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言葉の惨殺ショー。岡本太郎『壁を破る言葉』

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どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。

残念な本に出会ったので怒りのレビューである。心してかかれ。

 

 

『壁を破る言葉』の内容紹介

 

出口を探している、すべての人へ。
なぜ、創るのか。なぜ、生きるのか。
岡本太郎から強烈な一撃!
ベストセラー「強く生きる言葉」に続く第2弾。

 

どんな本なのか簡単に説明すると、「岡本太郎の名言を抜粋して集めた本」である。

これだけ読むと非常に素晴らしい作品に思われるかもしれない。いや、きっと実際素晴らしい本なのだろう。Amazonでもめっちゃ高評価だし。

でも私には到底響かなかった。その理由を思いっきり書き殴りたいと思う。

 

 

白すぎ問題

 

まずはこれを見て欲しい。百聞は一見にしかずである。

 

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『壁を破る言葉』、なんと全編に渡ってこんな感じである。

 

あのさ…白すぎない?

 

余白を大事にするテクニックは確かにあるけどさ、むしろ余白が主役級。言葉が読みたくて本を手にとったのに、90%ぐらい白紙。驚きの白さ。洗剤のCMだったら完璧だったかもしれないけど、これ本だから。文字を読ませるためのもんだから。

1ページこの文量でしょ。一冊をギュッと詰めたら、見開きで収まるんじゃないか?それぐらい情報量が少ない。

 

いくらなんでもこれは薄すぎる。全然腹に溜まらないよ。料理を食べにお店に来たら、スープ専門店だった気分。別にSoup Stock Tokyoをディスってるわけではない。

 

 

編集?いや切り取りでしょ

 

そもそも私がこの『壁を破る言葉』を手にとったのは、以前読んだ岡本太郎の『自分の中に毒を持て』が最高だったからだ。

あれは本当に名作で、読みながら血が滾ってくる感じがヤバイ。やる気がめっちゃ出てくる。まあ私は会社の仕事をさぼって、倉庫で隠れて読んでたのだが。

 

とにかくまあ、『自分の中に毒を持て』と同じように、己に発破をかけたかったのだ。心の起爆剤的なものを欲していたわけだ。

それがこれでしょ。あのさ、出合い頭にいきなり

 

「自由の実験室。」

 

とか言われてもさ、何も感じねーよ。何も滾らないから。むしろ冷めるよ。心の大事な部分が。大体にして「実験室。」の「。」が腹立つ。区切るな。

 

編集者なのか、誰なのか知らないけれど、この編集の仕方はないだろう。あまりにも言葉を殺しすぎてる。これは編集じゃなくて、切り取り。

『自分の中に毒を持て』を読むとよく分かるけれど、岡本太郎って実は理詰めなところがある。情熱的なメッセージもあるんだけれども、それは理にかなった情熱であって、突拍子もないことを吐き出しているわけじゃない。どうしても「芸術は爆発だ」的な突拍子もなさのイメージが強いけど、それは全然違う。むしろそれは彼の魅力のほんのほんの一部でしかない。

岡本太郎が綴った、魂の文章。その文脈の上で語られた言葉を、こうやって切り出してしまって、果たして言葉は生きるだろうか。なんて疑問形にしてみたけれど、答えは出てる。完全に死んでるよ。鮮度ゼロ。

 

 

言葉を食べてると言えるか

 

世の中には腐るほど名言集があって、それと似たようなことをしたかったんだと思う。岡本太郎から繰り出された強烈なメッセージ集的な。

でもこの抜粋の仕方はないだろう。元々の味がまったくしなくなっている。例えるなら、エビチリの名からエビだけ取り出して、よーく洗って食べてる感じ。これで果たしてエビチリを食べてると言えるだろうか。私は言いたくない。エビチリを作ったシェフに「あなたのエビチリ最高だったよ!」と笑顔で言えるだろうか。私は言えない。

尾崎放哉名言集とかを発売したとして、「咳。」とか書いても絶対伝わらんでしょ。響かんでしょ。そういうことよ。『壁を破る言葉』でやってるのは。万が一「咳。」だけで伝わる奴がいるんだとしたら、そいつはもうすでに自分で咳をしてる時点で分かってるから読む必要ない。そんだけの感受性があるんだったら、他人の芸術作品に影響されるフェーズは飛ばしてよし。

とにかく、こんな乱暴な抜粋をされたら、元々岡本太郎が言葉を読者が食べてるとは、とても思えないのだ。だからとてもじゃないけれど、『壁を破る言葉』で壁を破れるとは思えない。全然役目を果たしてないよ、『壁を破る言葉』。

…はっ。

もしかしてあれか。これを読んで怒り狂った勢いを使って、壁を破っちゃうっていう、そういう意味なのか?もしそうだとしたら、超名著。規格外の名作。必死に祀り上げるよ。神輿に乗せて街を練り歩くよ。その暁には『壁を破る言葉』を思いっきり叩きつけて、壁を破りたいと思います。

 

以上。

 

 

 

ということで、こっちを断然オススメします…。