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最近見つけた面白い本『模倣犯』他5作

 

どうも、ひろたつです。

最近読んで面白かった本を紹介する記事です。

 

 

ブロガーと名乗れるほど記事を書いてないし、何か宣伝をすれば罵声を浴びせられ、解釈に異論を唱えられ…と自らのアイデンティティを失っている今日このごろ。

皆様いかがお過ごしでしょうか。

私はとっても平和に充実した読書ライフを送っております。

その証拠になんと20年近く挫折していた悪名高き『ドグラ・マグラ』に再挑戦しているぐらいの気力充実っぷりである。

 



 

どうだ、この怪しさ満点、いっそ清々しいほど下劣な表紙は。どこで売ってたんだよ、この服。布があるべき場所が逆だろ。逆服。

しかも聞いた所によると、この女性は本編に出てこないらしいじゃないか。今どきの主人公のイメージイラストを思いっきり載せている装丁と比べたら、文化が違いすぎてその時点で堂廻り目くらみである。成瀬を見習え。

大体にしてこんな装丁の本を持ち歩いてたら周囲の評価が確定するだろう。変態であると。

私なんかは読んでる本を常に持ち歩くタイプなので、職場だろうが、おしゃれな喫茶店だろうが、保育園だろうが、関係なしにこいつを振りかざすことになる。ふむ。控えめに言って無敵である。もし街なかでチャカポコ言ってるオッサンがいたら間違いなく私なので、優しく見守るか「あ――ァ」と合いの手を入れてほしい。きっと亡き夢野久作氏もそんな世界をお望みであるはずだ。

 

こういうことを書くと「何も分かってないネット勢が名作をバカにしている」と言われてしまうのだが、これが私なりの楽しみ方なので許して欲しい。正木先生の解放治療の一環だろう?(すみません。さっきから『ドグラ・マグラ』を未読の方にはまったく理解できないネタしか書いていません)

こうやってイジりがいがあるのも『ドグラ・マグラ』が愛され続けて(話題に出続ける)理由だと思う。

 

名作として読み解ける方には不動の名作として。

上辺の幻術にほだされて笑っている私のような下劣な人間には偉大なオモチャとして。

いつまでも唯一無二の作品であってほしい。

 

 

ということで、『ドグラ・マグラ』はまだ読み途中なので、それ以外に見つけた最近面白かった本たちのまとめである。

 

それでは行ってみよう。

 

 

ゴリラ裁判の日

 

「ゴリラ」という滑稽なワード感に加え、私の中でメフィスト賞受賞作はネタ扱いになっているので、かなり期待値が低い状態で読んでしまったのだが、正直に書きたい。

 

ごめん。

どストレートに面白かった。

 

そもそもミステリー小説じゃなかったし。ゴリラがこんなにもいい活躍をするとは思わなんだ。ゴリラが主人公という一要素だけで戦う物語かと思いきや、普通に「人間性とは」を問われる内容だったし、紆余曲折っぷりがいい感じにロックだし、終始振り回される感じで楽しんでしまった。特に裁判シーンは圧巻。こんな論破ありかよ。でもありだ。

ゴリラのせいか分からないけど、とにかく今までにない小説の面白さを味わえた作品でした。これは話題になるわ。

 

 

雨に消えた向日葵

 

2023年の年間ベスト10冊にも入れた作品。

これまでの読書歴のせいで私は警察が腰を据えて難事件に取り組む作品がめちゃくちゃツボだ。性癖を完全にそっちに曲げられてしまった。もう戻れない。その系譜でトップクラスの面白さを持った作品だった。

学校の帰り道、突如姿を消してしまった小学5年生の少女。最後に目撃されたのは、豪雨の中をひとり歩く姿。家族の悲嘆と大衆という名の残酷な観客たち。遅々としてまるで進まない捜査。いくつもの要素が効果を発揮しあい、読者の心にガツンとした読後感を与えてくれる濃厚なドラマである。いやー、カロリー高めなのにがつがつ読めちゃう作品、もう大好き。

 

ちなみに「警察が腰を据えて難事件に取り組む」の個人的最高峰は『犯人に告ぐ』『罪の轍』です。

 

 

くらまし屋稼業

 

もうなんなのこの人。どれ読んでも、ドンピシャで面白いんだけど。

ちょっと前まで歴史小説とか時代小説なんて、ほんのたまに評判が高いものを読む程度で、自分から探しに行くことなんてなかったのに。それが今村翔吾のせいで、いまの私は完全に歴史小説にも時代小説にもヤラれてしまう体質になってしまった。

なんなら現代を舞台にした小説にはない魅力を知ったばかりなので、積極的に探しに行くようになってしまった。私の年齢がそうさせているのか、今村翔吾のせいなのか正確に判断することは自身ではできないのだが、今村翔吾の輝きっぷりは誰もが認めるところだと思う。

こちらの『くらまし屋稼業』はマンガ化もされていて、その事実からも分かるように非常にエンタメ性が高く、面白さの真ん中を撃ち抜いてくるタイプの作品である。

もう十分に人気を不動のものにしつつある今村翔吾だけど、そろそろ本屋大賞にもノミネートされたりとかして、久々に歴史小説系で大賞を獲ってほしいものである。

 

 

がん‐4000年の歴史‐

 

たまに訪れる「読んでも読んでも終わらないような作品が読みたい欲」で選んだ作品。

疲れているときなんかは脳みそに負担にならないような作品を選んだり、純粋にエンタメ性だけで楽しめる作品を選びがちだ。

だけど私は何故だか分からないけど、疲れていたり、精神的にそんなに余裕がないときこそ「むしろもっと負荷がほしい」みたいな気分になる。いつまでも相手をしなければならない作品を読みたくなるのである。

 

で、すんごい賞を獲った作品なだけあって、重厚で知識欲がビリビリと刺激され、圧倒的な人間ドラマの数々に感動しっぱなしだった。

もちろん医学の専門的な話もたくさん出てくるので、私のようなアホに完全に理解することはできなかったのだが、著者の説明がべらぼうに上手いので、なんか大筋は分かったような気分で楽しめる。この辺りの面白さは『フェルマーの最終定理』とほぼ同じだった。

 

「病の皇帝」と呼ばれる"がん"と人間の4000年にも及ぶ壮大な戦いが描かれる。

それはがんの類まれなる悪辣さに対して、人間の知略と策謀と思い上がりの戦いであり、地道なデータの積み重ね、そして過ちを認める誠実さを求められる戦いでもあった。人間に備わったすべてをぶつけ続けた戦いである。

がんを描ききった本でもありながら、人間というものの本質を捉えた作品でもあると思う。

 

圧倒的な読書体験をもたらしてくれた著者に感謝。

 

 

模倣犯

 

これまで読んできた本の中で一番最悪な気分で読み進めた作品。

なのに読む手は止められないから、本当に始末に負えない。宮部みゆきという作家の恐ろしさが嫌というほど分かりました。もう無理。

 

 

こちらの作品に関しては、無限に感想を吐き出したポストがあるのでご参考までに。

 

 

 

『神に愛されていた』

 

最後はこちら。

どう紹介したもんかしばらく悩んでたけど、いつも通り素直に紹介するのが一番だろう。

 

私が人生で初めて実際にお会いした作家さんの作品。そして本にサインしてもらうのも初。緊張で様子がおかしくなってる私にも優しく接してくれる聖女のような方でした。

 

なぜ紹介の仕方について悩んだか説明させてほしい。

この作品は「才能」と「嫉妬」をテーマにしている。そしてそのテーマから番最初に頭に思い浮かぶ…いや、思い浮かんでしまうのはこの男である。

 

 

www.youtube.com

 

 

けんご氏。

現在の小説紹介界において、頂点の座をほしいままにしている男である。

そして彼は『神に愛されていた』の著者である木爾チレン氏の伴侶だ。

色々と近すぎるのである。

 

初めて直接お会いした作家さん。面識があると言っても差し支えがないレベルで会話もしてもらった。

一方で私のような敵ばかり作るような紹介とは真逆のアプローチで、圧倒的な人気を誇るインフルエンサー。

 

作品を読みながら、二人の顔がまあチラつくこと。

こうなるとどうやったって、冷静に作品を味わうことができない。

ただでさえ私は自らの才能に対する自信が揺らぎやすい人間なので『神に愛されていた』で描かれる苦悩が痛いほどよく分かる。とても読みやすいのに、私の心は終始ざわざわしっぱなしだった。

もうお二人の影響で訳が分からなくなっているのか、それとも作品自体に嫉妬深い人間を地獄に落とす力があるのか、判断できなくなってしまった。

読んでから数ヶ月経つが、感想の整理が全然できていない。濃い感情を味わったけど、果たしてこれは作品に由来するものなのか、それとも私が勝手に濃厚に仕立て上げているのか、はたまたそれも込みで作品の力とすべきなのか…。もう完全に私の心と脳内はドグラ・マグラ状態である。あ――ァ、チャカポコチャカポコ…。

 

いま分かったけど、今後の人生において何か不可解なことがあるたびに、たぶん私「ドグラ・マグラじゃねーか」って思っちゃう。なにこれ。今までの私を返して。

 

 

以上。ご参考あれ。