俺だってヒーローになりてえよ

何が足りないかって、あれだよあれ。何が足りないか分かる能力。

荻原浩の『なかよし小鳩組』は笑いと感動を両立させた稀有な作品

f:id:summer39191628:20170913101653j:plain

 

笑って泣けるなんて謳い文句をよく見かけますが、そんなのは簡単に出来る芸当じゃありません。 
でもこの小説にはそれがあります。

本作品、『なかよし小鳩組』の主な効能としては、

・笑ってストレスが発散できます。
・離婚した主人公の悲哀が優しい気持ちにさせてくれます。
・潰れかけの広告会社がヤクザのイメージ戦略をするというトンデモな設定が、私達小市民を冒険の世界へと連れて行ってくれます。
・主人公の成長と変わらない部分との揺れ動きに涙します。
・読み終わった後、目の前の景色が晴れやかになるでしょう。

以上がこの作品の特色となっております。
納得出来ない方のために更に詳しく説明していきましょう。

◯笑えます。 

乗っけからこの作者の持ち味が炸裂しています。もうね、荻原浩の技が冴え渡ってますよ。
作者はけっこうなおじさんなんですけど笑いのセンスが素晴らしく、万人受けする笑いとブラックな笑いを上手く使いこなしています。
電車の中で読むと、ニヤニヤを抑えなければいけない葛藤で逆に笑いがこみ上げてきます。

小説ってのは文字と紙だけの媒体なので、それだけで笑いを作り出すってのは考えてみるとすごいことですよね。

そんな体験をこの小説では出来ます。

◯おっさんが主人公である意味

まずはあらすじを読んでもらいましょう。



倒産寸前の零細代理店・ユニバーサル広告社に大仕事が舞いこんだ。ところが、その中身はヤクザ小鳩組のイメージアップ戦略、というとんでもない代物。担当するハメになった、アル中でバツイチのコピーライター杉山のもとには、さらに別居中の娘まで転がりこんでくる。社の未来と父親としての意地を賭けて、杉山は走りだすが―。気持ちよく笑えて泣ける、痛快ユーモア小説。 
 

あらすじにもある通り、主人公は冴えない中年の男です。 
収入は少ないのに激務に追われる日々。守るべき家族もいないのになぜこんなにも杉山は走り続けるのか?

杉山の葛藤は誰にでもあるようなものではありません。
しかし、ヤクザとの仕事というありえない状況だとしても、周りの状況に流されながらも、もがき続ける姿には自分達の姿を重ねずにはいられません。

取り戻せない若いころの時間。冒してしまった失敗。ついてこない体。日々、感じる老い。

誰しもに訪れる人生の悲哀を一手に引き受けているからこそ、主人公杉山のもがきに私たちの心は揺れ動かされるのです。おっさん主人公アッパレです。

スポンサーリンク
 

◯シリーズものではありますが…

このユニバーサル広告会社は一応、シリーズものになっています。
これが前作の『オロロ畑でつかまえて』なのですが。
 


こちらは荻原浩のデビュー作でもあります。主人公の杉山が廃村寸前の村を救うために奔走する話なのですが、こちらもなかなかの良書であります。
シリーズものとは言っていますが、両作品とも登場人物が同じなだけで作品としては1個のものとして成立しているので、読んでいても読んでいなくても構いません。


さてさて、中年のおっさんの大冒険。一緒に笑って感動してみませんか?明日からの活力になること間違いなしな社会人応援小説です。


 


スポンサーリンク