俺だってヒーローになりてえよ

何が足りないかって、あれだよあれ。何が足りないか分かる能力。

脳髄に直接快楽物質を流し込むよう。『儚い羊たちの祝宴』米澤穂信

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どうも、読書中毒ブロガーのひろたつです。

今回は数あるミステリー短編集の中でも、ぶっちぎりの切れ味を持つ作品のご紹介。

これはヤバいぞ。 

 

内容紹介

 


夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。 
 

 

「脳髄を冷たく痺れさせる」

なんて素晴らしい殺し文句を考えるんだ。この紹介文を書いた人、さてはプロだな。←当たり前

それにしても、「脳髄を冷たく痺れさせる」という惹句に相応しいクオリティをちゃんと有してる『儚い羊たちの祝宴』自体がまず凄い。そしてこんな作品を生み出しやがった作者の米澤穂信が偉すぎる。抱きしめて頬ずりしてやりたい。

 

ミステリー作品としては致命的な欠点

『儚い羊たちの祝宴』の魅力を、ネタバレ一切なしで語っていきたいのだが、まずはこれである。

 

 

ミステリー作品としては、致命的な欠点がある。

 

 

は? なに言ってんだお前?

 

きっとそう思われた方もいることだろう。しかしこれがゆえに『儚い羊たちの祝宴』は、数あるミステリー小説作品の中でも、とびきり光を放っているのである。

 

どういうことなのか説明しよう。

私は『儚い羊たちの祝宴』をハードカバー版で購入しているのだが、そのときの帯にはこう書かれていた。

 

「最後の一撃、フィニッシングストロークにこだわった作品」

 

フィニッシングストロークとは、最後の一文で世界がひっくり返る、というやつである。それをテーマに書かれた作品集だと公言しているのだ。 

 

そもそもだが、ミステリー小説を読む人の多くが期待しているのは、意外性である。予想を裏切る展開こそがミステリーの醍醐味なのである。その中でもフィニッシングストロークに代表される、いわゆる“どんでん返し系”は上手く決まれば、読んだその人の人生において、最高の一冊と呼べるほどの作品になりうる。

 

だがどうだろうか。「この本にはどんでん返しがあります」と書かれていたら、どうやったって意識して読んでしまう。タネを見破ろうとしてしまうじゃないか。構えているところにどんでんを返されても、こちらとしては「あぁ、最初っからどんでん返されるって知ってましたよ」となってしまう。つまり興醒めである。

 

だから『儚い羊たちの祝宴』にはミステリー小説として致命的な欠点があると私は言っているのだ。

 

読者の予想をさらに超えてくる超腕力

だがだ。

作者の米澤穂信の頭脳は、我々のような一般市民とは比べ物ならないぐらいの知性で、圧倒的に凌駕してくる。違う表現をするならば、ミステリー的変態性を全開にして襲いかかってくる。どうだ、ピンと来ないだろう。それでいい。

とにかくだ。

「あなたのことをこれから騙しますよ」と事前に言っておいて、こちらを十分すぎるぐらいに警戒させた上で、さらにひっくり返しくてる。それが『儚い羊たちの祝宴』なのである。どうだ、どれだけ腕力の強い作品か伝わるだろうか。

 

大体にして、フィニッシングストロークがそもそもヤバい。巷に溢れまくってる“驚愕の展開もの”の中でも、フィニッシングストロークは最強だ。

「最後の一文で世界がひっくり返る」なんて例えるなら…ミステリーの醍醐味をぎゅうぎゅうに詰め込んで口の中に無理やり押し込むだけじゃ飽きたらず、脳みそに直接快楽物質を注入するようなもんだ。

意味が分からないだろう。書いている私自身が分かっていないのだから当然だ。安心したまえ。

 

御託はこれぐらいにするとして、ちゃんとオススメをしよう。

極上の小説体験が出来るってことだと理解してもらいたい。しかも短編集なので、その衝撃は1回では終わらない。2度3度、繰り返し繰り返し私たちが作り上げてきた世界を破壊してくるのだ。その快感たるや、覚醒剤いらずである。

 

ということで、私がこれまでに読んだミステリー小説の中でも、特にオススメしたい作品である。

ご堪能あれ。