どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。
最近読んで面白かった本をまとめた記事です。いらっしゃいませ。
最近の私は読書が苦痛である。
というか正確には苦痛な作品を読み続けている。というか苦痛を念能力で具現化したような本を読んでいる。というか苦痛そのものだ。
まずはこちらを御覧ください。
画像の長さ的に非常に読みにくいと思うのだが、それを優に上回って内容の飛ばし具合よ。これだけの文字情報があるにも関わらず、全然中身が入ってこない。言葉が書いてるのに文意が何一つ理解できない。やばい。これが上下巻750ページに渡って繰り出され続ける。まさに苦痛である。そんな読書を何時間も何日も何週間も繰り返している。全然読み終わる気配がない。
人によってはまったく理解できないだろう。
いやこの本の中身のことではなくて、私の行動に対してである。
限りある人生である。わざわざ自分を苦しめるような本を読み続ける必要がない。
ただでさえ積読は何十冊も溜まっているのに。他に読むべき本がいくらでもあるのだ。というか、読書にこだわる必要さえない。
それなのになぜ私は苦痛と向き合っているのか。お教えしよう。私がムキになっているからである。「なんだこの本!やっぱりクソじゃねーか!!でもここで投げ出したら負けたような感じになるから、意地でも読破しちゃる!!」という思考である。ただの負けず嫌いである。何に対して負けそうなのか一切分からんが。
人生とはこうやって自らに枷を増やし続けるものなのか、それとも枷の存在に気づいて、少しずつ外していくゲームなのか。皆さんはどちらだと思われますか? はい、知ったこっちゃないですね。
ということで、最近面白かった本たちの紹介である。
行ってみよう。
母という呪縛 娘という牢獄
医学部への受験を母親から強制され、9年もの浪人を経て、遂には母を殺すまでに至った娘。二人の関係性はなぜそこまで壊れてしまったのか。娘を追い詰め続けた母親の心理とは。地獄のような事件を追った、魂を削られるノンフィクション。
これはキツかった…。
元々ノンフィクションのキツイやつが苦手というか、明確にダメージを食らっちゃうタイプなんだけど、親子が不幸になる話はどうしても我が身に置き換えてしまって、よりダメージが深くなる。
この作品については印象深い出来事があった。
先日、バスの中でこの本について語ってる母娘がいた。
というか、一方的に娘がテンション上がり気味で「殺人をしたのは悪いけど、そこまで追い詰めたのは誰かって考えると、本当にどっちが悪いかってなるよね!」と喋っていた。
母親の方は困惑気味。話の内容的にキワドいし、バスという公共空間でけっこうな大声で喋っている娘をたしなめるべきか迷ってる風で、でもなんかその娘さんから危うい雰囲気が出てるから、どうやって声をかければいいのか…という不穏な葛藤が見えていた。
人によっては「だからなんだ」と思われるようなエピソードかもしれないが、私の中では『母という呪縛 娘という牢獄』を象徴しているような場面だと感じた。
人間関係って、山道で遭難するときのように、日常のちょっとした判断だったり、選び取った言動の積み重ねが、徐々に歯車を狂わしていき、後戻りできない状態になるまでずっと曖昧模糊としていることが多い。グラデーションだからこそ人は迷う。
人類共通の認識だと思うが、人間関係ってのは本当に難しい。その難しさの本質というのは両立だ。
関係になにかの義務や強制が加わった途端に、難しさが発生する。だから自由な子供たちはすぐに関係性を築くことができる。
親子という義務によってどれだけの苦しみが生まれてきたことか…。そんなことを考えさせられた本である。
嗤う淑女
容赦の無さっぷりが最高。
不眠エンタメモンスターこと中山七里の作品である。
多作なうえにベストセラー連発しまくりなので、中山七里を未読の方からすれば、読む前から胃もたれしそうな作家であるが、安心してほしい。ちゃんと胃もたれする作品ばかりである。
個人的に中山七里の良さは、暴飲暴食したような感覚になれるところである。体に悪いのはわかってるけど、確実に脳内が快楽物質で満たされるような感じである。
社会派な側面も盛り込んでるんだけど、それも結局は読者の快楽を満たすために差し込んでるだけで、彼の基本方針は"どエンタメ"だと思っている。
で、そんな中山七里作品の中でも特にエグみ要素が強めなのが、こちらの『嗤う淑女』である。なんだ「嗤う」って。怪しすぎる。そしてなんて読みたくなるタイトル。
悪い女が大活躍をする話だと期待してたら、悪さのレベルが中山七里基準すぎて、最高に面白かった。なまくらな鉈で倫理観という肉を何度もたたっ斬ろうとしてくるような暴力性である。
何も得るものがないけど、ひたすら面白い。身体に悪いけど摂取したくなる。
でも心の栄養になるのって、こういう作品なのかも。違うか。
夏物語
凄い凄いとは聞いてたし、海外でも大絶賛されてたのも知ってたけど、それだけハードルが上がった状態でもちゃんと凄かった。
私が読んだ川上未映子作品はこれで3作目だけど、期待外れだったものがひとつもない。それだけ相性がいいのか、はたまた川上未映子が化け物なだけなのか。
パートナーなしの妊娠、出産を目指す主人公と、あらゆる立場の人達による会話のみで構成された作品。
ジェンダーの問題もあり、反出生主義の絡ませ、親子関係、命をつなぐことの理不尽さ、残酷さ、人間という生き物の意味などなど、かなり重いテーマを縦横無尽に取り扱ってる。なのに凄いのが、これをめちゃくちゃ笑ったりしながら読めてしまうこと。著者特有の関西仕込がなせるわざなのか。かなり分厚いけど、最初っから最後までしっかり楽しめるから安心してほしい。
さっきの『嗤う淑女』が何の栄養にもならない暴食だとしたら、こちらは美味しく食べられる栄養食という感じ。
私も子供が3人いる身なので、色んな思いをぐるぐるとさせられてしまったけど、とても心が満たされるような感覚があった。川上未映子は読者にちゃんとプレゼントを用意しているのが本当に偉いと思う。
全然知らずに読んでたけど、これって『乳と卵』の続編だったのか。未読でもまったく関係なしに楽しめた。
収容所から来た遺書
うん、泣く。
映画化の影響で書店に平積みされていたので手に取った。いわゆる信用買いである。結果、大成功でした。これは震えるわ。
ソ連軍に捉えられ、シベリアの収容所で極限の生活を強いられながらも、人間としての尊厳を失わず、人々の希望となり続けた男の生きざまを描いた作品。
いやー、凄かった。こんなんと出会っちゃったら、命とか生き方について考えざるを得んわ。頭が下がります、本当に。
戦争というのは最悪に残酷である。
一方、人間が持っている本当に素晴らしい側面を見出す機会も多くある。
この作品で語られる山本旗男という無名だけれども偉大な男は、我々がどんな生き方をすべきかを己の命と生き様でもって教えてくれた。
重い溜息と共に、大事なものを手渡されるような読後感を得られる名作である。
ぜひとも語り継がれてほしい。
成瀬は天下を取りにいく
強っ。
以上。来月もお楽しみに。