どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。
今回は私がこれまでの読書人生の中で、十指の中に入るであろう傑作の紹介である。というか、もうすでに紹介する必要がないぐらいに知れ渡っているのだが、あえてくどいぐらいに推したいと思う。
よく言われるやつ
年がら年中本を読みくさっている生活を送っていると、たまにリアルでも「オススメある?」と気軽に聞かれることがある。ネットではこんな感じに人を寄り付かない雰囲気を醸し出しているが、リアルでは面倒見の良い中間管理職を演じているので、そんなことを聞かれたりするのだ。
正直、オススメ作品なんて腐るほどあるので、語りだしたら1週間は止まらない。それぐらいの読書マニアだ、私は。だから気安く聞くな。
とはいえ、せっかくの読書の入り口にやってきた迷い子である。その深淵に引きずり込むのはやぶさかではない。できることなら、とんでもない一冊を教えてとんでもない読書体験をさせて「とんでもねえっ!」と言わせたい。まあ、もし本当に口に出してそんなこと言ってたら、気持ち悪いから今後一切相手しないけど。
読書でしか味わえないやつ
で、そうなると結構強烈な作品をオススメしなければならない。面白い本はあれど、強烈となると限られてくる。
ミステリーを読む人であれば分かるだろうけど、強烈な読書体験といえば“あのネタ”だろう。
真相が分かった瞬間の脳髄がしびれるような、快楽中枢を直接刺激されたかのような、最高の読書体験。あれを食らったら間違いなく中毒者に仕上がる。
そしてあのネタを使っていて、読書初心者でも読みやすい作品、とっつきやすい作品となると、自ずと作者も限られてくる。
ミステリー界の変人 ”歌野晶午”
以上の条件を満たす作者と言えば、絶対に東野圭吾だ。超無難である。
だがだ。私はあえてそこで歌野晶午で行きたい。
東野圭吾では変態性が足りない。できることなら、まだ汚れていない読書初心者を変態で汚してやりたい。だったら歌野晶午一択である。(ちなみに、オススメする人によるけれど、乙一のパターンもある)
歌野晶午の特徴としては、数いる推理小説作家の中でも「大技を狙う」ことが挙げられる。
新人でデビューしたときからその傾向があるのだが、密室がどうとか、どうやって殺したか分からないとか、アリバイがどうのとか、そういった部分では勝負を仕掛けてこない。
とにかく読者を欺きたい。驚かせたい。そんな異常とも言える情熱が作品の根底にあるのだ。
そしてもう一つ、歌野晶午の特殊な点がある。
それは「成長」し続けている、ということだ。
推理小説家によく見られる現象なのだが、トリックという部分に関しては年を追うごとに衰えてきてしまう。もっと言えば、デビュー作のトリックが一番アイデアとして優秀だったというのも少なくない。
ある意味トリックというのは手品の種を考案するようなものだ。
私は手品もやるのだが、実は種を考案する方というのは世界の中、いや、歴史の中でもわずかしかいない。
ほとんどの人達は、元のアイデアに手を加えて発表してみるぐらいのことしか出来ないものなのである。それでも十分優秀な部類だ。
つまり、本当の種の生み出せるのは、限られたごくごく一部の才能にしか許されない、ということ。
そしてこれは推理小説のトリックにも言えることで、一人の作家が良質なトリックを考案できるのは一つか二つが精一杯。それ以降はテクニックなどでカバーをしていくもので、アイデアの質は確実に落ちていく。悲しいけれど、それが現実である。
だが、歌野晶午は違う。たまに訳のわからないことをしだすときもあるが、年を重ねるごとにトリックのインパクトが増してきているのだ。はっきり言ってまともじゃない。成長の仕方がバグってる。
そしてそんな歌野晶午の「大技」と「成長」の集大成、最高傑作が『葉桜の季節に君を想うということ』なのである。(ここまでが前置き)
本の紹介
「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たして―。
ちなみにだが、私は装丁からして『葉桜~』が好きで、トップ画の装丁しか許していない。文庫版も綺麗は綺麗なんだけど、単行本版には勝てない。
注意点
このブログでもリアルでもだけど、毎度本を勧めるときに言っていることがある。
「あらすじもネタバレみたいなもんだから、取り敢えず読んだ方がいい。信じてくれ」
まあそんな簡単に信用してくれる人も少ないとは思うのだが、それでも『葉桜の季節に君を想うということ』に関しては、絶対に事前情報が少ない方がいい。アマゾンのレビューなんてもってのほか。あんなん全部モザイクかけたいぐらいだ。
唯一無二
私が『葉桜~』を読んだのは、もう15年ぐらい前なのだが、あのときの衝撃は未だに残っているし、読んだときの状況までセットで鮮明に覚えている。 最高の出会いだった。
詳しい内容は当然書くつもりはないが、間違いなく本を読む醍醐味が、『葉桜~』には詰まっている。未読の方は間違いなく唯一無二の経験をすることだろう。
そして一度読んでしまえば、その感動はもう味わえないのである…。
もし記憶を消すことが出来るのであれば私は、過去のトラウマ達ではなく、この本を読んだことを忘れさせてもらいたい。それくらいの衝撃がある。
あんまり言い過ぎるとハードルがかなり上がりそうなので、この辺にしておこう。って、もう十分に上がっちゃったか。
でもそのハードルさえも軽々と超えてくれる傑作である。
ぜひとも最高の読書体験を。
以上。