どうも。
クソ面白い本を見つけたのでご紹介。
内容紹介
1998年の宇多田ヒカル (新潮新書) | ||||
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宇多田ヒカル、
椎名林檎、
aiko、
そして、浜崎あゆみ――奇跡の年にそろって出現した、偉大な4人の音楽家。
彼女たちは何を願い、歌い続けてきたのか――1998年。史上最もCDが売れた年。宇多田ヒカル、椎名林檎、aiko、浜崎あゆみがデビューした年。偉大な才能がそろって出現した奇跡の年と、4人それぞれの歩みや関係性を、「革新・逆襲・天才・孤独」をキーワードに読み解く。はたして彼女たちは何を願い、歌い続けてきたのか? なぜ今もなお特別な存在であり続けているのか? 苦境の音楽シーンに奮起を促す、注目の音楽ジャーナリスト渾身のデビュー作!
これだけの天才が同時期に活躍したという事実がまず面白いし、それを考察しようとする著者の試みも素晴らしいと思う。
素晴らしい本に出会うたびに思うのだが、面白さを伝えるためにどれだけ言葉を尽くそうとも、実際の価値を損なうだけでまったく役に立っていない。
この本の面白さは、言いたかないが「読めば分かる」だし、「読まないと分からない」だ。本当に申し訳ない。
ただ保証はできる。
年間100冊以上の本を読む私だからこそ言えるのだが、この作品は傑作である。
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4人のアーティストにスポットを当てる
この作品は1998年という史上最もCDが売れた年を中心にして、音楽シーンの移り変わりや、音楽が進むべき道を分析した本になる。
そしてこの本には主人公がいる。
それが、宇多田ヒカル、椎名林檎、aiko、浜崎あゆみの4人である。
1998年を語る上で、彼女たちの存在を無視することはできない。当時の日本は彼女たちを中心に回っていたと言っても過言ではない。
当時、私は中学生だった。
毎日のように放送される音楽番組を見るたび、「音楽ってすげえな」と興奮していた。
私はそれが思春期特有の「ロックの洗礼」的なものだと思っていたのだが、単純に「すげえ時代」だったようである。本書を読んで知った。
時代を先読みしていたSMAP
本書を読む上でみんなが期待するのはタイトルにもある宇多田ヒカルだと思う。
確かに宇多田ヒカルについても多くのページが割かれているし、宇多田ヒカルがどのようにして音楽シーンを破壊したか、という考察は本当に興奮させられる内容だった。
しかし、本書の面白さはそれだけにとどまらない。
音楽シーンを遠くもなく近くもないところから冷静に、だが確かな熱量を持った視点で捉えた本書は多くのアーティストの存在に触れる。
その中でも象徴的だったのがSMAPに関する一節である。
とんでもなく痺れた文章だったので引用させていただく。本書の魅力が凝縮されたような箇所である。
「夜空ノムコウ」は単純に1998年を代表する一曲となったことにとどまらず、自分も含めた当時の20代の若者(特に同性)にとって歌謡曲/アイドル・ソングが久々に自分たちの気持ちを代弁してくれたように思えた曲だった。
あの頃、渋谷付近のカフェや飲み屋で「SMAPの『夜空ノムコウ』、いい曲だよね」という会話を一体何人としたことだろう。同年代の男が同性のアイドルの曲を(ただ場を盛り上げるためではなく)気持ちを込めてカラオケで歌うという、今となっては当たり前となった光景を最初に生んだのも、この曲だったという実感がある。
あのころの未来に ぼくらは立っているかなぁ
全てが思うほど うまくはいかないみたいだ
このままどこまでも 日々は続いていくのかなぁ
雲のない星空が マドのむこうにつづいてる
あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ
夜空のむこうには もう明日が待っている
今思えば、歴史上日本で最もCDが売れた年に二番目に売れたこの曲には、「きっとこんな日々が続くことはないだろう」という、まるで日本の音楽業界の凋落を予言するような、漠然とした、しかしリアルな感触に満ちた不安が歌われていたようにも思えてくる。
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突き抜けた先にあるもの
当時爆発的にCDが売れ、時代の寵児として祀り上げられる一方で、彼女たちは苦難の時期を過ごした。
人が悩むときはいつでも、誰でも一緒である。
人か金だ。
絶大な人気を得るに連れて、動きが取りづらくなるしお金に関わる部分が大きくなりすぎて、企業と癒着状態になってしまう。企業側が彼女たちに依存してしまうのだ。
またファンも彼女たちを悩ませる一因となった。
神格化する盲目的なファンがいる一方で、妬みをネットで発散するような声が上がる。
純粋に彼女たちの才能を音楽だけに集中させるには、あまりにも周囲がうるさすぎた。
突き抜けた彼女たちはあまりにも孤独だった。
支えになるもの
そして本書のテーマが最後に語られる。
孤独の先にあった彼女たちを支えたものの存在。
ありきたりな答えかもしれない。
だがそれが真実であり、彼女たちに力を与えてくれたものなのだ。
音楽を文章で楽しむというなかなか珍しい体験をできる貴重な本である。
私の拙い文章では本書の価値を伝えることはやはり難しいと言わざるをえない。
私はネタバレをしたくはないので、気になる方はぜひ本書を手に取ってもらいたいと思う。
以上。
1998年の宇多田ヒカル (新潮新書) | ||||
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