毎年恒例の映画まとめ記事である。
簡単に説明しておくと、職場に「人生の時間のほとんどを映画鑑賞に費やしている」という変態がいる。
そんな彼に年間のベスト映画を決めてもらったのが今回の記事である。
有名所はもちろんのこと、まったくもって無名の作品まで手を出していて、その情報量たるや、正気を疑うレベルである。そしてきっと正気じゃないから、いくらでも映画を観られるのだろう。怖い。
怖い人間には近づきたくないものだが、それが味方となればこんなに心強いことはない。存分に変態性を発揮してもらって、隠れた名作をあぶり出していただきたい。
ということで、ここから先は寄稿記事になります。
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どうも、半年ぶりの登場になります。『俺だってヒーローになりてえよ』の映画担当スズキです。
2018年の映画鑑賞数は157本でした。そのうち新作は63本。去年よりも若干減少傾向なのは仕事が忙しくて、物理的に時間が奪われたせいです…!ちくしょうっ、仕事め!死ねっ!
すいません。年始から不愉快なところをお見せしてしまって。…まあ個人的な話は置いておきましょう。今回も映画まとめです。
一応参考までに貼っておきますが、こちらが2018年の前半のベストになります。
上半期でまとめた際と順位が入れ替わっていたりするのは、思い返してみて「やっぱり好きだなー」「面白かったなー」と印象が変わっていたりしたものを反映しました。
さらに、下半期見た物についてはその逆で、ついこの間見て面白かったし…とテンションの差があります。
まあそれでも、腐るほど観てきた作品たちの中から選ばれた10作品なので、これはもうどれを観ても悶絶級ばかりです。死ぬほど味わってください。
それでは行ってみましょう!
10位
「悪女」(チョン・ビョンギル監督)
韓国映画のネクストレベルを見せてくれた作品。
冒頭ワンカット(風)のアクションシーンから度肝を抜かれ、そのままアツいテンションで物語は進む…。
のかと思いきや、今度は潜入スパイ物へ話は変わるっ!なにこれ!超翻弄されるんですけど!
過去と現在の映像が変わりがわり映し出され物語の真相が段々と明らかになっていく様子は、前半と温度差があるにもかかわらず、どちらもかなり良質な出来。
アクションだけでなくストーリーの構成も上手い映画でした。
みんな韓国映画がすげいの知らなすぎ。
もっと熱狂して。褒め殺して。
9位
「ハッピーエンド」(ミヒャエル・ハネケ監督)
待ちに待ったミヒャエル・ハネケ御大の最新作です。
いや〜な雰囲気が流れる映画を撮らせたら世界一。人を不快にさせる天才。嫌われるために生まれてきた映画監督。それがハネケ。マジで神が遣わした映画悪魔。
一見問題のない家庭を映しているだけなのに、どことなく流れ続ける嫌な雰囲気。
ゾワゾワするんだけどその不快さに笑いが出てしまう。超ハネケ。
携帯での動画配信、監視カメラ、何かを映す人と映される人、そしてカメラを通した作品を見ている観客にまで、この映画は他人事のようで身近な話なのでは?と気付かされる。そこでもまたゾワゾワ。
観終わったあとに「なにがハッピーエンドじゃ!死ねっ!」となったらハネケ監督の術中です。
存分に踊らされましょう。
こんな映画体験をさせてくれるのはこの世にミヒャエル・ハネケのみ。
8位
「聖なる鹿殺し the KILLING of a SACRED DEER」(ヨルゴス・ランティモス監督)
確実にミヒャエル・ハネケ監督の流れを汲んでいるであろうヨルゴス・ランティモス監督。どうしようもないね。あんな変態の流れを汲むなんて。もっとまともなのを汲んだら良かったのに。人の気持ちとか。
ということで、ハネケからの流れそのままに、不快さをエンタメに昇華した作品です。
ストーリー自体は(ハネケ監督より)もっとわかりやすく映画的。良心的、とも言えるかも。ハネケは観客を突き放しすぎ…ってハネケの話しすぎですね。
作中の状況・環境・行動、更には画角の端々に見える不快感。さらには神話的な部分があったりして物語に奥行きが生まれ、不思議さも相まっています。
どうあがいても崩壊していく生活と、辛いのに目を背けられない面白さを両立した、観たものの心をグッチャグッチャにしてくれる作品です。←どんなオススメの仕方だよ
7位
「スリービルボード」(マーティン・マクドナー監督)
強すぎるほどの芯を持った主人公と、町のみんなに好かれた警察署長。
こんな二人が対立すれば主人公は町から嫌われるのは目に見えている。
それでも、事件で亡くなった娘のために、自分の後悔を晴らすために、自力で捜査する主人公。
そんな気持ちに触れて町の人々は心が変わっていき、隠れていた新たな真実があぶり出されていく…。
二転三転する善悪の立場、差別・同性愛・女性の自立・親子関係など社会問題も含みつつ、それでもブラックジョークを挟んだりして笑えもする作品になっているのは本当に脚本が達者なゆえ。やっぱり脚本が強い作品は、無条件でおもろいわ。
語られるテーマはいろいろあって深みのある作品ですが、そんな事を考えずとも楽しめる映画でした。
6位
「シェイプ・オブ・ウォーター」(ギレルモ・デル・トロ監督)
これは絶対に死ぬまでに一回は体感しておくべき作品です。
超美しい超絶変態映画なんです。
恐ろしいまでに作り込まれており、怪獣映画でありながら恋愛映画という今までにない作品。
なぜ半魚人との恋愛がこんなに美しく描けるのか。
その映像を見ているだけでも楽しめますし、はたまた語られるテーマを深く読み解こうとしても楽しめるという、極上の作品です。
とにかく見てもらわないことにはこの美しさは伝わらない!絶対に観て!
5位
「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」(クリストファー・マッカリー監督)
みんな大好きトム・クルーズ。
年に一回はトムの全力疾走を見ないと気が済まない、と思うのは自分だけでしょうか。
この予告編を見てください。
Mission: Impossible - Fallout (2018) - Helicopter Stunt Behind The Scenes - Paramount Pictures
冒頭にある、見せ場のひとつと思われるトラックと衝突してしまいそうになるドキドキの場面…なんと本編ではカットされています(笑)。どんだけ贅沢なの。
通常ハリウッド映画では、撮影を中断させないために役者に保険をかけスタントマンを用意しています。
しかしミッション・インポッシブルでは逆にトム・クルーズがお金を自ら出してこんなアクションシーンをやらせてくれと制作しているのです。ご存知でした?
つまりはトム・クルーズがやりたいアクションシーンを撮るための映画と言っても過言ではないのですっ!
(その結果、ビルを飛び移るシーンで大怪我をして撮影中断することになるのだが…)
見せ場ありきで映画を作った結果、とりあえず数億円かけて撮ったトラックとの衝突シーンはストーリーに入り切らなかったためにカットされたらしい…。
そんな見せ場先行の作品があったっていいじゃないか!面白いんだし!!面白さこそ正義!トム・クルーズ万歳!
ちょっと興奮しすぎました…。
HALOジャンプ(高高度降下低高度開傘)や、わざわざ免許を獲ったヘリコプターのチェイスなど見どころはたくさんで、それでいてストーリーもちゃんと面白い。
結局イーサン・ハント(トム・クルーズ)が蒔いた種をチームみんなで収束させる構造は変わらないのですが、それがミッション・インポッシブルだしいいじゃないですか。
細々としたボケを挟んで笑いも取りつつ、超楽しい映画でした。
映画界に対する今一番の心配はトム・クルーズの跡を継ぐような人物が見当たらないことです。
4位
「レディ・バード」(グレタ・ガーウィグ監督)
息が詰まる閉塞感の田舎と、やり場のない有り余るエネルギーを持った高校生
人生が上手くいかない(と感じてしまう)若さと、親からの愛
子供から大人になる過程の一つが美しく、愛おしく描かれる
自分とは違う人生のように思えつつも、どこか親近感や既視感がある
派手ではないけれども心に刺さる作品
誰しも主人公のようによくわからず叫びたくなる気持ちとかがあったはず
3位
「へレディタリー 継承」(アリ・アスター監督)
とにかく怖いホラー映画。怖さの最先端とも言うべき作品です。
怖いお化けやモンスターが出てくるわけでもなく、何が原因なのかよくわからない。しかし着実に、「この家族は最悪な方向へ向かい続けている」という恐怖感があります。
次に何が起こるのか全く読めない怖ろしさ。
拍車をかける違和感があり続けるカット。
底に鳴り続ける胃に響くような気持ち悪く波打った劇伴。
時折挟まれる「ん?何だ今の」という場面は全て後に繋がってきます。
「そこ、そんな風になるのかよー、やだよー」と嘆いてしまいたくなるほどの場面が続々と現れます。
登場人物たちが完全に狂ってしまったのかと思わせるようなリアクション。いやしかし、こんな非現実的場面に遭遇したらあんなリアクションを本当に取ってしまうかもしれない…という絶妙なリアルさを保ちつつ、圧巻のラストシーンへ。
タイトルの「hereditary」は辞書に以下のような意味で書かれています。
1.遺伝的な
2.先祖代々の
じっくり味わってください。
2位
「ザ・スクエア 思いやりの聖域」(リューベン・オストルンド監督)
リューベン・オストルンド監督の前作「フレンチアルプスで起きたこと」は人間の本能を映しながら、めちゃくちゃ笑えるのに嫌な雰囲気しか流れない怪作だったが、今作はさらに磨きがかかっております。
そしてこの監督はハネケ監督の流れを強烈に継いでいる!←またハネケの話してる
「現代アート」に対してきっと一般人が抱えてるであろう疑問をシニカルに扱いつつ、様々な出来事に対しての当事者と傍観者、それぞれの視点と意識の違いを目を背けたくなる程痛烈に描いております。
どちらが悪いとか言う話ではなく、誰しも感じたことあるような反応に迷う状況で、そんな状況で人はどう行動するか。
実際に体験したら胃がキリキリするような状況にもかかわらず、画面を通して見ていれば笑えてしまいます。
1位!!!
「アンダー・ザ・シルバーレイク」(デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督)
監督の前作、低予算ながらも絶賛されたホラー映画「イット・フォローズ」。
それで評判を高めた監督の期待の新作は、期待を超えるめちゃくちゃ傑作でした!
今作はミステリー?ノワール?ジャンル分けが難しいながらも、とにかく面白い。
無職のオタク青年は向かいに引っ越してきた美女と仲良くなるが、突如美女は失踪してしまう。
彼女を追いかけるうちに見えてくるシルバーレイクの地で起きる不可解な事件とそれに関わる裏組織のような存在。
ストーリーはこんな感じなんだけど、起こる事件、ミステリー、とにかくわけのわからない展開。
脈略のない場面や会話など、よくわからない展開が続く。
それに対する謎解きもネタバラシもそこまでちゃんとあるわけではなかったりする。
本当になんなんだかよくわからない映画なのにもかかわらず、なぜかめちゃくちゃ面白い。新しい面白さ?なにこれ?とにかく凄い!
本当に説明が難しいのだが、この映画は「よくわからないけど、めちゃくちゃ面白い」
そうとしか表現できません。
デヴィッド・リンチ監督の「マルホランド・ドライブ」にかなり近い感じなのだが、それよりもなぜだかワクワク楽しい気持ちにもさせてくれる。
こんな新しい面白さを創り出してしまったデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督。彼が今後どうなっていくのか楽しみで仕方ないです!
特別賞
おまけの特別賞です。もう紹介するまでもない作品になってしまいましたが…
「カメラを止めるな!」
話題が話題を呼び、極小公開から日本大ヒットまで広がった本作。
映画を劇場で見るという体験にこの上ない楽しさを乗せてくれた。まさに「これぞ映画」という感じ。
2018年で一番好きだし面白かったのですが、なんだかランキングに加えるのものしっくりこない気がして「特別賞」扱いです。みんなご存知でしょうしね。
いやー、でも本当にこの名作がこれだけ世の中に認められたことが、嬉しくて仕方ありません。
自分があの日、シネマ・ロサで初めて『カメ止め』を観たこと。
本作は生涯ベスト級であり、一生記憶に残る作品になると思います。
結局のところ、『カメラを止めるな』はこの記事に紹介したベストイレブンで、実質1位みたいなものです。
次点
さらにさらにおまけたち…。
次点です。サクッと行きましょう。
「劇場版アイドルキャノンボール2017」
「ブリグズビー・ベア」
「ボーダーライン ソルジャーズデイ」
「ローマ」(Netflix限定)
「アナイアレイション -全滅領域-」(Netflix限定)
以上になります。
長い記事に最後までお付き合いいただき感謝!
ではよい映画ライフを。