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何が足りないかって、あれだよあれ。何が足りないか分かる能力。

【随時更新】小説中毒が厳選した最高に面白い小説1~100冊目
これまでの人生で買って良かったものまとめ
読書中毒者が選ぶ最高に面白いノンフィクション&エッセイ
Twitterの叡智集合。#名刺代わりの小説10選を1300人分まとめてみた

1961人分の「2024年の本ベスト約10冊」をまとめてランキングにしてみた

 

 

どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。「おいしい」という言葉は「いしい」に丁寧語の「お」を付けたものらしいです。いしいってなに。

 

さて、今回も恒例の集計記事である。

まずは断言させてほしい。

 

 

最高のお時間がやってきました。

 

 

皆さんお待ちかねの企画である。読書家たちが費やしてきた時間を凝縮したランキングの登場である。題して、

 

 

 

2024年の本ベスト約10冊ランキング!!!!

 

 

 

これである。これしかない。これしかなさすぎて死にたいぐらいだ。

 

 

ご存じない方のためにざっくり説明させてもらう。

 

Xの読書アカウントが使用する「#20〇〇年の本ベスト約10冊」というタグある。

これは発売された時期に関係なく、その年に読んだ本の中で最高だった10冊を選び出したポストになる。当然だが、年に一回だけしか使えない貴重なタグである。

私も毎年やっているので分かるのだが、この10冊という縛りが本当にキツい

なまじ良書を見極める目が養われつつあるのと、SNSの発達によって良書と出会える頻度が上がってしまったせいだ。

その結果、一年間を通して見ると最高の本がいくらでもある。

なのに選べるのは10冊だけ。かわいい我が子の中から一人だけ選ぶようなものだ。ペットに例えても良いかもしれない。いたいけな瞳でこちらを見つめる"彼ら"——。

「ぼくが一番でしょ?」

「私も良かったよね?」

「まさかボクのこと見捨てる…?」

作品たちから色んな声がこだまする。なぜこんな残虐なことをしなければならない。いいじゃないか、どれも良かったで。わざわざ選び取る必要なんてない。切り捨てなくてもいい。不幸を生み出さなくてもいい。私の理性はそう叫ぶ。本を愛するからこそ、甲乙付けるなんてできない。

 

その一方で私の中の邪悪な心がささやく。本を食い物にする心だ。

 

 

 

「だからこそ、だろ」

 

 

 

と。

 

 

そう。

 

作者や出版社、制作に関わる多くの方の苦労の末に生まれた結晶である本を、読者という独裁者が無情にも選別する。だからこそ生き残ったものの輝きが、価値が、より高まるのだ。

 

このように、倫理観と悪魔のせめぎ合いの末に生まれたポスト。それが「2024年の本ベスト約10冊」なのである。

そしてさらにそれを集計してランキングに仕立て上げてるのが今回の記事である。罪深いにもほどがある。悪趣味がすぎるだろうと。勝手に何してんだと怒られても仕方ないだろう。嬉しすぎる

 

ということで、邪悪かもしれないが私としては最高すぎるランキングに仕上がっている。

自分で書いた記事は大体好きなんだけど、やっぱりこれが一番だと思っている。ぜひともそんな醜悪さも込みで愛してもらえると助かる。もちろん私が、ということではなく、この記事を今から読もうとしている皆さんの精神衛生の話である。赦しってあるじゃん?便利だから使いな?

 

 

さあ、無駄話もこの辺にしておいて、早速ランキングに移ろう。

2024年に読まれた本たちの頂点に輝く52作品である。

積ん読に注意しながら楽しんでいただきたい。

 

 

では行ってみよう。

 

※すべてを紹介するととんでもない量になってしまうので、30位からご紹介。それでも結構な量なので覚悟してほしい。珠玉の52作品。良書の暴飲暴食。濃厚すぎて体を壊しそうな時間を堪能して。

 

30位

 

23票を獲得した30位は3作品がランクイン。

 

 

『汝、星のごとく』

 

 

『明智恭介の奔走』

 

 

『流浪の月』

 

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読書界の令和ロマンこと凪良ゆうの本屋大賞受賞作がふたつ同時にランクイン。

冒頭で散々煽ったけど、今回のランキングがどれだけハイレベルなものなのかよく分かるラインナップだと思う。しつこいようだけど30位が低いわけじゃなくて、上澄みも上澄みな作品だけで構成されたランキングなので、どれも間違いなく傑作と称して差し支えないだろう。

『明智恭介の奔走』に関しては、『屍人荘の殺人』を読んだ方であれば絶対に好きになるはず。あの事件が起こる前の話なので、色々な思いを抱きながら読めるだろう。

ちなみに『屍人荘の殺人』を未読の方であれば、絶対に『明智恭介の奔走』から読むことをオススメする。できることなら私も記憶を消してこちらから読みたい。

 

 

29位

 

24票が入った29位は2作品のみ。

 

 

『一線の湖』

 

 

『バリ山行』

 

 

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2020年本屋大賞で堂々の3位を獲得した『僕は、線を描く』の続編である『一線の湖』。水墨画を扱った珍しい作品で、著者も水墨画家の方である。横浜流星主演で映画化もされており、メフィスト賞出だとはとても信じられない売れ方をしている。

もうひとつは、第171回芥川賞受賞作である『バリ山行』である。読み方は「さんこう」である。完全に「やまぎょう」だと思ってた。修行的な。でも考えてみれば「やまぎょう」だと重箱読みになるからおかしいか。

とまあ周辺情報をなぞっているだけであることから分かるように、どちらも私は未読である。すんまへん。積読は永遠に無くならないのに、面白そうな新刊も永遠に出てくるからもうオシマイである。はい、次。

 

 

28位

 

25票が投じられた28位も2作品。

 

 

『正欲』

 

 

『この夏の星を見る』

 

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『正欲』の衝撃と言ったら本当にぐったりと倒れこんでしまうほどのものだった。あの深くも心地よいダメージを食らうために読書をしていると言っても過言ではないだろう。少なくとも私の場合。新刊の『生殖記』も似たようなインパクトの予感がしているけれども未読。楽しみに取っておこう。

 

『この夏の星を見る』はコロナ禍によって振り回され、複雑な思いを抱える中高生たちの青春を描いた、辻村深月ブランドであれば間違いないタイプのやつ。こちらも実写映画が決まってるけど、公開がちゃんと夏に合わせてるのめっちゃ愛されてる感じがしてよろしい。ただ私は原作を読んだら映像化作品は観ない主義なので、そこんとこ宜しくな!

 

 

27位

 

26票まで伸びた27位も2作品がランクイン。

 

 

『永劫館超連続殺人事件』

 

 

『誰が勇者を殺したか』

 

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申し分ない話題作がランクイン。どちらも新人なのに凄まじい勢いで評判が広まっている。長いことミステリー好きをやってるけど、このふたつを見ると時代の進化を感じる。『永劫館』なんて「館×密室×タイムリープ」で、設定がどんだけ入り組んでんだって感じで、ミステリー好きたちの性癖の奥深くに潜りすぎてて凄い。

『誰が勇者~』もRPGにミステリーを持ち込んだような作品なのだろう…と思って調べてみたら意外とそうでもない…?明らかに変則ミステリーの雰囲気なのにどういうこと?

とりあえず、いち小説好きとして、新たな才能や面白さの枠が広がるのは大歓迎である。私が付いていけるかどうかは別として。

 

 

26位

 

27票が動いた26位は4作品がランクイン。

 

 

 

『spring』

 

 

 

『アリアドネの声』

 

 

『二人一組になってください』

 

 

『すべての、白いものたちの』

 

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バラエティ豊かな4品がラインナップ。

『Spring』に関しては、知らない世界を小説で覗けるのって、読書の大きな魅力だと思うんだけど、それが恩田陸の手によるものとなればそりゃ期待も高まるってもんでしょ。しかも今回はバレエ。絶対のやつでしょ。

 

『アリアドネの声』は超絶不可能状況からの脱出劇を描いてて、超頭脳井上真偽の真骨頂という感じ。高知能が組み立てるパズルはそりゃ面白いわな。

 

個人的に仲良くさせてもらってる木爾チレン氏のスマッシュヒット作『二人一組になってください』もランクイン。

徐々に知名度と評判を獲得してきた氏だけど、ここへ来て大きな花火が上がった感がある。私の近所の本屋の売上ランキングでもずっと東野圭吾の『架空犯』に次いで2位をキープしていた。今回は惜しくも本屋大賞にはノミネートされなかったが、もうじき、と私は信じている。

 

そして最後はノーベル文学賞を獲ったハン・ガンである。

彼女の入門書としてよくオススメされている『すべての、白いものたちの』は非常に詩的で、繊細さと美しさで、切れ味よく読み進められる名作である。文学の最高峰を感じたければぜひ。

ちなみによく勘違いしている方がいるが、ノーベル文学賞は作品に贈られるものではない。

 

 

25位

 

28票が集まった25位も4作品がランクイン。

 

 

『お梅は呪いたい』

 

ミステリー界の新旗手、藤崎翔の持ち味炸裂の『お梅は呪いたい』である。

戦国時代にたくさんの人を呪ってきた日本人形のお梅。500年ぶりに現代で見つかり人を呪おうとするがどうにも上手くいかず、逆にいろんな人を幸せにしてしまうストーリーである。

ドタバタと畳み掛ける伏線の数々に悶絶する方続出。何も考えずに気持ちよく楽しみたかったら今一番オススメの作家である。あなたもお梅の可哀想さにヤラれてほしい。

 

 

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『同志少女よ、敵を撃て』

 

逢坂冬馬の衝撃デビュー作。

発売後すぐにとんでもない勢いで評判を掻っ攫って、一気に本屋大賞まで獲ったバケモノである。あの勢いが楽しめるのも、読書好きの醍醐味のひとつである。空気が塗り替わっていく様子が見えるというか。みんなの欲望が収束していく感じというか。

今回は文庫化もあってまた再燃したご様子。痛くて、重くて、とても簡単に面白いと言えるような物語ではないんだけど、めちゃくちゃ面白いから読んでほしい。

 

 

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『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』

 

完全に見逃していた作品。本屋大賞好きなのに申し訳ない限りです。どうか鞭で打ってください。嬉しいから。嘘です。そういえば鞭って実物見たことないな。

韓国のエッセイストの方が書かれた長編小説第一作。なのに発表後すぐに評判が評判を呼び爆売れ。あらすじを読む限り、かなり優しくて心癒される物語のようだけど、それがこれだけ反響あるのって、やっぱり時代がそういうものを欲してる、つまり足りないんだろうなと思う。現代人に求められるものは本当にレベルが高くて、色んな人がふるい落とされないように必死で生きてて、さらには未来は常にどんよりしていて。

現実を生きる我々にそっと寄り添い力をくれる。それも本の良さである。

 

 

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『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』

 

いま一番熱い読書狂いこと三宅香帆氏の大バズリした『なぜ読め』である。

新書ってタイトルで気を引けるかどうかが一番大事なとこなのだが、この本は多くの人が「それそれ!」ってなる場所を上手いこと突いてて、なんだか悔しい気持ちになってしまった。

私はどれだけ忙しくても読書はできてしまう人間なのであまりピンとは来ないのだが、友人たちが多忙さやメンタルの不調、ちょっとしたバランスの具合で読書から離れていく様子をよく見てきた。読書という趣味が現代においてどれだけ負荷の高いものなのか思いを馳せてしまう。

趣味なんて人生におけるオマケである。どんなオマケを選ぼうとその人の自由だし、読書ができなくなっても死ぬわけではない。何かに対しての情熱が失われてしまうのは悲しいけれど、私たちはそうやって大きくなってきたのだから、まあいいではないか。咥えるおしゃぶりを変え続けてるだけの話だろう。

とまあつらつら書いてきたが未読である。どれだけの話題作だったとしても忙しくて読む時間がないのが実情である。

 

 

24位

 

35票が確定した24位は2作品がランクイン。

 

 

『世界でいちばん透きとおった物語』

 

中身について一切語れないことでおなじみ『世界でいちばん透きとおった物語』である。最近『2』が出たらしいが、作者は一体どうするつもりなのだろうか。どこに行くつもりなのだろうか。すでに人外の境地にたどり着きつつあると思うのだが。

あんまり書きすぎると未読の方に無駄に期待を与えてしまうのでこれくらいにしておこう。いやー、それにしてもイカれてたな…。

 

 

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『シャーロック・ホームズの凱旋』

 

私が大好きな作家を5人挙げるとしたら、絶対に外せない。それがモリミーである。

世の中には同じような熱量の方が多くいるようで、以前美容室でモリミーの本を読んでいたら、接客のレベルを超えたテンションで「森見登美彦好きなんですか?!私も大好きで!!あれとか、あれとか!!」と話しかけられたことがある。私は本を読みたかったので100点満点中4点ぐらいの返事に終始していたが、あの人はまだ元気だろうか。私は思い出しただけで元気が無くなってきている。

もしかしたら元気って有限の資源で、みんなで奪い合ってるのかも。

ここ10年ほどスランプに陥ってたとモリミー本人が語るとおり「はて?」という作品が多かったこともあり心配していたのだけど、『シャーロック・ホームズの凱旋』では久々にモリミーの筆が闊達自在だったようで、いちファンとして非常に嬉しい限りである。

 

 

23位

 

36票が献じられた23位は、こちらのみ。

 

 

『小説』

 

野崎まど、ついに登場である。

私は氏の作品を未読なのだが、集計企画をやるたびにみんなの熱い愛をひしひしと感じていたし、集計のときに『2』ってタイトルがどんだけややこしかったことか…。

一部で天才の名をほしいままにしていた氏が、ついに表舞台で派手に活躍するフェーズが訪れたのだろう。書店でも思いっきり平積みされているし。

ちなみに近い内に詳しく予想を書く予定だけど、2025年本屋大賞は『小説』が来ると思っている。

 

 

22位

 

37票が開示された22位は3作品がランクイン。

 

 

 

『十角館の殺人』

 

はい出ました。王者オブ王者。

全ミステリー作品の目の上のたんこぶこと『十角館の殺人』である。不動すぎてたんこぶを超えて脳挫傷ぐらいのレベルである。君臨なんて生ぬるいほどの圧倒的一位。固定されすぎて一位と癒着してる疑いがある。さっきから何を書いてるのだ私は。

今回のランクインは確実にHuluの映像化が大きな要因だと思う。

ちなみに私も観たけど、結末を知ってても"あのシーン"は鳥肌ものだった。奥さんと息子は推理合戦についていけなくてかなり苦労していたけど、やはりあのシーンでは完全に食らっていた。痛快すぎる。

 

 

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『黄色い家』

 

近年でも指折りのクライムサスペンス『黄色い家』である。

出自に恵まれなかった少女が、自らの才覚と努力を駆使して、同じように欠損を抱えた少女たちと必死に生きようとする物語。

反則かもしれないがこちらはオーディブルで読んだ。で、これがマジで圧倒される。朗読劇の真骨頂というか、演者の気迫で完全に感情と理性を持っていかれる。後半に少女同士で言い争いをするシーンがあるんだけど、鬼気迫るとはあのこと。凄まじすぎて演者の方があの後、体調を崩されてないか心配になるレベルだったし、演じ分けのレベルが卓越だから、言い争ってるのが完全に別の人間の声のように聞こえてた。

あれは忘れられない体験になった。オーディブル恐るべし。

 

 

『透明な夜の香り』

 

あらゆるものを言語化してしまう魔法の筆を持つ作家、千早茜による"香り"の物語である。

「読みながら香りを感じる」と言われる独特の読み味は絶対に体験しておくべきでしょう。それを「新たな知覚の扉が開く」という魅力的すぎる惹句で宣伝されてて、こんなん絶対に読むべきでしょ。

静かだけど、深みがあり、色んな思い出が想起されるはず。匂いというのは記憶に一番強く焼き付くらしいのだが、この作品を読んだら実感できるかも。

 

 

21位

 

38票がまとまった21位は3作品がランクイン。

 

 

『傲慢と善良』

 

辻村深月が止まらない。これも100万部超えですか。着々とバケモノになりつつありますな。

可愛らしい装丁に騙されてはならない。これだけの部数になったのは、多くの読者たちの"本物の悲鳴"によって感化による感化が連鎖したからだろう。

婚活をテーマに据えつつ、我々現代人の価値観にメスを入れ、その歪さをえぐり出す。読みながら対峙するは己の歪みである。あなたは自身の傲慢さに耐えられるだろうか。

 

 

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『スピノザの診察室』

 

 

医療の最前線で考え続けている著者だからこそ描けた、人の死と幸せについて真摯に向かい合った作品。終末医療に携わる青年医師の日々と、患者たちの物語である。

死生観というのは誰もがそれなりに持っていると思う。もちろん私もそのときの年齢だったり、自らの立場によって様々に形を変えて持ってきた。

一応理想は森博嗣の「いつ死んでもOK」というスタンスなのだが、そこまでの達観には到達していない。それでも死を恐れる気持ちは年々減りつつあるなぁと。死ぬことの事実に恐れる感覚も薄れつつあって、どちらかというと「とにかく苦しまずにいたい」という感じである。

そういう意味でも本作に登場する終末医療の考え方は、非常に救いになる。私がそのときを迎えるとき、たぶん人手が足りなくなって医療体制もガタガタだろうけど、少しでも軽やかに力を失えたらと思う。

 

 

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『わたしの知る花』

 

『52ヘルツのクジラたち』で2021年本屋大賞を獲った町田そのこの新作である。

一人の男の死後、彼の人生が少しずつ明らかになっていく物語で、町田そのこらしい深い感動を与え、寄り添ってくれる名作である。

誰もが知っているけどついつい忘れがちな「誰でも色んな側面がある」という事実。そんな当たり前が、筆巧者にかかるとどれだけ沁みることか…。気持ちよく泣きたかったら町田そのこ。今日はこれだけ覚えて帰って。

インタビューで読んだけど、この作品は結構難産だったそうだ。最終的に連作短編の形式を取られているけど、迷走する中で途中で長編として書き直したりしていたそう。当然丸々ボツ。凄すぎ。そんな苦労の甲斐あって、これだけ多くの読者に刺さる作品に仕上がったわけだ。改めてプロの作家は偉大である。

ちなみに町田そのこはペンネームで本名と一字たりとも関係ないとのこと。

 

 

20位

 

39票がカウントされた20位も3作品である。

 

 

『恋とか愛とかやさしさなら』

 

めでたく直木賞作家となった一穂ミチの最新作である。

「プロポーズの翌日、恋人が盗撮で捕まった」という、これまた最高に際どいテーマで、愛することや許すこと、翻って関係性が終わることについて考えさせられ、良い意味で読んでて心が傷付く物語である。

『わたしを知る花』の話をしたばっかなので「犯罪をしたとしても、それがその人の全てじゃない」とか言いたいとこだけど、それでも下品な犯罪だと結構キツいものがあると思う。まだ薬物に手を出したりとか、誰かを傷つけたみたいな方が受け止められる気がする。不思議なものだ。

苦しみを伴いつつも、確かに得られるものがある。そんな読書の良さを噛み締めよう。

 

 

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『死んだ山田と教室』

 

山田が死んだ。クラスの人気者だった。悲しみに暮れる教室。すると突然、教室のスピーカーから山田の声が…。

強烈なインパクトのある表紙が目に付く本作。私も店頭で見たときに何が起こったのかと思った。ベストセラー作家の新刊かと思いきやデビュー作だし。

設定もさることながら、売れ行きも凄い。一気に駆け上がってきた感がある。逢坂冬馬といい宮島未奈といい、最近の新人作家ってどうなってんの。

私は未読なのだけどみんなの感想を読んだ感じだと、かなり大人の琴線に来るタイプの作品っぽい。ポップで使われてる書店員さんたちの寄せ書きとか、私は全然関係ないのにぐっと来ちゃった。あやうく店頭で泣くとこだった。あぶねー。あぶねーおっさんになるとこだった。

 

 

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『赤と青とエスキース』

 

琴線どころか涙腺に来ちゃう作家といえば今は完全に青山美智子でしょう。

コンスタントに作品を上梓してるうえに、どの作品でも確実に読者の心を華麗に射抜いてくるんだから、本当に優秀。今回の記事では紹介していないけど『リカバリー・カバヒコ』とかあの短さで速攻で涙腺を仕留めてくるからね。作家としても優秀だけど、暗殺者だったとしても良い仕事をしてたと思う。ゴルゴ青山。今日はこれだけ覚えて帰って。

『赤と青とエスキース』について全然説明してなかったけど、もう言うことないレベルの名作でしょう。

読みやすさに加えて、構成の妙も楽しめるし、感動レベルは当然のゴルゴ青山クオリティ。それに2021年の本屋大賞で堂々の第二位だし。あのときも『同士少女』の爆発力に若干押し負けただけで実質大賞だったから。私が言うんだから間違いない。あ、2021年じゃなくて2022年だったか。うん、間違いない。

 

 

19位

 

41票が出揃った19位は2作品がランクイン。

 

 

『俺たちの箱根駅伝』

 

日本人みんな大好き池井戸潤と、日本人みんな大好き箱根駅伝の最強タッグである。ハンバーグカレーみたいな感じだ。私は別々に食べる方が好きだけど。

選手や指導者、報道する人と、色んな視点を通して箱根駅伝を中心にして起こるドラマが描かれる。そしてもちろんボロ泣き確定のやつである。みんなが一番好きなところに、一番良い玉を、それも剛速球で投げてくれるんだから、本当にベストセラー作家ってやつは…。

こちらも素敵な感想をたくさん見かけたけど、一番好きだったのは「これをAudibleで聴きながら走るとスピードが上がる」というもの。

いいスポーツ小説に出会うと、思わず体も心も動いてしまうものである。いい体験。

 

 

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『六人の嘘つきな大学生』

 

私が大好きな六人の嘘つきたちである。

正直なところ初期の浅倉秋成作品は、プロットは完全に私好みのに、温度感と言うか妙なノリが耐えられなくて、あまりガツンと来る作品がなかった。

しかしながらここ近年の発表作は完全に照準が合ってきたのか、笑っちゃうぐらい華麗に手玉に取られてて、大好物な作家になった。

「たったひとりの採用者を六人で話し合って決める」という前代未聞の就職試験を描いた作品で、こんな謀略が渦巻くこと確定な設定で、浅倉秋成が調理したら面白くならないはずがない。

極上の嘘を存分に楽しんでほしい。映画化もされてるみたいだけど、そっちは知らん。

 

 

18位

 

42票が託された18位はこちら!!

 

 

 

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』!!

 

 

 

 

超絶優勝。

 

 

 

2024年ベスト約10冊ランキングの優勝はこちらになります。

皆様、お疲れ様でした!!

 

 

(というのは冗談としても、こんなに面白い小説まじで今後出てこないだろってレベルの作品でしょ。もうね、読み終えたら絶句ですよ。面白すぎて。面白さの波状攻撃、未体験の達成感、迫りくる万感の思い、ひたすらに大賛成したくなる欲。この作品が生まれたことが人類への僥倖でしょ。天才すぎる。ノーベル賞に専用の枠がほしい。プロジェクト・ヘイル・メアリーを称える賞。え?映画化するって?知らん。)

 

 

17位

 

43票がぶち込まれた17位は4作品!ちなみに複数ランクインはこれにて終了。

 

 

『宙わたる教室』

 

良いわぁ…。沁み沁みと良い。

直木賞も獲ったし、NHKでドラマ化もしたし、伊与原新ファンの私としては感慨深い一年になった。

地味だけど良い作品って、やっぱり大ハネする訳じゃないから今の御時世だとなかなかみんなの目につかないのが難しいところ。

派手な帯を付けて、過剰な惹句を付けてってそういう宣伝に相応しい作風じゃないのよ、伊与原新って。

 

彼の学問に対する経緯と愛情が作品を通して、読んでるこっちまで伝播する感じが本当に好きで。私は学生時代とてもじゃないけど学業に身を入れていたタイプじゃないんだけど、伊与原新の作品を読むと心の底から湧き出るように「学ぶって素敵すぎる」と思う。思ってしまう。

こちらの『宙わたる教室』は私もベスト10冊に入れるほど最高の作品なので、未読の方には一番オススメである。

伊与原新の作品はどれも私みたいな無学人間でも素晴らしく読みやすいし、クオリティにほとんど差がないし、それぞれ読み味が違って色んな感動が味わえる。ここからさらに人気が加速してほしい。次に読むなら『月まで三キロ』で。

 

 

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『テスカトリポカ』

 

歴代の直木賞受賞作の中でも、屈指の混沌さを誇る『テスカトリポカ』である。

「なんじゃこりゃぁあああぁあ」ってなりたい人は絶対に読むべき。暴力と勢いと混沌で、ぐっちゃぐちゃにしてもらえるから。情報で圧死できる。メキシコカルテル、臓器売買にアステカ文明って、どんな欲求抱えてたらこんな物語が紡げるんだい?

エンジンかけっぱなしで進んでいくので、ぜひとも振り落とされて呆然としながら読んでほしい。「後半から意味が分からない」とか「ついていけない」みたいな意見を見かけたけど、置いてけぼりにされるぐらいがこの作品の場合、正しい読み方だと思います。それも含めて楽しんで。

 

それにしてもこうやってランキングを作っていると改めて、文庫化って貴重な機会なんだと思わされる。明らかに大きな波ができてる。安くなってるから買う、という層が着実に増えてるのだろう。

これからのご時世、市井の人々が手に取る最大の基準は価格になってくるから、単行本の文化もどんどん廃れていくのかもしれない。文庫でもひと昔前の単行本の価格になってきてるし。出版業界は更に厳しくなりそうである。

でもいち読者の私から見ると、いくらでも読みたい本がすでにあるから、そんなに困らなかったりする。困ったものだ。

 

 

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『水車小屋のネネ』

 

親元を離れて暮らす選択をした18歳と8歳の姉妹が、たどり着いた街で様々な人に出会い、成長していく40年間を描いた物語。2024年本屋大賞にて堂々の第2位を獲得した作品である。

「全編を通して善人ばっかしか出てこない」という設定に作品の空気感がよく現れている。『テスカトリポカ』みたいな劇薬もいいけど、その一方でやはり現代人は刺激に常に晒されているので『ネネ』みたいな作品が心の隙間にそっと収まるのではないかと思ったりする。みんな常にうっすら疲れてるから。

作中で語られる言葉が素晴らしくて「自分はおそらく、これまで出会ったあらゆる人々の良心でできあがっている」 というものがある。

私は運の良いことにけっこう人に恵まれた人生を送ってきた。嫌いだったり苦手になる人というのは、勝手に私の人生から退場していった。中には犯罪を犯していなくなった人もいる。まあ色んな出会いと別れがあるものである。

運の良さと一口に言ってしまえば簡単だが、人格者の代表みたいな私でもやはり欠点はあって、私がそれと気づかぬ内に誰かに嫌な思いをさせてきたこともあるだろう。それでも私と長く付き合ってくれている方々もそうだし、節目節目で出会ってきた方々も、きっと善意で許してきてくれたのだと思う。実際私も色んな人の色んな側面を許してきたし。

そういう誰かが明確に教えてくれないことをたまに意識するのって、人生を彩るためにとても大事なことである。

 

 

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『星を編む』

 

2023年本屋大賞受賞作『汝、星のごとく』の続編であり、サイドストーリーからなる作品である。

 

改めて人には色んな事情があって、すっきりと割り切れるもんなんてほとんどないのだと思い知らされる。SNSをやってると正義と悪に分けたがる人ばっかが目につくけど、きっとそれって人間の本能みたいなものなのだろう。そうじゃないと耐えられないというか。

 

複雑なものがあって、なんとかそれを言葉で、物語で掬い取ろうと試みているのが凪良ゆうなのだと私は勝手に思っている。だからこそ彼女の作品というのは、読んだときに色んな思いが胸に去来するのに、なかなか言葉にするのが難しいのだ。言語化って、区分けすることだから。

 

以前の記事でも書いたけど、凪良ゆうの作品を読むと色んなことを想起したり、考えたりしたくなってくるから、大人になってから読書感想文を書くなら凪良ゆう作品が最適だと思う。

 

 

16位

 

44票を集めた16位はこちら!

 

 

 

『正体』

 

読書好き中で評判が徐々に広がり、遂には映画化までなってしまった染井為人『正体』である。私も読んだ。映画は知らん。

一家3人を惨殺し死刑判決を受けた少年死刑囚が脱獄。逃亡を続けながら、必死に足掻きつつ、周囲の人々との関わりを描いた作品である。

 

私の近しい友人たちもこぞって評価している通り、けっこう重めで深い感情を誘う物語だ。読み終えたときに重い重い、ため息がこぼれてしまうことだろう。

長編作品だが章立てが上手く、短編集のようにも読めてしまうので、テンポ感が良いのもポイントが高い。

この作品についてはあんまり公の場所で語れないことがあったりするので、いつか機会があったら形に残らないところで誰かと喋りたいなと思っている。

 

 

15位

 

45票が突っ込まれた15位はこれ。

 

 

 

『エレファントヘッド』

 

 

公式が正式に一切のネタバレを禁じてるので、紹介の書きやすいことなんのって。

ということで『エレファントヘッド』を読んで私が感じたことをずらずらと列挙していくので、好きに受けて取っていただきたい。

 

 

「小説って、こんなことして良いんだっけ?」

 

「読んでるそばから手が腐りそう」

 

「ネタバレで損なわれる前に損なわれてるものが多すぎる」

 

「読者に損しかない物語。本当にありがとうございます」

 

「誰が喜ぶんだよこれ」

 

97点

 

 

14位

 

50票が投函された14位はこちらでございます。

 

 

『生殖記』

 

未読なんだけど、『正欲』でぶっ倒れるほど衝撃を受けた私としては完全にあの系譜を予感してしまうタイトルである。どうやら公式的にもあまりネタバレ感想をしないよう喚起してるみたいで、そこまでクリティカルな内容は見えてきていない。

『正欲』でセクシャルとか欲望にまつわる話をさせたら、朝井リョウが一級品の腕とストーリーテリングを発揮するのはお墨付きなので、今回もきっとすんごいものを見せてくるはずだ。実際、内容には詳しく触れてないけど悶絶してる方を何人もお見かけした。

 

ちなみにだが彼のエッセイの超絶悶絶大ファンである私としては『風と共にゆとりぬ』に載っていた『肛門記』を想起せざるを得ないタイトルである。

あれは奇跡の名作なので肛門を持ってる生物すべてに読んでほしい。

 

 

13位

 

51票が差し出された13位はこちら。

 

 

『ここはすべての夜明けまえ』

 

YouTubeでも有数の読書チャンネルである『ほんタメ』であかりんこと齋藤明里さんがイチオシしていた作品である。ちなみに該当の動画は観ていない。店頭でそう書かれていたので知った。普段からYouTubeもテレビもほとんど観ない私の情報源は、書店の店頭が9割を占めている。あっぱれ。

 

読んだ多くの方が「出会ってしまった」と感想を漏らす、衝撃のデビュー作である。

約100年前に身体が永遠に老化しなくなる手術を受けた女性。そんな彼女の手記として書かれた作品。

ひらがなを多用した独特の語り口は完全に計算されたもので、するすると流れ込むように物語を摂取でき、他の作品では味わえない読み心地を提供してくれる。

著者のインタビューで「自分の中にいる検閲と戦う」と語っていて、これは世の中の流れや顔色を伺おうとする自らの心と戦うという意味だった。

これだけ科学が発展してきて、脳や行動や人の心理学だったりと、他人をコントロールしたり分析して、当たる確率を上げる方法というのはいくらでもあると思うし、実際そうやって色なマーケティングが成功している。

その一方で、純粋に自分が読みたいものを追求する姿勢はまさに"侍"という感じがして最高にロックである。

そういえば町田そのこも「誰に読まれなくなっても物語を書くことは止められない」と語っていたので、作家ってやっぱりどこかそういう打算とは別の次元の欲求を抱えている人しか続けられないのかも。森博嗣もちょっとは見習ってほしい。

 

 

12位

 

さあ、そろそろランキングも佳境を迎えてきた。いい感じに話題作を消化してきているので、ベスト10を予想するのも楽しくなってくるころじゃないだろうか。

それでは55票が確認された12位の発表である。

 

 

『三体』

 

燦然とSF界の頂点に君臨する『三体』である。

そこまでSFを読んでいない私が言うのもなんだが、あのスケール感を見せられてしまったら、こう評したくなるのも仕方ないだろう。もちろんネタバレを一切する気はない。どれだけ映像化で有名になったとしてもだ。

 

実は結構読み終えるまでに苦労してて、いま記録を確認したところ1巻に手を出したのが2019年の秋だった。そして死神永生を読み終えたのが2025年1月である。6年近くかかっている。もちろん読書はスピードではない。でもこれまでの傾向的に、私はハマると一気に読んでしまうタイプなので、かなり苦労した作品だと言えよう。

そんな私なのでしっかり正直な感想を記しておきたい。

まず第1巻。ちょっと面白い。ここでハマれる人は幸せだと思う。そのまま最後まで狂ったように読み進めてほしい。

次に2巻の暗黒森林。べらぼうに面白い。物語が一気に加速する。ここでハマれない人はもう諦めてもいいと思う。あとなんならハマった人だったとしても、ここで辞めていいと思う。それぐらい完成度が高い。

で、最終巻。もうね。作者の頭の中どうなってんのって。宇宙猫みたいな感じで読んでたよ。ここまで来ると、もう評価とかそういうレベルは超えて、第六感でお互いに感じ合うレベルだと思う。言葉は必要ないし、わざわざそうやって感想や評価を具現化する必要がない。

 

「あの世界を見届けた」

そんな勲章を胸に抱いている気分である。

面白かったかどうかも分からないほどだったけど、間違いなく私の人生において忘れられない作品になるはずだ。

別に読まなくてもまったく問題ないとも同時に思っているが。必要カロリーが高すぎる。読んでるだけで痩せるよ、あんなん。

 

 

11位

 

それでは惜しくもベスト10入りを逃してしまった、第11位の発表である。

56票の想いを乗せた作品は…こちら!!

 

 

 

『存在のすべてを』

 

未解決事件の事実を求め、引退間際の新聞記者が一つ一つ迫っていく物語。『罪の声』で大ヒットを飛ばした塩田武士の最高到達点と名高い作品である。

じわじわとか細くとも少しずつ捜査の点が繋がっていき、最後に気持ちよく収斂させてくれる一級のミステリーである。

一緒に捜査に参加しているかのように、ぐいぐいと物語に引きずり込まれるような面白さがあって、特に中盤以降の手の止まらなさが評判。

そして終盤明らかになる真実の切なさ。みんなの感想を読んでみても、そこら中で涙腺が崩壊しまくっているので、日本中が浸水するのも時間の問題じゃないかと危惧している。それかオタク言語特有の過剰表現が蔓延してる可能性が微レ存かもしれない。

 

長大な物語に身を任せ、心の底から湧き出るような涙を流す。

文章を読むだけでそんな体験をできてしまうんだから、読書とは改めて不思議な行為である。

 

 

~~~~

 

 

さーてさて。遂にお待ちかね。ベスト10発表のお時間である。

毎度のことながらランキングを作るときは読む人のことを考えて、コンパクトにコメントをまとめようとしているのだが、気付けばどんどん文章が長くなっていて、この時点で2万字ぐらい行っている。ほんとうに申し訳ない限りである。

 

それでは2024年を象徴する10冊を決めようか。

行ってみよう。

 

 

10位

 

それではまずは第10位!!

 

 

 

62票獲得。

 

 

 

今村翔吾!!

 

 

 

 

『イクサガミ』!!

 

 

 

激烈おもしろ時代小説として読書好きの間ではもうすでに知れ渡っている快作。

全4巻のシリーズもので、実はまだ3巻までしか出ていない。それなのにこれだけの人気を誇っている。どれだけの怪物っぷりなのかよく分かるだろう。

で、これも案の定Netflixで映像化するんだけど、キャストが凄まじすぎてさすがに驚いた。たぶんだけど俳優に出せるギャラの規模感とかが全然違うんだろうな、という印象。まあ観ないから私には関係ないけど。

 

シンプルなストーリーラインに、骨太な戦闘描写、萌えずにはいられない濃いキャラクターたち。単純に「面白い!」とのたうち回れる作品である。ちなみに装画は石田スイだ。何から何まで最高。

 

ちなみに私は2巻まで読んで3巻の『イクサガミ人』も発売日に買っているのだけど、楽しみすぎてまだ読んでいない。もったいなくて読めないし、なんなら背表紙見てるだけで脳に快楽物質が出るぐらい完全に調教されちゃっている。美味しそうなケーキを取っておいてる感じである。ケーキも見るだけで出るでしょ。色々と。あれよ。つまり『イクサガミ』はケーキ。欲望の象徴ってわけ。

 

 

9位

 

さあ、イクサガミの勢いに任せてどんどん進もう。

 

 

 

第9位!!!

 

 

72票獲得!!!

 

 

 

ガブリエル・ガルシア=マルケス!!!

 

 

 

 

…と来れば、これでしょ。

 

 

 

 

 

『百年の孤独』!!

 

 

 

 

おお!!凄い!!

 

素直にこの結果には驚いてしまった。もちろん書店の店頭が情報リソースの9割5分を占めている私としては『百年の孤独』が爆売れしているのは当然の事実だったのだが、まさかここまでの順位に食い込むとは…。世の中って分からないものですね。ちなみに2025年2月の現時点で2024年6月からすでに25万部売れてるそうだ。

恥ずかしながら私は古典をほとんど読んでないタイプの弱本読みなので、言うまでもなく『百年の孤独』は未読である。なんなら今回売れたのも「なんか古典とか読んでたら賢そうに見えるだろうから試しに買ってみっか」みたいな層に売れただけで、ほとんどの人は読みきれなかったり、読んでも面白さを理解できなかったりして終わるんだと決めつけていた。

これだけの評価が出ているということは、やはり普通に面白い名作なのだろう。全世界で5000万部ぐらい売れてるんでしょ。そりゃ面白くなきゃ売れんわな。って、未読なせいでさっきから売上の話しかしてない。

 

ということで、皆さんの感想を眺めてみたけど、やっぱり読み応えや、登場人物の名前問題などに言及する人が多くて、芯を食って面白がっている人は少ない印象。いや、それともこれはもしかしてあれか。登山とか筋トレでひぃひぃ言ってるのをポストしてるだけで、結局は楽しんでるやつか。実は読了後の達成感が一番のご褒美ってやつか?

 

真実はどうあれ間違いなく2024年を象徴する一冊でしょう。

 

 

8位

 

かなりバラエティ豊かなラインナップになって、ランキングを作っている側としては非常に満足である。みんなが納得のランキングも面白いけど、やっぱり意外性って薬味だからさ。加齢すると薬味しか興味無くなってくるから。

 

さて次の作品は薬味かどうか。

 

 

では第8位!!!!

 

 

76票獲得!!!!

 

 

 

 

阿部暁子!!!!

 

 

 

 

 

 

『カフネ』!!!!

 

 

 

 

 

うん、順当!

全然薬味じゃない作品でした。

 

溺愛する弟の死を受け入れられず悲嘆に暮れていた主人公が、家事代行サービス「カフネ」での活動と、弟の元恋人との関係によって再生していく物語。

タイトルの"カフネ"というのは、ポルトガル語で「愛する人の髪にそっと指を通す仕草」や「撫でたり、髪に指をからめて触れたり、気に掛けること」を意味する単語である。作品の空気感というか、優しさが漏れ出ていて、これだけでちょっと幸福感に包まれる。

 

上の方でも似たようなこと書いたけど、現代社会で生きる我々は常にストレスに晒されている。

それは仕事とか人間関係、日々の生活についてみたいなマイナスなストレスだけじゃなく、「これも凄い!」「こっちも面白いよ!」「これに狂ってます!!」というプラス方向のストレスもあって、とにかく周囲がうるさい。心や脳の中にある容器が常に溢れるすれすれになっていて、ほんのちょっとのことで閾値を超えてしまう。そんな感覚がある。

そんな時代だからこそ『カフネ』のような作品が柔らかに心を包むクッションになるのではないかと思ったりする。

皆さんの感想を読んでみると、良さがどうかというよりも救いをもらったような温度感が伝わってくる。それを読んでるこっちまで柔らかになる、そんな温度である。

 

ネットやSNS。面白いけど、知らず知らずの内に私たちは擦り切れる寸前なのかも。

少しその手を休めて『カフネ』に身を委ねる。

そんな時間が我々には必要なのでは。

 

 

7位

 

ちょっくらしんみりしちゃったけど、せっかく最高のランキングなのでどんどんテンションを上げていこう。このまま擦り切れようぜ!!

 

 

第7位!!!!

 

 

 

82票を獲得!!!!

 

 

 

 

多崎礼!!!!

 

 

 

 

 

『レーエンデ国物語』!!!!

 

 

 

 

もうこれはね…。最終巻が出るまでランキングに入り続けるでしょう。仕方ない。

 

発売当初から入国を宣言する人が続出していて(読書アカ界隈で『レーエンデ』を読み始めることの隠語)、入国したらほぼ100%帰ってこれなくなっているので、相当な吸引力があるのだと思う。ダイソンも見習ってほしい。あれちゃんと吸引力落ちるから。

で、相変わらず私は読んでいない。それはもちろん完結するのを待っているからである。

『イクサガミ』は京極夏彦の強烈な惹句に負けて完結していないにも関わらず読んでしまったが、『レーエンデ』こそは全巻揃えて、じっくりと安心して味わいたいと思っている。飢餓感が合う作品とそうじゃない作品があるでしょ。

でもそれでも手に入れたい欲は抑えるのが難しくて、店頭で『レーエンデの歩き方』を見かけたときは「これだけなら読んでも許されるかな…?」と悪魔に囁かれたのをよく覚えている。パラ読みしたい欲望と必死に戦って、表紙を撫でただけで帰ったけど。あれは非常に危険な時間だった。え?さっきから全然作品の紹介してないって?

すみません。『レーエンデ』は激烈おもしろファンタジーです。日本のファンタジー小説の歴史に100年は確実に名を残すこと間違いなし。未読の私が断言しちゃぐらいなんだから、よっぽどでしょ。

 

 

6位

 

それでは第6位!!!!

 

 

87票獲得!!!!

 

 

 

 

 

米澤穂信!!!!

 

 

 

 

 

 

『冬期限定ボンボンショコラ事件』!!!!

 

 

 

 

〈小市民〉シリーズの最終巻が登場。

何度もこのブログではランキングを作っているけど、ベスト10にシリーズものが入ってくることはほとんど無かった。しかしここまで上位に食い込んでくるのは、やはり米澤穂信の持てる力なのか、待たせまくった結果か。

最初の『春期限定』が発表されてから20年、前作の『秋』からも15年である。きっと諦めていた方も多かったことだろう。

シリーズものって終わらせ方が難しくて、長く続いたものほど「こんなんかよ」ってなりがちである。この部分は一作品で構成を組むのとは、まったく違う能力が必要なのだろう。それは小説に限らず、過去の多くの作品で証明されていると思う。

その点『冬期』に関しては、ファンも大満足。最高の落とし所を最高な形で提供してくれた。やっぱり穂信タンは優秀ですよ。もしかしたらミステリー作家が漫画原作とかやったら、もっと上手くいくのでは…?(←素人の安直な考え。愚かさの見本。殺人鬼の手で標本にされるべき存在)

 

 

~~~~

 

さて、無事に私が標本にされる未来が確定したところで、ランキングの佳境も佳境。ベスト5の発表である。

このランキングは私のように普段から読書を生活の命綱にしているような人たちを対象として書いている。なのでみんなも、それなりに売上の動向とか加熱感とかを把握していると思うので、ランキングを予測したりもできるもんだと勝手に決めつけている。

たぶんそういう楽しみ方ができる人間というのは、出版関係のお仕事をしていないのであれば日本に500人ぐらいしかいないのではないかと思っている。つまりこの記事は最悪その500人が読んでくれれば構わないと覚悟しているフシがある。そうじゃなきゃこんなハイカロリーの記事提供できない。

それと同時に細かい紹介文をすっ飛ばして、どの作品が入っているか確認して終わるだけの方もいるだろう。

というか人生の貴重さを考えたら、私が死ぬような思いをしながら集計した時間を都合よく利用するのが一番賢い選択死…じゃなかった選択肢である。みんなの代わりに私がちょっとだけ死んでいるのである。

 

ということで、私をどんなふうに利用しようとも皆様のご自由である。

何よりも私が一番このランキングを楽しんでるので、それだけで十分だと必死に自らに言い聞かせて理性を失わせている。よろしく。

 

 

5位

 

では泣いても笑っても最後。ベスト5の発表である。

 

 

まずは第5位!!!!

 

 

遂に三桁到達。

 

 

106票獲得!!!!!

 

 

 

夕木春央!!!!!

 

 

 

 

 

 

『方舟』!!!!!

 

 

 

 

 

発表された当初から数え切れないほどの悲鳴を吸って大きくなってきた怪作である。

 

読んで楽しんで、

読み終えたあとに友人たちとネタバレ感想会をやって楽しんで、

さらには新たに読んだばっかの人を迎えて感想を聞いて楽しむ、

 

と髄の髄まで満喫させてもらっている。

 

ここまで強烈なミステリーに出会えたのが久しぶりだったので、濃いミステリー仲間と一緒にテンションが上ってしまった。

正真正銘この作品のファンであるからこそあえて内容には詳しく触れない。

真正面から受け止めてもらうのが『方舟』が一番ストレスになる方法だからだ。一緒に擦り切れよう。

あなたも読めば、誰かの悲鳴を聴きたくなるはず。

 

 

4位

 

さあさあ!!票数がじゃんじゃん伸びますよー。

 

 

第4位!!!!

 

 

 

114票獲得!!!!!

 

 

 

 

呉勝浩!!!!!

 

 

 

 

 

 

『爆弾』!!!!!

 

 

 

 

いま一番愛されるべき悪役で有名、『爆弾』である。

続編の発表に文庫化、さらには映画化もされるそうじゃないか。話題が集中した結果堂々の第4位である。シリーズものがランキングに入りにくいって、誰か言ってたけどアホだな。

『爆弾』の魅力を語ろうと思ったら非常に簡単である。

 

悪役が死ぬほど最悪。

でもその最悪さがクセになる。

 

これである。

 

『爆弾』の代名詞である悪役"スズキタゴサク"は、これまで数え切れないほどのミステリーを読んできた私の中でも1,2を争うクソ野郎である。(ちなみにもうひとりは『マリアビートル』の王子。こっちも最高)

 

この男、本当に何も良いところがない。終始最悪。ずっと嫌。永遠にストレス。読者にとってもそうだし、作中の登場人物たちにとっても最悪オブ最悪。

な の に、だ。

それなのにスズキタゴサクから私たちは目が離せない。次の最悪が楽しみすぎてページを捲る手が止まらない。まさにスズキタゴサクの術中にはまってしまうのである。悔しい。けど面白いから止められない。なにこの感覚。快楽落ちってこれのこと?

フィクションらしく真っ当に倫理観を逸脱する悦びを与えてくれる作品である。このストレスにまみれた現代社会である。せっかくならストレスのおかわりしようぜ。

 

一応だが読み終えたらちゃんとスカッとできるので、そこはご心配なく。

 

 

3位

 

記事が膨大すぎて嫌になったときもあるけど、こうして終わりが見えてくるとなんか悪あがきしたくなる欲求が出てくるから困る。きっと最後まで読んでくれてる奇特な方もいるだろうから、綺麗にまとめていこうじゃないか。

 

それでは2024年の頂点に君臨する、第3位である。

 

 

 

 

134票獲得!!!!

 

 

 

 

 

 

山口美桜!!!!!

 

 

 

 

 

 

『禁忌の子』!!!!

 

 

 

 

 

来たーーーーーー!!

 

なんてデビュー作。発売前からかなりの前評判を聞いていたのだが、売れ始めたら一気に頂点まで駆け上がった。

私も激推の作品なので、売れ行きに貢献できるようにいいコメントを…なんて考えたのだがまったく必要なかったようだ。本当にあっという間に遠くまで行ってしまった。

 

山口美桜氏本人が語っているとおり、かなりリーダビリティに特化した作品で、本の文章の配置や物語の引きなど、読者が夢中になるように、計算に計算を重ねて作り上げたそうだ。

リーダビリティも勿論だけど、ミステリー好きの私としてはやはり設定が外せない。

 

救急医・武田の元に搬送されてきた、一体の溺死体。その身元不明の遺体「キュウキュウ十二」は、なんと武田と瓜二つであった。彼はなぜ死んだのか、そして自身との関係は何なのか。

 

医師と死体がまったく同じ顔って。しかもそれが何の血縁関係もなく、ちゃんと解決されるっていうのだから、こりゃ読むわな。

 

オチまで最高に私は楽しめたんだけど、勢いが凄すぎて、こうなると逆にハードルが上がりすぎ肩透かしになる人が出ないか心配である。

こればっかりは売れてる小説の宿命かもしれないけど、せっかくいい作品なので過剰な評判に左右されずにじっくり味わってほしいなと思う。

 

…と過剰なオススメの仕方ばかりする者が申しております、殿。いかがいたしましょう。こんなやつこそ禁忌では。

うむ、そんな愚かな輩は標本にでもしておけい。

 

 

2位

 

それでは禁忌に触れまくっている私も大好きな第2位の発表である。

 

 

165票獲得!!!!!

 

 

 

2024年ベストランキング準優勝はこちら!!!!

 

 

 

 

 

宮島未奈!!!!!

 

 

 

 

 

 

『成瀬シリーズ』!!

 

 

 

 

 

「本屋に行くと、この世には『成瀬』と『変な家』しか売ってないんじゃないかって思う」

と言われるほど、日本中の書棚を占拠しまくっている『成瀬』、遂に登場である。これが優勝だと予想していた方も多いのではないだろうか。

こちらもここまで世間に広まっているので私がわざわざ魅力を語る必要はないだろう。実績がすべてである。

 

もちろん私も100点を付けるほど大好きな作品である。

売れ方だったり、本屋大賞を獲ったことで、ちょっと思ったような作風じゃなくてガッカリしている方もちょこちょこ見かけるけれど、私はどストレートに気持ちよく爽やかにさせてもらって、オッサンらしく青春の素敵さに浄化される思いだった。

 

結果や実績というのものは、本人の思いとは別に作用することがままある。米津玄師も「自分が巨人になればなるほど、誰かを傷つけてしまう」というようなことを語っていた。本人に変わったつもりはなくとも、その大きさが予想だにしない影響を及ぼしてしまうのだ。

評判が付けば、それによって思い込みが作られるだろうし、人気が集まればヘイトを溜めることもあるだろう。情報に流動性があって、いつでも大きなうねりを生み出せてしまう時代だからこそ、余計に"売れる"ことによって発生する問題は避けがたくなっている。

 

作品の感想に正解はない。どんな価値判断を下そうとも、人の自由である。

きっとこうやってランキングにするようなことをやってるから、多くの人が「良いもの」と決めつけ、裏切られたり肩透かしになったりするのだろう。つまり私が悪い。だからみんな成瀬の悪口は止めるんだ。

私もランキングの加害性に反省し、皆さんに想いを馳せながら、日々楽しく暮らしているのでよろしくどうぞ。

 

 

※私の勝手な判断で『成瀬は天下を取りにいく』と『成瀬は信じた道をいく』を合算した票数となっています。

 

 

1位

 

それでは長すぎたこの記事も遂にこれでおしまいである。

第1位を発表しよう。そしてきっとみんなもう結果は分かっているだろう。

 

 

 

では、

 

 

2024年の本ベスト約10冊ランキング。

 

堂々の優勝の座に輝いたのは、こちらの作品だ!!!!!

 

 

圧倒的。

195票獲得。

 

 

 

 

 

青崎有吾!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

『地雷グリコ』!!!!

 

 

 

 

 

 

順当すぎる。

 

めちゃくちゃ面白い本がめちゃくちゃ評価されて1位っていう、清々しい結果である。

読書好きに聞いたらやっぱり2024年は『地雷グリコ』が圧倒的だったと口を揃えて言うと思う。発行部数的にどうかは分からないけど、作品を読んだあとの反応とか熱狂具合、みんなの興奮っぷりがTLを彩りまくってた。ありゃ1位にもなるよ。

 

みんなが知っているような子供の遊びに、新たなルールを足して究極の頭脳戦にまで仕上げた最高のゲーム小説である。

痺れる読み合いに心理戦、駆け引きに、極上の伏線回収と、読者が悦ぶことを120%でやってくれるんだから、こっちとしてはひたすらに大喜びするしかないでしょ。青崎有吾、大優勝です。

 

今回の集計対象が1961人だから、195票というと10%以上が入れてる計算になる。とんでもない支持率である。

本の刊行点数とか、これだけ趣味が細分化されてることを考えると、どれだけ広くみんなに刺さる作品を生み出したのかよく分かる。広さだけじゃなくて、興奮度合いからいくと深さもかなりのもんだと思うし。マジで青崎有吾の頭の中どうなってんのよ。有能すぎる。少し分けてほしい。

 

せっかくの名作なのでぜひとも未読の方はネタバレを食らう前に、この極上の料理を食らってほしい。

 

ということで、2024年の本ベスト約10冊ランキングの第1位は、青崎有吾『地雷グリコ』でした。改めておめでとうございます!!

面白い作品は紹介してるだけでテンション上がるから凄いね!!

 

 

それでは無駄話だらけの長すぎる記事に最後までお付き合いいただき感謝。

ではでは。

 

 

以上。

 

 

 

ぜひTwitter(人呼んでX)でコメントとか、記事を拡散していただけると助かります。

 

 

 

 

※集計作業を頑張ったひろたつを労ってあげたい方はこちら。

 

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