どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。
今回は「2018年本屋大賞ノミネート作品を素人が勝手にランキングする」という誰得な企画である。
元々“書店員”という素人が決める賞レースなのだが、そこをもっと素人な私がランキングしてしまうわけだ。つまりこれは超個人的な趣味全開の記事だと認識してもらえると助かる。
ただ、これでも読書中毒ブロガーを名乗り、日々ネット上で不特定多数の皆さんにオススメ本を売り上げている私である。それなりに信用してもらってもいいんじゃないかなーとか淡い期待をささやかにさりげなく仄かに抱いている次第だ。
まあそんな御託は置いておくとして、さっそくランキングに行ってみよう。どれだけ言葉を尽くそうが、これはただの「個人的趣味を晒したランキング」である。なんの権威もないのだ。軽い気持ちで読んでもらえたらいい。
ちなみにランキングには、ネタバレしない程度に私の書評(ほぼイチャモン)を付け加えておく。参考にされたし。
さあ行ってみようじゃないか。
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10位 『崩れる脳を抱きしめて』
一言コメント
本家の方では9位だった『崩れる脳を抱きしめて』である。私の中では10位である。どちらにしろ低評価である。可哀想な気もするが、売れてるからまあ気にしない。売上は正義である。だから山田悠介も正義だ。
最大の敗因は煽り過ぎな帯。『崩れる脳を抱きしめて』は「驚愕」もしなければ、「感動」もしないし、「圧巻のラスト20ページ」も全然だ。もしかしたら私が買った本が落丁していた可能性がある。Kindle版だけど。
どんなに美味しい料理も、醤油を思いっきりぶっかけたら不味くなる。そういうものだ。
良かった点と悪かった点
・ミステリーとしての出来は75点。上出来。
・感動作ではない。ミステリーとして成り立たせるためにドラマが瀕死状態。
・作者の医療知識が本物(現役医師)なので、読んでいるときの安定感が凄い。
・どんでん返しはそんなに効いてない。
9位 『かがみの孤城』
一言コメント
本家の方では堂々の1位を獲得し、私の事前予想でも「1位を取るのは必然の流れ」とまで言い切った作品である。予想が当たったのは嬉しいのだが、実際にそこまで評価されるべき作品かと言うと、ちょっと疑問。
良かった点と悪かった点
・いじめの描写がそこまで凄惨じゃないのに、心にグッサグサ刺さるという圧倒的な筆力。
・長さの割には主人公たちのドラマが弱い。
・ミステリーの仕掛けが最高。
・でも落ち着いて考えてみると、ちょっとムリがあるかも。
8位 『騙し絵の牙』
一言コメント
大泉洋をあてがきする、という新たな試みで話題になった作品。話題性があるということは、つまりそれだけでマニアからは嫌われる要素に成り得る。私はマニアだろうか。よく分からない。
作品の感想としては、最後以外は最高に面白い、である。「あてがき」「読者を欺く」「ドラマ」と欲張りすぎた結果、いびつな作品になってしまった。
良かった点と悪かった点
・最終章までのドラマはほぼ完璧。どろどろしたドラマの展開っぷりは、最高に最悪(もちろん褒め言葉)。
・大泉洋をあてがきすることで、脳内イメージを描くのが容易になって、結果リーダビリティが高くなった。新たな発明かも。
・章扉に毎回登場する大泉洋がスベってる。演技が大根。写真なのに大根。撮り方も悪いと思う。イメージ画として成り立ってない。
・最後の裏切り方は失敗。それまでが良かっただけに、印象が余計に悪い。
7位 『百貨の魔法』
一言コメント
各本屋で「ポップ大賞」イベントを展開するなど、色々と工夫なさった作品。まずは書店員に気に入られることは大事なことだ。商売的に。
中身の方は、派手に売れるような作品ではないかもしれないが、少数にファンに大切にされるタイプの作品だと感じた。
良かった点と悪かった点
・作者が時間をかけて丁寧に綴っただけあり、まとまりよく仕上がっている。
・エンタメ作品によく見られる「毒要素」がまったくない。全部綺麗。恋愛要素さえないから驚き。
・「いい話」を書こうとしすぎたかもしれない。現実離れしすぎて作品に入り込めない。フィクションの中にもリアリティが必要。
6位 『星の子』
一言コメント
今回の本屋大賞の中でもぶっちぎりで評価が分かれている作品。そういう作品の方が萌えるのがマニア。きっと私はマニアだ。
純文学に近い作品だが非常に読みやすく、ページ数も少ないので読書初心者の人にオススメできる。でも読み終わったあとに「はあ?」って言うかもしれない。それもまた良し、である。
良かった点と悪かった点
・文章が上手すぎて物語の進みが異常に速い。文章を読んでいることを忘れるほど。
・テンションを上げるような展開が一切ない。でもなんか面白い。
・あのラスト。そりゃ評価も分かれるさ。
5位 『キラキラ共和国』
一言コメント
2017年本屋大賞で第4位を獲得した『ツバキ文具店』の続編となる作品。
なんとこれだけKindle版がなく、わざわざ書店に買いに行った。作品の特性上仕方ない、というかきっとこだわりだったのだろうけど、もうこれからの時代、本は買いに行くものではなくなるだろうから、キツいと思う。
良かった点と悪かった点
・今回のノミネート作品ではいくつか感動作と謳うものがあったが『キラキラ共和国』が個人的には一番。
・文章もそうだし、小道具まで、とにかく説得力が凄い。だからこそ感動してしまう。これはちょっと大げさかもしれないが、PIXARにも通ずる部分。
・続編なので前作を読まないと面白さが半減かも。自分は前作を未読の状態だったのだが、けっこう「?」な部分が目立った。感動作だけに勿体無いことした。
続編ものを完全に独立させるか、それとも前作のファンしか分からないものにするのか。ハッキリさせるべき。
4位 『屍人荘の殺人』
一言コメント
並みいるノミネート作品たちの中でも一際異彩を放つど直球ミステリー。
ネット、携帯電話の普及によって創造することが難しくなった“クローズド・サークル”の状況を、ある画期的な設定によって生み出した。さらにその設定が謎に大きく絡んでいる。
著者の今村昌弘は無職でこれが著作の第1作目なのだが、暇人が時間をめちゃくちゃかけて、隙のまったくないミステリーを作った感が凄い。無職バンザイ。
良かった点と悪かった点
・ミステリーマニアであればあるほど喜ぶような作品。こだわりまくってる。変態。
・ドラマ性は全く無し。すべてをミステリーに捧げている。その潔さもまた良し。
・魅力的な登場人物が一人もいない。
3位 『AX アックス』
一言コメント
面白い小説しか書けない、という奇病に罹患している作家伊坂幸太郎。彼の超人気“殺し屋シリーズ” の最新作である。
2作目『マリアビートル』の圧倒的な面白さにはさすがに勝てないが、やはりそこは伊坂。安定のクオリティである。
ちなみにシリーズ初の連作集となっているが、なんと連載に6年もかかっている。そして6年越しでも作品を見事に回収してくるその手腕は、もう人間離れしているとしか言いようがない。
良かった点と悪かった点
・シリーズものだけど、ちゃんと独立しているのでこれから読んでも全く問題なし。
・読んでいる最中、ずっと面白い。しかも連作集の特性を活かした伏線&回収もこなしている。伊坂は仕事できすぎ。
・感動作にしたかったっぽいけど、伊坂作品でそれはちょっとムリがあるかも…。
2位 『たゆたえども沈まず』
一言コメント
美術小説という新たなジャンルで小説会を席巻している原田マハ。そんな彼女が遂にゴッホに手を出してしまった。ゴッホはもとよりフィクションのような生涯だった。そんなゴッホと原田マハが手を組んだら面白くないわけがない。
芸術に取り憑かれた人間たちの、欲深く、濃厚で、哀れなドラマをぜひ愉しんでほしい。私はこれが初の原田マハ作品だったのだが、最高に愉しめた。他の作品も読む。絶対読む。読み散らかす。
良かった点と悪かった点
・勢いが出てくるまで少し時間がかかるけど、ゴッホが出てきた辺りから猛烈に面白くなる。
・ヨーロッパに日本美術を知らしめた実在した男の生き様も強烈。
・読むと無性にゴッホの絵が見たくなる。それも実物を。
・結末は誰もが知っているものなのでそこの裏切りはなし。それゆえに、物語が昇華する部分がなくて人によっては消化不良になるかも。
1位 『盤上の向日葵』
一言コメント
今一番脂が乗っている作家柚月裕子。私が彼女の実力を思い知らされたのは映画化もされた『孤狼の血』。およそ女性が書いたとは思えないほど、下品でドロッドロの警察&ヤクザ小説で、度肝抜かれた。しかも上質なミステリーときている。あれは傑作だった。
そんな彼女の新作テーマは“将棋”。しかも真剣師と呼ばれる賭け将棋を扱った作品。柚月裕子は汚い作品を書かせた東西一の女性作家だ。これは期待しない方がおかしい。
ちなみに将棋を題材にしたのは羽生永世七冠や藤井聡太棋士による昨今のブームに乗ったわけではなく、たまたまだそう。連載を開始したのが2015年なので、完全に運が良かっただけである。これは売れる追い風が吹いているということじゃないだろうか。来てます、柚月裕子。
良かった点と悪かった点
・オッサンを魅力的に書くのが上手すぎ。女性作家とは思えない。
・将棋要素もミステリー要素もオマケにすぎない。本質は別にある。
・将棋が分からなくてもぜんぜんOK。グイグイ惹き込んでくれる。
・連載作品ゆえか、物語としての改善の余地あり。
終わりに
最初にも書いたが、これは完全に私の個人的な趣味ランキングである。
しかし本家の方をあまり無条件に信用するものどうかと思うのが正直なところ。
例えば今回大賞を獲得した辻村深月の『かがみの孤城』だが、得点だけで見るとぶっちぎりの1位だ。しかしそれほど群を抜いた作品かと言えば、NOである。まったくもって違う。また、3位という快挙を達成した『屍人荘の殺人』だが、読書初心者が手を出したら確実にヤケドをするだろう。「本屋大賞3位か~」なんて軽い気持ちで読むような作品ではなかったりする。
今回こうやってノミネートした10作品を全部読んだ印象だと、今年の作品はどれも「そこまで大差ない」というのが私の評価である。抜きん出た作品もなければ、圧倒的な駄作もない感じ。毎年恒例の地雷枠も控え目だと思う…うん、今回は『星の子』かな。
ということで、ぜひとも本家と合わせて参考にしてもらいたいと思う。
皆さんが素晴らしい読書体験を得られるよう、願っている。
以上。
ノミネート作品を全くの未読状態でランキング予想したのがこちらの記事。
イチャモンだらけでお気に入りの記事です。
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