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至高のSFここにあり。J・P・ホーガン『星を継ぐもの』

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こんなクソほど面白い名作を紹介しないわけにはいかないでしょ。

 

 

どうも。読書ブロガーのひろたつです。

今回は世に数多あるSF作品の中でも“至高”と呼ぶに相応しい作品を紹介しよう。

 

内容紹介

月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。 

 

…。

 

やべえ…。

 

ヤバすぎるだろ。こんなに魅力的な謎をちらつかされたら読むしかないでしょ。逆に読まない奴は何読むんだよ。他にないだろ。

ほんとそれくらいに最高の謎を提示した作品である。いいから読め。こんな記事読む時間があったら、さっさと読むのだ。

 

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時間の洗礼を受けている

私のように年がら年中読書をしている人間になると、自分なりに面白い本を見つける方法を編み出すようになる。

そんな「面白い本を見つける方法」の中でも、誰でもすぐにできる方法がある。

 

それが、今でも売れ続けている昔の本を読むこと、である。

 

時間というのはとても残酷で、価値のないものだけでなく、価値の低いものまでもこの世から消滅させる力がある。

なので、素晴らしい作品かどうかを判断するのに一番簡単な方法は、時間という洗礼を受けさせることなのだ。

 

その点、『星を継ぐもの』は完璧である。初版が発行されたのは1980年。この記事を書いているのが2017年なので、なんと40年近く前の作品なのだ。

 

これだけ長い間、愛され続け、そして売れ続けている作品。それが面白くないはずがなかろう。

 

SF作品の強み

小説というものは劣化しやすい。中身の話である。

大衆向けに書かれるからこそ、時事ネタや当時の雰囲気、または流行みたいなものを多く取り入れる。すると先程書いたような時間の洗礼を受けると、途端に劣化してしまう。読むに耐えない作品になってしまうのだ。

しかしこの傾向はSFにおいてはあまりない

SFというのはつまるところ、「いかに完璧な異世界を構築するか」というジャンルであり、時事ネタなんてのは入り込む余地がないのだ。

ただし、これはあくまでも良質なSFに限っての話である。

完璧な異世界を構築できるからこそ、我々の時の流れとは別の世界に存在できるのであって、中途半端な作品であれば、当然劣化するし、忘却の彼方である。

 

とまあそんなSF作品の強みを遺憾なく発揮しているのが『星を継ぐもの』であろう。

この作品の中に構築された世界は、それ独自で成立しており、我々の暮らす世界とは異質な存在である。

そして、だからこそ私たち読者は、そこに非日常を感じられ、作者の用意した最高の世界を体験するのである。

 

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実はミステリーとしての評価も高い

私の本好きはミステリーから始まったとも言える。個人的な話なのであまり詳しいことは書かないが、とにかく私は元々ミステリー狂だった。常にミステリーの快楽を求めていた。

私が『星を継ぐもの』に出会ったのはそんな頃である。

 

こんな強烈なSF作品とミステリーになんの繋がりがあるのか、と思われるかもしれない。

 

世のミステリー好きというのは、殺人事件や密室、誘拐などの典型的な犯罪だけではなく、とにかく「最高の謎」と「最高に論理的な解答」を求めているのだ。

謎は分からなければ分からないほど良い。

解答は、意外であればあるほど良い。すぐ目の前に答えがあったのに気づかなかった、という要素があれば最高である。そして、論理を崩さずに、である。

 

そんなミステリー好きが、『星を継ぐもの』の「月面に人間の死体があった。しかも5万年前」という強烈な謎を放っておくわけがない。それがSFだろうが、ホラーだろうが、児童文学だろうがお構いなしである。

世のミステリー好きというのは、謎中毒なのだ。

 

そして私もミステリーという入り口からこの作品に触れることになった。そして最高の読書体験をしたわけだ。もし願いが叶うならば、この記憶を一度消して、もう一度『星を継ぐもの』を読んでみたいものだ。

 

ジャンルはSF?ミステリー?

そんな『星を継ぐもの』なので、よくSFなのかミステリーなのかという話題になることがある。

確かにどちらの要素もハイレベルで満たしており、悩ましい問題である。強いていうならば「SFミステリー」なんていうなんの捻りもないつまらないジャンルになってしまう。

 

でもわざわざジャンル分けが必要だろうか。

『星を継ぐもの』は面白い。それだけで十分なんじゃないだろうか。

 

だから、別にこの『星を継ぐもの』がSFだろうがミステリーだろうが、そんなジャンル分けは非常に些細な問題である。というか問題でこそないかもしれない。

ジャンルという垣根さえも取り払うほどの作品だということだ。

そして、小説はジャンルがどうとかではなく、素晴らしい価値を私たちに提供してくれるかどうか、というこの一点のみがその役割であるはずだ。

 

大風呂敷は誰でも広げられる

もうひとつこの作品の素晴らしさを語っておこう。

 

何度も繰り返す通り、『星を継ぐもの』では「月面に5万年前の人間の死体があった」という途方もない謎を主題に物語が進んでいく。実は他にももっと面白い要素がてんこ盛りなのだが、私は絶対的にネタバレをしない人間なので、この程度の説明で勘弁してほしい。興味が湧いたのであれば買って読む。それでいいじゃないか。大した値段でもないのだから。

 

話が逸れてしまった。

とにかくこの途方もない謎が作品にとって重要な要素になっているのは間違いないのだが、これがまた小憎い。

しっかりと我々を納得させる解答が用意されているのだ。

 

これだけぶっとんだ謎なので、少しくらい無理な論理が展開されたり、超展開(メタ的な)で誤魔化されても仕方ないレベルだと思う。

 

だけど作者のジェームズ・P・ホーガンはそうしなかった。いや、多分この謎の解答を思いついてしまったからこそ、この作品を生み出したのだろう。それくらい強烈なアイデアである。

 

なので『星を継ぐもの』ではよくある、「大風呂敷は広げたものの、畳み方が…」なんていう『20世紀少年』みたいな消化不良は一切ない。読者の高まりきった期待に大いに応えてくれることだろう。

 

至高のSFよ永遠に

ということで、どれだけ『星を継ぐもの』が素晴らしい作品であるかがよく分かってくれたと思う。長々とした文章にお付き合いいただき感謝する。

これだけ長い間愛され、読者の感動を手にしてきた作品である。これからも変わらないことだろう。

 

…といいたいところなのだが…。

 

実はこの作品の魅力には賞味期限が存在する。それが明確にいつか、ということは分からないのだが、いつか確実にその時は来る。

なので、ぜひとも未読の方には今の内に、『星を継ぐもの』が最高の鮮度を保っている今の内に読んでいただきたいと思うのだ。

 

これはミステリー好きとしての忠告である。

 

以上。