どうも。
今回はヒップホップスターのお話。
いつの世もひとりだけ
1990年代の終わりごろから邦楽を席巻しだしたヒップホップ。まあ正確に言えばDragon Ashなのだが、彼らの登場によりそれまでのポップスが終わったとまで言われている。他にも稀代の歌姫が現れちゃったこととか。まあその辺はこの本を読むとけっこう面白い。
1998年の宇多田ヒカル (新潮新書) | ||||
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2000年代に入ってからはリップスライムやケツメイシ、湘南乃風とメロディーも聴かせられるアーティストが増えたことにより、ヒップホップは一躍メジャーな音楽の一要素となった。
だが、それでもヒップホップという音楽の性質上、いつの時代も大成功を収める逸材というのは限られてしまう。私の印象だと、いつでも「ひとりだけ」というイメージがある。売れ線チャートの中にヒップホップアーティストようの席がひとつしか用意されていないイメージ。
ケツメイシとかは今でも売れているが、もうヒップホップというよりはポップスの色の方が強くなっている。それゆえに多くの支持を集めることに成功したわけだが。
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ヒップホップスターの移り変わり
ゴリゴリのヒップホップはいつの時代もアンダーグラウンドで、人気が出たとしてもクラスの中でほんの僅かな人間だけが熱狂的にハマっているだけだろう。メロディーがないヒップホップアーティストが売れ筋チャートに顔を並べることはない。
で、中にはメロディーも扱いつつラップもしっかりできて、リリックでも痺れさせられるやつがいる。そんなやつがチャートに並ぶことを許されている印象。
それの最初、パイオニアがKREVAだった。
UMBというラップバトルの大会で三連覇というふざけた記録を打ち立て、その存在はアンダーグラウンドではまさに抜きん出た存在。メジャーデビューしてからは持ち前の頭脳を活かして、過剰なヒップホップ要素は抑えつつも、しっかりと「ヒップホップが新しいんだぜ」ということを示し、売れ線にしっかりと食い込んだ。
ほんとの最初はこれ。
ソロデビューした後がこれ。
当時そこまで私はKREVAにハマらなかったが、「KICK THE CAN CREWのブレーンはこいつだったのか」と認識を改めていた。只者ではないと。なんてったって慶応卒は伊達じゃない。
イッサイガッサイは映像も相まって、名曲だと思う。
そのセンスをいかんなく発揮して売れまくっていたKREVAだが、新たな才能の前にその存在感を失う。
次に現れたのがこちら。
ヒップホップ界のアントニオ猪木ことヒルクライムである。
声の質は完全にKREVAのそれである。KREVAによって耳を慣らされた客は、同じようにKREVAと同じ声質を持ち、さらにKREVAに輪をかけてメロディーセンスのあるヒルクライムにすぐに食いついた。皮肉なものである。
それにしても、邦楽で流行る声質がこうやって偏ってしまう現象は何なのだろうか?私がおっさんになっただけなのか、最近のバンドはどれを聴いてもバンプの藤原の声に聞こえてしまうのだが…。
ヒルクライムもメジャーデビューする前からその実力は評判になっていた。私もこの楽曲を聴いてやられたクチである。
若干音程が怪しいところもあるが、センスが溢れ出ているし、当時聴いていたKREVAよりも遥かに高速でメッセージ性の強い歌詞が脳に叩き込まれる感じだった。
その勢いを失うことなくヒルクライムは立て続けにヒット作を連発。完全に日本中がヒルクライム中毒なっていた。
ただ楽曲に幅がないというか、新たなメロディーを生み出すことができずあえなく失速。あっという間にいなくなってしまった。
真打ち登場
そして現在、ヒップホップスターの席に座るのがこの男である。
主張しすぎる金のアクセサリー。黒を貴重とした衣装にピアス。派手なタトゥー。
「よくこれで売れたな…」と思ってしまうほどまさにヒップホップという出で立ちの我らがAK-69(エーケーシックスティーナイン)である。
主に中高生に人気があるようだが、本人は1978年生まれの完全なるオッサンである。
ちなみにこの78年代というのはヒップホップの有名所が多数輩出されている年代でもあり、フリースタイルダンジョンに出演している般若や漢がいる。
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オススメ楽曲
前フリが長すぎたかもしれない。AK-69の楽曲の方を見てみよう。
彼の看板商品と言ってもいいのがこちらである。
◯And I Love You So
ド直球のラブソングである。おっさんアーティストらしく暑苦しいリリックが彼の持ち味である。冷静に見るとチベットスナギツネみたいな顔になりそうだが、その辺は音楽の世界に入ってこそなので、ぜひとも浸りきって見てもらいたい。
◯START IT AGAIN
あまりにも長すぎる前フリの後に流れ始めるトラックが秀逸なこちらの楽曲。個人的には一番センスが光っていると思う。
AK-69の熱いラップにピアノの音色を合わせることを思いついたトラックメイカーのRIMAZIは偉いと思う。
◯THE RED MAGIC
AK-69の魅力をそのままぶつけた楽曲。特にhookの耳馴染みの良さと中毒性は半端ではない。そしてヒップホップPVあるあるの運転シーンがあるのも、笑ってしまうが良し。
◯Only God Can Judge Me
クソほど売れているAK-69だが、こんな反骨心溢れる楽曲もあったりする。作曲はAK-69本人なのだが、どうだろうか。RIMAZIの凄さが分かるだろうか?
◯THE SHOW MUST GO ON
コンプラがかかるような歌詞も使っちゃう所に彼のヒップホップ魂を感じてしまう。
売れ線でいたいならその辺は逃げてしまいがちだと思うのだが、それがケツメイシやリップスライムとの違いだと思う。別にどっちがいいという話ではない。戦略の違いであって、AK-69は勝負してるな、と思うだけである。
◯Kalassy Nikoff a.k.a. AK-69 - ONE
別名義のこちらも紹介しておこう。
カラシニコフというのは旧ソビエト連邦が使っていた自動小銃であり、別名『AK-47』と呼ばれる。
なんて銃の紹介はいいとして、なぜ別名義で活動しているのかはよく分かっていない。
ただ、洋楽のヒップホップアーティストもそうなのだが、別名義を用いることで別人格を作ったりしているらしい。有名所だとエミネムのスリム・シェイディとか。正直、私には意味が分からない。
幅が広い
こんな感じでAK-69の楽曲はかなり幅が広い。しかもラップも上手ければ歌も上手いというかなり無敵なアーティストである。
今どきのアーティストは楽曲の幅が広いことが非常に重要で、それによってアルバムに多彩な楽曲を入れることができ、リスナーに繰り返し楽しんで貰えることができる。またライブでも盛り上がるものから泣けるものまであれば、ひとつのライブの中に管球が生まれて物語を作ることができる。うーん、やりよる。
最初に書いた通り、いつの時代もヒップホップスターというのは席がひとつしかない。AK-69の快進撃がいつまで続くのかは分からないが、今の所安泰な気がする。
以上。
個人的にはCreepy Nutsが来るんじゃないかなと思っていたり。