ずっと一緒に戦ってきた部下が辞めた
どうも、中間管理職ブロガーのひろたつです。
私はたくさんの部下を抱える仕事を10数年している。それだけ人を抱えていると、退職者なんてのはざらにいて、ひとつひとつの別れを惜しんでいたらキリがないレベルである。人の移り変わりが早ければ、どうしたって出会いにも別れにも不感症気味になってしまう。悲しいことだとは思うけれど。
だが、それでも長年一緒に働いたメンバーでしかも、色んな苦楽(9:1)を共にしたメンバーであれば別である。
先日10年一緒に仕事をした部下が退職した。
最初はどうにも頼りなく、欠勤も多かったりして、「あんまり優秀じゃないなぁ」なんて思っていた子なのだが、数々の荒波を超え、自らも部下を育成していく中で、気がつけば「最強社員」の一人になっていた。彼女の真剣な働き振りを見ていると、なんだか涙ぐみそうになるぐらいだった。とにかくいい子だった。
彼女が辞める理由
それだけ真剣に仕事に臨んでいた彼女である。それなりの理由があるのだろうと、話を聞いてみることにした。
大体3時間ぐらいかかったが、まとめるとこんな感じだった。
・家から遠くて通勤がキツイ。寮に入りたいけど、規定の範囲外だから入れてもらえない。
・給料がいつまで経っても上がらない。先が見えない。
・業務に振り回されすぎて体力の限界。
で、こういう相談事を聞くたびに「私はダメな奴だ」と思い知るんだけど、会社の役職者としてじゃなくて、自分個人としての思いを正直に語ってしまう。
うちの業界は客観的に見て、先行きが非常に暗い。なので辞めたいと思っているのであれば、辞めた方が将来生き残れる可能性は高い。それに、限られた人生なのだから、やりたくないことに時間を使うぐらいだったら、一度挑戦した方が後悔は少ないだろう。というようなことを伝えた。
ビジネスで考えたらこの言葉は出てこない。だってそりゃ部下が減ったら、その分の補充なんてすぐにできるわけがないから、職場の負担は確実に増える。その職場を任されているのは私なんだから、結果的に負担は私自身に跳ね返ってくる。辞めようとしている部下の背中を後押しするのは、自分で自分の首を絞めるようなものだ。そんなセルフSMをして楽しめるほど私は高尚な人間ではないので、ただ単に苦しいだけである。
でもそれができないから私はダメなわけで。そしてそんな自分が嫌いじゃないから余計なダメなのである。
相談を受けたら、私の利害ではなく、相手の立場になって本気で考える。そのときそのときで、言うことを変えるような器用な真似はできないのである。嘘を吐くにも、それを管理できるだけの能力がなければ破綻する。
なので今回も、別れは非常に惜しかったけれど、辞めることを後押しした。
辞めた彼女が分かっていなかったこと
さて、ここからが本題だが、辞めた彼女には分かっていなかったことが2つある。
この2つは働く上で非常に重要な考え方なので、まとめておこう。
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まず会社について。
サラリーマンである以上、会社の規定には従うしかない。それと引き換えに給料を安定してもらえるのだから。
でも仕事に規定はあってないようなものである。自分でいかようにも改善できる。会社が利益を求める以上、どれだけ荒唐無稽なアイデアだとしても、会社にとってプラスになるのであれば受け入れられるはずだ。
で、辞めた彼女の場合、その認識が弱かった。
「仕事とは上から振られるもの。振られた仕事はどんなに理不尽でもとりあえずは飲み込まなければいけないもの」
そういうふうに考え、会社と自分というものの間に、明確な線が引かれているようだった。自分対会社という図式ができていた。
実際にそんなことはない。会社の一部が自分だし、自分たちの集まりが会社である。「会社が言うから」とか「上が決めたから」というのは幻想である。色んな人の考えや思惑が形になっているだけである。
あくまでも仕事は自分の意思で行なっているし、そもそもその会社だって自分の意思で選んだものである。誰のせいでもない。
でもこれが分かっていないと、「やらされている」とか「我慢してやってあげている」という認識になる。それは苦しい。ある意味奴隷だ。そんな状態であ仕事をし続けるのは絶対に苦しいだろう。
だから忘れてはいけないのだ。会社は自分が選んだ場所であり、仕事は自分たちみんなで作り上げているものだという認識を。
次に、給料の話。
給料が上がらないことに不満を持つ方は多いだろうが、なぜ上がらないのかのその理由に思いを馳せる人は少ない。全てには理由がある。もちろん給料が上がることにも理由がある。それを分かった上で文句を言っているのか疑問だ。
彼女と同じ職場で働いている私はと言えば、給料は少ないながらも確実に上がり続けている。
最近副業で稼ぎ初めて本業の方でやる気が絶賛減少中なので、そろそろ上げ止まりしそうだけれど、とりあえず文句が出るような金額ではない。むしろ会社の業績や経営体制、業界の動向を考えると「こんなにもらっていいの?」と思えるぐらいである。
ここに辞めた彼女との差がある。
給料が上がらないと文句は言うが、やる仕事のレベルが変わらなかったり、責任が増えていなかったり、利益を新たに生み出していなければ、給料が上がらないのも当然である。お金が3分クッキングのように出てくると思ったら大間違いだ。
さきほどの会社の話と同様、「もらっている」という認識でいるからおかしくなるのだ。「自分が生み出した価値の対価」だと理解すれば納得できるようになる。
もっと言えば、会社にはさまざまな部署があり、色んな人がいる。フリーランスで働いているならまだしも、たくさんの人が所属しているのであれば、利益は按分されていく。自分がハチャメチャな活躍をしたからといって、その分がまるまる評価されるはずがないのだ。
そんな彼女に幸多からんことを
とはいえ、不満のある会社から飛び出し新たな世界に身を投じた彼女の勇気は本当に素晴らしいと思う。今のところ私にそんな勇気はないし、自分を納得させるスキルがあまりにも上がりすぎてしまった。
人間の脳の機能から言えば、文句を言いながらずっと同じ会社で過ごす方がはるかにラクなのだから。変化を自ら起こすのには多大なエネルギーが必要になる。それだけ自分を奮い立たせられたことは称賛に値するだろう。
彼女の苦楽を間近で見てきた私としては、彼女の今後の人生が幸せであることを素直に願うだけである。
以上。