どうも、ひろたつです。
今回紹介するのは、こちら。
拝金 (徳間文庫) | ||||
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さくっと読みましたが、これはなかなか評価が分かれる作品でしょうね。
というのもこの作品は、小説として読むか、ホリエモンが書いた作品として読むか、でまったく違う顔を見せるからです。
なので、今回の記事では両方の側面からこの作品を紹介したいと思います。
◯これよりも面白い小説はいくらでもある
まず単純なる小説として紹介します。
はっきり言っておきましょう。
これよりも面白い小説はいくらでもあります。
ちょっとあらすじを見てみましょうか。
「どのくらいの金持ちになりたい?」謎のオッサン・堀井に問われたフリーター藤田優作は軽口で応じる。「金で買えないものはない、そう言えるくらいかな」そのひと言で彼の運命は変わった。堀井の助言のもと事業を立ち上げ、様々に金融技術を駆使、瞬く間に売上五百億円のIT企業の社長として時代の寵児に。快進撃はさらに続くかと思われたが―。金、勝者、絆とは?感動の青春経済小説。
なるほど。ありきたりですね。
実際のところ、同じような設定の本はいくらでもありそうです。特に酷似しているのが石田衣良の『波のうえの魔術師』ですかね。あれはなかなかの良作でした。読んでいると株で大儲けできるようになった気がします。
波のうえの魔術師 (徳間文庫) | ||||
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私はFXでいくらか儲けが出るようになっているのですが、頭の中のイメージはこの作品にかなり影響されていますね。
と、『波のうえの魔術師』の話は置いておくとして。
『拝金』は若者のサクセスストーリーではありますが、そこは堀江貴文氏。出てくる小道具や舞台装置が非常にリアリティを持っています。作品の説得力とでも言いましょうか。読者にその世界(フィクション)を信じさせるのが上手かったです。
しかし、いかんせん素人が書いたものなので中身が稚拙であることは否定できません。
例えば出てくる若い女の子の喋り方とかが、「~だわ」「そうね」「~いいかしら」「もちろんそうよ」と、あまりにもステレオタイプな「影のある女の喋り方」すぎて、読んでいて非常に寒かったです。もちろんそうよ、ってガキ使でしか今どき聞かないですよ。
細かい部分のリアリティは十分だとしても、話の展開や、人物描写などは、読んでいて苦痛という程までのレベルではありませんが、とっても凡庸な作品でした。
社会派の小説が読みたいのであれば、池井戸潤で十分です。
◯でもメタ的に読むと…
しかしその一方で、小説狂いの私が数時間で読みきってしまうほどの読みやすさと、惹きつける力がこの作品にはあります。
それは上にも書いた通り、「この小説はあのホリエモンが書いたんだ…!」という観点から読むと、途端に面白さが爆発的に上がります。
どうやら著者もそこら辺を狙っていたようで、あとがきにこんな記述があります。
フィクションだからできるノンフィクション
そう、登場人物や出来事というフィクションに、ホリエモンというノンフィクションを重ねることで浮き上がる面白さ、それが彼の狙いだったようです。
だとすればこの小説は、小説として楽しむよりは、ホリエモンが仕掛けた「未知の面白さ」を楽しむための手段と受け取ったほうがいいでしょう。人と同じことをしたくない著者のことですから、こういった仕掛けは非常に”らしい”試みだと感じます。
この面白さは実際に読んでもらわないと理解しがたいでしょうね。
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◯役割を終えている
あとひとつ感じたのは、この作品で「小説堀江貴文」は完結しているということです。
小説としての面白さはあまりないので、続編出したところで意味がありません。…なんて思ってたら、続編出てたんですね。私が知らないぐらいなので、相当売れていないんじゃないでしょうか。
成金 (徳間文庫) | ||||
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芸能人がちょろっと書いた作品を私は基本的に読みません。今回は堀江貴文ファンとして読んだだけで、普段の小説狂としてだったら、この作品は認められません。なので続編も到底読む気にはならないのです。
ただし、堀江貴文が好きで、彼の企みを味わってみたい方には非常にオススメできる作品でした。