい効率よく「推理小説的快楽」をもたらしてくれる。

 

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地雷作品

さてお待ちかねの地雷作品群である。どれもこれもある意味“歌野らしさ”に満ちた作品たちだ。もしかしたらこれこそが歌野の真髄なのかもしれない。

 

ザ・駄作

記念すべき歌野晶午のデビュー作にして感動するくらいの駄作。

歌野晶午が尊敬する島田荘司に原稿を見せた所、瞬殺でトリックを看破されてしまい、飲み屋でボロ泣きしたというエピソードが私は大好きである。

確かに拙いトリックではあるが、歌野の「でかいことをやってやるぜ」という気概は十分に感じられる作品である。

 

踏み台

これが歌野が初めて書く誘拐モノである。初めてだったことに加え、歌野の「何かカマしてやろう」精神が高いレベルでミスマッチした結果、素晴らしい駄作に成り下がった。『長い家の殺人』のときもそうだったが、気概だけは素晴らしいのが歌野作品の良い所である。気持ちは大事だ。結果が伴わなかったとしてもだ。

ただし、この駄作があったからこそ『さらわれたい女』という傑作が生まれたとも言えるので、必要な踏み台だったと思えば、この作品だって傑作である。 

 

普通の小説(悪い意味で)

「やもり」と読む。家にまつわる短編集なのだが、まあこれが駄作。というか歌野フレーバーをまったく感じさせない作品で、「本当に歌野が書いたのか?」と疑いたくなるほどである。あまりにも悪い意味で“普通の推理小説”なので、本当につまらないものに仕上がっている。

たぶんだが、あの『葉桜』の直後に発表されたのも良くなかったと思われる。 

 

オマージュ?

設定があの有名マンガの丸パクリという、何を考えていたのかさっぱり分からない。パクっているのを逆手に取った作品なのかと勘ぐったのだが、どうやらそういう訳でもなかった。それとも本当にたまたまなのか…。

そしてあのラストである。具体的な内容を言及することは避けるが、まあひどいということだけ言っておこう。例えて言うならば“不発”だろうか。 

歌野晶午が悶えている姿は伝わってきた。 

 

踏み台パート2

タイトルがとんでもない傑作を予感させ、しかも小説の構成も非常に挑戦的なとても“歌野”的な野心作であるが、これまた不発に終わっている。

しかしこの構成は明らかに推理小説の枠を越えた新しさを感じさせるものであり、これがあの名作『葉桜』に繋がっていると思われる。

結末がウンコなだけで、作品自体は面白く読めるという評価が何とも難しい作品である。 

 

あのトリックを歌野が使うとは…

タイトルに惹かれハードカバーで衝動買したのが運の尽き。まさかこんな実験小説だとは知らなかったよ…。

こちらも悪い意味で歌野らしさに溢れた作品だと思うが、いかんせんトリックが…。あまり言いたくはないが、あれはないだろう。

たまに衝撃的な作品を形容して「問題作」なんて言われるが、本当に問題があるこの作品はなんと読んだらいいのだろうか。やはり地雷が適当である。

これがあるから歌野は怖いのだ。 

 

以上。

 

 


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