俺だってヒーローになりてえよ

何が足りないかって、あれだよあれ。何が足りないか分かる能力。

読書中毒ブロガーが横山秀夫のオススメ作品と地雷を教える

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電球ではない。

 

どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。

今回は大好きな作家である横山秀夫の、オススメ作品と数少ない地雷作品を紹介したい。

 

横山秀夫の武器

 

横山秀夫。

 

そこまで多作ではないが、どれもこれも良質な作品ばかりを創出し、その現実味あふれる物語世界にやられる人が続出している作家である。特に中高年にはたまらない存在であろう、と評してしまう私はきっとおっさんである。悲劇。

まあそれはいいとして、彼の作品の魅力は大きく分けてふたつである。たったのふたつかよと言わないで欲しい。あまりにも強力なふたつの矛である。

 

ひとつは、謎と解決の切れ味が圧倒的であること。

「そういうことだったのかぁ!!」と本に向かって雄叫びをあげること請け合い。それくらい素晴らしいマジックを見せてくれる。

今まであなたはそんな経験をしたことがあるだろうか。ないのであれば、幸運である。これから体験できるはずだ。

ぜひとも誰もいないところで読んでほしい。間違っても電車の中など衆人環視の状況では読まないように。確実に通報案件である。

ちなみに、これは特に短編や初期の作品に多く見られる傾向である。

 

もうひとつは、「人物描写」が圧倒的であること。

登場人物の内面をえぐり出し、読者にそのキャラクターが抱える悩みや葛藤を共感させる手腕は並み居る作家の中でも突出した能力を持っている。誰かの日記でも読まされてんじゃないかってぐらいに、キャラクターが息づいている。もしかしたら横山秀夫の実体験かもしれない。でも婦警の話もあるから、それはないか…。もしそうなら気持ち悪すぎる。

 

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人間ドラマは小説家として最強

謎と解決にしても、上手すぎる人描写も、どちらも小説にとってはとても大事な要素なのだが、やはり横山節というと、後者の「人物描写」の方が比重が重くなると思う。それを楽しみにしている人も多いのではないだろうか。

人物描写が上手ければ上手いほど、小説というフィクション世界がより読者の脳みその中で具現化され、のめり込めるようになる。

のめり込めることが読書の醍醐味なので、ある意味で小説家としては最強の能力だと言える。

 

推理小説とそれ以外

私は極度の推理小説中毒でもあるので、あまりにも謎がしょぼかったり、風呂敷を広げた割には肩透かしな「そりゃねえだろ…」的な解答だったりすると、そこまで評価する気にはならない。どれだけ良質なドラマがあったとしてもだ。

しかし、横山作品の中には少ないながらも推理小説ではない、物語小説も含まれており、そちらではいかんなく極上の人間ドラマを展開してくれている。それならばまったく問題はない。

我ながら読者という生き物は、勝手なものであると思わずにはいられない。

 

どちらも公平に判断

ということで、今回の記事では横山秀夫大好きな私が、彼の作品の中から特に「素晴らしい!」と手放しで賞賛できる作品を紹介したい

私は小説中毒だし、推理小説マニアでもあるのだが、あまりにも偏った作品を勧めても仕方のないことは十分理解している。誰にも広くオススメできる作品を選びたいと思う。

評価のポイントとして、あくまでも「小説として純粋に面白いもの」というあまりにも不明確なものを基準にしている。

 

ネタバレ厳禁!

あと私の紹介記事では注意してもらいたいことがある。

私には「あらすじさえもネタバレである」という持論がある。

つまりできる限り内容には触れないように紹介している。なのであまりにも回りくどい文章が多くなるし、「じゃあ実際どうなのよ?」とも言いたくなることだろう。

だがそこはぜひとも、月間1000冊以上の小説を売り上げるこのブログを信じていただき、参考にしてもらいたいと思う。

 

では行ってみよう。

 

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陰の季節 

松本清張賞を受賞したこちらの作品。私はあまりそういった権威を信用するタイプではないので、そこは無視したいと思う。大体にして松本清張を読んだことないし。きっと面白い小説を書く方だったのであろう。

 

この作品の凄さは、警察を主人公にしているにも関わらず、実際に出てくるのは刑事ではなく補佐の立場の人間たちであること。これがまた渋い。そして超面白い

 

警察内部を深く知る人間にしか書けないであろう内容もさることながら、なによりも横山秀夫の得意とする「なぜ?」が最高である。

 

推理小説としての完成度が著者の作品の中でも一二を争うレベルである。ちなみにもうひとつは下で紹介している『第三の時効』ね。 

 

動機

動機に焦点を当てているのはこの作品には限らないが、それでも『動機』の名を冠するに相応しい傑作であろう。もうなんでこんなに凄え作品ばかりを生み出せるんだよ…。

短編集なので非常に効率よく珠玉の作品たちを楽しむことができる。ページをめくる手が止まらないを地で行く作品である。

 

表題作の『動機』は署内で一括保管される30冊の警察手帳が紛失した事件を追ったものだが、結末を予想できる人間はいないだろうし、そこで訪れる感情も思いがけないものになると思う。

あまりにもよくできている作品だと、何を語ってもネタバレになってしまうので紹介者泣かせである。でもこんな名作を紹介できるんだったら、こちとらいくらでも泣く覚悟がある。ディスプレイが滲んで何を書いているのか分からなくなっても、勢いで誤魔化すぜ!

 

ちなみにこちらの作品は日本推理作家協会賞受賞作である。これはまだ信用できる権威の部類かな?

 

第三の時効 

推理小説としても最高だし、最高のキャラ萌え小説でもある。

この作品も短編集なのだが、出て来る刑事がもどれもこれも魅力的。全員おっさんなのに、このおっさん達がもう…なんというか…身悶えしたくなるほどカッコイイのだ!こんなキャラクター用意されたら最高すぎるだろ。

おっさんに萌えたことがあるだろうか? もしないのであれば、ここにそんな貴重な体験ができるものがありまっせ。

 

個人的には横山作品の中でも屈指の推理小説作品だし、これまでに読んだ推理小説の中でも十指に入る傑作。

マジでどんな脳みそしてたらこんなアイデア出てくるんだ。

 

横山秀夫としては珍しく女性が主人公の作品。私の大好きな仲間由紀恵主演でドラマ化もされている。観てないけど。

こちらも短編集だが、基本的には主人公が変わらない連作集となっている。

横山秀夫が女性を描くなんて…と少々懐疑的な部分もあったが、文句なしの横山クオリティが発揮されているので安心してほしい。

それにしてもこの人は本当に魅力的な主人公を用意できちゃうんだなぁ。それがおっさんだろうが、婦警だろうが関係ないのね。

 

クライマーズ・ハイ

これはミステリーの要素をほとんど排除した作品である。

完全なる人間ドラマと、著者が記者時代に実際に取材を行なった、死者数520人を出した御巣鷹山日航機墜落事故の体験で組み上げた物語である。

類まれな臨場感は、元新聞記者ならではの為せる技だろう。ほとんど実体験みたいなものかもしれない。熱とか高揚感とか疲労感とか、当時の現場に渦巻いていたであろうすべてがこの作品に込められている。

 

あまり何度も同じ作品を読む習慣がない私でも、かれこれ5回ぐらいは読み直しただろうか。それくらい味の濃い作品である。やはりこれもまた傑作である。

さすが実際に取材をしただけあって、事故の描写は凄まじく、圧倒されない人はいないだろう。この世の地獄とはこのことである。

一応、主人公の友人が残した「降りるために登るんさ」という謎の言葉の意味を探る、という若干のミステリー要素はあるものの、ほとんどオマケにすぎない。

圧倒的な作品の前では言葉を失うものだと体感してほしい。必読である。

 

64(ロクヨン)

最後にオススメするのは『64(ロクヨン)』である。

あえて言いたい。この作品が横山作品の中で最高傑作であると。

色々言いたいことはあるが、とにかく読んでほしい。

実際に色々と語ってみた記事はこちらにあるので、時間をムダにしたい人は読むがいい。興奮のあまりまともな紹介記事になっていないが、それが逆に作品の凄さを表しているとも言える。

 

前作『震度0』を最後に7年もの間沈黙し続けたため、遂に才能が枯れ果てたのか、もしくは毛根が枯れ果てたのか、いやいや毛根は元々枯れているから、大病でも患っているのかなど、ファンの間では勝手な憶測が飛び回っていた。

そして長い長い休止期間を経て飛び出したのがこの名作『64(ロクヨン)』である。

もうね、完全に打ちのめされたよね。作品にぶん殴られるって、こういうことなんだなって。面白すぎて頭がバカになりそうだったよ。もしかしたらもうすでにバカになってるかも。でもそれでも本望だよ。こんなに面白い小説を読めたんだから。

 

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地雷作品 

大好きな横山秀夫だが、何作か「これはちょっと…」と苦言を呈したくなる作品がある。優秀すぎると思っていた横山秀夫もやはり人間である。

ということで、あまり手厳しく批判しても仕方がないので、さらっと紹介しておこう。

 

半落ち

横山秀夫の中では間違いなく一番ヒットした作品だろう。

だがあまりにも内容は先が読めてしまうものだし、登場人物にそこまで感情移入できなかったのは、あきらかに物語設定(被告人が完全にオチていない=描写できない)のためである。人間の内面を描くことを得意とする横山秀夫で、内面を書けないとなると、魅力が半減してしまう。

 

感動作として話題になったが、こんなんで感動作とか言われると、逆に「他の横山作品を読めや!」と言いたくなってしまう。

売上と内容が伴わないことを教えてくれる作品である。 

 

震度0 

絶妙に魅力が足りない登場人物、絶妙に興味が湧かない謎、絶妙に面白くないストーリー。「これ本当に横山秀夫か?」と疑いたくなるほど。

この作品を発表してから横山秀夫は作品の発表をピタリと止めてしまうのだが、それも仕方がないと思えるほどいまいちな作品であった。

逆にこれのおかげでしっかり休めて『64』の発表に繋がったのであれば、褒めてあげたいぐらいである。読んだ時間を返してほしいのは正直なところだけど。

 

まとめ

本当のことを書けば、横山作品は地雷として挙げた2作品以外はすべて面白い。小説好きならば読んで損は無いと断言できる。

しかし全部を勧めてしまうとあまりにも記事として陳腐になるし、何のための記事なのかよく分からなくなってしまうので、血を飲む覚悟で厳選させてもらった。

横山秀夫作品の魅力は彼の作品でしか味わえないからこそ、余計に価値がある。

あれだけ濃厚な人間ドラマを感じさせてくれる作家はそうそういない。

まだまだ未発表作品もあるし、『64』を読んだ限りでは作家としての力は存分に残っていると見受けられる。ぜひとも次なる作品を発表してもらいたいものである。

そして願わくば、この記事で紹介した作品群に割り込んでいけるような作品を期待したい。

 

以上。

 

 

追記:この記事を書いたあとに『ノースライト』が上梓されたが、まあまあだったので残念ながらこちらのリストに加えることはできない。でもちゃんと面白いので、そこは安心してほしい。

 

2019年12月現在最新作