どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。
毎月恒例の月イチまとめ記事である。
今月はなかなか豊作だった。
日常のほとんどの時間を読書と選書に充てている私だが、「豊作」だと感じる場合には条件がある。
それは「初モノ」が含まれていることだ。
分かりやすい例だと初の作家さん。新しいジャンルでもいいだろう。
私の中で「少し遠出」をしたような選書が当たりだった場合に、豊作だと感じるのだ。これが好きな作家さんの場合だと、面白くて満足していても、あくまでも確認作業になってしまい「今回も問題なし!」となってしまう。不思議なものだ。欲深いだけかもしれない。好きな作家から自分好みの作品が供給されることに慣れきっているのだろう。この不届き者め! もっと感謝しろ! 面白い本と出会えることが当たり前だと思うなよ!!
考えてみれば、私は面白い本と出会えるとめちゃくちゃ嬉しい。それが連続しようもんなら狂喜乱舞する。いるのか知らんが読書の神に感謝する。作者へは感謝しない。称賛はしている。そしてなによりも、そんな素晴らしい選書センスを持った自分に、惜しみない感謝と称賛を浴びせている。我ながら幸せな輩である。
…と書いたところでふと思ったのだが、当たりの本に出会うことにこんなに喜んでいるのって、ちょっとおかしいのではないだろうか。
というのも、私は「面白かった」という感情よりも、「面白い本に出会えた幸運」を喜んでいるのである。本の中身よりも本自体との出会いの方が、喜びに大きく影響しているのだ。
これはつまり、今までの長い読書生活の中で、数多くのハズレ本との出会いがあり、艱難辛苦を味わい続けた結果、誰よりも私が本というものを信用していないからなのかもしれない。信用していないからこそ、ハードルが下がりまくっているのである。これはなかなか新鮮な発見である。
しかしそうなると、果たして私は本当に読書が好きなのか分からなくなってくる。好きが故の歪みとでも言おうか。麻薬の質に一喜一憂する中毒患者みたいなものにも思えるし…。
という爽やかな話題はここまでにして、2021年10月に見つけた面白い本たちの紹介に移ろう。
参考にしていただきたい。
あの日、君は何をした
評判通りの衝撃作で大満足です。
家族小説の名手が描く、絶妙にイヤなミステリー。心理描写が上手い人にこういうの書かせるの反則でしょ。読んでてきっついわ。でもそれがまたクセになるから困る。精神的なMにしないで。
それにしても、よくもまあここまで読者に好まれるキャラを出さずにいられるもんだわ。普段だったら、ある程度自分と重ねてしまったり、出てくるのが楽しみなキャラがいるもんだけど、ほとんどいない。嫌いになれるやつばっか。読んでて足がかりになる場所があまりにもなくて、けっこう冷めた視点で読んでた気がする。
悪口ばかり書いているように思われるかもしれないが、それでもかなりの良作であることは私が保証しよう。
本性
正体不明の“サトウミサキ”なる女が現れるところでは、常に奇妙な出来事が…。
不気味な空気感を漂わせつつ、煮え切らない展開が続くのに、なぜかグイグイと読み勧めてしまう。「どうなんのこれ?」と読者を引き込み続ける手腕はさすが。
他の伊岡瞬作品と比べると、少し毛色が違くて、彼の作品によくある最悪描写や派手さで持っていくタイプではない。それでも面白いんだからなぁ。伊岡瞬自身でも挑戦した自覚があるのか「他の作家が書いてるのを読んでみたかった」とコメントしていた。
ナイルパーチの女子会
性悪。
可愛らしく、爽やかなタイトルと装丁に騙されることなかれ。
こんな性格の悪い作品、ひっさびさだわ。というか、こういうジャンルで言ったら過去一で性悪だったな。
女性のズルさとか汚さみたいなエグい部分を、紙面にテンポよく並べる手腕が凄まじくて、終始圧倒されていた。これを読むまで分からなかったけど、私は無意識の内に女性に幻想を勝手に抱いていたみたいで、想像を遥かに超えてダメージを受けてしまった。
いやー、きつかったけどめちゃくちゃ面白かった。超濃厚読書体験ですわ。これは年間ベストに入る予感。
素敵な日本人
これぞ東野圭吾といった粒ぞろいな短編集。
ユーモアが散りばめられていて、力の抜けた読み味なのに、展開はピリッとしてて気が抜けない。この辺りのバランス感覚はさすがの一言。ずっと面白くて、次々と読み進めてしまう。これは日本ミステリー界の頂点に立ち続ける怪物の仕事ですわ。
これは持論なんだけど、ミステリーの場合短編の方が作者の劣化具合が分かりやすいと思う。アイデアのきらめきがモロに見えるから。
まだこんな面白い短編を連発できる東野圭吾はまだまだ大丈夫そうである。いちファンとして安心した次第。
以上。来月もお楽しみに。