どうも。
今回は、会社員が読むと心の栄養になると有名な児童書である『びりっかすの神様』を紹介しよう。
あらすじ
父親を亡くしたばかりの転校生木下始は、新しいクラスで誰にも見ることができない「びりっかすの神様」と出会う。びりっかすの神様はクラスの中でビリになった人にしか見ることができないことを突き止めた始。
びりっかすの神様と始、そしてそれを取り巻くクラスメートとの物語。
う~ん、いい紹介文が無かったので私がこしらえたのだが、なかなか難しいものである。というかこの紹介文で面白さが伝わるとは到底思えない。作者の岡田淳には申し訳無さでいっぱいである。
あまりネタバレはしたくないし、でも内容は伝えないといけないし…。
まあとにかくこんな感じである。
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『びりっかすの神様』に含まれる示唆
多くの児童書がそうであるように『びりっかすの神様』にも示唆が含まれている。そしてその示唆こそが『びりっかすの神様』が会社員にオススメされる所以である。
内容を語りたくはないので、ざっくりとだけ紹介すると…
・ビリになるということの意味
・順位付けをするということ
・目的の共有
・本気でやることの意味
ここら辺が主な所だろう。
児童書だがどれも社会人として考える機会が多いテーマだと思う。だからこそこんなにも愛される作品になったのだろう。
俗言う感動作というものではない。作品に含まれるテーマを、自身の職場に置き換えることで物語に深み生まれるのだ。読んでいると作者から「あなたはどうですか?」という優しい問いかけをされているような気持ちになった。
本気でやることの意味
作中で「びりっかすの神様」はビリになれば誰でも見ることができると発見した始は次第に、「ビリ仲間」を形成していく。その過程でわざとビリになることに疑問を感じるシーンがある。そこがこの物語のハイライトでもあるので、詳しくは読んでいただきたい。
手を抜くことは悪いことだろうか?
本気でやることは素晴らしいことだろうか?
私はそんな問いかけを自分にしてみた。
たぶん、ひどいことを言うとそんなのはどうだっていいのであろう。その人が好きにすればいいのだ。作中であるように「神様を見る」という目的のためにテストや競争で手を抜くのもその人の自由だし、一番になるために本気で取り組むのも自由だ。
ただ、手を抜くことと本気でやることではあるものが大きく変わる。
それは「面白さ」だ。
適当にやったことで成果を得られても何も面白くないのだ。本気でやるからこそ人は楽しめるし喜べる。感動もそうだろう。指先ひとつでできる携帯ゲームに感動することは絶対にない。
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児童書を読むこと
『びりっかすの神様』の話とは若干ずれるかもしれないが、児童書の話をしたいと思う。
多くの人は歳を重ねるごとに児童書から離れていく。それは当然のことである。なんてったって子供向けに書かれているのだから。
ただ児童書には大人向けの小説や本にはない力がある。
児童書はその特性上、物語に含まれるメッセージが読者に近いのだ。
子供相手のものなのであまりにも比喩表現に徹してしまうと何も伝わらなくなってしまう。比喩というのはオシャレだし脳に刺激がある表現方法であるが、「遠回し」とも言える。
この「メッセージの近さ」が児童書を大人が読むメリットであると私は考える。
というのも大人は遠いものが好きだからだ。遠い言い回しでのプロポーズ。直接褒められるよりも人づてに伝わって来た方が良かったりするだろう。
その理由はまたの機会として、児童書の力はその距離感の違いから生まれる。直接的だとビジネス書や自己啓発になってしまう。そうではなく、物語というものに優しく内包されたメッセージだからこそ、私達の胸に響くのだろう。
伝え方というものは奥が深く、不思議である。
どんな答えや疑問を持つだろうか?
この作品の中に答えは提示されない。最後の最後で明かされる「びりっかすの神様」の正体も、正直意味が分からない。
でもそんな作品の余白があるからこそ、私たちに考えるキッカケや自分なりの(自分らしいとも言い換えられる)答えを見つけることができるのだろう。素敵な話である。
例え答えを見つけることができなくても構わない。世の中の大抵の問題は答えがない。誰にも解決策が見い出せなかったりする。
そんなときの最良の形態は「誰もが疑問に思っている」だ。
答えはなくとも疑問に感じる、という状態には前向きなエネルギーが含まれている。未来の匂いがする。
『びりっかすの神様』は非常に多くの示唆を含んだ良書である。
作品は非常に優しく、あなたの心に寄り添うものだ。疲れている人にオススメしたくなるもの頷ける。
人生を変えるキッカケになるなんて大それたことを言うつもりはないが、心を洗濯するような、ちょっとリセットするような気持ちは得られるのではないだろうか?
以上。
びりっかすの神さま (新・子どもの文学) | ||||
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