どうも。
強烈なバンドを紹介する。
クソみたいなMV
私が彼らを知ったのはこのMVがきっかけだった。クソみたいなMVである。
ふざけているのは分かるが、これはなかなかの衝撃だ。印象に残すことを狙っていたのであれば、それは間違いなく成功している。しかし不快感もそれ相応だろう。
まあとにかく私はこのMVによって彼ら『忘れらんねえよ』を文字通り忘れられなくなってしまったのだった。
スポンサーリンク
パンクを感じる
私はどんなジャンルの音楽も聴くようにしているが、それでも特に好きなのはパンクである。魂の叫び的なのが大好きなのだが、彼らにもその血を感じた。
アーティストにとって演奏技術はマナーだと言われる。
私はそこまで耳の肥えた客ではないのであまり演奏面での評価はしない。
じゃあ何かというと熱量である。
熱量というやつはなにも激しければいいわけではなくて、アーティスト本人の情熱だったり覚悟だったり必死さだったり、純粋に音楽を楽しむ心だったりする。
私は『忘れらんねえよ』にその熱量を感じるのだ。そこには上手い下手を越えた表現が存在する。冷静に聴けばこのボーカルはヘタだ。音域だって狭い。だけど何かこう真に迫るものがあるのだ。
これもバカみてえなMVである。何を伝えようとしているのか分からんが、とにかく彼らがバカであることはよく分かった。
インタビューで面白いことを語っていた。
ロックのいいところって、どんなことであれ異常なまでに追求していくと、ある瞬間、その分野でロックな存在にならせてくれるんですよ。「お前のティッシュの直し方、それロックだよ」って言ってもらえる。ついティッシュを直してしまうオレを救ってくれるんです。
ボーカルがついついティッシュの位置を直してしまう、という話から派生したくだりなのだが、とてもロックというか表現の本質を突いた発言だと思う。
どれだけバカでも、見た目が地味だったとしても、ハンデがあろうとも、何か突出した部分があればそれが看板になり、認めてくれる人が現れるものだ。もちろんそれゆえに嫌いになる人もいるだろうが、それは食事をするとトイレに行きたくなると同じことで、仕方のないことだ。
スポンサーリンク
ひどすぎる歌詞
さて、細かいことは色々あるが、彼らの最大の魅力は圧倒的にひどい歌詞にあると思う。
『ばかばっか』といい、この『CからはじまるABC』といいなんでこんなにも歌詞に自慰を多用するのか。他にこんなバンドを私は知らない。いても全然構わんが。
自慰というアイテムの使い方に関してはノーコメントで行きたいが、こんなふうに己の汚い部分を恐れずに出し切っているからこそ、聴いている私たちの心を震わしてしまうのだろう。決して自慰のトリッキーさにやられているわけではないのだ。
例えばこの『CからはじまるABC』にこんな歌詞がある。
逢いたいとかあなたを愛してるとか
そんなもん今さらもう聴きたかねえよ
あの娘は彼氏候補の男と
グループでスノボに行った
残された俺たちは
つぼ八で飲みました
夢のなかでもがいている
いい それでいい
オナニーで失われるエナジー
いい それでいい
「オナニー」と「エナジー」というクソみたいな韻踏みといい、なんだこの醜さは。寂しさは。だけどそれゆえの美しさは。
ヒットチャートに並べられる音楽はディズニーに近いものがある。その場で完成されており、できるだけ見苦しくならないように不自然なまでに綺麗に作られている。だからこそいろんな人が夢を見れる。それは店舗に並べられた製品もそうで、少しでも傷のあるものは出荷前に弾かれてしまう。不自然なまでに綺麗なものが揃っている。
しかし、実際の生活や人間の心ってのは、キレイ事ばかりではなくて、人には見せられないようなみっともない部分もあれば、恥ずかしい部分、卑怯な部分、と色んな面がある。
そういった「本来のもの」を歌っているのだ。それこそ恥ずかしげもなく、恥ずかしいことを。
人間は自分よりも劣っているものにしか「可愛い」という感情を抱かないそうだ。基本的に自分の優越感を満たすものが好きなのだと言える。
だからこうやって己の汚い部分をさらけ出されると、「仕方ねえやつだなぁ」と何だか受け入れてあげたくなる。これは無意識に彼らを見下しているからなのだろう。
しかし、当然のことながら人をバカにできるほど立派な人などほんのごく一部しかおらず、圧倒的多数の人達がいわゆる普通の人達であり、そんな大差なかったりする。なので本来であれば、こんなにも正直に己をさらけ出せる人には尊敬の眼差しを向けるべきである。まあこんなに「オナニー」を連呼されたらムリだけどな。
グッと来る歌詞もある
下ネタを絡めずともいい歌詞を書けたりするから侮れない。
君がいない街でライブハウスで
「君が好きだ」と歌ってる
明日にはきっと
世界は僕らのために変わんだ 変わんだ
どちらが彼らの本性からは分からないが、どちらにしろ面白いアーティストであることは間違いない。
個人的にはこれからも唯一無二のクソみたいな歌詞を綴り続けてほしいものである。
以上。