愚痴です。
凡人、儚い夢破れる
元々、己がそこまで優秀な人間だとも思っていなかったが、アホなりに「いつかはそれなりの成功を手にできるんじゃないか」なんて甘い考えを持ったり忘れたりして平和に過ごしていたのだが、どうやらどんなに間違ってもそんなことはなさそうだと気付いてしまった。
というのもこの本がきっかけである。
憂鬱でなければ、仕事じゃない (講談社+α文庫) | ||||
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とんでもなく暑苦しいタイトルであり、仕事には微熱程度の情熱しか持ち合わせていない自分には分不相応な書籍であることは容易に想像できたのだが、何を血迷ったか、完全に気の迷いとしか言えない理由で本書を手に取った。ちなみに著者のふたりのファンというわけでもないし、なんならふたりとも知らないぐらいだった。
もしかしたら神のいたずらだったのかもしれない。「お前には全然関係ないけど、この本読んでみれば」って。だってこの本のせいで私がどれだけ劣った人間であり、成功を手にするに値しない人間なのかを思い知らされたのだから。
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凡人、うんざりする
本書には素晴らしい言葉がたくさん詰め込まれている。どれもこれも社会的な成功を手にするためには必要なことばかりだ…たぶん。私自身が成功していないので、実証性は想像でしか測れないのだが、語っているお二方が成功されているのだからきっとそうなのだろう。
別に本書のことを否定したいわけではない。むしろ手放しで賞賛したいぐらいだ。
ただ本書の内容があまりにも私には到底追いつけないレベルの「努力論」で塗り固めてあり、その強固さに絶望感を抱かずにはいられないのだ。
凡人の悲しさを思い知ったわけだ。
例えばこんな記述がある。
幻冬舎の代表取締役社長である見城徹氏による文章である。
二十代の頃、僕はずっと憧れていた石原慎太郎さんと、仕事をしたかった。すでに石原さんは、大作家だったし、勢いのある政治家だった。生半可なことでは、仕事をしてくれないだろうと思い、僕は、学生時代繰り返し読んだ『太陽の季節』と『処刑の部屋』の全文を暗記し、初対面の時、石原さんの前で暗唱した。
全文を暗記って…。処刑の部屋は短編小説なのでそれなりにはできるかもしれないが、太陽の季節は普通の長編小説だ。余程の異常な記憶力があるか、それとも異常な努力をしない限り不可能だろう。とんでもない御方である。
この規格外の行ないが功を奏し、後々、幻冬舎では石原慎太郎のベストセラー『弟』を発表する運びとなる。
美談である。
素直に聞いていればいいのだろうが、私は思う。そう、凡人である私は思う。
そこまでやらないとダメなの…?
凡人、愚痴る
はっきり言って、私にはムリだ。いや、やってもいないのにそんなことを言うべきではないのだろう。では言い方を変えてみよう。そこまでやりたくない。もっと普通にしていたい。
見城氏は他にも、「毎日9時から夜中の2時まで働く」みたいなことも書いている。それだけの努力をしたからこそ結果が出るし、抜きん出ることができるのだと言う。
確かに仕事は結局のところ、殺し合いである。他人にいかに勝つかを追い求める行為である。そのためには甘っちょろいことを言わずに、死ぬほど努力をして殺し合いに参加しなければならない。死にたいのであれば別だが。
だが私は思う。
それだけの努力をしたとして、身体が保つ人ってどれだけいるのだろうか。それだけ自分を追い詰めて精神的に耐えられ続けられる人ってどれだけいるのだろうか。
それは分からずとも、少なくとも自分がその中に入っていないことぐらいは分かる。
つまりはあれだ。成功したいのであれば、体力的にも精神的にも圧倒的に健康な人でなければムリだということだ。それは異常なまでに優秀な頭脳を持っているか、だろうか。
こんなことを言っても本当に仕方ないのは重々承知なのだが書かずにはいられない。
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凡人、それなりに落ち着く
ただ少し救われるのは、そちら側の道(狂ったような努力をして結果を出す側)は自分のような虚弱体質の人間には歩めないと分かったこと。
何か成果を出したいのであれば、自分なりの方法を見つけるべきだと理解できたことである。
まあ身の程を知ったというわけだ。これだけでも得るものがあったと言えるだろう。
確かに見城氏は素晴らしい成果を挙げたわけだけど、結局彼は私ではないし、同じやり方で成功できるわけでもないだろうし、彼のやり方が常に正解だということもないだろう。というか、そう思って自らを納得させるぐらいしかやりようがない。
世の中には10kg持つのにもヒイヒイ言う人もいれば、100kgを軽々と持ち上げられる人もいる。それぞれ持っている能力は違う。
他人が持っている能力に驚くこともあるが、それでもどうしようもないぐらい自分には自分の身体しかないので、不満だったとしても付き合っていくしかないのだ。
なんてことを思った次第である。
以上。
それにしても暑苦しい本だったなぁ…。いや、白かったけどね。エネルギーにやられて読むのを止められない感じだった。
きっとこの人、仕事のときもこんな感じで周囲を付き合わせてしまうんだろうなぁ。
憂鬱でなければ、仕事じゃない (講談社+α文庫) | ||||
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