どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。怒りが半日遅れでやってくるタイプです。
今回は毎年私が楽しみにしている企画である。
題して、
みんなの2024年上半期の本ベストをまとめてみた!!
である。
これからランキングを紹介するのだが、例によっていらん前置きが長々と続くので、余計な情報で人生を無駄遣いしたくない方はサクッとスキップしていただきたい。
- 事前了承済みのいらん前置き
- 26位
- 25位
- 24位
- 23位
- 22位
- 21位
- 20位
- 19位
- 18位
- 17位
- 16位
- 15位
- 14位
- 13位
- 12位
- 11位
- 10位
- 9位
- 8位
- 7位
- 6位
- 5位
- 4位
- 3位
- 2位
- 1位
事前了承済みのいらん前置き
本の探し方にも色々あって、己の感性だけを頼りに好きな本を見つける人もいれば、ランキングに入っているような人気がある本からチョイスしたいという人もいる。私は完全に前者なのだがその一方で後者の気持ちもよく理解している。なぜなら昔の私がそうだったから。あとは単純に本のランキングというだけで色んな考察だったりとか一家言があったりするので、非常に楽しい。
今回は読書案内として最近人気が出ている本を可視化するとともに、私の興味を満たすためにランキングをこしらえた次第である。
一応説明しておくと、今回のランキングはTwitter上の読書アカウントによる
というタグの付いたツイートをすべて手作業で集計して無理やりランキングにしたものである。タイトルが書かれておらず画像で書影だけのものもちゃんと含めてカウントしている。その数にして817人分である。
イーロンのせいか分からんが、最近のTwitterさん(自称X)はツイート(俗称ポスト)が非常に見にくくなっていて、私のようにツイート(変名ポスト)を総ざらいしようとするとかなり手間取る。自分でやっておいて思うが、本当に酔狂な作業である。作業時間の合計は…?ちょっと意識が混濁するレベルの作業量なのではっきりとしない。この世には、はっきりさせない方が良いこともあるから良しとしよう。…と割り切りたいところだが、実際に膨大な作業をひとりで黙々とやっていると「こんなランキングに本当に需要があるのか?」と疑問がよぎる。正気に返ったとも言える。
これまでも数多くのランキング記事を書いてきたし、Twitter(あだ名X)でもランキングのまとめ画像を投稿してそれなりの反響は得てきている。
しかしながらこういったものはあまりにも需要というか興味を惹ける時間が短いのか、瞬く間に忘れ去られる。一回見れば終わり。軽くスワイプすればいくらでも面白いものが世の中には溢れている。それが悪いとは言わない。私だって同じようなものだ。すぐにマーモットのゲップ動画を見てしまう。同じか?
まあとにかく皆さんの興味を一瞬でも惹けるだけマシだと言えるし、こういうランキングを継続的に観測したい変態同志がいるだろうとも思っている。そう、そもそもどれだけニッチだろうが確実に私自身に需要があるのだ。
相変わらずものすごい情報量の記事なので、もの好きしか好きじゃないと思うのだが、いかんせん私が間違いなくもの好きなので仕方ないと許してやってほしい。たしかマザーテレサも言ってるよ、もの好きは許せって。違ったっけ。許すなだったかも。まあいいか、どっちにしろ死ねばすべて許されるし。
ということで、すべてを許されるまでの長い暇つぶしに読書でもしようじゃないか。
行ってみよう。
26位
まずは4票を獲得した26位から!
75作品がランクイン。ざくっと行ってみよう!!
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『11文字の檻』
『アイネクライネナハトムジーク』
『アリス殺し』
『家守綺譚』
『イギリス人の患者』
『犬がいた季節』
『煌夜祭』
『ガザとは何か』
『火星の人』
『仮面の告白』
『カラスの親指』
『硝子の塔の殺人』
『キスに煙』
『君の顔では泣けない』
『ぎょらん』
『クスノキの番人』
『凍りのくじら』
『ここにあるはずだったんだけど』
『孤島の来訪者』
『この闇と光』
『殺戮にいたる病』
『屍の命題』
『自炊者になるための26週』
『秋期限定栗きんとん事件』
『出版禁止』
『殉教カテリナ車輪』
『絡新婦の理』
『白の闇』
『白夜行』
『すみせごの贄』
『捜査・浴槽で発見された手記』
『そして誰かがいなくなる』
『体育館の殺人』
『対決』
『ただいま神様当番』
『たゆたえども沈まず』
『地球星人』
『ちぎれた鎖と光の架け橋』
『ツナグ』
『椿ノ恋文』
『つまらない住宅地のすべての家』
『照子と瑠衣』
『店長がバカすぎて』
『塔のない街』
『塞王の楯』
『西の魔女が死んだ』
『人間標本』
『眠りの館』
『ノルウェイの森』
『博士の愛した数式』
『儚い羊たちの祝宴』
『左川ちか詩集』
『響きと怒り』
『氷菓』
『ビリー・サマーズ』
『ファラオの密室』
『復讐は合法的に』
『舟を編む』
『変身』
『焔と雪』
『本屋さんのダイアナ』
『護られなかった者たちへ』
『みどりいせき』
『未明の砦』
『むらさきのスカートの女』
『木曜日にはココアを』
『闇の中をどこまで高く』
『雷神』
『ラブカは静かに弓を持つ』
『リボルバー』
『竜の医師団』
『ロゴスと巻貝』
『若きウェルテルの悩み』
『悪い夏』
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この辺りの順位は新旧入り乱れる感じがものすごい面白い。勢いのある新作と、いつまでもずっと一部の誰かに刺さり続けてる名作とが並んでいるのだ。
最後の『若きウェルテルの悩み』と『悪い夏』が一緒に並ぶことある? 世の中のいざこざの因になるのは、奸策や悪意よりも、むしろ誤解や怠慢だとは良く言ったものだ。完全に『悪い夏』のことである。
個人的に挙げさせてもらったのは中山七里の『護られなかった者たちへ』。
超売れっ子作家の言わずと知れた代表作。有名すぎるあまりに敬遠してたんだけど、さすがにもう逃げられないと思って読んだら…これは完全にやられてしまった。中山七里自身が最高傑作と豪語するだけのことはある。中山七里作品はほんとどれも甲乙つけがたいレベルで大好物なんだけど、ちょっとこれは抜きん出てしまったかも。
あとあと!『闇の中をどこまで高く』ってタイトル、美しさが過ぎる。
ここらへんの順位で語り合える時間がほしい。
25位
5票を獲得したのは49作品。
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『Blue/川野芽生』
『あの日の交換日記』
『いつかたこぶねになる日』
『いろいろな幽霊』
『姑獲鳥の夏』
『おいしいごはんが食べられますように』
『オッペンハイマー』
『鏡の国』
『きこえる』
『グレイラットの殺人』
『告白撃』
『午後のチャイムが鳴るまでは』
『琥珀の夏』
『漣の王国』
『時空旅行者の砂時計』
『死にたがりの君に贈る物語』
『しんがりで寝ています』
『人類の深奥に秘められた記憶』
『すべてがFになる』
『絶海』
『切断島の殺戮理論』
『そして、バトンは渡された』
『そして誰もいなくなった』
『襷がけの二人』
『旅する練習』
『宙ごはん』
『冷たい校舎の時は止まる』
『手紙』
『長い読書』
『猫を抱いて象と泳ぐ』
『葉桜の季節に君を想うということ』
『バッタを倒しにアフリカへ』
『母という呪縛 娘という牢獄』
『巴里マカロンの謎』
『ハンチバック』
『ひゃっか!』
『星を継ぐもの』
『マリアビートル』
『蜜蜂と遠雷』
『名探偵のいけにえ』
『魍魎の匣』
『望月の烏』
『闇祓』
『揺籠のアディポクル』
『汚れた手をそこで拭かない』
『乱歩殺人事件』
『領怪神犯』
『流浪の月』
『列』
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京極作品がぽつぽつ入ってきているのは、彼の作家業30周年フェアで賑わせた影響が出ているのだろうか。とはいえすでに1年近く経っているのだが、あの分厚さを考えれば手に取ってからランキングに影響が出るまでこれぐらいのスパンが発生するのは当然かもしれない。
あといつも集計の際に困る「同じタイトル問題」。
今回は『Blue』である。
作者名が入っていなかったので推測として川野芽唯氏だということにしたが、もしかしたら葉真中顕の方だったかも。もしそうだったらごめん。どのみち素人が勝手に作ったランキングなので許してやってほしいどうせ死んだら(略
もう一個だけ触れさせてほしい。
やはりこういったランキングを作るとどうしても小説ばかりが票数を占めがちである。
だが小説だけが本ではない。ノンフィクションだってあるぞ、ということで『バッタを倒しにアフリカへ』と『母という呪縛 娘という牢獄』はプッシュしておきたい。
『バッタ~』の方は笑いと感動と学術的好奇心を満たしてくれて、何よりもバッタ愛に狂う奇人の生態に触れられることが最高である。
その一方で『母という呪縛~』は心の底からダメージを食らってしまう作品である。親子関係に難がある方だとちょっと読むのはキツいかもしれない。私はかなり親と健全な関係を築いてきた方だと思うのだが、それでも読後はフラッシュバックのように本の描写が脳内をよぎることが何回もあった。
振れ幅というのはどんなエンタメにもあるけれど、読書の場合、振れ幅に深さが付いてくるのでよりダメージが大きくなるという好例である。もちろん好かどうか決めるのはあなた自身である。
24位
さあ、この濃度で語りだすと永遠にこの記事終わらんぞという危機感を覚えつつも、やっぱり本の話って止まらなくて最高。
では6票を獲得の30作品を紹介!
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『medium霊媒探偵城塚翡翠』
『あなたの言葉を』
『アンソーシャルディスタンス』
『板上に咲く』
『鬱の本』
『カフカ断片集』
『奇岩館の殺人』
『君のクイズ』
『黒牢城』
『この銀盤を君と跳ぶ』
『この夏の星を見る』
『ザ・ロイヤルファミリー』
『受験生は謎解きに向かない』
『しろがねの葉』
『新世界より』
『ずっとお城で暮らしてる』
『精霊を統べる者』
『センスの哲学』
『セント・アグネスの純心』
『ツミデミック』
『でぃすぺる』
『透明な夜の香り』
『鳥と港』
『夏休みの空欄探し』
『ハサミ男』
『復讐は芸術的に』
『マーリ・アルメイダの七つの月』
『未必のマクベス』
『リバース』
『六人の嘘つきな大学生』
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着実に最近の話題作が増えてきているが、そのレベルの作品でも24位という事実が、このランキングの濃度を物語っていると思う。
個人的に注目なのは古典へ回帰である。
これだけ面白そうな新作が次から次へと出てくる状態なのに、カフカとかここには入っていないけど『百年の孤独』がバカ売れしたりと、みんなの目線の向かう先に変化が見られている。
我が身を省みると確かにその傾向は若干あって、夢野久作とか太宰なんかに手を出すようになった。元々それなりに好きだったのもあるけど、それだけじゃなくて最近のSNSとかニュースで見るような流行りの5秒で消費できるエンタメに浸かってる自分に嫌気が差す思いがあって。それって誰でも消費できるし、どっかで見たようなものばっかりだし、誰かと共有しようとするとすでに知ってたりとかして、情報としてがっかりな部分が多い。なんか離乳食みたいなのだ。
その一方で古典というのは、ファストなエンタメとは対局にあって、深みに一歩足を踏み出すような感覚がある。浅瀬で戯れるみんなを尻目に、人のいないところへ行ってみたい、ちょっと努力して楽しみを得たい、そこで価値ある情報と出会いたい、みたいな気持ちがある。
だから古典に手を伸ばしたくなる気持ちが私にはよく分かる。享楽だけに溺れない人間の芯を見るようでとても嬉しい。
ちなみにだが、古典に限らずちょっと古い作品を読むと、現在のモラルとあまりにも変化があって驚いたり白けたりするので注意が必要である。ジェンダーの価値観とか極端に変わりすぎだから。
でもその驚きや白けもまた価値だと思うので存分に食らってほしい。
23位
7票を獲得したのは25作品。
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『あなたが殺したのは誰』
『イクサガミ』
『兎は薄氷をかける』
『女の国会』
『ガダラの豚』
『感傷ファンタスマゴリィ』
『逆転美人』
『クスノキの女神』
『源氏物語』
『極楽に至る忌門』
『この村にとどまる』
『スモールワールズ』
『スロウハイツの神様』
『堕天使拷問刑』
『テスカトリポカ』
『時計館の殺人』
『ともぐい』
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』
『白鳥とコウモリ』
『パッキパキ北京』
『犯罪者』
『百年の孤独』
『プラスティック』
『名探偵に甘美なる死を』
『六色の蛹』
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言ってるそばから『百年の孤独』が出てきた。
私は未読なので感想は書けないのだが、逆に読んでないからこそ誰かと「想像百年の孤独会」をやりたいと思っている。完全に三浦しをんさんたちの「『罪と罰』を読まない」の丸パクリなのだが、こういう楽しみ方って未読のときしかできないから貴重である。
あと注目なのが『ガダラの豚』だろう。
Twitterのタグを集計して「いま人気の本」をランキングにするのをかれこれ4年ほどやっているのだけど『ガダラの豚』がランキングしたのは初めてである。私も大好きでこのブログでも何度も激賞している。
でもなぜこのタイミングで浮上してきた…?と思ったら、やはりTwitter界隈で盛り上がりを見せているようだ。
たぶんだけど私の友人でもある、あすなろ氏(@readingmaururer)のツイートが起爆剤じゃないかと思う。私のTL上での観測でしかないけど、明らかにあすなろ氏が話題にしてから目にする機会が増えた。
今後もこうやって"その界隈の人"の秀逸な紹介で火が付く機会が増えていくことだろう。企業の綿密なプロモーションも効果的だと思うけど、誰かの純粋な熱狂には勝てないと改めて思う。
22位
さあだいぶ絞られてきて、8票を獲得したのは16作品。
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『生きる演技』
『射手座の香る夏』
『恐るべき緑』
『化学の授業をはじめます。』
『可燃物』
『コンビニ人間』
『ザリガニの鳴くところ』
『十戒』
『死のエデュケーションシリーズ』
『祖母姫、ロンドンへ行く!』
『爆弾』
『百年と一日』
『変な家』
『まいまいつぶろ』
『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』
『ライオンのおやつ』
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『化学の授業を始めます。』もさきほどの『ガダラの豚』と同じくツイートがきっかけで一気に火が付いた作品である。こっちの火の付き方で面白いのが、ツイートした本人は素直に感想を書いただけなのに、めちゃくちゃバズってるところ。
『化学の授業をはじめます。』の感想投稿、気づけば「いいね」が7千超えになっていてびっくり。自分には一銭も入ってこないけど嬉しいことです。 https://t.co/jDI0LAoFoi
— 高野秀行 (@daruma1021) January 23, 2024
紀行と奇行で有名な高野秀行氏なので、まさか本の感想でこんな注目が集まるとは長年のファンである私も意外である。やっぱり正直な感想こそ最強なのだ。
あとは『爆弾』ね。言いたかないけど、爆弾級の面白さ。
文庫化と続編が発表されたので、ここからさらに人気が加速するものと予想…というか希望である。あの嫌面白さは本当に唯一無二なので、ぜひ皆さんスズキタゴサクに振り回されて、存分に不愉快になってほしい。
21位
9票を獲得したのは7作品。遂に一桁である。
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『嘘つき姫』
『黄色い家』
『サロメの断頭台』
『花束は毒』
『二人キリ』
『夜明けのはざま』
『両京十五日』
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ずっと言ってるけど『黄色い家』のAudibleが凄まじいからぜひ体験してほしい。
物語自体の疾走感もあるけど、朗読されてる方の演技力が凄まじくて、本当に引き込まれる、というか引きずり込まれる。声という力に心を握られてる感が凄い。
未読で気になってるのが『両京十五日』。
こちらも疾走感と濃度にヤラれそうな期待感が高い。中華エンタメって食わず嫌いなんだけどあの田中芳樹が激賞してるから間違いない。キャラは魅力的で、血生臭くて、権謀術数が張り巡らされてて、生への渇望と正義に燃える感じが最高に面白い作品なんだろうと勝手に妄想してるんだけど、これは完全に『銀英伝』のイメージですごめんなさい。
20位
10票獲得したのは、12作品。
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『VR浮遊館の謎―探偵AIのリアル・ディープラーニング―』
『赤と青のガウン』
『アルプス席の母』
『俺ではない炎上』
『君が手にするはずだった黄金について』
『グリフィスの傷』
『じんかん』
『人間失格』
『八月の御所グラウンド』
『本の背骨が最後に残る』
『名探偵のままでいて』
『夜明けのすべて』
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正確に集計できてないが、今回の#2024年上半期の本ベスト約10冊で挙げられていたのがだいたい全部で800作品程度だった。
約800人分の集計結果なので、本好きひとりに対してひとつの作品が刺さっている計算になる。(ごめん、全然意味の分からない計算をしてるかも)
これを多いと思うかどうかは各自が判断してもらうとして、私はかなりちょうどいいと感じている。
好みにはやはり人柄が出る。性癖が出ると言い換えてもいい。言い換える必要はまったくもってないのだが。
それぞれにとっての最高の一冊が被らない程度の割合で、作品が広く愛されているのはとっても健全だと感じる。
その一方でそんなに幅広く興味が分散してしまうと、書籍ビジネスが成り立たないのではないかという懸念もある。小ロットで利益が出るとは思えない。バカみたいに値上げできれば違うだろうけど。
今後、この傾向はさらに広がりを見せるのだろうか。それともSNSやオンライン上での星評価によって、みんなが「より安全性の高い作品」に集中してしまい、読まれる作品が減っていくのか。いち本好きとして静かに眺めていくつもりである。
19位
11票を獲得したのは、たったの7作品。ここからは店頭で見かけた作品が目白押しである。
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『歌われなかった海賊へ』
『エヴァーグリーン・ゲーム』
『かがみの孤城』
『傲慢と善良』
『誰が勇者を殺したか』
『方舟』
『夜市』
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語りがいのある作品だらけで困る。全部を語ってしまうと本当にウンザリされる文量になってしまうのでセーブしておこう。
やはり個人的に激推として外せないのは『方舟』。
2022年に降臨するなり、TwitterのTLを席巻し、その作風のせいで余計な感想語りができず次々と皆が沈黙するという現象を巻き起こした。
さすがに勢いは落ちてきたものの、未だに被害者の悲鳴を目にする機会があって、先に入船した身としては思わずニッコリである。地獄へようこそ。
文庫も出たしコミックスにもなっているので、またここからさらに悲鳴を増産してほしい。
あとは大好物の『夜市』。
表題作も大好きだし、収録作品の『風の古道』も絶妙な異世界感と不気味さで唯一無二の読み味を提供してくれる。子どもの頃に感じた独特のあの寄る辺なさみたいなのが、非常にたまらない。
18位
続いて12票を獲得したのは、6作品。
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『神に愛されていた』
『木挽町のあだ討ち』
『正体』
『死んだ山田と教室』
『東京都同情塔』
『をんごく』
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ここは木爾チレン氏の『神に愛されていた』でしょう。才能と嫉妬の物語である。
読書ブロガーを名乗る私。魅惑の文章を綴り続ける作家先生方には、尊崇の念と感謝が絶えない。その一方でいち人間として、自らが文章を綴る能力とのあまりの差に、絶望と嫉妬がとんでもなく膨らむことがある。いい大人なのでそれなりにコントロールしたり見なかったふりをして意識から除外してなんとか生きながらえている。しかし本当は苦しい。言葉という魔法はなぜこんなにも己の手からこぼれ落ちてしまうのか。力を失った空虚な記号ばかりが指の間に残るのだ。
という感じで、物語を追っているのか自らを省みているのか分からなくなってしまう作品である。たぶん私は嫉妬深いから余計に効いてしまったフシがある。高潔になりたい。
17位
私の人格に関するどうでもいい愚痴は置いといて、第17位の発表である。
こちらは13票を獲得で7作品がランクイン。
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『spring』
『永劫館超連続殺人事件』
『お探し物は図書館まで』
『十角館の殺人』
『宙わたる教室』
『リカバリー・カバヒコ』
『別れを告げない』
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こちらも新旧入り交じるいいラインナップ。
全然私のアンテナに引っかかっていなかったのが『別れを告げない』。ちょっと概要を調べてみたがかなり濃度の高い感想がずらり。この順位で留まっているのは単純に読んでいる人の少なさによるかもしれない。
済州島4・3事件を題材に、虐殺の歴史と再生しようとする人間の姿、そして哀悼の意味を問う作品だそうだ。
最近韓国文学もかなり進出してきてその波に乗り切れていない感があるので、初読みはこれにしたいと思う。『アーモンド』とかも気になっている。
それにしても『十角館の殺人』はいつまで話題に登り続けるつもりなのだろうか。本当にいい加減にしてほしい…と思っているミステリー作家は数多くいるはずだ。
そろそろみんなが思う最強ミステリーを募集したいんだけど、すでに3年連続で『十角館』が持っていっているので、再放送にもほどがある企画になってしまう。
あと私もベスト10冊の中に入れた『宙わたる教室』!!
まあ感動したね。伊与原新はいつも沁みる物語を提供してくれるが、今回も青春とドラマで胸がいっぱい。そして科学のエッセンスが効くこと。
一応フィクションの体を取っているけど、実際の出来事をベースにしているのを知って、より感動が深ました。大人も学生も心に響く名作です。
勉強したくなるなぁ。
16位
14票を獲得したのは6作品。
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『777』
大人気作家伊坂幸太郎の大人気シリーズの待望の新作。こんな間違いないものって、物理法則ぐらいしかないんじゃないか。紛うことなき絶品である。
エンタメの頂点は伊坂。これは覚えておこう。
『アルジャーノンに花束を』
出ました。文句なしの名作。売上の魔術師こと小説紹介クリエイターけんご氏が激賞し続けているため、常に書店で平積みされている印象。
世界中で翻訳されているものの、やはり日本語が一番この作品に向いていると思ったりしている。
『三体』
Netflixでの映像化が大成功を収めている『三体』である。SFの最前線といえば間違いなくこれだろう。
世界中で売れに売れているので、新たなSFのスタンダードとなりそうである。これを読んで育った世代がまた新たなSFを創造すると思うと、『三体』ですでに息も絶え絶えになっている私はもうここらへんでギブアップかもしれない。
『なれのはて』
加藤シゲアキは「小説家として一番面白いときをすごしている」と何かの対談で読んだ。
私は長らくミステリー小説好きとして生きてきた中で、ある実感を持っている。それはミステリーが書ける作家とそうでない作家がいるということである。
ミステリーというのは人気ジャンルだ。この要素があるだけで作品の惹きが桁違いに強くなる。もちろん謎だけが作品の良さだとは思っていない。だがミステリーに手を出したがゆえにボロを出してしまった作品をいくつか読んだことがあり、非常にがっかりした。
私自身が未読なので詳細は分からないのだが、皆さんの感想を読む限りかなりの成功を収めているようである。初っ端から完全にジャニーズの作家だぁ?と色眼鏡で見ていた私は反省の限りである。マジで凄え。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
超絶の傑作。
これが人生最後の読書だって言われても後悔しないぐらい、読書の幸福をもたらしてくれた作品だった。
『滅びの前のシャングリラ』
『汝、星のごとく』『流浪の月』で本屋大賞を最速で複数回受賞した覇王こと凪良ゆうである。1ヶ月後に衝突する隕石を前に繰り広げられる人間模様が描かれる。けっこう知られてた作品であるが文庫化でさらに火が付いた模様。
同じような設定で伊坂幸太郎の『終末のフール』があるので、読み比べてみるとさらに作家性の違いや視点が見られて面白い。
15位
15票を獲得したのは、たったの3作品。ここから一気に作品数が絞られてきます。
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『アリアドネの声』
目が見えず耳も聞こえない女性を救うため、迫りくるタイムリミットの中、1台のドローンによる救出劇を描いた作品。最新機器を使ったひと味違ったミステリーであり、極上のプロットで読者を手玉に取ってくる快作である。
『正欲』
特殊性癖を持つ登場人物たちの視点を通して、読んでる我々自身の価値観をこれでもかと揺さぶってくる怪作。
それなりな大人なのでそれなりに特殊性癖について理解しているつもりだったが『正欲』を読んで、私自身の解像度の低さっぷりに大ダメージを食らってしまった。なんも見えてなかったことに対して、こんなにも罪深さを感じさせられるとは…。
『汝、星のごとく』
大ダメージものが連続ランクイン。2023年本屋大賞を掻っ攫った名作である。
様々な家族の形を提示しながら、人の繋がりについて考えさせられる物語。以前も書いたけど、話の筋としてはとってもシンプルなのに、べらぼうに心にのしかかってくるものがある。筆力という暴力を感じたかったらこれ。
14位
16票を獲得したのは1作品のみ。
こちら。
『カフネ』
溺愛する弟の死を受け入れられず悲嘆に暮れていた主人公が、家事代行サービス「カフネ」での活動と、弟の元恋人との関係によって再生していく物語。
タイトルの"カフネ"というのは、ポルトガル語で「愛する人の髪にそっと指を通す仕草」や「撫でたり、髪に指をからめて触れたり、気に掛けること」を意味する単語である。これだけで作品の空気感というか、優しさが漏れ出ていて、未読ながらすでに幸福感をもらっている。
13位
17票獲得!こちらも1作品のみ!
『シャーロック・ホームズの凱旋』
モリミ~~~~~~~~!!最高だぜ!!
本家のロンドンを京都に移しただけと思ったら大間違い。やりたい放題で想像奇想おふざけなんでもござれの、痛快エンターテインメントである。
それこそデビュー作から彼のファンであり続ける私としては、モリミーが作家として活動を続けてくれることが何よりも嬉しい。それでも生みの苦しみみたいなのはずっと感じてて、なんとも言えない息苦しさがあった。ファンである自分たちが彼を苦しめているのではないか、縛り付けているのではないかと。
だからどんなチャレンジをしてくれてもOKだと思っている。それが私の読みたいモリミー作品の面白さとは違ったとしても、彼が作家として生きていく上で必要な変化だと受け入れるべきである。作家とファンだって人間関係である。出会いもあれば別れもある。長い人生の中で交わった瞬間の奇跡を喜べばいいのである。
そんな偉そうなことを書きつつも、やっぱりこうやって爆裂にモリミー節全開で元気な作品を出してくれると、手放しで喜んでしまうのだからファンというのは本当に勝手である。
12位
18票を獲得した3作品がランクイン。
『一線の湖』
水墨画の世界を描いた『線は、僕を描く』の続編。
目で楽しむ世界だからこそ、それを文章で味わう喜びというのがあって、これぞ小説の醍醐味という感じ。あまり知られていないマイナーな場所の深みを知れるのも面白い。
最後の描画シーンは息が詰まるほど圧巻。一読の価値あり。
『俺たちの箱根駅伝』
池井戸潤×箱根駅伝と来たら、これはもう外れるわけもなく。
選手や指導者、報道する人と、色んな視点を通して箱根駅伝を中心にして起こるドラマが描かれる。
現在の日本小説界において、どストレートの物語を一番求められている作家が、ちゃんとどストレートに感動を撃ち抜きにかかった作品である。
ちなみに私は走りすぎて足首を痛めてしまった経験があって、マラソンをテーマにした作品が辛くて読めない。悲しい。
『世界でいちばん透きとおった物語』
はい、紹介は無理です。
11位
このランキングをじっくり読み込んだ方も、ささっと読み飛ばした方もお疲れ様でした。そろそろクライマックスである。
毎度こうやってランキングを作ったあとはX(正式名称Twitter)の方で10位までを画像でまとめて公開しているのだが、そのたびに11位を入れていないことに何か胸が痛んでしまっている。
自らの拡散力をひけらかすつもりはないが、ここで10位以内に入るか、11以下になるかで人目に触れる機会がかなり変わってしまう。
私としては色んな作品を世の皆様に知ってほしいのだが、あまりにも情報過多になると一つ一つの作品に対する皆さんの興味の強度が減ってしまうんじゃないかという懸念がある。難しいところだ。でも作品は知ってほしい!ずっと相反する己に苦しめられている。
手作業で苦労と時間をかけてランキングを作っているせいで、作品自体にはなんにも関与してないのに、各作品への愛情が勝手に発生しているのである。もしかしたら関係者風の空気が出ているとしたら、そういうことである。めちゃくちゃ有害である。読書界の岡田斗司夫である。そろそろダイエット本でも出すか。もちろんタイトルは『積ん読ダイエット』ね。これは売れる。間違いなく。なにか間違いがあるとしたら、私には積ん読ダイエットする方法がまったく分からないことぐらいだろう。
ということで、惜しくもベスト10位に入らなかった第11位はこちら。
21票を獲得!!
『黄土館の殺人』
ミステリー作家でありながら、正真正銘現役のミステリーマニアである著者が、そのミステリー愛を存分に詰め込んだ"館四重奏シリーズ"の第3弾である。
未読なので詳しくは語れないのだが、作者自身で『前作から読んだ方が楽しめる』とおっしゃっていたので、『紅蓮館の殺人』→『蒼海館の殺人』の順で読むとよろしい。
ちなみに著者の阿津川辰海をXでフォローするとあらゆるミステリーの新刊を瞬く間に読んで感想をポストしてくれるので、面白そうなミステリーを探す上でも非常に助かる存在である。
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はい、ということで私の無駄話ばかりのランキングになってしまったが、遂に皆さんお待ちかねのベスト10である。やたらと長くなってしまって申し訳ない。これでも余計なことを書かないように10%ぐらいにセーブしているつもりだ。確実に私は話が長いタイプのジジイになるだろう。瞑目。
それではベスト10の発表である。いま一番勢いのある作品たちの頂上決戦。いざ参らん。
10位
それでは第10位!!
24票獲得したのは、こちらの作品。
白井智之!!
ド変態!!
『エレファントヘッド』!!
いま一番勢いのある変態こと白井智之の傑作ミステリーである。
最近は本の帯やSNSなどである程度のネタバレは許容されつつある現代において、公式がちゃんと「すべてネタバレ厳禁」とおっしゃっていて、ネタバレ撲滅派の私としてはありがたい限りである。
だって「どんでん返し!」とか思いっきり書かれたら、そんなんどんでん返されないでしょ。「これからめちゃくちゃ笑える話するから」って言うようなもんだと思う。あくまでも私見である。本音としては法律にしたいけど。
「とにかくすげえもんが読みたい。倫理観がいっちゃっててもOK」という方であれば、最高に楽しめるはずである。脳みそグラングランになるまで作品にボッコボコにされよう。
9位
どんどん行こう!
続いては25票を獲得した第9位!!
藤崎翔!!
『お梅は呪いたい』!!
『逆転美人』で大ヒットを飛ばした藤崎翔による、笑いと可愛さに溢れた一品。
戦国時代にたくさんの人を呪ってきた日本人形のお梅。500年ぶりに現代で見つかり人を呪おうとするがどうにも上手くいかず、逆にいろんな人を幸せにしてしまうストーリーである。
元芸人の著者だけあって、読者の笑どころや隙を突く技は一級品。コメディに振り切った内容は、日常的に疲弊している現代人にはぴったりだろう。
世界で一番幸せな気持ちにさせてくれる呪いの人形。そんなお梅にあなたも絶対にハマるはず。
8位
続きまして!28票を獲得したのはこちら!!
覇王!!
凪良ゆう!!!!
『星を編む』!!
2023年本屋大賞受賞作『汝、星のごとく』の続編であり、サイドストーリーからなる作品である。
私はそこまでたくさん凪良ゆうの作品を読んでいるわけではないのだが、そんな中でもどの作品にも共通して「自分自身の認めよう。許そう」というメッセージを感じる。
これは言葉にすると簡単だが、実際に自分をそんな簡単に認められる人は少ないし、他人のことだって「人それぞれだから」と許容はできない。凪良ゆう作品は文章の流麗さのせいで読めてしまうが、現実に知り合いだったらきっつい人もけっこういる。『汝、星のごとく』の略奪愛のあの人とか私はめちゃくちゃ苦手。
でも人の人生というのに答えはやっぱりなくて、その答えのなさに座りの悪い気持ちになってしまうこともあるのだけれど、「世界なんてすっきりしないもんだよ」と教えられるような気持ちになる。凪良ゆう作品を読むとそう思ったりする。
史上最速で本屋大賞複数回受賞を達成した凪良ゆう。彼女の文章は人の感情や価値観を震わせて、膨大な思いや言葉を連鎖的に発生させる力がある。
読書感想文を大人になってから書くなら凪良ゆうがいいなと思ったりする。
7位
はい、全然作品の紹介をせずに自分語りをしまくってしまったが、それもまた良し。自由と好き勝手の違いって何?
それでは30票を獲得した第7位はこちら!!
ハヤカワが生んだ衝撃のデビュー作!!
間宮改衣!!
『ここはすべての夜明けまえ』!!
読んだ多くの方が「出会ってしまった」と感想を漏らす、ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞作。これがデビュー作というんだから衝撃。いや、だからこそか。この自由度は。
約100年前に身体が永遠に老化しなくなる手術を受けた女性。そんな彼女の手記として書かれた作品である。
ひらがなを多用した独特の語り口は完全に計算されたもので、するすると流れ込むように物語を摂取でき、他の作品では味わえない読み心地を提供してくれる。
一応ジャンルとしてはSFに分類されるだろうけど、堅いものは全然なくて、違う世界線から物語ることによって現代の我々を俯瞰させられるというか、別角度から眺めるような感覚が得られる感じである。
著者が何かのインタビューで「自分の中にいる検閲と戦う」という話をしていた。それは今の自分自身を否定することだったり、もっと客観的に売れる方法や作風を考えてしまうことの比喩だった。
コンテンツが溢れかえり、誰もが売れるための方法を考える中、「ただ自分が読みたいものを追求する」という姿勢には、ただただ喝采を送りたい。
その衝動と熱量がいつまでも続くことを願う。
6位
さあこれにてベスト10も折り返し!!第6位の発表である。
32票を獲得したのは2作品。
まずはこちら!!
津村記久子!!
『水車小屋のネネ』!!
2024年本屋大賞にて堂々の第2位を獲得した作品である。
親元を離れて暮らす選択をした18歳と8歳の姉妹が、たどり着いた街で様々な人に出会い、成長していく40年間を描いた物語。
最近の小説にしては珍しく、序盤のほんの一部以外では善人しか出てこない、という点にこの作品の空気感がよく現れていると思う。派手さがあるわけでも、魅力的な事件が起こるわけでも、伏線回収があるわけでもないけれど、確実にここには人生が描かれていて、とても救われる想いになれる。
作中に出てくる「自分はおそらく、これまで出会ったあらゆる人々の良心でできあがっている」 という言葉は、私自身の人生を振り返ってみても深く頷いてしまう至言である。そして私も他人にそんな良心の影響を与えたいと静かに願う次第である。
あとで詳しく書くつもりだけど、2024年本屋大賞で1位と2位がこういう作風に固まったのはやはり理由があると思っている。
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第6位のふたつめは、こちら!!
夏川草介!!
『スピノザの診察室』!!
医師として地域医療に従事し続け、医療の最前線で考え続けている著者だからこそ描けた、人の死と幸せについて深く、そして鮮やかに向かい合った作品。
終末医療に携わる青年医師の日々と、患者たちの物語である。
医局の権力争いや天才外科医の手術などではなく、真摯に丁寧に誠意を持って一人ひとりと向き合う医師の姿を通して、治すことだけが医療ではないことを思い知る。
誰もがいつか迎える死。そのときをどのように過ごすことになるか。名医に出会えるかどうかなんて分からないし、そもそもどんな死の間際になるのかも定かではない。
きっとそんなことよりも、小さな日々を積み重ねて行くその瞬間が私たちが考えたり、意識したりすべきことなのだろう。どうせ生きている時間しか生きられないのだから。
5位
死の話になったらどうしても湿っぽくなってしまうが、せっかく盛り上がってきたランキングである。テンションを上げていこう!
お次は39票を獲得した第5位!!
米澤穂信!!
『冬期限定ボンボンショコラ事件』!!
ファンが待望も待望、〈小市民〉シリーズの最終巻が登場。
最初の『春期限定』が発表されてから20年、前作の『秋』からも15年である。きっと諦めていた方も多かったことだろう。
私はシリーズをすべて完全に未読なので詳しくは語れないのだが、私が読書にハマりだしたころと『春期限定』が評判になりだした頃が被っていたので、名前はよく目にしていた。どうやらライトノベルでいいミステリーが出ているらしいと。
なので私の中で米澤穂信はライトノベル作家という認識だった。
それがどうだ、あれから20年の年月が経ち、直木賞を獲るような大衆作家となった。決してライトノベル作家が大衆作家ではない、という意味ではない。念の為。
とはいえ、かなりライトノベル寄りとは言えない作風で作品を上梓し続け、多くの方に認められるようになった。〈小市民〉シリーズのファンの方たちがどんな気持ちでいたかを想像すると、相当だっただろうなと勝手に思ってしまう。
しかしそこはサービス精神満点の穂信たんである。皆さんの感想をざっと見た感じだと、待ちに待ったファンの期待に応えるように、大きな花火をぶち上げてくれたようである。
こうやってみんなのベスト本でランキングを作っていると、ベスト10にシリーズものが入ってくることってほとんどなかったんだけど、ここまで上位に食い込んでくるのは穂信たんの実力が成せる業である。愛されてるね。
4位
あと4つ!
と言いたいところなのだが、ここへ来てまたしても複数同時ランクイン。
41票を獲得した第4位!!
まずひとつめは…こちら!!
塩田武士!!
『存在のすべてを』!!!
未解決事件の事実を求め、引退間際の新聞記者が一つ一つ迫っていく物語。『罪の声』で大ヒットを飛ばした塩田武士の最高到達点と名高い作品である。
じわじわとか細くとも少しずつ捜査の点が繋がっていく流れが、めちゃくちゃ面白い。一緒に捜査に参加しているかのようにぐいぐいと物語に引きずり込まれるような面白さがある。特に中盤以降の手の止まらなさが評判で、また終盤明らかになる真実の切なさったら…ねえ…。涙腺のウォーミングアップをよろしく頼む。
それにしても、やはり本屋大賞に入ってくる作品は強しである。
本屋大賞の結果がそのまんまランキングに反映されてるぐらいの感覚だ。じゃあ私がこうやって苦労してランキングをこさえている意味って?存在のすべてをかけてる理由って?
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第4位のふたつめは、こちら!!
多崎礼!!!!
『レーエンデ国物語』!!!
入国者続々。
本屋大賞の話ばっかして申し訳ないんだけど、私は2024年の大賞は確実に『レーエンデ』だと決めつけていた。以前書いた記事でも「外れたら坊主にしてもいい」と豪語していたくらい勢いを感じていた。結果外れた。もちろん坊主にもしていない。仕事に支障が出るからだ。まともな社会人である。
私の髪の毛はどうでもいいとして、『レーエンデ』の勢いは相変わらずである。前回の登場したのが「2023年のベスト10冊ランキング」でそのときも4位だった。続刊が出続けているから話題に登り続けている部分もあるだろう。でもやっぱり物語の吸引力による部分が大きいと思う。並み居る強豪たちを押しのけ続けての4位は凄いよ。
ちなみに私は未読。絶対に面白いし私に合う作品だと確信しているが、完結してからのびのびと読みたい。ヘタに面白すぎると、続きを待つことが辛すぎるのだ。これは完全に今村翔吾の『イクサガミ』のことである。待たせすぎだろ。私は15年とか無理だからな!
ちなみに界隈では『レーエンデ』を読み始めることを「入国する」と表現する。読書アカウントのこういう粋な表現大好きよ。ちなみに私が偏愛している『方舟』は「入船」である。出られなくなるから注意である。
3位
おらぁ!!
第3位、行くぞ!!!
得票数は一気に増えて50票!!
滋賀代表!!
と来ればこの方!!
宮島未奈!!!!
『成瀬は天下を取りにいく』!!!
堂々の2024年本屋大賞受賞作。しかも作者はこれがデビュー作っていうね。いきなりどでかいホームランをかっ飛ばしたものである。あっぱれ。
もう方々で散々絶賛されているので、もう私から特別なにか褒める必要はないかと思われる。
でもひとつどうしても書いておきたいことがある。
『成瀬~』の評価についてである。
けっこう低評価というか肩透かしを食らっている人が多いような印象がある。あくまで一部だとは思うのだが。
私自身『成瀬~』は大好きな作品で絶賛している側である。その一方でこの作品は「本屋大賞受賞!」とか「傑作!!」みたいな大看板を背負うべき作品かと問われると、少々疑問がある。大好きなのは間違いないのだが、あくまでも作品単体として出会うのが一番楽しめるのではないか。
というのも『成瀬~』は連作短編集であり、読み味は最高に爽やかだが、重いパンチを食らわせるタイプの作品ではない。この作風が強い謳い文句と非常に食い合わせが悪いのである。
「本屋大賞」という言葉にはもうかなりの重みが加わっている。これは過去から積み上げてきた実績によって生み出された重みだ。強い感情を期待させてしまう。
その一方で『成瀬~』が持っている「爽やかさ」というのは、戦争や現代社会の閉塞感、SNS疲れなどしている我々の心の隙間に染み込んで、少しだけ軽くしてくれる、そんな清涼剤のような作品なのである。この絶妙さこそが『成瀬~』が広く受け入れられた理由だと私は思う。
これはもう言っても仕方ないことだけど、本屋大賞を獲る前に事前情報無しで出会うのが一番楽しめる読み方だと思ったりする。ほんと今更だけど。
でもこれもあくまでも「本屋大賞」という看板に対して、強い感情のイメージを持ってしまう人に限られた話である。多くの本を読まない層にとっては、読みやすくて、しかも気持ちのいい物語なので、確実に読書の間口を広げる結果になることと思う。
ちょっとした苦みを感じさせつつも、青さゆえの葛藤や勢い、何よりも成瀬という最高のキャラがもたらす快活さ。最高のバランスで魅せる名作である。
ちなみに著者の旦那様はずっと『成瀬~』を未読だったらしく、最近になってからやっと読んで「これ…傑作じゃない…?」と仰っていたいたそう。なんかとってもいい温度感で好きなエピソードである。
読書好きの界隈からすれば「成瀬の著者がそんなそばにいんのに贅沢すぎる!」という感じなのだが、実際伴侶が作家となるとそんなもんなのかもしれない。
2位
ラスト2!!
さらに得票数を伸ばして50票獲得!!
準グランプリが何になるか気になってる方になんだか申し訳ないんだけど…
またしても滋賀代表!!
『成瀬は信じた道をいく』!!
うお~~~~!!
これはランキングとしてどうなんだ?!意味あるのか?なんかずっと意味を己に問い続けてる感じがするんだけど気のせいなのか?
いつもみんなのツイート(通称ポスト)を集計するときにいつも悩むのが、シリーズものの数え方。決まったルールはなくて、毎度私の独断と偏見で決めている。
今回成瀬をそれぞれで分けたのは、至極簡単な理由である。私が『天下』を読んでて、『道』のは未読だった。シリーズとして一緒くたにカウントすべきか不明だったので分けた。それだけである。
あとはみんなのツイート具合を見ても、別の作品として投稿してる感じがあったので、その言葉にならないニュアンスを汲み取ったつもりだ。完全にお節介だったらごめん。でも前も書いたけど、成瀬って天下をとりに行ってるでしょ?じゃあ1位になったら終わってしまうので、ここらへんの順位に収めておく方が輝くんじゃないでしょうか、と無理に締めてみる。え、本屋大賞?なにそれ?
1位
遂にお待ちかねの第1位。
得票数はぶっちぎりもぶっちぎり、91票である。凄まじい勢いだ。
でもきっと多くの読書好きであれば結果は見えているはずだ。
では、みんなの2024年上半期の本ベスト10冊ランキングの頂点を紹介しよう。
こいつだっ!!!
青崎有吾!!!!
『地雷グリコ』!!!!
参りましたっっ!!!
完全に勝ちに行ってるとは聞いてたし、設定とかからマジでこれは売れそうな本だなと思ってたけど、本当に勝っちゃったよ!!すんごい売れ方してるでしょ。
今更説明の必要なさそうだけど一応あらすじを簡単に。
グリコやじゃんけん、神経衰弱などみんなが知っているゲームに、ルールをちょい足ししてハイレベルな頭脳戦まで昇華した、マジのマジで読む手が止まらないタイプの作品である。
漫画で言うなら『嘘喰い』のような天才同士の戦いが好きな方であればどハマりすること間違いなし。いま最もエンタメ度が高く、読者を快楽へと誘う作品である。
とは言いつつも私もまだ未読なので、勢いが落ち着いた頃に読みたいと思う。もうすでに積ん読が積ん毒になりそうなレベル私の周囲を圧迫しつつある。というか、こうやってランキング記事を書いてるから読む時間が減って積ん読が増えるのだ。誰かどうにかしてくれ。
ということで、みんなの2024年上半期の本ベスト10冊ランキング第1位は、青崎有吾の『地雷グリコ』でした。改めておめでとうございますっ!!
それでは長大な記事から拘束を解かれて幸せな気分になっているところで、お別れである。最後までお付き合いいただき感謝。また次の機会に。ではでは。
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