
※この記事はめちゃくちゃ長いです。覚悟してください。
どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。読書家ですけど息子はショート動画中毒です。人生の味がするぜ。
ほぼ開店休業状態のこのブログだが、せめてもの社会貢献のつもりで書いているXまとめ記事である。ご笑覧あれ。
面白い本の見つけ方
よく聞かれる質問がある。
「どうやって面白い本を見つけていますか?」
というものである。
ブログにSNS、たまにラジオと色んな媒体で無節操かつハイテンションにオススメ本の紹介している私。
そんな私を見ると周囲の方々は
「こいつはなんで一人でこんな興奮してるんだ、気持ち悪ぃ」
↓
「気持ち悪いけど、こいつの熱量は本物だ」
↓
「こんなやつを生み出した本とはどんなものか」
↓
「そんな本と出会うにはどうしたらいいのか」
という思考の流れを経るようである。
私への毀誉褒貶はどうでもいいとして、本にアクセスしたい人が増えるのは、いち本好きとして大歓迎である。新規参入がなければジャンルは衰退する。必然の理である。ご新規さん万歳である。ネタバレを撒き散らす困ったちゃんが増えるのは困るけど。
少数派の読書家
正直に書くと、現在の私は数百冊の積ん読に囲まれて京極堂のような生活しているので、次に読む本は手を伸ばさずとも眼の前に常にある状態である。我が家では完全に私の方が少数派である。本たちが排外主義に染まったら、家を追い出されるのは確実に私である。積ん読を礼賛する愚か者たちのためにもピクサーさん、次の映画でそんな話はどうでしょう。本は読まれるのが役目なのに、読まれなくて悲しんでる本たちの逆襲。敵はスマホ。
話がそれた。
「どうやって面白い本を見つけているか?」の答えは私の場合、「過去の私が見つけてきた」なのである。
では過去の私がどうやって見つけたかと言えば、もうとんと思い出せない。完全に他人の仕業である。勝手に本を増やす妖怪がいたとしても分からないだろう。
数年放置している作品なんてざら。もしかしたら寿命に間に合わない作品もあるかもしれない。なんせ読むスピードよりも、読みたい本が生み出される速度の方が早いのだから。
積ん読は「読みたい本しかない本屋」
手に入れた経緯はまったく思い出せないけど、確実に言えることがある。それは「私が読みたいと思った」であり「私が手に入れたいと思った」という事実である。妖怪の仕業じゃなかった場合は。
いつだか友人が積ん読を「自分が読みたい本しかない本屋」と称してて感動した覚えがある。まさに、である。
SNSで誰かの感想を見たり、
好きな作家の作品だったり、
タイトルだったり、
テーマが人生のタイミングと重なってたり、
書店でふと目に入っただけだったり、
扇情的な帯の惹句に苦笑しつつも手にとってしまったり、
と色んな出会い方があるけど、そこには確実に私の"興味"があったのである。
オッサンが使うと気持ち悪いけど、いや元々気持ち悪いのかもしれんけど、言い換えるならトキメキがあったのである。うーん、自分で書いてて不愉快である。なんでオッサンってこんな容易に不愉快を生み出せちゃうんでしょうね。現代の悲しき妖怪、それがオッサン。あれ、もしかして積ん読を勝手に増やす妖怪って私のことだったのか?
上位100作品を紹介!!!!!
オッサンの悲哀はどうでもいいとして、とにかく面白い本の探し方である。
そんなの簡単である。誰かが狂わされた本を読めばいい。これである。
その意味で「#2025年の本ベスト約10冊」をまとめたこのランキングは非常に有用だろう。積ん読ですでに窒息しそうになっている同志たちからすると、止めを刺す役割を果たしてくれるかもしれない。
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いつも通り「#2025年の本ベスト約10冊」のタグが付いたXのポストを手作業で集計させていただいた。
今回はいつもに増して参加人数が多く3000以上のポスト、約2700名分の集計結果となる。
これさえ読めばいま一番熱い本がどんなものなのかすぐに分かるだろう。
で、2700名分となるととんでもない量になってしまうので、この記事では上位100作品に絞ってご紹介する。
果たしてそれを多いと思うわれるのかどうか、集計作業のために3000ものポストとにらめっこした私には到底判断がつかない。
ということで、長大な記事になりますが、皆様のトキメキの歴史に刻まれるような作品に出会えることを願っている。
行ってみよう。
※私のうるさい紹介が一切ない集計結果のみの純粋なランキングはこちら。
47位
19票獲得。6作品がランクイン。
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『ザ・ロイヤルファミリー』
競馬に魅了された人々の苦悩や葛藤、人生を描いたヒット作。ドラマ化されてるのは原作が強い証拠。
競馬ものってオッサン趣味のイメージがあるけど、これが意外や意外、ちゃんと奥深くて、万人受けする物語になりやすい。
ギャンブルではあるけど動物ものとも言い換えられる。人間の欲望と馬たちの真摯さ。この対比が味わえるのが競馬ものの魅力ではないでしょうか。
それにしても最近の早見和真の快進撃っぷりは凄いな。完全に世の中の空気を掴んじゃってる。
『バベル オックスフォード翻訳家革命秘史』
銀と、ふたつの言語における単語の意味のずれから生じる翻訳の魔法によって、大英帝国が世界の覇権を握る19世紀。英語とは大きく異なる言語を求めて広東(カントン)から連れてこられた中国人少年ロビンは、オックスフォード大学の王立翻訳研究所、通称バベルの新入生となり、言語のエキスパートになるための厳しい訓練を受ける。だが一方で、学内には大英帝国に叛旗を翻す秘密結社があった。言語の力を巡る本格ファンタジー。ネビュラ賞、ローカス賞受賞作。
なにこれ…。完全にノーマークな作品なんだけど。べらぼうに面白そうじゃん。なに「編集者が感動を保証」って。完全に言い過ぎでしょ。でもそれを言いたくなるほど狂わされちゃったのがひしひしと伝わってくる。
たまにある「これは完全に読むわ」ってやつだわ。読みます。
『ファラオの密室』
生き返ったミイラが消えたミイラの謎を追う、というミステリー趣味が素敵にひねくれた快作。
設定は突飛だけれども、斬新な設定にするのにはそれ相応の理由があるのがミステリーの良い所。
既存の材料では味わえない面白さをお楽しみに。
『フォース・ウィング』
全世界でとんでもない売れ方をしている、いま一番熱狂できるファンタジー。
ハリーポッターに続く大作ファンタジー…と呼びたいところだけどロマンス要素が強すぎるのでそこだけが危険要素。想像の7倍エロいから小学校には置けないかも。中学でも厳しいか?
世界を魅了する面白さは売り上げが保証してくれています。
『兇人邸の殺人』
映画化もされた『屍人荘の殺人』のシリーズ第3弾にして、一番ぶっとんだ設定の作品。
巨大な残虐モンスターの跋扈する屋敷に閉じ込められてしまった一同の話。
もはやミステリー小説といえるのか不明なレベルだが、面白さはシリーズ随一。やりたい放題のパニックホラー&緻密に構成されたミステリーの合わせ技。
ミステリーというジャンルの懐の深さを見せつける一作である。
というか作者が変態すぎるだけかも。愛してるよ、今村昌弘。
『未来図と蜘蛛の巣』
『紗央里ちゃんの家』で読者を魔界へと連れ去ったことで話題になった矢部嵩の新作。
異形の短編集でそのヤバさはページをめくった瞬間に分かる。
これ見て。
「未来図と蜘蛛の巣」、装幀から良くて嬉しい pic.twitter.com/OBlo1OBoDd
— 一体いつから (@Alwe_Logic) January 13, 2026
もちろん見た目だけのこけおどしではなく中身もちゃんと“なんかおかしい”ので、ぜひ体験して。
46位
20票獲得。11作品がランクイン。
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『ザリガニの鳴くところ』
あーーー…これはぁ…。
大好きな作品なのでぜひ熱く私の言葉で紹介したいんだけど、こちらのポストを見てからというもの、感想を言葉にする心が完全に折られてしまった。
#読了
— 快晴 (@aKPMvDGY5w95841) 2025年8月12日
傑作だと思いました
素手で心臓を掴まれて息ができなかった
誰かのせいにして生きれば楽だろう
不幸なのは親や生まれた場所のせい
自分は悪くないと顔に書いておけば、他人はそれを勝手に読んでくれる
でもそれは虚しさや寂しさに支配された人生
自分の意思で敢えてその顔に泥を塗る姿は美しい pic.twitter.com/60H7BRwbIy
こんな素敵な感想書けるようになりたいけど、知性と品が下な私には無理。
『テスカトリポカ』
アタマあっぱらぱーになりたい方はこちらへどうぞ。
マヤ文明に青春の葛藤、倫理観皆無のメキシコ麻薬カルテルに、臓器売買とかもう要素が多すぎて何がなんだか。
でも情報量の洪水と抜群の疾走感のあわせ技で、酩酊するような面白さを味わえる。
脳みそぐらんぐらんになろう。
『レモネードに彗星』
「少し不思議でハイパーポップな傑作短編集」という何のことやらな作品。
皆さんの感想を読む感じだと、感性を上手に引っ掻くというか、琴線を曖昧に撫でたりしてくる作品っぽい。すまぬが我未読也。
人によっては書き出しをちょっと読んだだけで「これは読み切りたい!」と思わされてる。その一方で「意味が分かりません…」という方もいて、これぞ読書という感じがしてとっても面白い。
『言語化するための小説思考』
『地図と拳』『君のクイズ』の代表作で知られる小川哲が、己の小説作法をすべて開陳した新書。手の内を明かし過ぎて同業者から引かれたり、そもそも開陳されてもできないことだったりと、これ自体がエンタメになってるのはさすがの一言。
最近のエンタメは、作品自体を楽しむ時間が無さすぎてみんな裏側と深読みばっかりが好きになってるから、そういう需要も狙ってるのかも。なんて奴だ。
『殺戮にいたる病』
殺人鬼(しかも死体を損壊して喜ぶタイプ)の内面を没入体験できる激ヤバ作品。
グロさの振り切り具合は数多くあるミステリーの中でも随一なんだけど、読者は完全に殺人鬼に成り代わってしまうので、あまりグロさを感じない不思議。え?私だけ?
さあ一緒に死体損壊を楽しみましょう。
『誰が勇者を殺したか』
完っ全になめてました!!すんません!!
こんなにちゃんと面白くて感動できる話だったなんて…。私はてっきりファンタジー設定にミステリーものだとばかり思っていたので、良い意味で裏切られてしまった。
葬送のフリーレンが好きな方はハマるよ、これ。
『羊式型人間模擬機』
男性が死の間際に「御羊」に変身する一族に仕える「わたくし」の物語。その肉を捌き血族に食べさせることを生業としている。
?
あらすじも、皆さんの感想もかなり読み込んでみたけど、さっぱり要領を得なくてなんか怖くなってきた。皆さんあっちの世界に行っちゃってるみたいなんだけど。やばいチケットでも入ってるの? ほんとに何なのこれ。
『エレファントヘッド』
怖い作品が連続しております。
ど変態×ど畜生×巧緻に組み上げられたミステリーの異端作品。…って、ミステリーかこれ? アタマがおイカれになりすぎてて笑っちゃうレベルである。
〇〇を××して♪♪する辺りから完全にこっちも覚悟が決まったよね。あ、これはまともな感覚で読んじゃダメなやつだ、って。そういえば道徳って何だっけ?
『ストーンサークルの殺人』
エンタメミステリーの世界最前線をぶっちぎるワシントン・ポーシリーズの第1作である。
極上のプロット、異常なまでのテンポ感、大好きになっちゃうキャラクター、ただただ面白さをぶつけてくるストーリー。
もうね、無敵です。
ワシントン・ポーシリーズは完全に人生のご褒美。私にとって。
最新作を2つ取ってあるの嬉しすぎる。
『月とアマリリス』
孤独に寄り添うドラマを描き続けてきた町田そのこの新境地。
北九州市の高蔵山で一部白骨化した遺体が見つかったことをきっかけに展開するミステリーなのだが、事件を取り巻く人間の境遇や心に向き合って描かれており、深い感動と思索をもたらしてくれる。
ミステリーがベースにはなっているものの、そこはさすがの町田そのこ。これもまた声なき声に寄り添うひとつの究極形だろう。こんなん泣かずに読めるかい。
読後に重い溜息が出るかもしれないけど、濃い感動と充足感を味わった証拠である。
『星を掬う』
まっちーが続きます。
このタイトル…物語のとある要素のメタファーなんだけど、鳥肌が立つほど良い。町田そのこは本当にいい仕事をしますわ。
よく思うんだけど、町田そのこ作品の装丁って毎度めちゃくちゃツボに刺さるな。作家によってなんかそういうのあるのかな? 窪美澄とか森博嗣も毎回好き。
『星を掬う』は文庫版もハードカバーの方もどちらもまったく違う毛色の魅力があってよろしい。いやー、改めて表紙だけでもちょっとゾワッとするなぁ。
掬えなかったとしても、星のような思い出を作っていきたい。
45位
さあ、この時点で記事を書き始めてから7時間ほど経過しております。残り90作品ぐらい? 書き終える前に死ぬかも。
ではでは21票獲得をした45位。
5作品がランクインである。
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『わたしたちが光の速さで進めないなら』
韓国の新進気鋭のSF作家による、切なく優しい大ヒット短編集。
韓国文学がかなり浸透してきたとはいえ、SFを扱ったものがここまで上位に食い込むとは。(ちなみに今回のランキングは4票から集計しているので実際は62位まであります)
残念ながら未読なんだけど、タイトルフェチのセンサーには引っかかっていた。なにこの切なさに満ちたタイトル。もうこれだけでひとつの詩でしょ。抗えない隔絶が絶対にあるじゃん。
心に静かに沁みわたるタイプの作品である。日常で荒んだ心にそっと寄り添ってくれる感じがめちゃくちゃする。
『深淵のテレパス』
ベストホラー2025みたいなやつを獲っていた作品。オモコロ好きとしては、上條さんが作家として売れたのが何よりも嬉しい。というかオモコロ、ホラー作家排出しすぎだろ。
読んだ感想としては、私がホラー不感症であるのを差し引いてもそこまで怖さで押してくる作品ではない。もっとエンタメ寄りの、変則ゴーストバスターズといった感じ。面白い話として普通に楽しめる。
キャラ立ちも凄いし、シリーズものになっているので続刊が楽しみである。
『問題。以下の文章を読んで、家族の幸せの形を答えなさい』
中学受験を通して家族の成長を描く感動作。
逆学歴で生きてきた私としては中学受験ってまったく人生に関わらない要素なんだけど、中受を扱った作品でハズレって見たことないかも。毎度ボロ泣きしてる。
現実の厳しさと本人の無垢さ、人間として成長する段階、それらが同時に存在する稀有な時間だから、題材として美味しいところがわっさわっさあるのでしょう。青春ものとしても読めるし。
ボロンボロンに泣きたい方におすすめ。中受もそうだけど、早見和真にもハズレなし。
『赤と青とエスキース』
青山美智子はヤバい。
優しくて温かくて、涙が自然とこぼれるような物語をポンポン生み出しやがる。
しかも良い話でまとまってるけど、話の構造としては秀逸なミステリー小説なんだもん。赤ずきんのふりをした狼、それが青山美智子。え?作品の紹介をしてないって?『赤と青とエスキース』に関してはもう語る必要ないでしょ。青山美智子を未体験の方はまずはこれか『リカバリー・カバヒコ』で決まり。
『クロエとオオエ』
有川ひろ必殺のお仕事恋愛小説である。王道ラブコメにノックアウトされる人が続出である。ちなみに私は恋愛もの対する感性が完全に擦り切れているので、ほんとごめん。
宝石職人の世界を舞台にした珍しい作品で、さらに作中で出てくる宝飾品が巻末のQRコードで実際に見られる仕様になっている。
文章で存分に想像を働かせたあとに、答え合わせのように実物を鑑賞する楽しさは格別でしょう。
甘さ控えめな恋模様に、ページからあふれる宝飾品たちの色彩や輝き、そして読んでいるこちらの胸に迫ってくる生き方の哲学。うん、これは月9。
44位
こんな無駄に長い記事を書いて誰が読むのか。どうせ読み飛ばされるだけじゃないのか。
文章を綴っている私の背後でそう囁き続ける人がいる。そう私自身である。怖っ。
大体にして読まれなくなったブログである。せめて皆さんが食べやすい記事を書けばいいものの、衝動に任せて100作品を紹介するという愚挙に出てしまった。この時点で10000文字を超えている。小説でも書いてんのか。
とはいえなぜそんな愚挙に出たのか。これにはちゃんと理由があったりする。
それについては次の順位で。
22票獲得、44位は5作品がランクイン。
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『ありか』
シングルマザーと幼い娘の成長を描いた、瀬尾まいこ渾身の一作がランクイン。
親子関係ってのは何でこんなにも難しいのか。動物として一番当たり前の関係性のはずなのに、うまく噛み合えないことばかり。幼いころは愛し合えていた。気づけば憎み合っている。この世で一番嫌いな人になってしまったりする。
私は無償の愛というのを信じない。私自身が親になったからこそよく分かる。
無償の愛を持てるのは子供だけである。
しかしその愛も成長とともに薄れていく。彼らが自立すればするほど、親に依存する必要が無くなるからだ。
とってもドライなことを書いたけど別に冷水をぶっかけたいわけではない。
それでも親は子を愛するためにもがくし、子も成長の中で親に近づいていく。
それがとても美しく、滑稽で、人間の良さだなと思うのである。親子関係は難しい。でも難しいからこそ価値がある。
辛さもありながら、希望と温かさを感じさせてくれる作品で、読み終えたとき目の前がクリアになる感覚を得られるはずである。これぞ瀬尾まいこマジック。
そしてタイトルの潔さね。読み終えたあとに噛み締めてほしい。あと子供の描写が可愛すぎて、いいオッサンなのにぐふぐふ言いながらニヤニヤ読んでしまった。怖っ。
『新世界より』
読書というまさしく新世界に私を引きずり込んだ記念碑的作品。脳汁小説の最高峰。すっからかんになろうぜ。
文庫で上中下巻とかなり重量級の作品なんだけど、巻を追うごとに際限無く面白くなるから凄い。
『新世界より』で味わったあの興奮、感動、虚脱感をもう一度…と思いながらずっと読書を続けてる気がする。
初めて読んでからもう20年近く経ってるけど、今のところ同じレベルの面白さだと思えた作品は『プロジェクト・ヘイル・メアリー』ぐらいしかない。
『狼少年ABC』
うわー!梓崎優だ!! めずらしっ!
梓崎優といえば超絶寡作だけど、書けば絶対にすごいものしか出てこない稀有な作家である。
デビュー作の極上短編集『叫びと祈り』でミステリーズ!新人賞とミステリーベスト10で堂々の第2位。そこから3年後に発表された『リバーサイド・チルドレン』では大藪春彦賞。受賞歴だけでいえば打率100%っていうね。で、さらに12年が空いての今作。こんなん絶対に期待しちゃうでしょ。
少年たちが大人になる前の特別な時間を描きつつ、四季になぞらえた4つの短編を収録していて、そのどれもが切れ味抜群のミステリーに仕上がっている。
みんなの感想を見たけど、一番良かったもので挙げてる話が完全に割れていた。それだけ話のレベルがどれも高いということである。
ちなみに好かれすぎてこんな催しが書店で出てくるぐらい。
【第2回河出真美賞のお知らせ】
— 梅田 蔦屋書店 (@umetsuta) 2026年1月14日
第2回河出真美賞、受賞作は
梓崎 優さん
『狼少年ABC』(東京創元社)
です!!!
文学平台で展開中です。
10冊本が売れるごとに1匹ずつカワウソが出現します。
いつまでも心に残るあたたかい一冊、『狼少年ABC』をどうぞよろしくお願いします!#河出真美賞 pic.twitter.com/SpPzqqvbqZ
人を狂わす作品ってこういうこと。これは読みます。
『月の立つ林で』
月をテーマにした5つの短編を収録。見えずとも月は存在するように、未来が真っ暗で見えなくなってしまった人に、優しく寄り添い、気付きをくれる短編集。
またしても青山美智子ぉ! 強ぉい!
読者のツボを心得てるなーっていう作家さんが何人か思い浮かぶけど、その筆頭がいまなら青山美智子である。
さっきも書いたけど、とにかく読者を転がすのが上手い。しかも泣かしちゃうし…っていう書き方するとなんかとんでもないイジメっ子みたいですね。いや、もしかしたら青山美智子はイジメっ子なのかも。こんなに読者を好き放題しちゃうんだから。
とある方の感想で「青山美智子は粋だ」って書いてあるのを見かけたけど、ほんとにそれ。粋さで泣かしてくれるのって、いまは青山美智子作品しかないかも。
『すべての、白いものたちの』
アジア初のブッカー国際賞作家による奇蹟の作品。おくるみ、産着、雪、骨、灰、白く笑う、米と飯……。朝鮮半島とワルシャワの街をつなぐ65の物語が捧げる、はかなくも偉大な命への祈り。
ノーベル文学賞受賞者の代表作がランクイン。最近やっと私も韓国文学を読むようになったからとっても嬉しい。
韓国文学ってハードなものが多いイメージなんだけど、こちらは詩のような小説で、とっても静謐。恐ろしく静かなのに体の、心の、奥の奥から押し上げられるような感覚を得られる。世界よ、ハン・ガンを体験せよ。
タイトルにある「白」からイメージをすくい上げるその手触り、感性に、世界最高峰を感じられるはず。
それにしても「白く笑う」って。これだけで凄みにゾッとするわ。
43位
さて、こんな無駄に長い記事にしてしまった言い訳である。
冒頭でも書いたが、今回の集計では4票以上が入った作品だけでも900ぐらいある。
3票以下も入れると3000作品を超える。
3000である。けっこうな読書家でも一生かけて読み切れない量だろう。それだけの作品が年間ベストとして挙げられているのである。
この量を見て「それだけ溢れかえってるのだから、ひとつひとつにそこまでの価値はない」と思いそうになる。処理しきれないからだ。
しかし、皆さんのポストに目を通して、皆さんの愛をモロに食らっている私としては、そんなことはまったく思えない。できることならすべてを掬い集めたい。
でも人生は有限である。3000作品も紹介していたらそれこそ私は白いものになってしまう。ハン・ガンリスペクトではない。普通に白骨化である。
なので人生と愛の折衷案が100作品なのである。
これでもかなり絞っていることをご理解いただけただろうか。
これでも全然短く収まっている方だと許してもらえるだろうか。
こんな無駄な文章を書いてる暇があったらさっさと作品紹介に進めと思われているだろうか。
仰る通り!!
はい、正気を取り戻したのでランキングに戻ります。っていうかずっとランキングの中にいるはずなんだけどね。どこここ?
23票獲得の第43位はこちら。
『近畿地方のある場所について』
爆売れ小説がランクイン。文庫化に際してラストを変えてるらしいんだけど、背筋の作品をいくつか読んでる感じからすると、これは完全に彼なりのサービス精神だろう。彼の著作からは、とにかく読者に面白い体験をさせるために知恵とアイデアを惜しみなく出してる感じがするのだ。
ホラー音痴の私としては、『近畿~』の面白さの本丸である怖さに関しては「?」なのだが、単純に新しいエンタメの形として素直に楽しんでしまった。小説ってまだこんなやり方があったのかって。
これが映画だったらびっくりしたり、グロシーンで気持ち悪くなったりするんだけど、真に受けて怖がれないこの性格は…ちょっと直せそうもありません。
こんなんだから卒業式とか体育祭とかでも白けきってたんでしょう。ああ、思えばあの頃から私は白かった。ハン・ガンリスペクトではない。
42位
24票獲得。4作品がランクイン。
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『レーエンデ国物語』
日本発の王道大型ファンタジーがランクイン。
入国したっきり魅了されて出てこない人が続々である。
新刊がしばらく出てないからこの順位だけど、次のが出たら凄い結果になるのが確実に視える。
ちなみに私は未読なんだけど、これは興味がないわけじゃなくて、絶対に好きなやつすぎて続刊を待つストレスに耐えきれないと踏んだ結果です。完結プリーズ。本の姫に歌わせてる場合じゃないっすよ、多崎さん!
あ、そうそうレーエンデといえばひとつだけ苦言。というか要望。
あの作品雰囲気と愛され具合からしたら、これは絶対にハードカバーであってほしい。表紙が固く、扉のようであってほしい。読み込んだあとにふにゃふにゃになるのは似つかわしくないと勝手に思っている。
『六人の嘘つきな大学生』
読者転がしの名手、浅倉秋成による異色の就活小説。
映画化されるのも納得のクオリティ。密室劇として絶対に映えるでしょ。まあ私は原作を読んだら映像は観ないんだけど。
ミステリーとしての完成度は文句の付けようがないし、個人的にはミステリー的面白さだけに留まらず、物語に"ある奥行き"があるのに感動してしまった。どこまで考え尽くしてんのよって。
この快感は読んだ人だけのお楽しみですね。
『ジェイムズ』
我が身を売られる運命を知り、生き延びるために逃げ出した黒人奴隷ジェイムズ。
しかし少年ハックをともないミシシッピ川をくだる彼を待ち受けるのは、あまりに過酷な旅路だった。
これは未読だけど、完全に面白いやつだって分かる。みんなの感想の濃度がすごいもん。あー、積ん読が増える。人生短し本読め私。
児童書『ハックルベリーフィンの冒険』を黒人奴隷ジェイムズの視点から描いた物語で、視点を変えるだけで、浮かび上がってくるものがこんなにも違うのかと衝撃を受けるとのこと。
いつだかスヌーピーの話で似たものを見かけたことがある。
チャーリーブラウンたちが野球の試合で大逆転をした。劇的展開に喜んでるチームメンバーに、スヌーピーがひと言。
「負けた子たちはどう思ってるかな」
なんて嫌なヤツなんだとこの話を最初に見たときは思ったけど、視点の大事さって実はここに集約されている気がする。
『さよならジャバウォック』
面白い小説しか書けない奇病を患っている作家、伊坂幸太郎が放つ久しぶりのミステリー小説である。
上の方で『ストーンサークルの殺人』に対して人生のご褒美と書いたが、伊坂幸太郎は寿命である。大げさではない。この楽しみが無くなったら私の寿命は確実に縮む。楽しみが無くなれば頑張れなくなる。折れる。やさぐれる。孤独。線路にDIVE。Die。である。
で、それだけ重すぎる責任を乗せて読んだ『さよならジャバウォック』。
ハードルが上がりきっている。こういうのが人生に一番良くない。過度な期待である。
正直に評価を付けよう。大好きな作家だとしても素直な感想を書くのが私の流儀だ。
100点。
完全に正解。ミステリー小説の模範解答。もういっそ私も殺してくれ。
あの序盤からの…っと、未読の方の楽しみを削り取るような愚は犯すまい。
とにかく幸せでした。伊坂、愛してるよ。
これからも私の人生をよろしく。←激重
41位
25票獲得。
『ゲーテはすべてを言った』
172回芥川賞受賞作。
ゲーテ学者が自分の知らない「ゲーテの格言」と出会い、その出典を求めるというアカデミックな物語。「格言」を追うと共に、引用や正しさという学問的な土台の揺らぎを描く。
芥川にしてはミステリーチックなテーマだなとちょっと意外。
言葉をめぐる物語だからそもそも芥川賞っていう言葉のアート的な賞には相応しいのかも。
私の感覚の照準がだいぶ芥川賞にあってきたのか、若かった頃よりも芥川賞作品が普通に面白く読めるようになってきている。
それとも芥川賞もエンタメ寄りになってきているだけなのか。
素人なのでそこら辺の判断はつきません。あじゃぱー。
『マーブル館殺人事件』
仕掛けマジシャン、ホロヴィッツの新作が見事ランクイン。毎度毎度、手を変え品を変えようやるわという感じ。
これは小島秀夫とか三津田信三が激賞していた。特に小島秀夫の熱量といったらもう臨界点って感じ。最近は書籍紹介の人になってる?
そもそもこれってなにシリーズって呼べばいいんだろう? アティカス・ピュントシリーズ? でもそれは作品の…ってどこまで語っていいのか分からん。こねくり回した構成にしてるホロヴィッツが完全に悪い。シリーズ名さえまともに語れないって何なの。
「どこに連れて行かれるの?」っていう感覚からの、絶妙な落とし。これを味わいたかったらホロヴィッツでしょう。
ちなみに『カササギ』のオチには思わず声に出して笑っちゃった派なんだけど、みんなああいうのが好きなの? まだ私の感覚が追いついてなのかも。
『抹殺ゴスゴッズ』
ゴッドが好きな高校生の詩郎が出逢った、自分が空想で創ったはずの神の正体とは……? 地元の名士が殺害され、脅迫していたという謎の怪人・蠱毒王とは何者か……? 二つの迷宮的な事件が複雑怪奇に絡み合い、恐ろしいカタストロフィが待ち受ける本格超大作!
読書界のインフレモンスター飛鳥部勝則の、待望にもほどがある新作。
改めて見るととんでもないタイトルと装丁。いまどきYouTubeでも"死"って伏せ字にしてるぐらいなのに、こんなにデカデカと抹殺て。痛快すぎて最高。
血管の病気になりそうなほどの濃度と、確実に頭が悪くなる混沌具合、でも全体を貫くミステリーと青春。ね、こうやって書いてても全然意味不明でしょ? でもそれが飛鳥部勝則。唯一無二の存在。
『百年の時効』
刑事たちの昭和は終わらない。
真犯人が見つかる、その日まで。1974年に起きた一家惨殺事件。
未解決のまま50年――。
アパートで見つかった、一体の死体によって事件の針は再び動き出す。
出たっ!!!
ランキングの未読本の中で私が一番読みたいやつ。
警察の執念ものが大好物なんだけど、その中でも特に傑作の予感。血と汗と魂の匂いがぷんぷんしてきて、表紙を見るだけで最高の気分になる。
たまにある、分厚ければ分厚いほど嬉しいタイプの作品で、読んでる最中ずっと夢中になれるんでしょうねー。この記事を書き終えてもまだ生きていられたら、いの一番に読む。待ってろ。
『世界でいちばん透きとおった物語』
この作品に言葉はいらない。
すごすぎです。あっぱれ。
40位
ちなみにさきほどの『透きとおった』は「2」と分けて票をカウントしている。
こういうシリーズもの、続刊物をどうやって集計するかは毎度悩むんだけど、私が勝手に作っているランキングなので完全に私の偏見で決めさせてもらっている。ここでは私が神だ。はっはっはーって……はぁ…。全然終わんねぇ~…。
26票獲得の40位は6作品がランクイン。
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『おいしいごはんが食べられますように』
世界で一番邪悪なご馳走。大好き。
こんなほんわかタイトルなのに。美味しそうなホカホカご飯がたくさん出てくる、ほんわかお料理小説みたいなのに、なんでこんなにダークなんだよ。食事というフィルターを通すだけで、なんでこんなに人間の中身をまろびだせるのよ。ぶっ刺さる人間模様を描けるのよ。
シンプルな装丁も相まって、本当に食わせものな作品である。「こんな話だったんだ…」ってなるよね。こういう裏切りも大好物です。もっと食べさせて。丁寧に整えた心をぐちゃぐちゃにしてほしい。
『ナチュラルボーンチキン』
中年版『君たちはどう生きるか』という触れ込みの、ルーティンを愛する45歳事務職×ホスクラ通いの20代パリピ編集者が織りなす痛快で爽快なストーリー。
人が変わるには方法が3つしかない。
・住む場所を変える
・時間配分を変える
・付き合う人を変える
これだけである。
私たちは疲れるのが大嫌いだから、知らず知らずの内に一番省エネな自分になっている。ルーティーンはとても平和だけども、本当にそれでいいの?と投げかけてくる作品である。
当然の金原ひとみクオリティで、バカ面白くて一気読みである。登場人物全員が頭おかしいのに、なぜか自分と重なる部分ばかり。
そしてここがとっても重要。
読み終えたら笑顔になっちゃう。
『帰れない探偵』
色んな作品がランクインしているけど、その中でも特に不思議な読み味を持つ作品。
私の読書仲間の中でも「これはちょっと…凄すぎる…」と話題になっていた。
事務所に帰りつけなくなった探偵の一人称による連作短編集で、推理小説なのかといえば違う。独特な世界で独特な会話が繰り広げられる。
浮遊感のある読み味は異常なリーダビリティを発揮しており、吸い込まれるように、酩酊するように読み進められる。
話題になるのも納得の作品である。
『入居条件:隣に住んでいる友人と必ず仲良くしてください』
『今すぐ人生がどうにかなってもいい人募集中!』
ただし、隣に住んでいる友人と必ず仲良くしてください。という怪しさにもほどがあるマンションに住み込みで働くことになった話。
ホラー要素は控えめというか、なんかほのぼのしたり可愛かったりするらしい。…どういうこと?
緊張と緩和のバランスでちゃんと怖さを感じさせつつも、抜群に面白いという、新しいホラーの形として評価されている。背筋氏があんだけ大絶賛するんだから本物でしょう。
それにしても最近のホラー市場の充実っぷりは凄い。
平山夢明が新書で「世の中が不安定になるとホラーの需要が増える」と書いてたけど、ほんとにそんな感じなのかも。
『百年の孤独』
マジックリアリズムの傑作…とよく聞くが、その褒め方『百年の孤独』以外で見たことないな。
言わずとしれた名作だし、リバイバルヒットでのバカ売れ具合といい、読書家の端くれとしては絶対に読んどくべきなんだろうが全然食指が動かない。ほんとごめん。世界的な名作になってる時点で「じゃあ今更自分が読む必要はないか…」と思ってしまう悪癖を持っているのだ。
内容はよく分からないけど、ガルシア・マルケスのこの言葉は大好き。
文学は人をからかうために作られた最良のおもちゃである
『この夏の星を見る』
コロナ禍によって青春を奪われた高校生たちが、オンラインでつながりながら、望遠鏡で星を見るスピードを競う「スターキャッチコンテスト」を開催する物語。
これはテーマ的にも作家の能力的にも、絶対にみんなの涙腺をぶち壊しにかかってるやつですね。すごいね、辻村深月の銃口が見えてきそう。
コロナ禍って私の子供が直撃だったから思い出すのも、そのときの写真とかを見返すのも痛みが走るぐらいで、きっついのが正直なところ。
フィクションの世界で触れるだけでも腰が引けるというか。あの閉塞感とか、子供の様子がおかしくなっていく様とか、とてもじゃないけど「あの頃があったから」なんて言えない。
壁があるなら乗り越える、苦しいときこそ希望を見出す、なんてのは言葉のための言葉って感じで、現実に生身で立ち向かうときはめちゃくちゃ泥臭くて、全然すっきりしない解決方法でずりずりぬめ~って感じで時間をなんとかやりすごすしかなかったりする。常になにかの現実と事情がぶつかって気持ちいい形にできないの。
だから私たちはいつだってそれなりの妥協と諦めと、わずかばかりの達成感でやっとこさ生きてる。
でも、避けがたい現実があることも、気持ちよく解決できない難しさも知ってるのに…知ってるからこそ、あがいて、立ち向かって、見苦しく戦う姿は輝いているし、美しいと思える。
人は戦える。
それだけで人生には価値があるって信じられる。
そんなことを思った一人語りでした。おそまつさま。
39位
危険です。オッサンがブレーキを外して一人語りを好き放題するようになったら、不審者発生まではあとわずか。覚悟しとけよ。人がおかしくなる瞬間を見せてやる。
ではでは、私がまだ正気を保っている間にじゃんじゃかランキングを進めておこう。
27票獲得の39位は4作品がランクイン。お、そろそろ前半戦も終了ですね。
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『今日未明』
新聞記事のようなあっさりとした事件概要を冒頭にすえて、その事件の真実を語る形式の短編集。5話が収録。
これも凄い仕掛けの作品で、普段の我々がどれだけ盲目的に事件に接しているのかを突きつけてくる。これをやられたら自分事として読まずにはいられないでしょ。
悲惨な事件を扱っていて、読みながら心をキュッとされるような痛みを伴うけど、結局その痛みを感じずにニュースをさらさらと読み飛ばしてた今までがよっぽど罪深かったということでしょう。
ミステリー小説の形を取りつつも、読み終えたあとに人生の糧になってくれるような作品である。
『千年のフーダニット』
若くして妻を喪い失意に沈むクランは、人類初の冷凍睡眠(コールドスリープ)実験に参加する。さまざまな事情を抱えた男女7名は「テグミネ」という殻状の装置で永きにわたる眠りについた。
――そして、1000年後。目覚めたクランたちはテグミネのなかでミイラと化した仲間の他殺体を発見する。犯人は誰なのか。施設内を調査する彼らが発見したのは、さらなる“顔のない死体”で――
イカれたスケール感で描かれるぶち抜けた特殊設定ミステリー。
もう設定だけで魅力の紹介になるの助かる。不審者化が緩慢になりそう。
半年前の記事でも紹介してるんだけど、そのときに私が「古典作品も読むようにしているせいで最近の話題作を読んでる時間がない。すべては労働が悪い」と書いていた。
半年経ってどうか。
未読っす。
…。
すべては労働が悪い!労働は悪!死ねっ労働っ!!こんなに善良な不審者、じゃなかった一般市民をいじめて楽しいか。傲慢にもほどがあるぞ!
『傲慢と善良』
はい、伏線回収です。
突然の暴言ラッシュはそういうことだったんですね。鮮やかですねー。←カス
世の中の恋愛における嫌ーな部分を丹念に抽出し、それをわざわざ読者にぶつけてくる悪魔みたいな作品。性格悪すぎて笑っちゃう。しかもこれがべらぼうに面白いんだから困る。結局、性格悪いのが一番面白いってこと。
最大の魅力はその毒性にある。読みながら自分自身の卑怯さと向き合うように誘導される感じがある。実際その効果で読み終えて悶絶したり、ぐったりしちゃう人が続出である。おもしろすぎる。
私はこういう恋愛ゲームに乗っかる機会が人生の中でなかったし、興味を持ったこともなかったので、動物園を見るような気分で楽しませてもらった。恋愛なんて動物的本能ですからね。
本人がどれだけ必死で真剣でも、傍から見りゃ滑稽。それでも「動物じゃありません!」って振る舞うのが人間らしさってやつなんでしょう。
『アルジャーノンに花束を』
永遠に売れ続けている超名作。
この作品でしか成しえない表現方法を採用し、多分だけど日本語版が一番この作品の魅力を引き出してるんじゃないだろうか。
長く愛されてるし、バズって新規読者を獲得し尽くしたイメージだったけど、こうやって上位にランクインしているということは、まだまだ作品としての余力は残しているのかも。恐ろしいね。
折角の素敵なランキングなので、あんまりネガティブな話題は扱わないようにしてるんだけど、ちょっとだけ。
帯の不評問題について。
「SNSで大人気」みたいなことがデカデカと書いてあって、ガッカリしている友人の姿を見かけた。私も見たけど、作品のテンションには似つかない派手さだった。
それを受けて、少しだけ話をさせてほしい。
SNSでマイナスなことを言葉にするかどうか、である。
『アルジャーノン』は読書紹介クリエイターの紙上健吾氏(けんご氏)が扱ったことで大バズりしている。
彼とTikTokは切り離せないので、どうしても出版社の意向としては帯にSNSで大バズりしていると書きたいだろう。気持ちは分かる。
長い出版不況である。上品に構えていたら座して死を待つのみだ。新規顧客に繋がる要素は取り入れたい。普段本屋に来ない人が目にしたときにすぐに分かるようにしたくなるのは仕方ないだろう。
同じようなことが道尾秀介の『向日葵の咲かない夏』でもあった。◯億円売れたってやつね。
好き嫌いでいえば私も嫌いである。
大好きな本たちに下品な帯は付けてもらいたくない。
しかしそれと同時に、私の好悪とは関係なしに、新規顧客をどうやって獲得するかという問題がある。
そしてもっと怖いのは、いまのSNSは誰かの「嫌い」が一気に伝染し、ともすれば誰かを追い詰めたり、企業に著しいダメージを与える作用を持っていることだ。
少し前から完全に空気が変わった。もうSNSは自由に自分の言葉や気持ちを書いていい場所では無くなったのだ。
本を愛する我々としては自由に本を愛したい。それは分かる。
しかし我々には本を守る責任も乗っかっていることを忘れないでほしい。
私にはみんなの好悪をジャッジするような権限はないし、SNSが暴走しないように規制することもできない。
ただただ読書が衰退していくのが怖い。それだけである。
これからも帯についての問題は尽きないと思う。
もしかしたら将来的にはもっと洗練された売り方が主流になっていくのかもしれない。
でもたぶんそれを決めるのは既存の顧客である我々ではないだろう。
だって私たちは勝手に好きな本を選んで買えるから…っておい!全然ちょっとじゃなくなってるよ!止まれ止まれ。語りすぎ!まだこのランキング半分も終わってないのに中座してる場合じゃないでしょ。
目を覚ましたのでランキングに戻ります。
38位
28票獲得。2作品がランクイン。
だいぶ絞られてきました。
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『正体』
ほんとに映像化作品多いな。
いま一番ノリにノッてる作家、染井為人の最大のヒット作。完全にスターダムである。スターダムの意味知らんけど。
染井為人って、読者の心とテンションを掴むのが上手い印象なんだけど、これもやっぱり元テレビ屋の経歴が生かされてるんでしょうか。
『正体』だけに限らず、面白さと奥深さや余韻の塩梅が絶妙で、社会性のあるテーマをエンタメでくるんで、美味しい物語に仕上げるのがめちゃくちゃ上手。小説界のリュウジって感じ。
個人的には『悪い夏』が振り切ってて好きです。極悪すぎて笑っちゃった。
『コンビニ人間』
日本のみならず世界中で売れまくっている村田沙耶香の『コンビニ人間』である。
芥川賞作品がとんでもない売れ方をするのは、この作品辺りから始まった印象。
『コンビニ人間』の感想を読んでると、芥川賞的なものが求められる時代になっているのかな、と思ってしまう。
しんどさの割りに読みやすくて、しかも薄いから読書慣れしてない方、小説の凄みを手軽に味わいたいに方にお勧め。
知らなかったけど、オーディブルは大久保佳代子がやってて、彼女の人間性と相まってどハマりという感想を見かけた。まあ一般人が彼女の何を知ってるんだという話だけど。
あんまりナレーションのイメージないけどラジオも長くやってるし上手なのかなぁ。
37位
29票獲得。
『堕天使拷問刑』
飛鳥部勝則の悪魔的奇書が見事ランクイン。
長らく絶版になってて、転売ヤーが数百万どころか四桁万円で売っていたのは懐かしいネタである。なんだったんだあれ。
で、待望の復刊ですよ。
見た目からして異形さをかもしだしてて存在感が凄い。900ページ超えで文庫なのに自立するっていうのもよろしい。
ミステリー、オカルト、青春などあらゆる要素と怒涛の展開で、なんの話を読んでるのか分からなくなるのに、悪魔的に面白いという。
ジャンキーなラーメンを無心でわしわし食べてるような感覚に近いかも。
『流浪の月』
本屋大賞の覇王こと凪良ゆうの代表作が差し込んできました。
これはね…いい~~~~小説ですよ。
読んでて異常なほどカロリーを消費するし、心に重くのしかかってくるんだけど、冷静に考えると物語自体は信じられないほど静。静すぎてうるさいほど。ど静か。
淡々とそれでいて的確に紡がれる言葉たちのせいで、静謐でロートーンな物語なのに、読んでるこっちの心が大騒ぎしてしまう。暴れ回っちゃう。
その結果、読み終わるとぐったりですよ。言葉の暴力ってこういうことかも。
凪良ゆうの恐ろしさを体験したかったらまずは『流浪の月』でしょう。
ちなみに私の濃厚レビューはこちら。語らずにはいられない作品です。
『恋とか愛とかやさしさなら』
嫌さが絶妙すぎて興奮に至り、なんなら快感にまで達した作品である。
ざっくりとあらすじを説明すると、主人公は適齢期を迎えたカメラマンの新夏(にいか)。6年付き合った彼氏に東京駅の前でプロポーズをされ、幸せの予感で胸を躍らせるが翌日、彼氏が女子高生のスカートの中を盗撮し逮捕される。
この出来事をきっかけにぐちゃぐちゃになっていく心の模様を、丹念に、それでいていっそ冷徹さも感じるような筆致で描かれた物語である。
これがもう本当に最高。久々に嫌な物語でこんなにも興奮してしまった。
基本的には「人の罪をいかに許すか」という話である。
そういったジャンルの作品は今までにもたくさん読んできて、それこそ殺人を犯した息子を取り上げたものなんかも強烈なインパクトがあって、心に深く残っている。
で、『恋とか愛とかやさしさなら』で扱われる罪は"盗撮"である。分かるかい、この絶妙さ、嫌さが。
殺人のような犯罪の場合、それは絶対に許せるものではなく断罪されてしかるべきだと思う。最悪だけれどもその罪に対して、こちらのスタンスが明確に取れるのである。
その一方で盗撮ならどうか。
もちろん犯罪行為である。しかし「適齢期の女性の彼氏が(しかもハイスペック&初犯)犯してしまった犯罪」となると、簡単に許すこともできなければ、強烈に断罪することにも躊躇してしまう。この気持ち悪さが物語のトロである。
作中でも出てくるが「浮気に比べればマシでしょ」という価値観だったり、「そんな変態、すぐに見切りをつけろ」という価値観もある。どちらも分かる。
またそんな彼氏をすぐに嫌いになれない主人公、また息子として安易に許してしまう母親など、盗撮を中心に色んな価値観が四方八方から出てくるのだが、どれもこれも「分かるなぁ~」となってしまうところにこの作品の恐ろしさがある。
どこを向いても理解できる意見であり、すべてが受け入れられるからこそ、読みながら心のシーソーがぐらつきまくるのである。こんなの最高でしょ。
たまに読み終えたあとに「参りました…!」って思わずひれ伏しちゃう作品に出会うけど、これはまさにそう。しばらく余韻のダメージが凄くて起き上がれなかった。
この短さでこの消費カロリーっぷり。心のジェットコースターを体験したい人はぜひ。
後編へ続く。
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