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読書中毒ブロガーの2020年上半期ベスト10冊

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どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。

今回は読書ブロガーとしての活動の定期報告を兼ねて、私が2020年の上半期に読んだ本のベスト10を発表する。

最近の私といえば、ブロガーとしての本懐なんぞ忘却の彼方。ブログも書かずに、ZOOMで全国の本好きとおしゃべりしたり、ツイッターにうつつの抜かしたり、だらだら本を読んだりと、大忙しの毎日である。誰か時間くれ。本当に必要としてる人にあげるから。

 

ということで、あまりにもブログをサボりすぎているので、反省の意味も込めて、少しでも読者様に有益な情報を提供したい。と言っても、グーグルに嫌われたせいで、こんなブログほとんど誰も読んでないんだけどな!

やけくそ気味な私だが、オススメ本はちゃんとしているので安心してもらいたい。 私の貴重な半年間を捧げて見つけた良書たちである。

 

では行ってみよう。

 

 

「社会を変える」を仕事にする

ITベンチャー経営者。それが著者の学生時代の肩書きだった。新興ITベンチャーが次々に株式公開をし、青年社長が数十億円の富を手に入れていた時代。しかし、著者の疑問はどんどん大きくなっていく。「自分は本当は何をしたかったんだろう」。そして、たどりついた結論は「日本の役に立ちたい!」だった。

NPOを立ち上げ「病児保育サービス」を始動。挫折を経験しながらも、事業を全国に拡大していった汗と涙と笑いの軌跡。

 

『夢をかなえるゾウ』の水野敬也氏も「年間ベスト」と絶賛の一冊。

 

私の同年代で本当に尊敬できる御方、駒崎弘樹氏。以前から知ってたし、素晴らしい人だとは思ってだけど、自分に子供ができて育児のことが分かってきたら、余計に尊さが増したわ。 

 

この本は、稼げる(自立できる)NPO法人を立ち上げた著者の、それまでの笑いと涙の奮闘記なんだけど、これがまた人間味に溢れていて面白い。

よくあるような立身出世の物語じゃなくて、悩みもすればエロDVDを借りるような“普通の人”が戦ってるから、共感できるし思わず応援したくなってしまう。

 

山あり谷ありの連続だけど、最後には一応のゴールを迎えた形で終わっている。

でも駒崎さんの戦いは今も続いていて、いつでも真剣に、必死で子供とその親を守るために走り回っている。

 

もし興味を持たれた方はこちらのページへ

親子の課題を解決する社会起業家│駒崎弘樹公式サイト

 

 

殺し屋、やってます 

コンサルティング会社を営む男、富澤允。彼には、650万円の料金で人殺しを請け負う「殺し屋」という裏の顔があった。ビジネスライクに「殺し」を請け負い、危なげなく仕事をこなす富澤だが、標的の奇妙な行動がなぜか気になり、仕事の度にその謎を推理してしまう―。殺し屋が解く日常の謎シリーズ、開幕!! 

 

一人につき650万で殺人を請け負う殺し屋。冷酷非情できっちり仕事をこなす彼だが、ターゲットの奇妙な行動に、ついつい推理を働かせてしまう…。

 

殺し屋が探偵役になった連作短編集なのだが、設定を活かして尻上がり的に面白くなってくる。これがまた上手い。やっぱり石持浅海はすげえ。

派手などんでん返しがあるわけではないけれど、小気味よいテンポで鮮やかに読者を翻弄してくる。そんなミステリー作家の技を存分に味わえる一品である。

 

最近はミステリーに裏切られてばっかりだったので、こういう作品に出会えると嬉しい。

 

 

自分では気づかない、ココロの盲点

脳が私をそうさせる。「認知バイアス」の不思議な世界を体感。たとえば買い物で、得だと思って選んだものが、よく考えればそうでなかったことはありませんか。こうした判断ミスをもたらす思考のクセはたくさんあり、「認知バイアス」と呼ばれます。古典例から最新例までクイズ形式で実感しながらあなた自身の持つ認知バイアスが分かります。 

 

 

とにかく情報量がヤバい本。脳みそのバグ一覧みたいな感じ。

こういう脳みそ関連の科学的に信頼できる面白い本は、池谷裕二が独占してる状態。ちゃんと調べて吟味してるせいで、刊行ペースが遅いのが難点だけど、まあ質を担保する以上仕方ない。バカみたいに薄っぺらい著作を連発してる作家は見習え。

 

これを読んだなら、すぐさま誰かにドヤ顔で受け売りを話してしまうことだろう。大丈夫だ、それが正しい使い方である。

ちなみに私は、会社で同僚に使いまくったし、ツイッターでも流しまくりである。その節は大変お世話になりました。

 

 

この国の不寛容の果てに 

命の選別は「しかたない」のか?「生産性」「自己責任」「迷惑」「一人で死ね」…不寛容な言葉に溢れたこの国で、男は19人の障害者を殺した。「障害者は不幸しか作らない」という線引きによって。沈みゆく社会で、それでも「殺すな」と叫ぶ、命をめぐる対話集。 

 

ズシンと来る一冊。

 

戦後最悪とも言える単独犯による大量殺人事件。それが相模原事件だ。

犯行を行なった植松聖は「経済的に余裕のないこの国で、重度障害者を養うことは許されない」と語った。とても乱暴で短絡的な価値観だ。

二度と起こってはいけない事件だろう。だがさらに恐ろしいのは、この事件が一部では「よくやった」と支持されていたり、「そう考える人がいてもおかしくない」という空気が日本にはあることだ。

他人の役に立てない弱者は切り捨てられるべきなのか。そもそも役に立つこととは何だろうか? 植松聖が提示した問題は、非常に難しい。

 

残忍な事件が起こると絶望的な気分になるかもしれない。でもこの対談集を読むと分かるが、日本にはそんな事件なんて飲み込めるぐらい、大きな優しさや愛に溢れている。

この国の希望を知ってほしい。

 

 

ことばのしっぽ

『読売新聞』の名物投稿欄、生活面の「こどもの詩」が、2017年4月で50周年を迎える。年齢を重ねるにつれ、大人が無くしてしまったみずみずしい気持ち、子どもの目にしか映らない風景が飾らない言葉で表現され、胸を打つ。 

 

最近、ツイッターなどの短文文化に染まってしまったせいか、短い言葉の魅力を再認識している。

特に熱いのが短歌や詩である。短歌に関しては、2019年の年間ベストにも選出した『サイレンと犀』とかがヤバかった。で、こちらは詩の作品である。しかも子供の書いた詩だ。

なんせ子供なので、発想は自由自在。想像をはるかに超えるような角度、タイミング、鋭さ、深度、純粋さなどなど、あの手この手で我々大人たちを翻弄してくる。まるで言葉のジェットコースターだ。

子供ってのは、本当に天才なんだなと思わされる一冊である。

 

 

流浪の月

あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。 

 

2019年の本屋大賞を受賞しているので、わざわざ私が推す必要もないのだろうが、やっぱり外せない作品である。

これまで数多くの面白い小説と出会ってきたが、その面白さにも色々とある。

例えば、予想外の展開や手に汗握るシチュエーションなど、興奮させられるものがある。

または、我々の日常でも感じられるような些細な感情を、見事に言語化し、「あー、それ分かるわー」と共感を誘うタイプ。

他にも、知らない世界を見せてくれるような知識欲を満たしてくれるパターンとか、著者の圧倒的な想像力に関心させられるようなものもある。

で、『流浪の月』はと言うと、これがなかなか面白さを説明するのが難しい。一言で「こうだ」と言い表せるようなものではないのだ。現に私が以前書いた『流浪の月』のレビューは軽く4000文字超える内容となっている。しかもそれでも抑えたレベルだ。

それでも無理やり簡潔な言葉にするならば、「沈み込む快感」をもたらしてくれる作品である。

凪良ゆうの上質な文章に乗せて、深く潜り込むような物語を、息を詰めてじっくりと味わって欲しい。この体験は、なかなかに強烈である。

 

 

フーガはユーガ

あらすじは秘密、ヒントを少し。 双子/誕生日/瞬間移動 1年ぶりの新作は、ちょっと不思議で、なんだか切ない。 

 

「面白い小説を教える」となったら、日本の小説好きの10人中9人が伊坂幸太郎を推すだろう。残りの1人は東野圭吾だ。それぐらい圧倒的なまでに面白い小説を書いてしまう男、伊坂幸太郎。はっきり言って異常者である。まともではない。

だが、異常者だからこそ私は彼の変態性を信用しているし、上記のような訳のわからない説明文でも一切気にしないで読むことができる。なんなら余計な情報なしで、純度の高い状態で彼の作品を楽しめるのだから、この方がいい。もう面白いのは確定してるんだから、わざわざネタバレして作品の鮮度を落とす必要はない。

ということで、私の伊坂幸太郎の面白いさを少しでも損なわないようにするため、このように内容にまったく言及せずに筆を置こう。キーワードは「信頼」である。

 

 

なんで僕に聞くんだろう

ガンになった写真家になぜかみんな、人生相談をした。恋の悩み、病気の悩み、人生の悩み。どんな悩みを抱える人でも、きっと背中を押してもらえる。webメディア・cakes史上最も読まれた連載の書籍化!! 

 

私はブログを書いて収入を得ている人間なので、末席にもほどがあるが、一応言葉のプロだろう。なので他の一般の方と比べたら、文章や言葉への感度は高い部類だと思う。

他の人が書いた文章を読んで「これは凄えな」と思わされることが多々あるのだが、それは上手さだったり、センスだったり、単純なアタマの良さだったり色々あって、どれも私には一切ないので別の生き物を眺めるような気分でいる(でっかい動物とか建造物を見てるときと同じ感じ)。

で、「凄えな」と思わされるときは大抵、その書き手の「言葉に対する姿勢」みたいなのに圧倒されるんだけど、こちらの幡野さんの場合は「世界に対するスタンス」に圧倒される。

世界を見渡す目の解像度が高すぎて、どこまでも見渡せてしまうその視力の高さから出てくる言葉に圧倒されてしまうのだ。

 

彼に寄せられる相談は一筋縄ではいかないものばかり。それでも彼の目は、一筋の光をそこに当てる。しかも強く、温かく。

個人的ベストは「風俗嬢に恋をしました」への回答。神がかってる、を体感した。

 

 

はじめからその話をすればよかった

大好きな本や音楽、そして愛おしい三人の子どもたちと共にある暮らしを紡いだ身辺雑記。やさしくも鋭い眼差しで読み解く書評。創作の背景を披瀝した自著解説。瑞々しい掌編小説―。読者の心を熱く震わせる「宮下ワールド」の原風景が詰まった著者初のエッセイ集。 

 

『羊と鋼の森』で本屋大賞を掻っ攫った宮下奈都の初エッセイ集。

デビューして間もない頃から、色んな媒体で数ページの短いエッセイを書いていたようで、全部で100篇ぐらい入っている。

このエッセイ集の特徴を簡潔に表すと「読むと幸せになる」だろう。

宮下奈都という作家の、人間を大きく肯定する姿勢、それがよく現れている。

彼女の創作物が素敵さで溢れているように、作り手の彼女自身が、世界の素晴らしさや素敵さを見つけることに長けていることがよく分かる。『だれも知らない小さな国』のエピソードとか、素敵すぎて泣いちゃったよ。なに、あの感情。

 

私はエッセイものが大好きでかなりの作品を読み込んでいる方だと思うけど、そんな私の中でも、これまで読んできたエッセイのベスト5に食い込むレベルである。

手軽に幸せな気分に浸りたい方には超オススメである。

 

 

罪の轍

昭和三十八年。北海道礼文島で暮らす漁師手伝いの青年、宇野寛治は、窃盗事件の捜査から逃れるために身ひとつで東京に向かう。東京に行きさえすれば、明るい未来が待っていると信じていたのだ。一方、警視庁捜査一課強行班係に所属する刑事・落合昌夫は、南千住で起きた強盗殺人事件の捜査中に、子供たちから「莫迦」と呼ばれていた北国訛りの青年の噂を聞きつける―。オリンピック開催に沸く世間に取り残された孤独な魂の彷徨を、緻密な心理描写と圧倒的なリアリティーで描く傑作ミステリ。 

 

2020年上半期でぶっちぎりの1位がこちら。

もうね、最高の一言。それ以外の説明はいらないレベル。本当に奥田英朗の脳内はどうなってんだよ。こんなに面白い小説が存在していいんですか。いいんですね。あたしゃ、生まれてきて幸せだよ。

 

オリンピックを翌年に控えた東京。エネルギーに満ちた時代を舞台に繰り広げられる、警察と姿の見えぬ犯人の戦い。最有力と疑われる容疑者は知恵遅れの青年。しかし純粋そうな彼は、とても極悪非道な犯罪をするような人間には見えない。様々な葛藤や苦しみを飲み込みながら、猛スピードで物語は突き進んでいく。

 

これこそまさしく「あらすじを読む必要さえない」というタイプの作品。久々に寝られなくなるぐらいの作品で、次の日仕事だってのに、明け方まで読み続けちゃったからね。もっと言うと、面白すぎて先が読みたいのに、でも読み終えるのがもったいなくてで、訳が分からなくなって夜中に散歩に出かけてしまった。欲求がバグを起こしてたね。

まだ上半期が終わったばっかだけど、今年のベストを確信してるレベルの作品です。

 

 

以上。下半期では、この10冊を超えるような作品との出会いを期待している。