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2020年に読んだ年間ベスト10を発表する

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どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。

 

私はブログやツイッターを通じて、面白かった本を紹介する活動を行なっているが、その際にいつも気をつけていることがひとつある。

 

それは…

 

順位を付けないこと!!

 

というのも、面白さというものには、明確な尺度がない。ゆえに私が「これは1位!」と断言したとしても、違う人が読んで同じように「これは確かに1位だ!」となる可能性はかなり低い。すべてはその人それぞれの感覚次第である。

なのでオススメするときは、他の作品と比べてどうか、というよりも、読んだ私の感動や見解などを綴って、皆さんの興味を引けるように努力している。

 

ただその一方で、ランキングに需要があることも理解している

人は「結局どれが一番なのよ?」と聞きたがる生き物である。分かりやすい答えを求めている。

ということで、その少なくない需要に1年に一回だけ答えるのが今回の記事の趣旨である。

 

2020年に読んできた本の中で、特に面白かった10冊をランキング形式で紹介していこう。

 

「分かる!超好き!」という本もあれば、まったく興味のない本や、まったく評価できない本もあるかもしれない。一緒にお喋りするように楽しんでもらえたら幸いである。

 

人生のすべてをかけても読みきれない本の海。どの本を選ぶか、どの分野を開拓するか。そこに読書家の人生ができていく。この記事はつまるところ、私の生きた証なのである。もっと有り体に表現するならば、「性癖にどハマリしたランキング」である。

 

では行ってみよう。

 

 

10位 『女と男 なぜわかりあえないのか』

 

雑学系としては屈指の面白さ。エグい研究結果を面白おかしく、さらに不謹慎にまとめさせたら、橘玲御大には誰も勝てないでしょ。

これを読めば、どれだけ女と男が違う生き物かよく分かるだろうし、ジェンダーバイアスがより強まることでしょう。ほんとロクな本じゃない。でもめっちゃ面白い。

ここ最近では男女(本文では公平に扱うために“女男”と記したいと書かれていた)を別として考えること自体がナンセンスだと広く認知され始めている。それが事実かどうかは無学な私には判断できないのだが、男女の習性の違いは日々感じるところである。

性差で人が差別されることは当然推奨されるべきではないが、最適化した方が多くの人が気軽に生きていけるのではと思っている。なので、性差があることは素直に認めて、その違いをみんなが認識したり、違いがあっても気にしないのが一番ではないかなと、今のところは考えている。とりあえずジェンダー問題は入り組みすぎていて、私のようなボンクラには入り込む余地がないから、どうしたって単純化して捉えるしかないのである。降参。

 

 

9位 『風と共にゆとりぬ』

 

THE 駄菓子エッセイ。

読んで得るものなど何もない。そこにあるのは、ひたすらに楽しい時間のみ。でもそれが読書の本質では?

私としては実はこれが初の朝井リョウ作品。これを読んで朝井リョウのこと狂おしく好きになって、そのまま彼の著作を読むようになったんだけど、『風と共にゆとりぬ』の衝撃が強すぎて、他の作品を読んでても脳みそのどこかが、朝井リョウの存在を意識してしまって、素直に楽しめなくなっている。

小説家の著作をエッセイから読み始めると、こんな弊害があるなんて知らなかったよ…。(このエッセイが特別バカすぎるだけの可能性大)

 

 

8位 『潔白』 

 

あんまり知られてないけど、絶対に面白い法廷ミステリーの秀作。こういう思わぬ出会いがあるから、本の発掘は止められないのよ。

父親の無実を晴らすために奮闘する娘と、面子と権威を守るために腐心する官僚組織の熱すぎる戦い。

真実を追い求める中での葛藤や苦しみ、国という組織に個人で対抗する無力感。濃密な心理描写と、ハイレベルな心理戦、そして練られたプロットで、盛大に盛り上げてくれる快作である。

最近法廷ものに弱いんだけど、最高峰を知らないから楽しめてるとか? もしかしたら『カラマーゾフ』を未踏の私は幸せ者なのかもしれない。

 

 

7位 『ことばのしっぽ』

 

天才の発想に触れるのが好きだ。

そもそも本をはじめ、創作物に触れたい欲求の根底には「自分の発想にないものを知りたい」からである。今までの自分では持ち得ない発想や視点に触れたとき、世界がクリアに見えるような、新たな世界が開けるような快感があって堪らない気持ちになる。

そんな天才の発想に効率よく触れられるのが、こちらの作品である。

読売新聞に25年も連載を続けている超人気コーナー「こどもの詩」。一般から募った「こどもが作った言葉」を取り上げている。

そんな長い歴史を持つ「こどもの詩」の中から作品を厳選し、ベスト版として編んだのがこちらの『ことばのしっぽ』である。

刺激的すぎる言葉たちは、しっぽというよりも、むしろ本質。さりげなくも大きな感動を呼ぶことだろう。

 

 

6位 『やせれば美人』

 

2020年いちばんの発掘本。オンラインで私が不定期に開催している読書会「推し本会」にて教えてもらった、唯一無二の脱力ダイエットエッセイ。

まず知ってもらいたいのは、このダイエットエッセイにおいて、ダイエットはほとんど出てこないということである。

では何が書かれているか。

著者である高橋秀実氏の奥様は、150cm未満と非常に小柄なのだが、体重は80kg超え。不摂生のあまり心臓に負荷がかかって救急車で搬送されたこともある。

そんな奥様を心配し、なんとかダイエットさせたい高橋氏。あらゆるダイエット法を調べてくる。

対して何が何でもダイエットがしたくない奥様は、ありとあらゆる発想を駆使して、ダイエットをしない言い訳をこしらえる。

そんな二人の不毛なやり取りをまとめたのがこちらの作品である。

 

死んでしまうからダイエットをさせたい夫。死んでもダイエットはしたくない妻。

どちらが勝つかは、読んでからのお楽しみ。

 

 

5位 『はじめからその話をすればよかった』

 

世界で一番”素敵”を見つけるのが上手い作家。それが宮下奈都である。

彼女の作品世界は色んな素敵で満ちており、派手さはないものの、深く静かな感動と共感を呼び、根強い人気を誇っている。私が以前書いたツイッターでの人気投票を集計した記事などでも、多くの作品がランクインしており、「誰かの特別になる作風」というのが、宮下奈都の大きな特徴だろう。素晴らしい仕事だと思う。

で、本書はそんな宮下奈都が長らく書き溜めていた、色んな媒体で掲載されたエッセイをまとめたものになる。媒体が統一されていないので、テーマも非常に多岐にわたっているのだが、それでも一貫して感じられるものがある。そう、”素敵”である。

このエッセイを読んで、宮下奈都がなぜあんなにも美しく、人の胸を打つ作品が書けるのかよく分かった。なによりも宮下奈都自身が素敵な方だからだ。

彼女は、世界の“素敵”を見つける特別な目を、そしてそれを文章に実体化させる魔法のような手を持っている。

 

 

4位 『玄関の覗き穴から差し込んだ光のように生まれたはずだ』

 

言葉の宝石箱。

 

筆舌に尽くしがたいとはまさにこのこと。何この贅沢な本。短歌の魅力伝えすぎ。こんな作品、宝物にする以外ないでしょ。一生よろしくお願いします。あなたは本にプロポーズしたことがあるか。私は今した。返事はまだもらってない。

 

現代短歌をを支える二人の天才、木下龍也と岡野大嗣。この二人がタッグを組み、誰もが経験したであろう“あのときの夏”を鮮やかに切り取った至高の短歌集である。

私は読みながら、もうね…素晴らしさにボッコボコにされてしまった。衝撃だったよね、美しさって殴ってくるんだって。しかもこんなに心地良いんだって。読みながら何度突っ伏したか分からん。美しさに殴られたい諸君、超おすすめである。

 

こうやって私がいくら駄文を積み重ねたところで、この作品の良さの億分の1も伝えられないので、3首だけ紹介させていただく。

 

 

『てのひらにてんとう虫を踊らせてきみが八重歯の見せ場をつくる』

 

『瓶ラムネ割って密かに手に入れた夏のすべてをつかさどる玉』

 

『体育館の窓が切り取る青空は外で見るより夏だったこと』

 

 

天才の仕事を目撃せよ。

 

 

3位 『欺す衆生』

 

 

さあさあ、ベスト3にランクインしたのは、超極悪な作品。

えげつない内容で、えげつない面白さ。装丁の禍々しさに惹かれて手にとったんだけど、期待通りに禍々しかった。やべえよ、これ。

月村了衛の作品からは「読者を悶絶させたる!」っていう純粋で邪な(よこしまな)奉仕精神を感じる。

 

平凡な父親でしかなかった男が、魑魅魍魎に絡め取られながら、自らも怪物へと身を落としていく様がこれでもかと描かれていく。

どっかの映画のコピーで「全員悪者」っていうのがあったけど、こちらの『欺す衆生』の場合は「全員最悪」って感じ。でも出てくる奴らが最悪であればあるほど、読者はのめり込んでいくし、ページを捲る手を止められなくなるよね。

 

邪悪で禁断の味わいに満ちた、凶悪な名作である。心せよ。

 

 

2位 『銀河英雄伝説』

 

間違いなく2020年最高の出会い。

実を言うと、中学生のときに読書家の兄貴から勧められたことがあったのだが、人から勧められると途端に興味がなくなる性格の持ち主だったので、「絶対読まない!」と決断してかれこれ数十年。

友人がドハマリしている姿を見て、ほんの軽い気持ちで手に取ってみたら…もうね…

 

 

弩っ

 

 

そう、弩級に面白かった。

今のところ5巻まで読んでいるので、物語的にはまだまだなのだが、それでもランキングでは堂々の第2位。

詠み始めるまでは「全10巻もあんのかよ~」とか思ってたけど、今はもう10冊もあることに感謝。っていうか、もっと欲しい。100でもOK。田中芳樹頑張れ。

とにかく面白い。ずっと面白い。読み進めれば進めるほど、巻を重ねるほど、尻上がりに面白くなっていく。もうこれ以上私の尻は上がらんよ。新しい慣用句できそう。一回転するぐらい面白い。のたうち回りたくなるぐらい面白い。

 

なんか勢いに任せて褒め称えまくったけど、この熱が伝わるだろうか。未読の方に少しでも魅力が伝わってくれればと切実に思う。

 

いやー、それにしても、小説って一体どこまで面白くなれるんでしょうか?

 

これは予言なんだけど、2021年のベストは『銀英伝』になると思います。

 

 

 

1位 『罪の轍』

 

ラストを飾るのは、こちらの『罪の轍』である。正直なところ、ここまでのランキングはほとんど差はないのだが、1位に関してはぶっちぎりである。冒頭で「あんまり順位は付けたくない」と語っておいたが、これだけは譲れない。ツボにハマりすぎて、読んでるときのニヤけっぷりったらね。完全に通報案件でしたわ。

 

さて、人間書かせたら最強作家、奥田英朗である。

彼の著作にはこれまで何度もヤラれてきて、そのたびに脳汁ダラダラたらしながら堪能させてもらってきた。そんな彼の著作の中でも、トップレベルに面白い作品、それがこちらの『罪の轍』である。

このブログでは何度も書いているが、奥田英朗は創作において「プロットよりも、面白い人物を書ければ、物語は勝手に面白くなる」という方法論を用いている。

そういう意味では『罪の轍』での登場人物たちは凄い。一言で表現するなら、

濃っ

血圧が上がりそうなぐらいに濃い。結構なページ数があるんだけど、だからこそ描ける濃厚なドラマが繰り広げられていて、ぐいぐいのめり込んでしまう。本の中にずぶずぶ没頭してしまう。最高である。そして夢中になったあと、ラストで一気に訪れるカタルシスたるや…。

 

読んだのが年のはじめ頃だったんだけど、読み終えてすぐに確信したよね、「これ、絶対に年間ベストになるな」って。それぐらい分かりやすく傑作。本屋大賞にランクインしなかったのは、なぜなんだぜ?

 

面白い作品を読み終えたときってのは、最高の物語体験に興奮するのもあるんだけど、日々ハズレ本とか凡本とかに触れ合ってあって無駄な時間を消耗されてる私からすると、なによりも大きな感謝がやってくる。「こんな最高の物語を生み出してくれてありがとうございますっ!」って。『罪の轍』はまさにそんな作品。ありがたや。もう供えておくわ、そこらへんの墓地とかに。

 

 

ということで、2020年のベストは奥田英朗の『罪の轍』でした。褒めすぎて、未読の方のハードルが上がりすぎてないか心配になってきた…。

 

 

以上。2021年も新しい作品との出会いを期待している。