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勝ちパターンを見つけるのがお上手なようで。松岡圭祐『八月十五日に吹く風』

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どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。

売れる作家ってこういうことか、と思い知らされた作品をご紹介。

 

 

内容紹介

 

 

アメリカが敵視した、人命を軽んじ易々と玉砕するという野蛮な日本人観が、一人の米軍諜報部員の報告で覆った。戦後占領政策転換の決め手となった一九四三年、北の最果てキスカ島での救出劇。日本は人道を貫き五千人の兵員を助けた。戦史に残る大規模撤退作戦を、日米双方の視点で描く感動の物語。

 

松岡圭祐といえば、心理学の最前線の知識を導入した『催眠』で衝撃のデビューを果たし、即映画化。その後シリーズ化し、ベストセラーを連発している。催眠をかけられたランナーの足から骨が飛び出すシーンは衝撃だったなぁ…。

 

いつの間にやらベストセラー作家の仲間入りをしてしまった松岡圭祐だが、最近は歴史小説界も蹂躙し始めている。

 

最初に読んだのはオススメ小説としても紹介している”義和団事件”を扱った『黄砂の籠城』だ。

これがもう抜群に面白かった

籠城された日本人たちのヒリヒリ感とか手に汗握るほどだし、戦争下で起こる悲劇を真正面から書いてるし、日本人が誇らしくなるようなエピソードもたくさん出てくるしで、大満足

さすがベストセラー作家、読者を虜にするのが上手いぜ!と思っていた。

 

で、それだけ面白い作品を読んでしまったら、もっと欲しくなるのが人情である。

次に手にとったのが今回の記事の主役『八月十五日に吹く風』である。寄り道しすぎたかも。

 

 

確かに面白い。だけど…

 

まず言いたいのは、『八月十五日に吹く風』も面白い。『黄砂の籠城』と同じぐらい面白い。

先日このブログで売れた本のランキングを発表したのだが、『黄砂の籠城』はなんと2位だった。めちゃくちゃ売れている。そんな本と同じくらい面白いのだ。

だが、それと同時に残念な部分もある。むしろこちらがこの記事の主題になる。

 

 

『黄砂の籠城』と同じすぎませんか?

 

 

これである。

 

 

『八月十五日に吹く風』は面白いのに、ずっとどこかで『黄砂の籠城』のニオイがしている。

台や登場人物が違うだけで、基本の構造がほとんど同じなのだ。みかんとオレンジぐらい同じ。

 

 

同じパターンは厳禁?

 

多作であることは作家のみならず、クリエイターにとって大きな強みとなる。釣り針が増えるようなイメージだ。

たくさんの作品を作り出しておけば、色んなところから客を生み出すことできる。また客を生み出す可能性が高くなる。これはひとつの真理である。

そのために同じ味のものを何個も出す、というのもよく見られるパターンである。西村なんちゃらとか、赤川なんとかとか。良いとか悪いとかの話ではない。やるかやらないかである。

 

で、やはり売れっ子の作家ほど、この「同じ味を何個も出す」ことに抵抗がないように見える。というか、だからこそ売れっ子になれるのかもしれない。

それにパターンというか、型を作ってしまえば、作品を量産できる。いちいち複雑なプロットを組み上げる必要がない。いわば勝ちパターンを持っているようなものだ。これは作家としては強みだ。

 

それに私にはちょっと分からないのだが、世の中には「同じようなものを何度も楽しみたい」という人が一部にいて、それが意外と大多数だったりするみたいだ。お昼の番組とか、水戸黄門とか、そうやったものが好きな人たちが。

別にバカにしているわけではない。人それぞれ好きなものを見ればいいと思う。

だからそういった人には確実に「同じパターン」の需要があるわけで、完全にマッチしている。とっても経済活動だ。

 

 

ネタバレみたいなもんです

 

ただ私の場合、未知にこそ価値があると思っていて、わざわざ先の分かっている物語を読む気にはなれないのだ。余程好きな作品であれば別だけれども。

 

「同じパターンが見たい」と似たような例で、「ネタバレされてないと作品を楽しめない」、という人もいるらしい。

これはあらすじを読まないと作品を選べないのと通じる部分がある。ある程度、概略というか面白さを事前に把握しておかないとゆっくり楽しめないらしいのだ。

この話を会社でしてみたら、「マンガも映画も、最初にラストシーンを確認します」という猛者がいて、私とあまりにも価値観が違くてびっくりした。

 

…と思っていたが、考えてみたら私の場合、ゲームがそんな感じだった。

ネタバレ状態じゃないと進める気になれない。まあゲームの場合、私があんまりゲームに無駄な時間をかけたくなかった、というのがあるけれど…。攻略とか全然したくならないタイプです。

 

 

プロの仕事なんでしょうね

 

同じ味を楽しみたい人に、同じ味を提供し続けられる。

これは簡単なようで意外と難しい。そもそも最初となる「美味しいと思わせる味」を見つけなければならないからだ。

たぶん、松岡圭祐はこの辺りが上手い。

作品を量産していく中で「これは同じような物語がたくさん作れるな」というような勘が働くのだろう。シリーズものを作り出せるのは、そういうことである。優秀な作家である。

 

ただ、だ。

私の場合、もう彼の作品に用はないだろう。

松岡圭祐作品は多数出ていて、機会があれば色々読んでみようかと思っていたが、こんな感じの作品が続いてしまうのであれば、もうこの先読むことは無さそうである。

少なくとも私はもう一度挑戦する気にはならない。時間がもったいなさすぎる。

 

以上。

 

 

面白かったけど、このパターンは2回が限界かな…。

 

 

 

ということで、こちらもオススメ。 

 

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