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ど真ん中の面白さがある『柔道部物語』はフィクションに逃げていない

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どうも。大好きなスポーツ漫画の紹介である。

柔道を愛する人が愛する漫画

世界中のサッカー選手が『キャプテン翼』を読むように、柔道家にも愛読書とされる漫画がある。

それが今回紹介する『柔道部物語』だ。あまりにもまんまのタイトルでビビる人も多いことだろう。私も紹介していて震えそうである。

しかし、この『柔道部物語』という真正面ど真ん中のタイトルに相応しい、熱く、胸を打つ作品なのである。

この作品に感化された柔道家はたくさんいる。有名所だと吉田秀彦、古賀稔彦、野村忠宏がいる。野村忠宏に至っては作中で登場した技を実践で使用して金メダルを獲得したエピソードまであるくらいだ。どれだけの影響力があるか理解していただけるだろう。

ど真ん中の作品

時代的なものもあるだろうが、『柔道部物語』にはトリッキーな設定や物語性はない。

ちょっとした小ネタはあるものの、ほとんどすべてがど真ん中である。

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俺は三五十五(さんご・じゅうご)。高校に入学したばかりで何も知らない俺は、先輩たちの甘い言葉に乗せられて柔道部に入ることにした。ところが、入部したとたん、先輩たちの態度が豹変。シゴキはあるわ、坊主頭にさせられるわ、もちろん女の子との交流会なんて真っ赤なウソ。でも、一度やると決めた柔道だ。強くなってみせるぞ――!! 読み出したら止まらない!! 

どうだろうか、このセンスの塊のような紹介文は。天下のAmazonでさえもこれである。どれだけど真ん中の作品か伝わると思う。 

 

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ど真ん中、だけど逃げない 

スポーツ漫画のほとんどは言ってしまえばファンタジーである。そうでもしないと、読者が熱狂するような物語にまで昇華できないからだ。別にこれは悪いことではない。結局のところ、漫画というのは読者に快感をもたらせればそれでいいのだ。 

 あまり比べるものでもないと思うのだが、『柔道部物語』は他の作品よりもはるかに現実に寄り添った作品に感じる。

私自身、運動は大嫌いだし柔道なんて体育の授業で嫌々やったぐらいの経験しかないので偉そうなことは言えないが、それでもこの作品に“血が通っている”ことは分かる

 先輩からの嫌がらせや、立場、それぞれの下心や人間性、上手くいくばかりではない部活動生活。そのすべてが、真正面から「柔道部」というものにぶつかっているのだ。

主人公の三五十五が苦しんでいるシーンは、こちらまで苦しくなるような描写の連続だし、上手くいくことなんてほとんどない。

だからこそ素晴らしいと感じるのだ。

フィクションの強み

フィクションというのは、みんな分かっていると思うが「何でもアリ」というのが基本である。

どんなに強い敵が出てこようとも、主人公がピンチに陥ろうとも、どうとでもできてしまう。こんな書き方をすると興醒めだろうが、実際そうだ。ドラえもんだって何度窮地をドラミちゃんに救われていることか。絶対にギリギリまで待たせる。

そうしたフィクションの強みは、物語を構築する作者にとって非常に便利なアイテムだ。頭を悩ませる必要がない。主人公をいくらでも苦しませることができる。

スポーツ物であれば、新必殺技でも開発すればいいだけである。

だが、『柔道部物語』にはそれがない。フィクション的な逃げ方はしない。

ここにこの作品の素晴らしさがある。『SLAM DUNK』とも通じるところがあるかもしれない。

超常現象に頼るのではなく、純粋な主人公の成長によって物語を推し進める。

これがどれだけ価値のあることか分かってもらえるだろうか?

王道は厳しい

主人公が苦しみ抜いて勝つ。

この王道パターンを踏襲する作品は、ともすれば「凡庸な作品」に成り下がってしまう。

王道パターンを使って、なおかつ読者を興奮させるには作品に本物の力がないといけない。そうでないとただの被り物になってしまう。見せかけだけのものは誰も認めないのだ。

本物の力というは、結局のところ説得力である。読者をフィクションの世界に放り込めるかというのが作品の力なのだ。

それが『柔道部物語』にはある。

新しいものを欲しいと思ったら、この作品にはそれはない。悔しいが断言しよう。

だが、物語を楽しむ上で必須の“物語を楽しませる力”を体感したければ、この作品は一役買ってくれることだろう

そして、一読すれば必ずやあなたにとって特別な作品になることだろう。

 

お楽しみあれ。

 

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