角野卓造ではない。
大好きな作家、貴志祐介
どうも、読書中毒ブロガーひろたつです。
私は極度の小説中毒であるが、小説であれば何でもいいという訳ではない。端的に言うと、「面白い小説」しか読みたくない。そんなわがまま坊や(30過ぎ)である。
そんな私の欲求をかなり高いレベルで満たしてくれる作家はひっじょーに少ない。私がもっと了見の広い人間であれば、もっと色んな作家を認められるのだろうが、お客様は神様気分で、読者様は選り好みしてもいいと決めつけている私は、とにかくまあハイレベルな作品にしか心奪われない。
で、そんな好き嫌いの激しい私を高確率で満足させてくれるのが、今回の記事の主役である。
その名は貴志祐介。
私は彼のことが好きすぎて、ノートに「貴志祐介」と無意識で落書きするレベルである。やばいかもしれない。でも全然平気だ。基本的に愛とは他人からは理解不能なものなのである。
遅筆にしてホームランバッター
貴志祐介がどんな作家かと問われれば、非常に簡単に答えられる。
①ホームランバッター
②遅筆
主成分はこれだけである。あとは薄毛とか角野卓造に似てるとか、小説には全く関係ない要素ばかりである。無視してもらって構わない。
恐ろしく執筆速度は遅いのだが、発表される作品はどれも高水準。というか、超面白い作品ばかり。どんな頭してたらあんなもん書けるんじゃい、と言いたくなるが、画像を見てそれなりに納得したりした。毛髪を神に捧げたのと引き換えに、小説の才能とかネタを貰い受けたようだ。これがエネルギー保存の法則か。しゅごい。
遅筆だけど超面白い作品しか書かない貴志祐介のことを、私は密かに「小説界の冨樫」と読んでいる。マンガに明るい人なら理解してもらえると思う。ただし貴志祐介の場合、小説家なので連載途中で止まるようなことはないのだが。
貴志祐介のオススメ作品を紹介!
さて、そんな貴志祐介だが遅筆なりにある程度の著作は発表されている。
映像化作品も多く、彼のことを知らない方の中には「どれから読んだらいいか分からない」と思っている人もいるだろう。
そこで貴志祐介作品はすべて読破している私が、独断と偏見を極限までそぎ落とし、彼の作品の中でも必読の5作品を紹介したいと思う。
どれも名作と呼ぶにふさわしい作品ばかりである。ぜひ堪能していただきたいと思う。
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デスゲーム小説のパイオニア『クリムゾンの迷宮』
火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された。死を賭した戦慄のゼロサムゲーム。一方的に送られてくるメッセージ。生き抜くためにどのアイテムを選ぶのか。自らの選択が明日の運命を決める―!
デスゲーム小説のパイオニアにして最高傑作。
謎が謎を呼ぶ展開と、後味の悪さが最高に心地よい、作者の能力と性格の悪さを両方楽しめる傑作である。
貴志祐介作品に多い、「トラウマ要素」がほとんどない稀有な作品でもある。
主人公と一緒に生き残りをかけた戦いに挑戦していただきたい。この興奮は他では味わえませんぜ。
史上最怖小説に幽霊は出てきません『黒い家』
人はここまで悪になりきれるのか? 人間存在の深部を襲う戦慄の恐怖。巨大なモラルの崩壊に直面する日本。黒い家は来たるべき破局の予兆なのか。人間心理の恐ろしさを極限まで描いたノンストップ巨編。
今までに数多くの「怖い小説」を読んできた私だが、これ以上恐怖を感じる作品はなかった。過去最恐である。
この作品のすごい所は、「幽霊」や「超常現象」「呪い」的な安易なアイテムに逃げなかったことである。設定や、物語が持つ力、そして筆力で最高の恐怖体験を読者に提供してくれる。
私がこの作品を読んだのは20過ぎの頃だったのだが、仕事が終わって家に帰るのが怖くなってしまったのは、いい思い出である。
少年の心に焼かれる『青い炎』
櫛森秀一は、湘南の高校に通う十七歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹との三人暮らし。その平和な家庭の一家団欒を踏みにじる闖入者が現れた。母が十年前、再婚しすぐに別れた男、曾根だった。曾根は秀一の家に居座って傍若無人に振る舞い、母の体のみならず妹にまで手を出そうとしていた。警察も法律も家族の幸せを取り返してはくれないことを知った秀一は決意する。自らの手で曾根を葬り去ることを…。完全犯罪に挑む少年の孤独な戦い。その哀切な心象風景を精妙な筆致で描き上げた、日本ミステリー史に残る感動の名作。
残酷な血なまぐさい作品ばかりを上梓している貴志祐介だが、この作品は珍しく「青春モノ」である。ただし、そこはやはり貴志祐介。そんじょそこらの爽やかな青春モノを期待していたら背負投を食らうことだろう。
純粋さが生んだ、この悲しくも残酷な物語にきっと、あなたの胸は震えるはずだ。
読み終わったあと、誰かに勧めたくなる衝動に襲われるので注意である。
こんな不道徳の塊どういうつもりで書いたんだよ 『悪の教典』
晨光学院町田高校の英語教師、蓮実聖司はルックスの良さと爽やかな弁舌で、生徒はもちろん、同僚やPTAをも虜にしていた。しかし彼は、邪魔者は躊躇いなく排除する共感性欠如の殺人鬼だった。学校という性善説に基づくシステムに、サイコパスが紛れこんだとき―。ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー傑作。
倫理観の欠片もない怪作である。
人によっては不快感に襲われてしまい、読み途中にも関わらず壁に叩きつけてしまうかもしれない。かなりの劇薬である。
「こんなの読んじゃダメだ」「でも面白くて止められない」
そんな背徳感に身を焼かれてもらいたい。
あなたの心が悲鳴を上げることを楽しみにしている。
脳みそから快楽物質がヤベえ 『新世界より』
ここは病的に美しい日本(ユートピア)。
子どもたちは思考の自由を奪われ、家畜のように管理されていた。手を触れず、意のままにものを動かせる夢のような力。その力があまりにも強力だったため、人間はある枷を嵌められた。社会を統べる装置として。
1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖(かみす)66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄(しめなわ)で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力(念動力)」を得るに至った人類が手にした平和。念動力(サイコキネシス)の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた……隠された先史文明の一端を知るまでは。
この作品に説明はいらない。とにかく「面白い」の一言である。
私がこの「新世界より」を初めて読んだときはそのあまりにの面白さに、翌日仕事であるにも関わらず、寝るよりも読むことを優先したぐらいであった。おかげで次の日大変だった。でもその大変さも素直に受け入れられるぐらいの超エンタメ大作。こんなにおもしれえなら、睡眠ぐらいくれてやるよ。
上中下と3冊の超大作なのだが、それに見合った最高の興奮を提供してくれる。読んでいる最中、脳みそから謎の汁がダラダラ出ているのを実感するはずだ。
興奮しすぎてあっちの世界に行かないように気をつけてもらいたい。
地雷作品
あくまでも私見ではあるが、数少ない貴志祐介の地雷作品もご紹介しよう。とは言っても、そもそも作品の面白さなんて主観でしか測れないので、この記事の最初っから私見なのだが。
グロ注意 『天使の囀り』
傑作を連発しまくっていた初期の作品になるのだが、タイトルからして名作感が溢れている。ホラーとしてかなり設定も作り込んでいて秀作だとは思うのだが、いかんせんグロ描写がきつい。
ホラー作品を評価するときに一番重要視しているのは、言うまでもなく“怖さ”である。方法は何でもいいから、とにかく読者を恐怖のどん底に叩き落してくれる。それがホラーの名作である。
しかしながら、こちらの『天使の囀り』も然り、世に出回っているホラーの多くが、「グロ」に頼っていて、人体を残酷に破壊したり、気持ち悪い描写をしておけばいいと勘違いしている。怖いと気持ち悪いは明らかに違う。気持ち悪いだけの作品は、ホラーとして成り立っていないとさえ思う。
ただ、『天使の囀り』の場合、グロ描写が多いだけで、ちゃんと面白いので、そちらの耐性がある方であればまったく問題なく愉しめることだろう。
設定に溺れたな 『ダークゾーン』
これは…ちょっとフォローの仕方が分からない。
読めば分かるけれど、貴志祐介作品らしく、世界を作り込んでいることは伝わってくる。だから物語もそれなりなものにはなっている。
しかしながら、設定を作ることに集中しすぎて、ストーリーの運びがイマイチだったり、人物が浅薄だったりと、粗が目立つ。いつもの貴志祐介作品みたいに、周囲の景色が見えなくなるぐらいのめり込む感じがまったくない。
それなりの面白さはあるから読んで損はないだろうけれど、やはり他の名作と比べてしまうとあまりにも見劣りする作品である。
おまけ
さて、ここまで貴志祐介の超オススメの5冊と、勝手に地雷と決めつけた作品を紹介させてもらった。
かなりの長文になってしまったが、ここまでお付き合いいただけた方は、相当な貴志祐介に興味持たれたものと思われる。
そこでおまけとしてもう一冊紹介したい。
これである。
面白い小説しか書けない作家貴志祐介が、自身の創作術をこれでもかと公開した作品である。
小説家志望の方にオススメできるのはもちろんなのだが、それよりも私としてはこの本で触れられている「貴志作品の舞台裏」が堪らない。名作たちがどうやって生まれてきたのか、アイデアの発端は、どうやって読者を惹き込んでいるか、などなど貴志ファンとしては完全にファンブックとして楽しめる内容になっている。
装丁があまりにも地味すぎて全くエンタメを感じないのだが、中身はちゃんと非常に濃ゆい内容になっている。エンタメに魂を売った人間がどれほど知恵を絞っているかよく分かることだろう。
そして、ここまで紹介した貴志作品を気に入っていただけたのだあれば、最高に楽しめるはずだ。
以上。
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