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【月イチまとめ】2021年8月に見つけた面白い本

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どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。

毎月恒例の月イチまとめ記事である。

 

突然だが、皆さんは何もしていない時間をどれくらい耐えられるだろうか。

 

例えば、通勤時間。

例えば、仕事での出先で待たされているとき。

例えば、飲み会がだらけたときのあの瞬間。

 

そんなとき、ついついスマホに手を伸ばしてしまうだろうか。それとも本を読みたくなるだろうか。

 

こんな本の話ばかりしているブログを見に来ているぐらいだから、きっと皆さんもそんな長い時間には耐えられず、本を読みたくなってしまうんじゃないだろうか。

 

なぜか一般世間では、人前で本を読むのは許されないのに、スマホを触るのはOKという空気感がある。

もちろんそんな下らない空気を無視できる強者もいるだろうが、そうでない方も多いだろう。それなりに自分の衝動を抑えながら、みんながそれなりの生ぬるい関係を構築する。生ぬるさと利害で織りなす人間模様、それが社会の正体である。

 

私はかなりせっかちで、他人のペースに合わせるのが苦手な人間である。なのでほぼ常に本を読みたい衝動と戦っていると言っても過言ではない。良家のお嬢様ぐらい控えめ的表現である。

とにかくつまらない時間が厳しい。覚醒剤の一番の敵は「暇」だと聞いたことがあるけれど、読書中毒の敵も「暇」である。仕事でつまらない上司のつまらない話を聞いているときなんかは、真面目に聞いてる顔でメモを取るふりをしながら、最近読んだ本の何が良かったかを言語化する作業をよくしている。せめてもの読書の代替行為である。

 

そんな私の人間性は、やっとこさ周囲の人間たちにだいぶ認知されており、どこで本を読んでいても許される空気が出来てきている。そもそも話しかけても塩対応なのが周知されてきていて、放っておいてくれるようになった。見放されたとも言えるかもしれないし、嫌われ者になったとも言えるだろう。表現は自由である。

 

このブログでは散々書いているが、人生なんていつ終わるか分からん以上、私たちはもう少し時間を使うものを選別すべきである。

だからといって甲州街道を全裸で爆走したい欲求に身を任せろといった刹那的で短絡的な破壊衝動を奨励しているわけではなく、死ぬときにせめていくらか後悔の少ない日々を過ごしてはいかがか、という話である。冷静に考えればそんなに難しい話ではないと思う。

 

ということで、私はこれからも適度に嫌なことから逃げつつ、好きなことを甘受しようと思う次第なのである。

 

 

では、2021年8月に見つけた面白い本たちの紹介である。

参考にしていただきたい。 

 

 

最後は会ってさよならをしよう

 

Twitterが生み出した新たな文学の形。

 

140字ぴったりで完成された物語の数々は、お手軽なのに読み応え十分。字数が少ないからこそ味わえる余韻と衝撃。やっぱりTwitterは行間を読むのに最適なツールだわ(皮肉込み)。

上質すぎてページをめくる手が止まらなくなるんだけど、あまりにもテンポよく進んじゃうから、逆にもったいなくてブレーキをかけてしまったぐらい。こんな素晴らしい才能をがっついちゃ申し訳ない気持ちになってしまった。

 

 

他人の悩みはひとごと、自分の悩みはおおごと。

 

色々と反省すべきことはあったと思うけれど、やっぱりこの方の文章は素晴らしい。

雑多に寄せられた、こんがらがった人生相談の数々に、パキパキと返答を繰り出す様は圧巻で、問題が整理されていく様子は快感さえ抱くほど。

 

それと同時に、解決できず答えられないけれど、でもどうしても放っておくことができないぐらい深刻な悩みだったとき、「力不足です」と正直に書いているところも好感が持てる。良くも悪くも正直で、人を大事に思う人なのだろう。

 

決して幡野氏の書くことがすべて正しいというわけではなく、こういった視点を持ったり、問題を分解する手法を参考にすべきだろうな、と思う。

  

 

月まで三キロ

 

名作。

 

これはね、すごいね。#名刺代わりの小説10選 を集計していたときに、よく見かけていたので気になって手に取った。で、読んですぐ分かりましたよ、皆さんが絶賛する意味が。アッパレじゃん。

星や地球の知識と、人のドラマを見事に融合させた独特な読後感が心地よい。短編集なんだけど、ひとつの話を読み終えるたびに、良い小説を読んだとき特有の満足感に浸れる。この品質は凄いぞ。

表題作もなかなかのもんだったけど、個人的最優秀賞は『エイリアンの食堂』かな。森博嗣の『喜嶋先生の静かな世界』が好きな人は分かってくれる気がする。空気感がね、いいよね。

 

典型的な年齢の重ね方をしてしまったせいで、大抵の感動作では泣いてしまうタチなので、この名作がどれだけ泣けるのか正確に評価できないのが悔しい。とりあえず泣いた。めっちゃ良い涙だった。

 

人の心に寄り添うような、優しく、癒やしを与える作品である。間違いなく保証しよう。

 

 

緑の庭で寝ころんで

 

宮下奈都、大好き。これに尽きる。

 

本屋大賞で一番地味な作家、宮下奈都が綴る、些細な日常と子どもたちの成長のエッセイ集である。

宮下奈都の豊かな感性と丁寧な文章と合わさると、些細なことでも強く深く胸に染みるんだから凄い。一番上の息子さんが独り立ちするときのエピソードとか…もうね…。まさか鮭の切り身で泣かされるとは思わなんだ。

 

宮下奈都のような卓越した感性を持った目を通すと、こんなにも世界は輝いていて、素敵で満ちていることが分かる。これが作家の力か…。分かってたけど、敵わんな。

結局、日常から「素敵」をすくい上げるには、素敵を見つける目が何よりも重要なわけである。幸せの解像度を上げる視力は、己次第ということか。

 

 

以上。来月もお楽しみに。