
※この記事はめちゃくちゃ長い上に、下品で口が悪いです。ご承知ください。
どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。タグの集計作業から考えるとすでに1ヶ月この記事書いてます。そりゃ積ん読も減らんわ。
- 余談
- 人生の意味あんのか
- 36位
- 35位
- 34位
- 33位
- 32位
- 31位
- 30位
- 29位
- 28位
- 27位
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- 3位
- 2位
- 1位
余談
年末のことである。
超繁忙期をなんとか乗り越え、楽しみに取っておいた『さよならジャバウォック』を読んだ。
…なにかおかしい。
作品のことではない。私自身がだ。
大好きな作家による、大好きな本格ミステリーである。こんなん幸福の代名詞。眺めるだけで幸せになれる。子犬レベルだ。というかむしろ子犬。
で、そのほぼ子犬の作品と触れ合っているというのに、感情が一切動かない。というか文章を読んでも書いてある意味がまったく読み取れない。映像にならない。
「そんなわけないでしょ、うそうそ」と思って、深呼吸してみたり、視線を外して落ち着いてみたりとかやってみたけど、全然ダメ。完全に脳が処理落ちしてる。
ストレスが高すぎると本が読めなくなるというのは聞いたことがあったけど、まさか自分がなるとは…。
人生の意味あんのか
私は趣味がない人間である。「え、読書は?」と思われたかもしれない。まあ落ち着いて。
好きなものがほとんどない。夢中になれる人や物が一切ない。少食の極みなので美味しいものにも興味ない。頑張って何かにハマってみようとスマホゲームとか、マンガとか、アイドルとかに挑戦してみたけど、あっという間に虚しくなってやめてしまう。興味が持続しないのである。楽しいと思ったり、好きになる瞬間があっても、その熱を保てないのだ。
では読書はどうか。
これは趣味ではなく、生命線である。大げさじゃなく。
私は勉強も苦手だし人付き合いも上手じゃないし、性格もあれだし、見目麗しいわけでもなく、仕事も十人並み。
そんな凡庸な人間が生きていくにはこの社会はかなり厳しい。
無理をしないと通用しない瞬間が度々訪れる。
そのたびに私は読書によって、心の重しを取ってもらってなんとかやってきた。心を何度も軽くしてもらった。傷を癒やしてもらった。
だから私にとって読書、趣味なんていうあっても無くてもいいものじゃなくて生命線なのである。私が社会から振り落とされないための命綱だ。
でも労働はそんな私から読書さえも奪おうとしてくる。
端的に言って労働はカスである。
さすがに一週間ぐらいで回復したから良かったけど(さよならジャバウォックで復活。最高すぎた。読み終えてから振り返ると、あれは内容的にあの疲れ切ったタイミングで読むものじゃなかったのかも)このときの絶望感ったらなかった。楽しみが楽しめない人生って、何の意味があんだよって。
さあ、とっても素敵なランキングを発表する記事だというのに、思いついたことを後先考えずに適当に書く習慣が身についているので、かなり不愉快な冒頭文になってしまった。ほんとごめん。
せめてこの場所だけでも私を甘やかせてほしい。子犬だと思って。
前編はこちら。
紹介文を一切排したシンプルランキングはこちら。
36位
30票獲得は3作品がランクイン。複数同時ランクインもそろそろおしまいである。
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『spring』
恩田陸によるバレエ小説。
陳腐な表現になって申し訳ないが、恩田陸は天才である。それは『蜜蜂と遠雷』を読んだときに確信した。音楽を文章であそこまで表現できるなんて、常人の仕事じゃない。だって音だぜ。それが文字て。譜面よりも音楽を感じさせられたもん。どうなってんのさ。
そんな常人離れした作家が次に描くのは、バレエ。絶対のやつじゃん。
「惹きこまれすぎて頭が沸騰しそうになった」という感想を見かけたが、これこそ恩田陸の魔法である。
恩田陸の描く“才能”って本当に魅力的で、その場に自分がいるかのように感動させられてしまう。というかなんなら、自分の感性の鈍さを考慮すると、その場にいるときよりも感動してるかもしれない。
それもこれも恩田陸という稀有なる才能が、その目が、感性が、じっくりとテーマに向き合い、長年に渡るリサーチを行なってくれたからこそである。
選ばれし才能のみが到達できるその高み。一緒に触れてみよう。
『十角館の殺人』
『正欲』
少数派の性的指向を取り扱った作品である。
と書くと未読の方はLGBTq的なものを想像されるかもしれないが、悪いが全然違う。いくら多様性の時代と分かっていても「え…?」と引いてしまうような登場人物が出てくる。
私は自分自身をそこまで賢い人間だとは思っていないが、まあまあ平均よりは本を読んでいるので、それなりに見識が広いと自認していた。性的指向が珍しい方、理解が難しい方がいても受け入れられると何となく思っていた。
完全なる思い上がりだった。
ページの向こうから指を突き付けられたような気分だった。あんたは何も分かっていない。分かってるつもりの傲慢野郎だ。と。
詳細は伏せるがとにかくダメージがすごくて、読み終えたあとに比喩じゃなく倒れ込んでしまった。「世界の見えてなさ」を思い知らされてしまって休息する以外の行動ができなかったのだ。
あとこの作品で地味に凄いのが、性欲について書かれているのに、一切下品さやエロさがないところである。
この辺りのバランス感覚はやはり直木賞作家である。
35位
なんか異変を感じました? ちょっと何のことか分かりません。
31票獲得の35位はこちら。
『ミーツ・ザ・ワールド』
腐女子の銀行員が歌舞伎町のキャバ嬢と同居することをきっかけに、様々な人と知り合い人生が変わっていく話。杉咲花主演で映画化もされている。
怒涛の文章で読者をまったく飽きさせないような作品なのに、ちゃんと心に大事なことを刻みつけてくれる。ちゃんと良いことを言う深みのあるネアカ、というのが私の金原ひとみイメージ。
『正欲』でも似たようなテーマを扱っているけど、多様性とか言いながら私たちは、自分たちが見えるものや、理解しやすいものしか受け入れない。
結局、多様性が大事だと言われるのは、私たちが多様性を大事にできない生き物だからなのだろう。
34位
32票獲得の34位は2作品がランクイン。
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『君のクイズ』
めちゃくちゃツボにハマりました。大好物。
最初っから最後まで知的興奮と知的快楽に満たされてて、ひたすらに幸福な読書になっちゃったよ。クイズが流行ってからかなり経ってるが、その技術の裏側まで見られるので、好奇心までフォローしてくれる。
まず、あらすじが素晴らしい。これだけで完璧に心奪われる。
クイズ番組の決勝で、僕の対戦相手は1文字も問題が読まれぬうちに回答し正解し、優勝を果たす。彼はなぜ正答できたのか?
恐ろしいのがこの魅力的にもほどがある謎が、しっかりと論理的に解決してしまうのだ。
弛むところが一切なく、最後まで綺麗にかっちりと収まってる完成度も凄まじいし、マジで褒めどころしかない。
エンタメ小説を読んでると数年に1回ぐらい「これを超える作品はないな」と思うことがあるんだけど『君のクイズ』はまさにそれ。
よくぞこんな宝物みたいな物語を生み出せたもんだ。
『成瀬は信じた道をいく』
日本で一番好感度が高いキャラクター、成瀬あかりのシリーズ第二弾がランクイン。
シリーズものなのでどうやって票カウントしようかと悩んだのだが、こちらに関しては個々で成り立っていると判断。成瀬なら「仕方ないな」と許してくれるはずだ。
文武両道で性格もいいし、規則正しい生活っぷり、高い志。でもなんか変。そんな成瀬あかりを中心に、滋賀県大津市にある膳所(ぜぜ、と読む)でのささやかな日常を、鮮やかに、そして無性に懐かしさを覚える描写で読者をメロメロにしてくれる作品である。
本屋大賞を獲った『成瀬は天下を取りにいく』が最高なのは言うまでもないが、こちらは続編としての愛が乗っかっていたのでより楽しめた。
短編集になっているので、読書慣れしていない方にも超オススメである。
まったく滋賀県を知らなくても、なぜか自分の地元の話のように感じられる不思議な感覚を楽しんでほしい。
それにしても完結しちゃったの残念だなぁ。
33位
33票獲得。4作品がランクイン。
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『52ヘルツのクジラたち』
本屋大賞受賞作。
印象的なタイトルは、他のクジラには聞こえない周波数で鳴く孤独なクジラを由来としている。そして物語の内容はネグレクト。うーん、これだけで心に負担が…。
しかしそこは本屋大賞受賞作、安心してほしい。履いてるから。優しさとか、寄り添いとか、そして何よりも救いがある。
人によっては読むのが途中でやめたくなるほどキツい。
しかしその痛みはこの作品において必須であり、痛みがあるからこそ結末で多幸感を得られるのである。
誰にも届かない声は、声と呼べるのだろうか。
読んだ人の心に寄り添い、希望を与えてくれる傑作である。
『エピクロスの処方箋』
「医療では、人は救えないんだよ」
現役医師が描く、人の命と幸福について。
卓越した外科技術を持ちながらも、終末医療に従事する主人公とその甥が、哲学思想を通して成長していく姿を描く。
この哲学のスパイスが絶妙で、独特な読み味をもたらしている。
夏川草介は偉い。
小説家として面白さを担保しながらも、その根底には医療や命に対する真摯で、誤魔化しを一切しない姿勢がある。
だから読んでる私たちも、感動したり、笑ったりさせられながら、導かれるように自らの命や、人生とその終わりについて思いをはせてしまう。
そしてそれがなぜかとても安らかな気分にしてくれるのが不思議である。
人生という暗闇に、そっと光を灯してくれるのだ。
それにしても『スピノザシリーズ』を読んだせいで、本屋とか図書館で“スピノザ”という名前を目にすると、「あんだけ感動したなら大元に当たらんかい」と内なる己が叱咤してくるようになりました。
試しにパラパラめくってみるけど、あたいにはハードルが高すぎるよスピノザ…。
『ラブカは静かに弓を持つ』
著作権侵害の実態を調べるために、チェロの音楽教室に潜入するお話。
潜入部分がかなり全面に押し出されて紹介されてる印象を受けるが、実際に読んでみるとそこまでスリリングさは重要じゃなくて(そういう部分はあるけれども)、もっと人との交流だったり、心の癒やし、そして音楽という奇跡の豊かさについて書かれた作品である。
2023年本屋大賞で第2位を獲っているだけあって、かなり読みやすい。
主人公の過去の傷や、スパイとして侵入している罪悪感が全体に通底しているはずなのに、なぜか軽やかで不快感をほとんど感じさせないのが面白い。
過去の傷からの昇華的な物語って、トラウマ部分を踏み台にすればするほど、カタルシスの快感が増大するから、キツいところはよりキツくしがちだから。
「スパイ×音楽」という触れ込みを見て、一風変わった戦争ものと勝手に思っていたのだが、普通に現代の話だった。同じ思い込みをしてた方がいたから、なんか理由がありそう。
なんとなく『ジョーカー・ゲーム』のせいな気がする。
『十戒』
浪人中の里英は、父と共に、伯父が所有していた枝内島を訪れた。
島内にリゾート施設を開業するため集まった9人の関係者たち。
島の視察を終えた翌朝、不動産会社の社員が殺され、そして、十の戒律が書かれた紙片が落ちていた。
“この島にいる間、殺人犯が誰か知ろうとしてはならない。守られなかった場合、島内の爆弾の起爆装置が作動し、全員の命が失われる”。
犯人が下す神罰を恐れながら、「十戒」に従う3日間が始まったーー。
あーーーー、どうしようかっなあーーー。どうやって紹介しようかなーーーー。
どんだけ言葉を選んだとしても、これから読む楽しみを奪うことにしかならん気がする。すまん、これだけは紹介できません。というかしたくありません。流儀に反する。
ちなみに『方舟』の続編だと勘違いしてる人がけっこう多いけど、まったく関係ない話だし、どちらから読んでも大丈夫だし、作品としての毛色も全然違うので問題ない。
それぞれの衝撃を愉しんでもらいたい。
32位
そろそろあまりのランキングの長さに、皆さんもウンザリしてきてるんじゃないだろうか。
安心してほしい。私はウンザリなんかとうに通り越して希死念慮でいっぱいである。
なんでこんな過酷な道を選んでしまったのか…。この時点で何万文字書いてるの? 全然分かりません。あと何万文字書けば終わるの?
皆目見当がつきません。誰か助けて…。
34票獲得の32位は5作品がランクインです…。
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『デスチェアの殺人』
ご褒美キターーーーっ!!!
ワシントン・ポーシリーズの最新刊が見事ランクイン。つまり実質1位です。優勝です。おめでとうございます!!
・*:.。..。.:*・'☆最★高☆・*:.。. .。.:*・。
シリーズのどの巻を選んでも面白いし、どれから読んでも問題ないワシントン・ポーだけど、皆さんの感想を拝見した感じ、まだ未読の方は『デスチェア』から読むのがオススメらしい。ある意味でシリーズの真骨頂だし、このインパクトを最初に食らえば確実にシリーズの虜になるはずとのことらしい。←ご褒美すぎて読めない人
あと、ワシントン・ポーシリーズが面白いというか、作者のクレイヴンが面白小説製造機なので、シリーズ外の『恐怖を失った男』も爆裂に最高なので激推ししておく。私の年間ベスト10にも入っています。
ショート動画を何時間も見ちゃうようなドーパミン中毒に悩んでいる方はクレイヴンを読もう。ドーパミン読書をさせてくれるから。
『熟柿』
ひき逃げをしてしまった女性が服役中に出産をした。出所後に息子に会いたいがあまりに連れ去り事件を起こした彼女は、接見禁止を言い渡される。その後、日本各地を点々とするが…。
たったひとつの出来事から、悲しみと苦しみに満ちた人生に転落した女性の17年間を追う物語。
壮絶なあらすじからも分かるとおり、相当な覚悟がいる作品で、皆さんの感想を見ても大ダメージを食らっている方が多数である。そしてそれと同時に年間ベストどころか、人生ベストにも挙げるほど絶賛されている。怖いけど、これは読みたい…。
SNSで感想を書くときって、ある程度のバランス感覚が必要で、感激したからってそのテンションを丸々乗せても引かれちゃったり、過剰とか大げさだと思われてしまう。
だから言葉をコントロールする、ある種のブレーキみたいなのが働くんだけど『熟柿』の感想を読むと、けっこうみんなブレーキを外してる印象があって、これって覚悟だと思う。
とんでもない作品を読んで感銘を受けた。人生に多大なるインパクト残した。だからこそ「この作品は素晴らしい!」と胸を張って感想を書く。己の魂を反映させた言葉を綴る。
それだけのパワーのある作品だということである。『熟柿』か…。こえー。
『神の光』
砂漠の街は一夜のうちに跡形もなく消えていた──。
壮大な「消失トリック」のオンパレードを味わえる傑作短編集。
なにこれ。喜び以外の何物でもないじゃん。
ミステリー界において絶滅危惧種とされる物理トリックを、いまだ最前線でしかもちゃんととんでもない質で発表し続けている北山猛邦の最新刊である。
彼の著者はけっこう読んでるけど、とにかく仕掛けが凄い。
新たなトリックを生み出して読者をひっくり返しまくっている。ちょっとクレイジーだよね、ここまで来ると。
建物を消失させるなんて、こけおどしに感じるかもしれない。結局真相を知ったら「なーんだ、そういうことかい」とガッカリしそうな感じがするかもしれない。
まったくの逆である。ちゃんと、ちゃんと凄いから。
北山マジックの最高峰を食らえ。
『透明な夜の香り』
あらゆるものを言語化してしまう魔法の筆を持つ作家、千早茜による"香り"の物語である。
「読みながら香りを感じる」と言われる独特の読み味は絶対に体験しておくべき。それが「新たな知覚の扉が開く」という魅力的すぎる惹句で宣伝されてて、こんなん絶対に読むべきでしょ。
静かだけど、深みがあり、色んな思い出が想起されるはず。
そして調香師である朔の存在感たるや。香りの描写も最高なんだけど、朔がヤバいから、そこだけでもメインディッシュ級。彼のことが好きになりすぎて、次に何を言うのか、語ってくれるのか楽しみでどんどん読み進めてしまう。そしてその言葉が最高だから、何度も味わっちゃう。
私は本当に再読をしないタイプなのだが、朔の最高シーンのところは何度も「さっきのシーンヤバかったな。ちょっともう一回だけ味わっとこう」って感じになってしまった。
匂いというのは記憶に一番強く焼き付くらしいのだが、この作品を読んだら実感できるかも。
『光のとこにいてね』
切ないほど美しく、激しい愛の物語
正反対の境遇に育ちながら、同じ孤独を抱えるふたりの幸せな時間は唐突に終わりを迎える。
8年後、名門女子校で思わぬ再会を果たしたふたりは――。
恋愛ものにカスな感性しか持ち合わせていない私が紹介していいのか悩んだので、皆様の素敵な感想を列挙しておきます。引き際を理解しているのは私の数少ない長所。
こんな小説を読みたかった
心に響く言葉や場面が多すぎて、ずっと終わってほしくないと思いながら読んだ
人生の醍醐味は人との出会いにあるなあ。
あまりの描写量に未だ目眩がしている
未読だけど、「光のとこにいてね」っていう切ない願いなのか、祈りなのか分からない言葉がまず良い。これだけでも胸がぎゅってなる。
31位
37票獲得。
『白魔の檻』
『禁忌の子』で鮮烈なデビューを飾った現役医師の山口美桜の最新作。
位置付けとしては『禁忌の子』の続編なんだけど、こちらから読んでもまったく問題なし。
各ページごとに読者を引っぱるような工夫を凝らしている山口美桜である。一作目を読まないと楽しめないようなことはしないだろう。サービス精神の塊である。お子さんが小さいのに凄いバイタリティで頭が下がる。
前作ではとびっきりの魅力的な謎を提示してくれたが、今回は霧と有毒ガスに閉ざされた病院で発生する不可能犯罪という、いわゆるクローズドサークルものである。
王道のモチーフに医療を絡めつつ、さらには僻地医療という社会派医療テーマも乗せる辣腕っぷり。面白くするためにどんだけ頭使ってんのよ。
ちなみに彼女場合、作品の作り込みそうだけど、プロモーションのために地道に作品を読んでもらうようにお願いして回ったりもしてて、とにかく努力の方である。
30位
38票獲得。
『三体』
燦然とSF界の頂点に君臨する『三体』である。
もう紹介の必要もないだろうし、無理に褒める必要もないだろう。私一人が褒めなくても作品の価値にかすり傷ほどのダメージもないだろうから。
まず第1巻。
ちょっと面白い。ここでハマれる人は幸せだと思う。そのまま最後まで狂ったように読み進めてほしい。
次に2巻の暗黒森林。
べらぼうに面白い。物語が一気に加速する。ここでハマれない人はもう諦めてもいいと思う。あとなんならハマった人だったとしても、ここで辞めていいと思う。それぐらい完成度が高い。
で、最終巻。
もうね。作者の頭の中どうなってんのって。宇宙猫みたいな感じで読んでたよ。
ここまで来ると、もう評価とかそういうのは超えて、第六感でお互いに感じ合うレベルだと思う。言葉は必要ないし、わざわざそうやって感想や評価を具現化する必要がない。
「あの世界を見届けた」
そんな勲章を胸に抱いている気分である。
面白かったかどうかも分からないほどだったけど、間違いなく私の人生において忘れられない作品になるはずだ。別に読まなくてもまったく問題ないとも同時に思っているが。
読むのに必要カロリーが高すぎる。読んでるだけで痩せるよ、あんなん。
29位
39票獲得。
『生殖記』
未読なんだけど、『正欲』でぶっ倒れるほど衝撃を受けた私としては完全にあの系譜を予感してしまうタイトルである。どうやら公式的にもあまりネタバレ感想をしないよう喚起してるみたいで、そこまでクリティカルな内容は見えてきていない。見えちゃダメなやつなのかもしれんけど。ん?
『正欲』でセクシャルとか欲望にまつわる話をさせたら、朝井リョウが一級品の腕とストーリーテリングを発揮するのはお墨付きなので、今回もきっとすんごいものを見せてくるはずだ。実際、内容には詳しく触れてないけど悶絶してる方を何人もお見かけした。
ちなみにだが彼のエッセイの超絶悶絶大ファンである私としては『風と共にゆとりぬ』に載っていた『肛門記』を想起せざるを得ないタイトルである。人生で読んだ文章の中で一番笑ったと思う。読んでて苦しかったもん。
あれは奇跡の名作なので肛門を持ってる生物すべてに読んでほしい。
28位
41票獲得の28位は3作品がランクイン。
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『YABUNONAKA―ヤブノナカ―』
性加害の告発が開けたパンドラの箱――
MeToo運動、マッチングアプリ、SNS……世界の急激な変化の中で溺れもがく人間たち。対立の果てに救いは訪れるのか?
「わかりあえないこと」のその先を描く、日本文学の最高到達点。
タイトルは芥川龍之介の『藪の中』のオマージュなのだろう。日本初のミステリー小説とも言われてたりするけど、ミステリー好きって何でもミステリーにしがちなので正確なことは分からない。ちなみに私は『藪の中』をミステリー小説だと思ってるミステリー好きです。こんばんは。
作家として社会で注目されているテーマを扱うのは小説家、しかも芥川賞出身作家となれば必然なのかもしれない。
それでも性加害というハードなテーマである。かなりの気合が必要だったと想像する。
日本でも性加害については色々と騒がれたけど、SNS時代における情報の宿命なのか、何が真実なのか情報を見れば見るほど分からなくなってくる。
誰が悪いのか、何が起こったのか。そもそも被害者がいたのか、加害者はいたのか。
誰かに肩入れしたと思ったら、肩透かしに遭う。ずっとそんな感覚がある。どの立場に立って描いたとしても、敵を作ってしまいそうである。
まくし立てるような圧倒的な文章で綴られる、現代を切り取る群像劇。
作家、金原ひとみの覚悟を受け取ろう。
『神に愛されていた』
私が人生の中で唯一出会ったことがある作家、木爾チレン氏がランクイン。めちゃくちゃ嬉しい。
ランキングを勝手に作っている立場なので、ともすれば「知り合いだし…ちょっと下駄を履かせちゃってもいいかな…」と内なる悪魔に囁かれるときがある。正直。
好きな作家さんの新刊とかでも同じことを思ったりする。あとは友人が激推ししてる作家さんとか、クオリティが凄いのにあんまり知られてない作品とか。私の悪魔、囁きすぎだろ。もちろんこのランキングには一切手を加えていないことを宣言しておく。
そんな中、こうやって並み居る超面白本たちを押しのけ、ランキングに堂々と食い込んでくれたのは知り合いとして本当に嬉しい。
で、『神に愛されていた』である。
これは才能と嫉妬の物語だ。
何かに打ち込んで、誰かと比べられる経験をしたことがある人。
努力をしても勝てなかったことがある人。
絶対に勝てない存在や才能を見せつけられたことがある人。
そんな方には確実に響く物語だと思う。
それと同時に、冷静には読めないとも思う。
実際に私がそうだった。真正面から食らってしまい、この物語をどうやって評価したらいいのか分からなくなってしまった。
作品の感想を書こうと思ったらいくらでも駄文が生み出せるのが私の特技だが、これに関してはかなり悩んでしまった。
どれが物語の感想で、どれが私的な情念なのか区別がつかなくなってしまったのだ。
それだけ主人公と自分を重ねてしまったのだろう。しかもその感覚がずっと逃れられていない気がする。
美しくもありながら、恐ろしい物語である。ご賞味あれ。
『暁星』
年末に発表されたばかりだというのに、この順位。さすがの湊かなえである。
Audibleファースト作品ということで発表されてすぐに聴いた。
新興宗教に人生を奪われたものたちの慟哭と、絆の物語である。
私の中で湊かなえといえば「最悪さに振り切ってくれるのが最高」な作家である。
ところが『暁星』はかなり人間ドラマに重心を振っていて、入り込んで読ませる作品に仕上がっていた。今までの湊かなえを求めると毒が足りないと感じるかも。
でもやっぱり濃厚なのは間違いなくて、これだけ圧倒的なスピード感で評価されていることにそれが現れていると思う。
人間模様や心理描写でじっくりと染み込ませつつも、読めばすぐに面白い。作品の効果に即効性がある。
エンタメ作家としての湊かなえの手腕を見せつけられる思いだ。
それにしてもこの構成は…ノーコメントで。
27位
42票獲得は3作品がランクイン。
複数ランクインはこれにて終了。ここから得票数が跳ね上がっていきます。お楽しみに。
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『同志少女よ、敵を撃て』
逢坂冬馬の衝撃デビュー作。
発売後すぐにとんでもない勢いで評判を掻っ攫って、一気に本屋大賞まで獲ったバケモノ作品である。
ああいう勢いがリアルタイムで楽しめるのも、界隈を追ってる人間の醍醐味である。空気が塗り替わっていく様子が見えるというか。みんなの欲望が収束していく感じというか。
今どき書籍が爆発的に売れる機会というのは、本当に少ない。体感で年に2~3回あれば多いほうで、2025年であれば『僕には鳥の言葉がわかる』ぐらいか?
愚かなリーダーのせいで雑念になしに読むのが難しくなってしまったけど、作品に罪はないのでこれからも愛され続けれほしいし、こうやってランキングに入っていることが嬉しい。
痛くて、重くて、歴史という事実も乗っかってて。
とても簡単に面白いと言えるような物語ではないんだけど、めちゃくちゃ面白いから読んでほしい。
『踊りつかれて』
社会派の雄、塩田武士が描く、匿名性の卑怯さと、それに翻弄されてしまった人々の物語。
現代社会の欠陥を見せつけられるような作品である。
装丁から醸し出される空気から分かるように、かなりキツめで、冒頭一行目からフルスロットルである。笑ってしまうほどフルスロットルなのでパラ読みでもいいから目を通してほしい。
ちょっとしたボタンの掛け違いから、人々が烏合の衆となって誰かを追い詰めてしまう事例は、皆さん見かけたことがあると思う。
有名人だとは微塵も思っていないが、私もこうやってネットで発信を続けている人間なので、少なからず同じような目に遭ったことがある。
いくら勘違いだと訂正しても、圧倒的な物量の前になす術もなくなり、矢継ぎ早に飛んでくる否定や暴言で溺れる。
そんな苦しさと、人間の短絡さの描写が生々しくて、自分が同じ目に遭っているような気分になってしまった。もしかしたら単に私のトラウマが喚起されただけの可能性もある。
けっこう嫌な目に遭わせてくる作品なのに、こうして年間ベストに選んだ方が多数いるのも面白い。みんなマゾすぎるだろ、とか思ったりするけど、私もその気持ちが分かる。
キツいけど一線を越えてないというか、ぎりっぎりを歩かされるから進まずにはいられないのだ。そして駆け抜けるように読んでしまう。
「人間ってマジでどうしようもねえな」という絶望と、「人間にしか生み出せない素晴らしさはある」という希望の両方を手渡されたような感覚だった。
『踊りつかれて』をどんな物語として消化するかで、そこに人間性が現れるだろう。そんな作品である。
『アリアドネの声』
自らに余計な枷をつけないとミステリー小説が書けない異常者、井上真偽の最高傑作。
これまでも、
・犯罪ではなく奇跡だと証明する探偵の話
・ひとつの事件なのに2冊の本でそれぞれの探偵でまったく違う推理をする話
・犯人が人を殺す前に推理を終わらせちゃう爆速探偵
というように、とにかく試みが新しく「それでどうやって推理小説として成り立たせるの?」と思ってしまう作品ばかりである。そんなに自分をいじめて楽しいか。
で、『アリアドネ声』である。
ミノタウロスの迷宮で迷わないために使われた「アリアドネの糸」からオマージュされたタイトルだが、この作品で使われるのは糸ではなくドローン。
地下施設に閉じ込められたある女性を助けるために、技師がドローンだけで救出を試みる。
しかもこの女性が重い障害を持っており、耳が聞こえず、声は出せず、目も見えないのだ。さらに地下施設は徐々に浸水していて、なんなら火災も発生している。やりすぎだろ。
マゾ作家、井上真偽がどんなマジックを使うか。
その怪しくも煌々と輝く脳細胞が生み出す奇跡をご堪能あれ。
26位
46票獲得。
『アルプス席の母』
私は甲子園が嫌いである。因縁があるからだ。
非常にシンプルな因縁である。
私は吹奏楽部だった×当時の私は野球に一切興味がなかった。
どんな答えが出るかは、皆さんの計算結果に委ねたい。あ、やっぱり委ねたくないかも。憎悪。
自分の青春にしか興味がなく、応援とは無縁の人間だった私。それなのに『アルプス席の母』を読んでしまった。
甲子園は好きじゃないが、小説は好きだからだ。嫌いを好きで屈服させた形である。
結果どうだったか。
ボロ泣き。
ちょろ過ぎな読者である。あまりの単純さに自分自身で笑ってしまった。
正直、監督への贈賄のやり取りとか最悪すぎてまったく受け入れられず「はあ???!!!」となったけど、子供たちの純粋な熱意も親の愛と揺れる心も、芯から血が通ってて登場人物たちに肩入れしまくってしまった。割り切れるもんばかりじゃないよね、社会も生き方も。
甲子園は全然好きじゃないけど、そこに向かって一生懸命走っている人たちのことは大好きです。でも演奏応援は勘弁してください。
25位
48票獲得。
『地雷グリコ』
みんなが知っているような子供の遊びに、新たなルールを足して極上の頭脳戦に仕上げたゲーム小説である。
痺れる読み合いに心理戦、駆け引きに、極上の伏線回収と、読者が悦ぶことを120%でやってくれるんだから、こっちとしてはひたすらに大悦びするしかないでしょ。青崎有吾、大優勝です。
後半に向かうにつれて扱われるゲームのルールが複雑になるので、私のような何となくで読み進めるタイプの読者だと「?」となりがちなので注意である。
読み返すと伏線の張り方が凄まじく、この作品を仕上げるまでにどれだけの労力がかかったかを想像するだけでも楽しめるレベル。
惜しむらくは独特なキャラテンションである。こういうノリが好きな方がいるのは十分理解しているが、私にはだいぶキツかった。
それでも頭脳戦の要素が度外れて面白かったから許す。
24位
51票獲得。
『殺し屋の営業術』
口コミでじわじわと人気が広がって、気がつけば爆発的な売れ方をしている作品である。近所の書店で何度補充されても、すぐに売り切れてたし。新人賞の江戸川乱歩賞でここまで跳ねたのって最近じゃ全然ないでしょ。『天使のナイフ』とか…?って思ったけど調べたら20年前じゃねーか。最近じゃなさすぎる。20年前の作品がすっと出てくる自分の老いが憎い。
悪徳セールスマンの主人公が、殺し屋に命を狙われたことをきっかけに「殺し屋の営業マン」になる話。
この主人公の辣腕営業マンっぷりが最高で、でも取り扱ってる製品は殺し屋というアンバランス感が最高に面白い。出てくるキャラたちも特濃だし、スピード感は抜群だし、バクバクと読めてしまう。
いまエンタメ系で読ませる作品といえば、まずは『殺し屋の営業術』でしょう。
ちなみに、特殊な金持ちばかりを顧客に持つ営業職の友人いわく
「営業テクニックがマジすぎる」
「普通に使える知識」
「これで食ってる」
とのことだったので、殺しの成果が出なくて困っている方にオススメ。
23位
53票獲得。
『失われた貌』
そうだ、そうだ。これがあった。間違いなく2025年を代表する作品だわ。
このあたりの順位になってくると、本当にちゃんと話題になってるというか、誰かが騒いでいる様子を複数回目にした作品ばかり。私は未読なので詳細は語れないが、みんなの絶賛っぷりは何度も見かけた。
不審者への対応が不十分だと警察が世間からバッシングされている最中、顔を潰された惨殺死体が発見される。
その後、生活安全課に小学生男子が訪れ、死体は「10年前に失踪した父かもしれない」と言う。
間を置かず新たな殺人事件が発生。増える死体と謎。無関係に見えた出来事が絡み合い、現在と過去を飲み込んで、事件は思いがけない方向へ膨らみ始める。
散りばめられたユーモアで物語を牽引しつつ、「無駄な要素が一切無いんじゃないか」と言わせる絶品のプロットで酔わせて、さらには最後は涙って…。これは強いでしょ。
こういう話題作は絶対に読んでおきたいところなのだが、これがまた私に悪癖があって…。
作者の代表作とか一番の傑作っぽいと感じると、いきなりそれを読むのは勿体ないから、まずは別の作品でならしてから…と思ってしまうのだ。せっかく読むなら尻上がりに楽しみたいじゃん?
こうして私の積ん読はより高さを増していくのだった。お死まい。
22位
54票獲得。
『硝子の塔の殺人』
Xで喧嘩ばかりしているイメージだが、ちゃんとミステリー作家もやっている知念実希人の最高到達点。というかミステリーのやりたいこと全部入れな贅沢作品である。
島田荘司・綾辻行人というミステリー界のビッグネームが激賞してて、島田荘司においては「本格ミステリーを終わらせてしまった」と称賛するほど。これって称賛?
かなり込み入った作品だし、ミステリーなので余計なことは書くつもりはない…ってこのランキングで何度この言葉を使っていることか…。「お前、紹介する気あんのか」って言われそう。なんかごめん。
でもミステリーのネタバレをこの世で一番憎んでるので仕方ない。自分に嘘はつけない。2番目は演奏応援です。自我欺騙不能。
正直なところ私は知念実希人作品はそこまでハマったことがなかったんだけど、『硝子の塔』に関しては「おおっ!」ってなってしまった。だから好きな方はよっぽど食らったと思う。
いやー、"あれ"はさすがに…。
21位
56票獲得。
『成瀬は天下を取りにいく』
完全に本屋の天下を取ってしまった成瀬の第一作がランクイン。
『信じた道をいく』の方でも書いたけど、シリーズものだけど票数は別物としてカウント。
ちなみに「成瀬シリーズ」とポストに書かれていた場合は、それぞれの作品に一票ずつとしてカウントするフォローっぷりである。私、偉すぎる。
『天下を取りにいく』が発表された当初から、一気に人気が出てたから「これは間違いないな」という思いと同時に「ど真ん中すぎて逆に白けそう」という考えがあった。いいオッサンになっても心の中の自分はいつまでも「ひねた中学生」のつもりなので、大人気になっているだけで敬遠してしまうのである。私、痛すぎる。
で、読んだら100点。ど真ん中を食らって100点。
私の中のひねた中学生はとっくに成仏していたようである。斜に構えていたつもりが、いつの間にか真っ直ぐ立っていたわけだ。
斜に構えるというのはある意味、バランスを崩したままどれだけ維持できるかということだ。加齢と共に人は一番ラクな体勢を探して、真っ直ぐになってしまうのかもしれない。
真っ直ぐに食らってしまっても、恥ずかしいと思わないほどには大人になれたのかも。
~~~~
さあさあ、遂に長過ぎるこのランキングも佳境を迎えてきた。
軽い気持ちで「せっかくだから100作品紹介しよーっと」と始めたあのときの自分が本当に憎くて仕方ない。
書いても書いても終わらず、自分で文章を綴っているはずなのに文章の意味が頭に入ってこないときもあった。正直この記事の何が面白いのかまったく分からなくなっている。完全にキャパオーバーである。
しかもそんな状態のものを皆様にこうやって平気で公開しているのだから、恥知らずにもほどがある。
美味しいか分からないものを提供してる定食屋みたいなもんだ。やば。
そんな泣き言はいいとして、あと20作である。
あらゆる感想を書きすぎてもう作品を褒める言葉もパターンも枯渇しきっている。このあとの紹介全て「面白いですっ!!!!」で終わらせる可能性もかなりある。あとは私の倫理観次第である。つまり確定である。
では私の倫理観がどれだけ足掻いてくれるか見ものである。完全に他人事だ。わっはっは。こうやって人格を分離してないと耐えられないよね。
泣いても笑ってもあと1/5。
もがき苦しむ読書ブロガーの姿をお楽しみください。
(1/5はまだ全然多いだろ)
20位
57票獲得。
『BUTTER』
面白いですっ!!!!!!
ウソウソ。さすがにまだ倫理観稼働中です。
それにしてもここで『BUTTER』とは。意外かも。なんかあったっけ?
ずっと『BUTTER』は評価が高くて、常に誰かがTLで悶絶してるイメージだけど、ここまで上位にいきなり食い込んでくるとは。
…と思って調べてみたらイギリスで大ヒットして、逆輸入的に大売れしたのが2025年だったのか。Audibleで取り扱うようになったも大きいかと思ったけど、それは年末も年末だからそこまでの影響はないか。
高カロリーへと蠱惑的に誘ってくる力をもった作品で、文章を読んでるだけで食欲というか、"欲"に対するブレーキが外されるような感覚になる。字面だけで食欲をコントロールしてくる柚木麻子の筆力たるや。
柚木麻子作品の中でも邪悪に寄った作品で、絶妙な嫌さと、欲望に惹き込もうとする甘美さのバランスが最高である。
それにしても、あの悪魔的な文章が朗読になったら、けっこう危険なんじゃないか。未体験だから分からんけど。
ちなみに柚木麻子の最高傑作は『ナイルパーチの女子会』で大決定しているのでお知らせしておく。
『BUTTER』は女性の怖さを描いた名作だと思うけど、『ナイルパーチ』はより怖さに特化しててゾクゾクできる。最高。
19位
59票獲得。
『ハウスメイド』
第一級のサイコスリラーで、先を読ませない展開の連続と、先が気になって読み進まずにはいられない中毒的なリーダービリティを武器にバカ売れしている。
「傑作しか海を渡ってこられない」
海外ものがヒットする理由としてよく言われるやつである。『ハウスメイド』のことである。
海外ものに明るい友人から2年前ぐらいにオススメしてもらったことがあって(そのときは未翻訳。でも簡単な英語だからオススメらしい。…っていやいや、私の無学さを舐めるなよ。ローマ字のインプットが強固すぎて赤ちゃんよりも英語読めないからな)…って何の話だっけ?
そうそう、海外で流行ってるちょうど良いミステリーとして以前から知ってたので、こうして無事日本でもヒットしたのが嬉しい。審美眼の確かな人が友人で誇らしい。私の実績と何の関係ないけど。
ちなみに人生初の洋書をこれにするか迷っているので、翻訳版は未読。読みてー。
18位
61票獲得。
『探偵小石は恋しない』
うわぁ…上位の顔ぶれヤバいな、やっぱり。凄いのがポンポン出てくるから装丁を見るだけでダメージが。
こちらも2025年を代表するヒット作。
ネタバレ大嫌い派の私としては、帯とかの文言は一切読む気にならないんだけど、けっこう怖いことが書いてある気がする。愉しみを著しく損ねそうなことが。
はい、ネタバレ判定が厳しすぎるのは自覚しております。ネタバレ特高警察と呼んでください。さあ危険思想を取り締まるぞー。
ミステリオタクの小石は、華麗に事件を解決する日を夢見ている。だが実際は9割9分が不倫や浮気の調査依頼で、推理案件の依頼は一向にこない。小石がそれでも調査をこなすのは、実はある理由から色恋調査が「病的に得意」だから。相変わらず色恋案件ばかり、かと思いきや、相談員の蓮杖と小石が意外な真相を目の当たりにする裏で、思いもよらない事件が進行していて──。
『探偵小石』で感動したんだけど、これCMやってたでしょ。
小説でCMが打てるって…こんだけ斜陽産業になってる出版業界でそんな景気のいい話が聞けるとは。村上春樹とか東野圭吾レベルの作品なら分かるけど、森バジルですよ。いや作家を差別するわけじゃないし、『ノウイットオール』とか凄いのも知ってるけど、これは快挙。
17位
62票獲得。
『一次元の挿し木』
こちらも爆売れ本。
売れ方も凄いし、あらすじを紹介したポストがバズっているのを何度見かけたことか。
ここ最近はあらすじ、書き出し、表現などでバズって売れるパターンが多くて嬉しい。キャッチーじゃなきゃダメとは言わないけど、やっぱり売れてなんぼですから。
ヒマラヤ山中で発掘された二百年前の人骨。大学院で遺伝学を学ぶ悠がDNA鑑定にかけると、四年前に失踪した妹のものと一致した。
規格外なほど魅力的な謎が提示されて進んでいくミステリーで、これだけでやられちゃう人は多いことだろう。
魅力的な謎に撃ち抜かれるのってミステリーファンだけかと思ってたけど、あの桁違いのバズり方を見ると、そういう需要って普通にあるんだと意外な思い。
だったらもっとミステリー小説売れていいだろ。ショート動画観てる場合じゃないだろ。もっと狂え、もっと話題にしろ『十角館』とか『葉桜』とか『黒い仏』とか『神様ゲーム』とか。
魅力的な謎と言えば『星を継ぐもの』が思い浮かぶ。
あっちは名作中の名作だから比べるようなものじゃないだろうけど、どっちも読んだ人と話したら楽しそう。だってさ……って、あぶねっ! 物語の着地について具体的に話しちゃいそうだったよ。殺人に匹敵する罪人になってしまうところだった…ん?
いまどこかでちゃぽんって聞こえなかった?
ちょっと確認してきます。
16位
無事です。
どうやら子宮恋愛の効果音だったようである。あっちは「ぽちゃん」だったか。面白すぎるだろ、あれ。
63票獲得。
『僕には鳥の言葉がわかる』
待ってました!!
若干ネタバレ気味だったけど、鈴木俊貴の『僕には鳥の言葉がわかる』が堂々のランクイン。
2025年も色んな話題作があった。でもやっぱり主役を挙げろと言われたら間違いなく『僕鳥』でしょう。ノンフィクションもので唯一のランクインだし。
ちなみに私もベスト10冊に入れさせてもらいました。シジュウカラ最高すぎた。狂ってる研究者こそ至高である。
作者のサービス精神の塊によって、とても読みやすいライトな読み味に仕上がっている。学びの多い内容だけど全然難しくないのが凄い。
世界的な研究者のくせに、よくぞここまで一般人が楽しめるようにまとめたもんだ。
この本の魅力は本当に多岐に渡っていて、色んな読者のアンテナに引っかかる要素があると思う。
健気な鳥好きの苦労が報われる成功譚としても読めるし、知識欲が満たされる充足感もあるし、知らなかった事実によって世界が広がる感覚を得られたりすると思う。
私の場合は、著者の前に立ちはだかった問題をどのように解決したのかという、「厄介な問題VS秀逸なアイデア」の戦いとして読んだ。
常人では及ばない発想が、明快な理屈で説明されるのが堪らないのである。「なにそのアイデア?! 」と驚愕する快感は、私の推理小説好きにも通ずるものがある。つまり『僕には鳥の言葉がわかる』は推理小説です。これは繰り返し世に訴えていきたい。あれ? またちゃぽんって聞こえた?
それにしても、学者の世界は本当に素晴らしい。
ちゃんと反論が来て、それに客観的な根拠を持って答える。その過程を得た主張のみが認められる。なんて誠実で美しいんだ。
SNSで蔓延る陰謀論にうんざりしていたので、心と頭脳が洗われるようだった。
15位
65票獲得。
『爆弾』
映画も大ヒット中の『爆弾』である。
『爆弾』の面白さ、それは「最悪なやつに翻弄される快感」である。
ただでさえストレスの多い現代社会において、なぜわざわざ最悪なやつの話を読んで、わざわざ不快指数を高めなければならないのか。
普通に考えるとまったくそんな必要はない。冷静にじっくりと考えても、やっぱりまったくそんな必要はない。そう、無駄にストレスを受け取りにいくための作品なのである。嫌だよ、そんなの。
私もこれまで数千冊ぐらいの小説を読んできたけど、『爆弾』の悪役である"スズキタゴサク"は1,2を争うほどのクソ野郎である。
登場した瞬間から、物語が終わるそのときまでずっと高品質な不愉快を提供するプロフェッショナル。それがスズキタゴサクである。こうやって文字に書いてると、本当になんでわざわざ『爆弾』を読むのか疑問である。普通に意味が分からん。
意味は分からないかもしれんが、こうして65人もの方が投票している事実は動かしようがない。
最高の不愉快さに夢中になってしまった被害者たちがいるのである。うーん、どうしようもないですねぇ。
ストレスを癒すために心温まる物語もいいけど、たまには不愉快さに全身を浸して荒療治してみるのもオススメだ。心のサウナである。
ちなみに、こちらは『2』の法廷占拠も合わせて集計している。続編単体では成立しない作品だと思っているので。
さらにちなみに、スズキタゴサクのような「最悪だけど魅力的すぎる悪役」を求めてしまうどうしようもない方は『マリアビートル』の王子をぜひ。一番好きな悪役です。いやでも、『掏摸』の木崎も捨てがたい…。
14位
67票獲得。
『汝、星のごとく』
覇王がランキングに再びの登場である。
凪良ゆうが2度目の本屋大賞を獲った傑作恋愛小説。
何度も書くが私は恋愛ものをまったく受け付けない。面白がれないとか興味がないというレベルではなく、なんか真に受けられないというか、茶番を見ているような気分になってしまうのである。
だからどれだけの大恋愛劇を見ても半笑いになってしまうし、全然入り込めない。
そんな私がだ『汝、星のごとく』は食い入るように読んでしまった。
これは『汝、星のごとく』が恋愛小説としてそれだけ強度が高い、ということを言いたいのではない。
私は自身の感性にけっこう自信を持っていて、「私が面白がれた=恋愛ものではない」という図式が成立する。そう、『汝、星のごとく』は恋愛小説ではないのだ。
『流浪の月』にも言えることだが、凪良ゆう作品は濃度の高い心理描写と、言葉にできない混沌とした感情を文字化してしまうことで、我々の心を掴む。掴むだけじゃなくて、その筆握力で握りつぶそうとしてくる。筆ゴリラである。
読み終えるととんでもない感情になってしまって分からなかったが、しばらく物語を反芻したり、整理したりしてみると、実はそこまで複雑な物語ではないことに気付く。むしろシンプルな筋書きだ。
プロットの良し悪しだけで作品の評価をしてしまう私からすると、これは非常に貴重な体験だった。
濃密な描写力と、混沌を切り取る筆力があれば、私のようなプロット狂いを仕留められるということだ。どんでん返しとか意外な結末とか無くても悶絶させてしまうのだ。やはり筆ゴリラ。
これは極端な例えだけど、ノンケの私を同性愛者に無理やり変えるものじゃないだろうか。私のようなストレートのオッサンでも、やっぱり吉沢亮とかに言い寄られたら道を踏み外してしまうだろう。そんな感じ。つまり一流の作家ともなれば、性癖の性転換だってできるってわけ。
は?
13位
74票獲得。
『成瀬は都を駆け抜ける』
おめでとうございます。
これで成瀬シリーズは3冊ともすべてランクイン。鮮やかに駆け抜けていってくれた。
もちろんこちらの最終巻も単独での得票数である。お見事。
みんなを虜にした成瀬ともこれでお別れだけど、なんか悲しさがそこまで湧いてこないのは、やはり成瀬という稀代の人物が持つパワーゆえだろう。
存在がたくましくて、爽やかすぎて、成瀬に対して別れを惜しむような姿を見せられないような気持ちになる。
もちろん続きが読めない寂しさはあるけれど、それは花火大会が終わったあとのようなものかもしれない。
終わった寂しさはあれど、圧倒的な輝きに満たされた幸福感の方が強く残っているという。
ちなみにもし、もしだけど成瀬シリーズでまとめて票を集計していたとしたらぶっちぎりで1位でした。
おめでとう。天下を取ってるよ、成瀬。
12位
80票獲得。
『禁忌の子』
またしても山口美桜がランクイン。やはり強い『禁忌の子』である。
代名詞とも言えるあらすじがまず極上である。
救急医・武田の元に搬送されてきた、一体の溺死体。その身元不明の遺体「キュウキュウ十二」は、なんと武田と瓜二つであった。彼はなぜ死んだのか、そして自身との関係は何なのか。
医師と死体がまったく同じ顔。しかもそれが何の血縁関係もないのである。
こういう抜群の謎があるミステリーにありがちなのが、アクロバティックすぎてファンタジーの領域に足を踏み入れたような解決パターンである。
「確かにそれで解決できるかもしれないけど…やりすぎでは…?」となることがある。
しかし『禁忌の子』の場合、ちゃんと論理的に解決されるから安心してほしい。この完成度は『君のクイズ』の通ずるところがある。
「次のページに進みたくなるように、全ページに配慮している」と作者本人が語る通り、抜群のリーダービリティを持っている。
謎の魅力もそうだし、話としての推進力も抜群である。次作の『白魔の檻』が31位で失速しているかのように感じてしまうかもしれないがそれは違う。『禁忌の子』がやりすぎなだけなのだ。
私としてはラストの畳み掛けが一番好きなところ。
これはしばらく引きずりますよ。
11位
86票獲得。
『小説』
小説という舞台でいま一番華麗な遊びを魅せてくれる作家、野崎まどの規格外の傑作。感想も吹っ飛ぶレベル。
『小説』。
改めて凄まじいタイトルである。
このタイトルにどれだけの覚悟があったのか。それとも軽やかに決めてしまったのか。全然分からない。どっちもありえそうだ。何者なんだ。
野崎まどの筆には人格が感じられない。ページの向こう側に人間がまったく見えないのである。それは覆面作家だからということ以上に、作り込みすぎて覆い隠されている」という感覚である。
大量の参考文献に、読めば読むほど溢れてくるテーマ性からは、確実に『小説』という作品を作るまでに大量の試行錯誤があったことが伺える。たぶん創作物を愛し、信じてる人間なんだろうなとは思う。でも人間性は見えない。
小説を大量に読んできた人ほど信じられないと思うけど、野崎まどの『小説』はマジで小説すべてをテーマにした作品に仕上がっている。あなたが出会ってきた小説すべてを内包している。とんでもない仕事を成している。
ネタバレで価値を落とすタイプの作品ではないけれど、それでも具体的な内容を語るのは気が引ける。
この作品内で語られた言葉や考え方、価値観を私の言葉として伝えてしまうのがとてももったいなく感じるのだ。せっかくこんな傑作があるのだから原液ですすってほしい。強烈だけど、それは確実にあなたの心にとって良いものだ。
それにしても、読み終えたあとの感覚は…ちょっと言葉にできない。
とりあえず胸がいっぱいになった。ポジディブな感情でパンッパンになって言葉が詰まってしまった。
『小説』とは題しているが、これは小説だけに限らず、マンガ、アニメ、映画、イラスト、芸術などあらゆる創作物とすごしたこれまでの時間すべてに形ある祝福をもたらしてくれる。作品もあなたの人生も丸ごとである。
大げさじゃない。しかも空虚でもない。ここが重要だ。
射程範囲が広いのに、深く深く心に響くのだ。
そんなのありかよ。あったのだ。野崎まど、小説を書く妖怪なのか。
途中のすごい展開で若干、物語に振り落とされそうになったけど、最後のあれを味わえて本当に幸せだった。
素敵なところまで連れて行ってくれたこと、素晴らしい景色を見せてくれたこと、私の人生を肯定してくれたこと、すべてに感謝したい。
~~~~
遂にここまで来てしまった。
90作品を紹介して残すところあと10作。ベスト10のみである。
もー、さすがに限界です。心がカッスカス。脳みそつるっつる。何も言葉が出てきません。
今度こそほんとに「面白いですっ!!!!」しか書けない。間違いない。本人が言ってるんだから信じて。…とか言ってやっぱりちゃんと紹介するんでしょ?とか思ってるでしょ。使い果たした人間をなめんなよ。こちとらだいぶ前から限界で、やさぐれもやさぐれ、なけなしの倫理観とハムスターのアクビ程度しかないサービス精神でなんとかここまで書き進めてきたけど、本当におしまいなのだ。
ゴールはしていないけれど、ここまでたどり着いただけでも褒めてほしい。正直言うと、何も成してないときも褒めてほしい。頼む。
ということで楽しかったランキングもフィナーレである。
私はもう「面白いです」しか書けないほど力尽きているけれど、魅力的な作品たちが並んでいるという事実だけでなんとか勘弁してください。
どの道、主役は作品たちであって私は添えものである。役目を果たしたら捨てられる存在だ。どうぞ私の死骸を踏んでください。
では2025年を彩った本たちの頂点を飾る、珠玉の10冊である。
何が1位になるか、予想しながら楽しんでいただきたい。
では行ってみよう。
10位
まずは87票獲得した、第10位!!!
嫌悪感の魔術師
村田沙耶香!!!
と来れば…
『世界99』!!
面白いd…って、いやいやこれは無理だろ。
「面白いですっ!!!!」で通そうかと思ったけど、私の心の関守が立ちはだかってしまった。
あらゆるディストピアを万華鏡のように生み出す村田沙耶香の話題作が堂々のランクイン。これが入らなかったら嘘でしょ。
発表されたそばから読書界隈に悲鳴と絶句のアンサンブルをもたらした怪作である。
衝撃度合いもそうだし、売れ行き、評価の分かれっぷりと、2025年ベスト10に入ってしかるべきだろう。さすがにこれが1位になる世界は怖いけど。
『世界99』の恐ろしさがよく分かるのが、公式によるトリガーアラートである。
映像作品の冒頭で見かける「暴力」とか「フラッシュ、点滅にご注意ください」的なあれである。
ではどんなアラートが出されているか見てみよう。
性的暴力/差別/暴力・暴言/動物の死/自殺/他殺の描写が含まれます。
〈世界99公式サイトより〉
全部入りじゃねーか。
二郎系ラーメンかよ。毒だろ、こんなん。
当然、こんな体と精神に悪いものがたくさん盛り込まれているので、大ダメージを食らう人が続出なのだが、それでもみんなは言う。「読むのがやめられない」「没頭しちゃう」「胸糞悪いのに面白い」と。
さらに恐ろしいのが、この歪な物語は読者側に侵食してくるのである。
異世界のはずなのに自分たちが知っている世界で、醜悪なのに共感してしまって、読み終えるともう以前の自分には戻れない。こっちの世界に『世界99』が作用しだすのだ。
果たしてこの作品の面白さを伝えられているのかさっぱり分からない。悪口を書き連ねているような気もする。
でも『世界99』は批判さえも養分として吸収してしまうと思う。
そんな毒書をたまにはいかが。
9位
さあ毒が回り切る前にランキングを進めよう。
続いては第9位!!
91票獲得。
日本人初。
…と来れば?
王谷晶!!!!
『ババヤガの夜』!!
依子ーーーー!!!!!!!
はっ!興奮のあまり思わず叫んでしまった。
やっぱり最高だったら叫ぶよね。なんだかんだ言っても我々はサルである。最後の手段は叫びだろう。
日本人初のダガー賞を獲った、圧倒的なリズム感と暴力で魅せる傑作ミステリーである。
一応界隈じゃない方に説明をしておくと、ダガー賞というのは世界最高峰の文学賞で英国推理作家協会が主催している、ミステリー好きからしたら名誉すぎる賞である。
これまでに東野圭吾の『新参者』、伊坂幸太郎『マリアビートル』、柚木麻子『BUTTER』がノミネートされているが、遂に王谷晶が受賞の誉れとなった。いちミステリー好きとして素直に嬉しい。おめでたい。せっかくだから祝日にしてくれ…って、私の職場は祝日に稼働するタイプの職種だから関係ねーか。労働はカス。
スピード感が凄まじいのと、さっきも書いた通りテンポ感が異常に良いので、普通に読んでも2時間ぐらいしかかからないと思う。
体感的にも面白い洋画を一本観たぐらいで、満足感もそんな感じ。
ストーリーに贅肉が一切ないし、セリフ回しは痺れるし、展開は早いし。これが嫌いな人っていないんじゃないだろうか。
主人公の依子は並み居る女性主人公たちの中でも屈指の強さを持っている。
依子に出会えただけでも『ババヤガの夜』を読んだ価値があったと思えるぐらい。あんなに最高で痛快なやつってそうそういないし、バケモンすぎて笑っちゃった。
8位
依子いいよなぁ。やっぱり良い作品にはいいキャラがいるものでしょ。
物語の原動力になったり、良い意味でブレーキになったり、読者の味方になってくれたり。名作の影に名キャラあり。
読者として消費することに慣れてしまうとついつい忘れてしまうけど、彼らも物語で確かに生きてる存在だからね。大事にしましょう。
ということで、続きましては第8位!!
92票獲得。
日本新記録おめでとうございます!!
吉田修一!!!
『国宝』っ!!!
徳次ーーーーー!!!!!!!
だからキャラを大事にしろって。『国宝』といえば徳次、徳次と言えばカットである。
映画ですさまじく感動して、原作を読んでみて驚愕した。とんでもなくでかいピースがカットされてるやんけ。徳ちゃんおらんがな。
ネタバレになるからあんまり語らんけど、原作には徳次という超重要キャラがいる。映画で少年時代の喜久雄が歌舞伎の真似事をしていたときの相方の彼だ。
映画では喜久雄と俊ぼんの話になっているが、原作だとそこにさらに徳次が絡む。絡むどころか足の一本である。徳次がいなかったら物語が成り立たないレベルである。
「いやいや、でも映画ではいなくても成り立ってじゃん」と思われるかもしれない。その通りである。いなくても成り立つように物語を変えているのだ。
そこの是非について論じるにはあまりにも私の熱量と残りの気力が釣り合わないので、いつかの機会に譲るとして、とにかく原作を読んだらまったく違う光景が見られる。並行世界の話と言ってもいいほどだ。
どっちがいいかと言われたら、それはもちろん原作である。情報量が段違いである。ドラマの量と濃度が桁違いだ。物語を楽しむ上で小説に勝てる媒体はない。
しかしながら映画『国宝』がとんでもないヒットを飛ばしていることからも分かるように、小説では味わえない別の快楽に特化しており、小説では成し得ない高みに届いていると思う。
そもそも違うアトラクションを比べたり、きのこたけのこ戦争みたいなもので、どちらがと決めるべきではないのだろう。原作です。たけのこです。
映画化をするにあたってどこを切るか、どうやって編集するかを考えたときに、徳次を切る判断は天才的だと思う。
脚本の方にぜひその辺りの苦悩を聞かせてほしいくらい。
7位
それにしても『国宝』は良かったなぁ。映画も原作もどっちも語り代があって。
コンテンツってひとりでも楽しめるけれど、感想を吐き出して、誰かに届けて、それが波及していく楽しみもある。ブロガーを長いことやってる私としては、その楽しみが格別であると強く訴えたい。
ミステリー界隈の厄介な奴らって、すぐに「ネタバレがー」とか言い出すじゃん?
あれってどうかと思うよ。作品の魅力が広がりにくくなるし、感想を自由に書けないなんて、息苦しいSNSになっちゃうし。感動したら感動した、驚いたら驚いたって素直に語れる場こそが一番健全だって。
ネタバレアンチのみんなは我が身を振り返ってみてほしい。SNSを息苦しくしてないかって。
いかん、いかん。ついつい余計な話をしてしまった。やっと長大な記事を終わらせられるっていうのに。読書愛が強いもんでね。ごめんなさいねぇ。
それでは第7位!!!!
93票獲得。
ミステリー界の新たなる王者、
夕木春央!!!!
『方舟』!!!!
黙れ。
なにが「SNSが息苦しくなっちゃう」だ。息苦しくあれよ。最優先はネタバレを防ぐことだろ。空気なんか後回しでいいんだよ。ネタバレを防ぐために窒息しろよ。『方舟』の美味しさを堪能させたかったら、何も知らんまま食わせるのが一番だろ。
いかん、いかん。ついつい火力を上げてしまった。ミステリー愛が強いもんでね。
さて『方舟』である。とにかく性悪な作品である。
閉じ込められた地下空間で展開される最悪すぎるトロッコ問題。閉所恐怖症気味の私はこのシチュエーションだけでかなりのストレスだった。
先日、ミステリー好きの皆さんにご協力いただき、こんなランキングを作った。
結果は見てのお楽しみだが、『方舟』がとんでもないことになった。
色々と瑕疵のある作品ではあるけれど、やっぱり食らう度合いで言ったら、過去の名作に引けを取らない。
ミステリーランキングとなるとどうしても『十角館』とか『そして誰も』とか『六枚のとんかつ』…じゃなかった『占星術殺人事件』みたいな、レジェンドたちが永遠に輝き続けていて、新刊でどれだけの名作が生まれても太刀打ちできない。
ミステリーにおけるトリックというのは出尽くしていて、あとはバリエーションや組み合わせの工夫しかなかったりする。ジャンルとして行き詰まっているのである。
そんな中、『方舟』は大健闘している。時間という洗礼にどれだけ耐えられるかは未知数だけど、いっときでも名作たちに並ぶ事自体が今まで無かったのだ。
発表時の衝撃は凄まじく、その性悪さっぷりに、読んだ人がむしろ感想を書かなくなってしまう現象が起こっていた。
何も語らないことが一番だと"被害者"たちが自然と判断したのだった。
さすがに現在は売れまくった影響もあって天真爛漫な感想を見かけたりするが。
これこそ、読み終えた人だけで感想を共有するのが愉しい作品である。
私も友人たちとやったけど、とんでもない盛り上がり方したし、友人の面白すぎる考察や想像をここに書きたいけど、やっぱり秘密である。
『方舟』。
停滞したミステリー界に現れた怪しく輝く怪作である。
これからも美味しい悲鳴を生み出し続けてくれることを期待している。
6位
さあどんどん行こう。
やっぱり良い作品を紹介してると、テンションが上がりますなあ! キーボード叩きすぎて手首がめちゃくちゃ痛いけど、顔はニヤけてるもん。完全に『方舟』のせいです。
それでは第6位!!!!
95票獲得。
お姉さん変すぎるぞ!!
逢坂冬馬!!!
『ブレイクショットの軌跡』!!
2022年に『同志少女よ、敵を撃て』で衝撃のデビューを果たし、その勢いのまま本屋大賞を掻っ攫った俊英、逢坂冬馬の最新作である。
"ブレイクショット"という車種を中心に描かれる群像劇である。
あらすじを読んだ感じだとパッとしない印象を持たれるかもしれない。私もそう思った。端的に言うとそんなに期待できなさそうに感じた。
逢坂冬馬といえば『同志少女~』や『歌われなかった~』のイメージが強くて、とにかくハードできっついけど、がっつくように読ませるタイプの作品を期待してしまう。それが車て。日本の話なのもスケールが小さくなったような印象を受けた。
大間違いである。
『ブレイクショットの軌跡』、大正解である。これまで読んだ群像劇ものの中でベスト3に入る。
私は群像劇が大好物である。
同じ世界でちょっとずつ繋がっていたものが、最後に収束していく快感は他のジャンルでは味わえない。
で、大好物なのだが群像劇の需要が追い付いてないとも思っていた。
傑作と呼べるような群像劇はあるけれど、数が限られているのである。奥田英朗の『最悪』とか伊坂の『ラッシュライフ』とかね。
面白いジャンルのはずなのにそこまで数が出てこないのは、群像劇にありきたりなパターンが出尽くしてて焼き直しみたいになってしまうのを、作家が恐れているのかもしれない。
あとはそもそも単純に物語を組み立てるカロリーが高すぎるのもあるかも。
ただ単に登場人物を出せばいいという訳ではなくて、それぞれのキャラのドラマが立ってないと駄目だし、性格も変えなきゃだし、違うような問題を抱えさせなきゃいけないし、その問題もレベル感を揃えないと、章が変わったときに読者のテンションが弛んだりしてしまう。これを高いレベルで成立させるの厳しすぎるでしょ。
で、そんな作家泣かせな群像劇に現れた新たな傑作、それが『ブレイクショットの軌跡』である。
エンタメ系の群像劇でありがちな、無茶な伏線を誤魔化すために不条理なコメディに寄せたり、ごちゃごちゃにして目くらましするようなことが一切ない。
そして何よりも登場人物たちのドラマである。
『同志少女』や『歌われなかった』を書いた男だ。そこは信頼してもらって問題ない。ロシア人やドイツ人じゃなくても、ちゃんと我々の心を鷲掴みである。
一人ひとりの人間っぷり、切実さ、希望、喜び…などなど血が通いまくっている。そんな血の通った物語たちが、織りなし、編み込まれていくのだ。こんなに最高なことはないだろう。
読み終えたとき、胸の中に心地よい風が流れ込んでくるようだった。余計なものが飛ばされていって、心が軽くなったようだった。
なんかね、大げさかもしれないけど、こういう感覚をもらうために、こういう気持ちになるために私は本を読んでるんだろう。
私にとって読書は心の荷物を下ろす行為なのだ。
逢坂冬馬、まだデビュー3作目である。
作家としてまだまだ成長すると考えると、そら恐ろしい気分である。
ちなみに逢坂冬馬の実姉はロシア文学者の奈倉有里である。
二人の対談本がかなり変で面白かったのついでにオススメしておく。「なにこの姉弟?」ってなるから。
5位
ああ…。終わる。本当に終わる。無限とも思えたこの記事も遂にあと5作品のみ。
ランキングの紹介してるんだか、愚痴を聞かせてるんだか分からない記事になってしまったが、少しでも皆さんが楽しんでくれたら嬉しい。苦しんだかいがあるというものだ。人の不幸って面白いもんね?
それでは第5位の発表である。
大台突破の106票獲得。
先生!ブチ切れないで!!
村山由佳!!!!
『PRIZE―プライズ―』!!
人の苦しみって、おもしれー。
ベストセラー作家、天羽カイン。本屋大賞の受賞歴もあり、名実ともに一流の作家だった。
しかし直木賞だけがどうしても獲れない。なぜなのか。何が足りないのか。文壇の連中に認めさせるには…。
権威を欲する作家と担当編集者の欲望と妄執、狂気を描く。
これ大好き。
心の澱とか汚い部分でダシをとった濃厚どろどろスープ小説って感じ。でも間違いなく澄んでる。とにかく絶品。
物語に夢中になるのって、誰かに肩入れしたり、感情移入するときで、私の感情が登場人物たちに引っ張られるような感覚がある。
で、『PRIZE』の場合、主人公の執念や欲、憎しみ、そして情熱が波状攻撃を仕掛けてきやがるから、とにかく感情の引っ張られ具合が凄まじい。
引っ張るどころか、胸ぐらを掴まれて、足払いを食らわされて、引きずり回されてる感じ。感情やくざである。
それをW主人公である作家の天羽カインと編集者の二人がそれぞれでやってくる。馬力が二倍である。心中引き回しの刑である。これはボロボロになりますよ。
さらにワクワクしてしまうのが、作家と編集者がのたうち回るようにして見苦しく生み出す姿とは対照的に、作品が研ぎ澄まされていく様子はぞっとするほど美しいのだ。
実際に作中作が編集を経て磨き上げられる瞬間に立ち会えるんだけど、ほんの些細な違いで激烈な効果が発揮される。
これがね、創作の深淵を覗き見るような快感があって最高だった。
創作って人の営みなんだけど、それでも神の御業を見たような感動がある。なんでこんな些細な違いで感動が桁違いになっちゃうのかって。創作の魔力というか。
話の流れ、感情の移り変わりだけで100点満点の面白さを持っている作品だけど、個人的に一番最高だったのはラスト。
この激烈な物語をどうやって締めくくるのかと心配してたけど、あれはもうっ!……て、はい。ネタバレはしませんので悪しからず。
とにかくめちゃくちゃ痺れたことだけは伝えておく。
あ、そうそう。
作品とは一切関係ないが、作者の村山由佳氏が男前で惚れた話をさせてほしい。完全に雑談である。
少し前、一時期外国人排斥の空気が過剰になっていたときに、氏が憂慮されてだと思うが、ご友人のエピソードを語られていた。
父が亡くなった時、遠くから家族総出で駆けつけ、私を抱きしめて一緒に泣いてくれた友人はパキスタン人だった。他にも、在日コリアンをはじめ外国籍の友人知人の顔が次々に浮かぶ。申し訳なく、恥ずかしい。
— 村山 由佳(時々もみじ) (@yukamurayama710) July 20, 2025
あの人たちを傷つけ不幸にするような日本を憂えることが非国民なら、私は非国民で結構です。
この短文だけでも親愛の情や絆が伝わってきて涙腺が緩んでしまう。
でもどうやら私よりもアホな方が世の中にはたくさんいらっしゃるようで、こんなに素敵な話にさえも悪意を投げつけてくる始末だった。その数やスピード感も凄まじく、私も過去に炎上みたいな経験があるので、「これはキツいだろうな…」と心配していた。
その後の氏のポストがこれである。
「問題にされているのは不法滞在の外国人であって…」
— 村山 由佳(時々もみじ) (@yukamurayama710) 2025年7月20日
との反論を頂くけれど、数々のデマにより、罪のない外国籍の方にまでヘイトが向けられているのは事実です。
友人は頭を覆う布を身につけているだけで暴言を吐かれました。
票集めのためだけに分断を煽る言説には、断固としてNOを表明します。
惚れる。
毅然としすぎだろ。SNSの暴風にちょっと吹かれただけで参ってた自分が恥ずかしい。自分の金◯を返上したくなるほど男前。別に私が返上しても何の意味もないんだけど。返上先も無いし。氏の自宅に郵送するわけにもいかないし、どうすればいいの、この気持ちと金◯。
惚れすぎてついつい下品なことを書いてしまった。でも推敲前は伏せ字じゃなかったからこれでもマシになった方です。子犬が書いてると思って許して。
私も外国籍の友人、同僚が少なからずいて、彼らの最高さが身に染みている。
なので氏のように毅然とした生き様を見せてもらえるだけでも、救われたような気持ちになる。
改めて立ち向かってくださったことに感謝申し上げたい。
記事終わんないってずっと愚痴言ってるのに、どうしても我慢できなくて書いてしまった雑談でした。
それにしても、こういう気骨のある方が『PRIZE』のような桁違いに引力のある話を生み出したと思うと、なんか納得である。
4位
ラスト4!! どうなる!! 何が来るか分かるか!!
123票獲得!!
世界一面白い小説のご登場!!!
アンディ・ウィアー!!
﹃
プ
ロ
ジ
ェ
ク
ト
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ヘ
イ
ル
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メ
ア
リ
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あ゛
あ゛
ア
ア
ア゛
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ァ
ぁ
ぁ
ぁ
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最
高
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3位
言葉を尽くした褒めと、言葉を失う褒めをご覧いただきました。
ブロガーも色々と手を変え品を変えと大忙しである。
魅力に溢れた作品たちだから、褒めどころなんていくらでもあって紹介してるだけでも一苦労である。感想たちが常にバトルロワイヤル状態である。
それではそんな私の苦労もマジで終わりである。
2025年の本たちの頂点に輝く、3作品にご登場いただこう。
第3位!!
132票獲得。
沁みわたれ!!
阿部暁子!!!!
『カフネ』!!!!
2024年本屋大賞受賞作。堂々の登場である。
突然の弟の死を受け入れられない姉が、弟の元恋人や新しい仕事を通して心の傷を癒やしていく物語。
私はそれなりに本を読む方だけど、それでもライトな読書家だと自認している。
古典に明るいわけでもなく、深く読み込める知識や感受性があるわけでもなく、ただただ面白い本が好きなだけ。
そんな私の絶対的な味方が本屋大賞である。ノミネート作品は全面的に信用している。たまに裏切られることがないこともないけど、それでも大賞受賞作で裏切られたことは……1回あるか。まあわざわざ悪口を書く必要はないので、この記事では控えよう。気が向いたらディナーのあとで教えてあげても構わない。え?
で、『カフネ』である。
いまや怪物コンテンツとなった本屋大賞、その受賞作だ。その看板だけで文句なしなので、私がどんな紹介をしても雑音にしかならないだろう。でも語らせて。
本屋大賞というのは一般人である書店員さんが選んだ本である。選ぶ基準はたったひとつ「いま一番売りたい本」である。「売りたい」と書くとちょっと下品だけど、「読んでほしい」と同義である。
実際に書店員さんが読んで選んでいるので、これは一般人である私たちの需要に一番近い賞だと言える。
この「読んでほしい」というのがポイントで、過去の大賞受賞作を眺めると2つの方向性がある。
・面白さが突き抜けているから読んでほしい
・必要として人に届いてほしいから読んでほしい
これはまったく別の軸では当然ないので、両立することもありえる。でも大賞受賞作には常にどちらかの要素が入っている。
『カフネ』は確実に後者である。
読みやすさ、展開の面白さももちろんあるけれど、何よりも「必要とする人に届いてほしい作品」としての力があまりにも優れている。
散々書いているが私は読書によって生きながらえている人間なので、『カフネ』のような作品がどれだけ人の心を救ってくれるか、澱を掬い取ってくれるかを知っている。フィクションにしかできない奇跡は、確かにあるのだ。
フィクションって詰まるところは嘘の話である。
でもそんな嘘が誰かの心に作用して、その人の心や生き方を変える"本当"になるのである。面白いもんだ。
ドーパミンを刺激して、私たちの可処分時間を奪おうとするコンテンツの覇権争いに満ち満ちた現代。コンテンツに悪意ばかりが注がれる時代である。
そんな今、こんなにも安心して心を預けられる物語が支持を集めてくれることに、私はひとりの読書家としてとても嬉しく思う。
そういえば"カフネ"という言葉の意味は「愛する人の髪にそっと指をとおすしぐさ」だった。良い。
ちなみにミステリー狂いの友人は、弟の突然死に勝手に注目して読んで「死の真相は関係ないんかい!」と勝手にキレていた。死が出てくると犯人を考えちゃう習性から逃れられないのである。愚かすぎて最高。
2位
それではお待ちかね、第2位!!!!
146票獲得!!
朝井リョウ!!!!
『イン・ザ・メガチャーチ』!!
どえらい勢いで読者をこてんぱんにしている話題作がランクイン。9月発売でこの順位である。爆発っぷりが伺えるだろう。
真面目にこのランキングの1位を予想している方がいたとしたら、たぶん『イン・ザ・メガチャーチ』だったのでは、と思う。
今回の本屋大賞にノミネートしてるし、書店での展開っぷりも凄いし、何よりもTLで見るみんなの感想の興奮度合いが図抜けている。単に面白い物語を読んだ以上のものが文面から出ている気がする。
さてそんな話題作のあらすじがこちら。
沈みゆく列島で、“界隈”は沸騰する――。
あるアイドルグループの運営に参画することになった、家族と離れて暮らす男。内向的で繊細な気質ゆえ積み重なる心労を癒やしたい大学生。仲間と楽しく舞台俳優を応援していたが、とある報道で状況が一変する女。ファンダム経済を仕掛ける側、のめり込む側、かつてのめり込んでいた側――世代も立場も異なる3つの視点から、人の心を動かす“物語”の功罪を炙り出す。
「神がいないこの国で人を操るには、“物語”を使うのが一番いいんですよ」
「なんだよ、推し活の話かよ」と侮ることなかれ。
あの朝井リョウである。ちゃんとページの向こうから我々の心を、価値観を、巧みに揺さぶってくる。
朝井リョウ作品でしか味わえない謎の敗北感って確実にダメージなんだけど、蒙が啓かれる感覚に近い。
視野が広がる充足感が伴ってるから不快感のないダメージなのだ。人が成長するとき特有の喜びを含んだ痛みなのである。痛いけど病みつき。それが朝井リョウ。
『イン・ザ・メガチャーチ』のみんなの感想を見てるとよく分かるけど、作品によって"視座を変えられてる"のである。
登場人物たちの生き方や心の動きによって描かれる世界が、今まで自分が完全に見落としてたものだから、一度知ってしまうとそれ以前には戻れなくなってしまう。あれもイン・ザ・メガチャーチ、これもイン・ザ・メガチャーチとなるのだ。
大きな話になってしまうけど、これってある意味人生を変えられてるようなものだ。
人生というのはそう簡単に変わるものじゃない。でも日々の小さな積み重ねがあれば、長いスパンで変わっていくものだ。
となると、日々のものごとの見方に"イン・ザ・メガチャーチ"というフィルターを付けてしまうこの作品は、人の人生を変えることにはならないだろうか。
作品に据えるテーマの選定もそうだし、それをどうやって読者に調理して提供するか、そして描き出す人物をどこに設定するか、どのように組み立てるかで、読者が"自分事"にしてしまう度合いが全然違うだろう。
それを判断するためには、世の中を冷徹に、でも興味を持って見ないと無理だと思う。
どこをどうやって見るか。作家の凄みというか、才能ってここに集約されると思っている。
ここまで読者に影響を与えてしまう朝井リョウ。本当に恐ろしい男である。
エッセイではあんなに肛門の話ばかりして爆笑を掻っ攫っているけど、価値観まで掻っ攫っていくんかい。
ちなみに2025年本屋大賞は『イン・ザ・メガチャーチ』だと確信してます。
(さらにちなみに昨年は『小説』が取ると確信していました。見る目なし)
1位
さあさあさあ!本当にラストである。
優秀の美を飾る、2025年に読まれた本たちの頂点に輝く作品を紹介しよう。
いやー、終わってほしいとはずっと思ってたけど、いざこうやって1位まで来てしまうと、若干寂しいというかもうちょっと無駄話をしたい気分が出てくるけど、それの繰り返しで7万文字ぐらい書いてるので、ほんとにいい加減にしよう。
さーて、記事を書き終えたらどれを読もうかなー。考えただけで元気になってきたからもうちょっと無駄話……はさすがに怒られるので、止めておこう。
それでは発表しよう。
第1位!!
157票獲得!!!!
遂にここまで来たか!!!!
今村翔吾!!!!
『イクサガミ』!!!!
面白いですっ!!!!!
以上!!!!
最後までお付き合いいただき感謝。
今回は過去最大ボリューム。限界を何度迎えたことか…。しばらく読書の海に溺れさせてもらいます。
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※集計作業を頑張ったひろたつを労ってあげたい方はこちら。



