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辛いときほど笑えとか、そんなの気持ち悪すぎる

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どうも。

辛いときほど笑え 

「辛いときほど笑え」

某松岡修造だけでなくても、こんな言葉を発している人を見たことがあると思う。

自己啓発系の本にもよく書いてあったりする。楽しいから笑うのではなく、笑うからの楽しいのだと。 

それが一理あるのは認めよう。私の周りにも確かにいる。いつもニコニコとしていて誰からも愛される子がいるし、いつも不機嫌で愚痴ばかり言っている嫌われ者もいる。

笑顔は他人の心に癒やしをもたらす。だからこそ、人は笑顔を振りまくし、それによって自身の気持ちが救われることもあるだろう。

だが果たして、楽しくもないときに笑うのは正しいことだろうか?

 

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笑顔の理由は人によって違う

例えば、小さい子供が笑っていたとしよう。 

その笑顔はまさに天使。親だけに限らず、大人たちは子供の笑顔に癒やされる。そして言う。

「いい子だね」

平和な世界である。

 

しかしもしその子がこう考えているとしたらいかがか。

「私が笑っていると大人が喜んでくれる。だから私は悲しかったとしても笑っていよう」 

ひどく歪に感じないだろうか。

 

笑顔をというのはあまりにも表面的だ。本人が行う筋肉運動でしかない。大人だっていくらでも作り笑いをするが、それは子供も同じ。それを安易に「いい子だね」と評価してしまうことで、さらに歪んでいく。

たぶん、私たちはみんなそうやって歪みながら成長してしまっている。

 

大人になると、「我慢」「感情を押し殺す」といったものにやたらを価値を見出すようになる。感情を出すのはいけない、という空気がある。

感情的な人というのは仕事をする上では、非常に厄介である。論理が通用しない人ほど話し合いに向いていない人はいない。だからこそ最強という説もあるが…。

だがこうやって考えてみるとあまりにも感情を押し殺し過ぎじゃないだろうか。

いい子になりたがる人々 

先日この本を読んだ。

いい子に育てると犯罪者になります (新潮新書)

岡本 茂樹 新潮社 2016-03-17
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『反省させると犯罪者になります』という強烈なタイトルを目にした方も多いと思う。その本の続編にあたるのがこちらになる。ちなみに著者の岡本茂樹氏の遺作になってしまった。2015年6月26日に亡くなったそうだ。残念である。

相変わらず強烈なタイトルだが、中身は至って真面目。犯罪者の校正現場で培った知識を惜しげもなく披露してくれている。

 

この本の中では一貫して、「感情を素直に出さないこと」への警鐘を鳴らしている。

人は幼い頃に、我慢することを覚え(強制され)、感情にブレーキをかける術を身につける。

しかし、本来感情というのは人間に元々備わっている機能である。押さえつけることによって、心に負荷がかかってしまうのだ。

自分の感情を押さえつけるということは、自分の欲求を抑えることだ。それは“いい子”という表現をされる。みんな“いい子”を目指してきた。きっとこれは子供も大人も同じだろう。

しかし、“いい子”というのはつまりは“自分を大事にしない”ことなのだ。

 

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いい子はどうなるか?

自分の感情や欲求を抑えるクセがつき、自分を大事にできなくなった人がどうなるか。

ひどく残酷な展開を迎える。

それは「他人を大事にしなくなる」のだ。

自分の気持ちを大事にできない、つまり「人は我慢すべき」という価値観を持っている人は、それが正義になってしまうので、当然他人にも「我慢しろ」と思うようになる。

人の迷惑にならないように“いい子”を目指してきたはずなのに、いつの間にか他人に迷惑をかけないどころか、他人を大事にできない人、他人の気持ちがどうでもいい人になってしまうのだ。

素直に悲しまないのは気持ち悪い

こんな本を読んでしまったので余計に今の風潮が気持ち悪く感じられるのだ。

誰にだって辛い時や悲しいときはある。あって然るべきだし、そういう時間があるからこそ、真剣に考えたりする。楽しい時間の大切さを知れる。

別に悲しんだっていいし、辛さに気分が落ち込むのだってかまわないはずだ。

むしろそういった感情を押し殺して、「無理をしてでも笑って」という方がおかしいだろう。どちらが自然かは比べるまでもない。

 

私たちは自分の感情を大切にしなさすぎなのかもしれない。

心を歪めることが当たり前になりすぎているのかもしれない。 

 

強くなろうとするのは大事なことだ。無理をする中で成長のキッカケを掴むことは多い。

だがきっと、素直に自分の感情を認めることも大事なことだし、素直な方が生きるのはラクなはずだ。

 

以上。

 

いい子に育てると犯罪者になります (新潮新書)

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