どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。
毎月恒例の月イチまとめ記事である。
先日の話だが、フォローしている作家さんがぼやいていた。
曰く、
「この業界はホームランしか許されない。凡打が2つ続いてしまったら、一気にキャリアが終わってしまう」
とのことだった。
その方はかなりの売れっ子作家さんで、本屋大賞にもノミネートされたこともあり、名実ともにモノホンである。そんな方でも戦々恐々とせざるを得ないのが、小説というジャンルらしい。
いち読者として言わせてもらうならば、作家のホームランはそりゃ嬉しい。
毎回ホームランをカマしてくれるのであれば、財布の紐は常に緩みっぱなしである。毎日財政難である。
だがその一方で、売れ線ばかりを狙われるのはとっても悲しいと感じる。
誰もが似たような面白さを追求してしまうようになれば、確実に小説文化は衰退するだろう。多様性の土壌がなければ、表現は収束していく。当たり前の話である。
面白い小説を読みたいとは思う。
かと言って、面白い小説だけ読んでいて、果たして本当に幸せだろうか? 面白いと感じ続けられるだろうか。
私はそうは思わない。
これまで私が読んできた小説の中にはそれこそ、二度とページを捲りたくないようなハズレ本もあった。読了後、文字通り叩きつけた作品も数え切れない。
だがその経験もまた、私の小説体験の一部であり、そんな経験があるからこそ、当たり本の価値が高まるし、知らない間に新たな性感帯(面白いと思うポイント)が開発されている場合だってあるだろう。「あんなやつ嫌いなはずなのに…」というパターンだ。
だからぜひとも作家さんには果敢に挑戦してもらいたいと思う。三浦しをんぐらい好き勝手に書いてもらいたいと思う。あの方は小説界のあいみょんである。
それと同時に、読者の皆々様には小説に対して、広すぎるぐらいの度量を発揮していただきたい。新しい小説の土壌を作り出すのは作家かもしれないが、育てるのは我々読者の役割である。
我々が偏食であれば、出荷農家だって対応せざるを得ないだろう。お分かりか。
ということで、2021年9月に見つけた面白い本たちの紹介である。
参考にしていただきたい。
オクトーバー・リスト
この人70過ぎてたよね? なんでこんなやべー発想できんの? 物語が結末から始まるってどういうことよ。
もうこの御方は読者になんかカマさないと生きていけないんでしょう。葬式の席でも死体を使ってボケないといられない芸人みたいなものでしょう。ほんと、一種の異常者ですよ。
とはいえさすがのディーヴァーもこれは難しすぎたみたいで「過去一で苦労した」と語っていた。でしょうね。読んでる方も頭おかしくなりそうだったし。評判通りの衝撃作で大満足です。
あと、解説の阿津川辰海の仕事がめちゃくちゃ素晴らしい。本編も唯一無二だけど、解説まで唯一無二って。なんの権限もないけど、原稿料を倍あげたくなった。いやー、この人も異常者だわ。
むかしのはなし
「現代で昔話が作られるとしたら」をテーマに書かれた短編集。敬愛する作家さんが激賞してたから読んだけど…これは凄いな。
一見すると単純な話。でも読み手の心をざわつかせる具合が凄い。このシンプルさでこんだけ揺さぶるって、どんだけ筆巧者なのよ。
人の心の柔らかかったり、敏感だったり、黒歴史を思い起こさせるような部位を指圧する文章。常々思ってたけど、やっぱり三浦しをんは性格が悪い。そして私は性格の悪い作家の性格の悪い作品が大好きだ。
トラウマになるタイプの作品ではないけど、読み終えて「なんじゃこりゃ…」って呆然となるはず。
西の魔女が死んだ
不登校の少女が祖母の家で過ごす日々を、優しく描いた中編。
魔女の言葉には、不思議な力が込められており、主人公だけでなく読者までが魔法にかかること請け合い。多感な時期に出会っていたら、どれだけ救いになっていただろうと想像するだけでも楽しめる。
Twitterの#名刺代わりの小説10選でも常連になっているけれど、それも納得の作品である。
魔女のあの名言が出てきたときは、さりげなかったけど、めちゃくちゃ衝撃を受けたよね。あの一文に出会えただけでも、読んだ価値があったと思うぐらい。
雀蜂
めちゃくちゃ低評価だったので、逆に楽しみにして読んだんだけど、なにこれ。ストレートに面白かった。
さては低評価にした皆さん、素直さんですな。あの緊迫したストーリー展開に対して、あの結末は無えよってことなんでしょう。まあ分かるけどね。
でも裏表紙にすでにけっこう危険な文言が書いてあったし。『雀蜂』に関しては「さてさて、どんな“とんでも”をカマしてくれるんですかねぇ」って気持ち悪い笑顔をしながら読むのが正しいスタンスだと私は思っている。好き。
ポーカー・レッスン
今月はディーヴァーをもういっちょ。
最近の私はミステリー慣れしすぎて、どんな展開が来ても「あぁそのパターンね」と完全に不感症になっている。なのであえてミステリーはほとんど読まないようにしていたし、こちらも読むときは「まあ30点ぐらい楽しめればいいか…」ぐらいの、超低期待で臨んだ。
その結果、現在の私は大変満足している。やはりディーヴァーは期待を裏切らない。いや、絶対に裏切ってくれると言うべきか。
収録されている17篇の短編のほとんどが秀作。ベストアルバムみたいな出来である。個人的には泥棒の話がツボすぎて悶まくった。あんなのアリかよ。アメリカの本当のキングはディーヴァーで決定です。
それにしても、ひっさびさにいいツイストを食らったなぁ…。
以上。来月もお楽しみに。