部下育成は難しいのである。
ミス、それは必然
私は職場で100人を超える部下を抱えている。なので仕事のほとんどは部下との対話になる。指示を出し、質問を受け、指摘し、相談され、説得し、批判され、批判し返す。
そんな毎日を送っている。
部下なので仕事を任せるわけなのだが、ときおり彼らはミスをする。ちょっとしたものだったら笑い飛ばして終わりにする。それが俺のスタイル。
だが数ヶ月に1回ぐらいの割合でけっこうな金額の損失に繋がるようなミスをしてしまうこともあり、そういうときは適当極まりない私でもさすがに問題を追求することになる。
これはどこの職場でもある光景だと思う。人はミスをする生き物だからだ。
偉そうに書いているが私だってくそほどミスをする。
上司という立場にかこつけてそのミスをもみ消しているだけで、少し前に部下に注意したことを私がミスしていることなんてザラだ。そしてそれがバレても笑って許してくれる部下には感謝している。上司がポンコツだと部下が強く育つから助かる。ビバポンコツだ。
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原因が大事なんだけど…
問題が起こる。みんなが困る。誰かに迷惑がかかる。ミスした本人はヘコむ。
色々なことがミスによって引き起こされるが、それはそれとして、次に同じことを起こさないようにするために対策を考える。
そのためにはミスをしたそのときに何が起こったのか?を追求しなければならない。
タイムマシンでもあれば、そのときに行って直接自分の目で確認してくるのだが、今の所その技術は私の知る限りでは確立していないので、当事者の部下たちから聞き出すしかない。ああ、タイムマシンがあるならそのときに行ってミスを阻止すればいいのか。
しかし、この聞き出すことが非常に難しいのである。
ミスした人はまず己の保身を考える
ミスした部下には色々な感情が渦巻く。
組織の中でミスをした経験がある人は分かると思うが、実はミスをした瞬間に頭によぎるのは己の保身である。
「やばい、俺、どうなっちゃうんだろう?」
「こんなミスしちゃったらみんなにどう思われちゃうんだろう?」
といったものである。これは別に悪いことでもなんでもない。命ある生き物として普通の感覚である。誰でも自分の身が一番大事だからだ。
誰かに迷惑がかかってしまうとか、会社の損失だとかはそれらを考えたあとにやってくる。いわば己の保身を考えるのは本能であり、周囲のことを考えるのは理性なのだ。
※参考書籍
反省させると犯罪者になります (新潮新書) | ||||
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「なぜ?」の難しさ
ミスした部下にまず最初に上司がかける言葉第一位は「なぜ?」だ。
私のように部下に気に入られることに腐心している上司の場合だと、「大丈夫?あんまり気にしないでね。こんなの大したことないから、うんうん、ミスしちゃうことだってあるよね。大丈夫大丈夫、何とかするから。OKOK。俺もこういうミスしてきたし。いやむしろ今もするし。だから責めないよ、俺は君のことを。ね?だから俺のこと嫌いにならないでね?ね?ね?優しいでしょ?仲いい子とかに俺が優しかったって伝えてね?」と必死にフォローすることもあるだろうが、「なぜ?」が一般的だろう。なぜなら問題を解決することが上司の役目であるからだ。
しかしこの「なぜ?」が曲者なのである。
上にも書いた通り、部下は自分の身を案じている。できるだけ自分に害が及ばないように事を運びたいと考えてしまう。これは自然なことなのだ。
それゆえに上司がただ事実を知りたいがゆえの「なぜ?」が、部下の「言い訳」を引き出してしまうのだ。
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部下に嘘を吐かせた経験
私は過去に「なぜ?」という質問のせいで、500万ぐらいのミスを解決できずに終わった経験がある。
その時私は「なんで?」とかなり強めに部下に聞いた。今思えば言い方そのものが良くなかったのかもしれない。感情が乗りすぎていた。得てして能力の低い上司は感情的になるものだ。上司自身の保身がそれに拍車をかけたりする。そのときの私はまさにそれだった。
ミスが発生したときその場には部下の子がひとりしかいなかった。20代前半の経験の少ない子だ。
しかし彼女は自分ひとりしかいなかった状況を逆手に取り、「私は何も分かりません」と言い張ってしまったのだ。いくら聞いてもその答えは変わらなかった。
だが私は返答する彼女の目が泳いでいるのを見て、すべてを察知してしまった。
そして察知したからこそ、追求することを止めてしまった。嘘を吐いている人に白状させるような残酷なマネができなかったのだ。彼女の内面の葛藤だけでもう十分だった。人の汚い部分を直接見せられたような気分になったのだった。
相手の味方であることを意識させる
「なぜ?」と聞く上司に責める気持ちがあるにせよないにせよ、この言葉はあまりオススメできない。部下の保身を煽りやすい。
なので上司はミスが発生したときはあえて「なぜ?」を避けるべきだ。
ミスした部下は自分の身を案じている。だからこそ上司は部下に寄り添い「自分は味方である」と意識させてあげる必要がある。それができないと事実はどんどん部下の都合のいいように捻じ曲げられてしまう。 それでは真の解決は到底無理だろう。
そう考えると、これは上司と部下の関係性の問題でもあるのかもしれない。
「この人は私を守ってくれない」と部下に普段から思わせていれば、部下の保身に拍車をかけることだろう。信頼というのはこんなブログ記事ひとつで語れるほど簡単なものではないが、それでもやはり信頼がものを言う。信頼は難しいくせにやたらとあらゆる場面で必要になるから厄介だ。
常日頃から部下をいい意味で頼る姿勢と、ピンチの時には寄り添う姿勢が大事なのだろう。
そしてミスをしたときは「なぜ?」ではなく、「どうしたの?」というような相手側に立った言葉を使うべきであろう。
まあこの辺は自分で考えてくれ。
以上、健闘を祈る。