どうも、ひろたつです。
誰も知らないだろうから紹介する。
奥浩哉の心が折れた作品
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奥浩哉の代名詞といえばもちろんGANTZである。GANTZといえばあの特徴的なCG画法が有名である。マンガを描くにあたり、パソコンソフトを多用し、手書きでは表せないリアル感を表現することに成功した。
そんなCG画法であるが、実はいきなりGANTZで挑戦して成功したわけではない。
GANTZのひとつ前の作品、つまり今回紹介する『01 ZERO ONE』が奥浩哉にとって最初のCGを使用した作品だったのだ。
それは良かったのだが、ひとつ問題があった。金である。
このCG画法は非常に金がかかってしまい、原稿料だけではまったく足りず、奥浩哉は『HEN』で手にした印税を投入しまくってなんとか連載を維持していた。
しかしながらそんな狂気の沙汰は当然長続きするわけもなく、私財をなげうっているわりには人気も出なかったため、奥浩哉側からギブアップする形で連載が終了になってしまった。
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では中身はといえば…
で、そんな『01 ZERO ONE』だが、中身はといえば紛うことなき傑作である。
まずストーリーが非常に単純でいい。
クラスでは全然目立てない少年が、とあるきっかけから世界的人気対戦型バーチャルゲーム“MBZ”に才能を見出す、という内容。
さらにはここに奥浩哉お得意の小憎らしい敵役が上手いこと配置されている。主人公の同級生で、なんでもできてしまうくせに他人の痛みにはまったく頓着しないクソ野郎である。しかも超美形というおまけ付き。
そんな彼が読者の憎しみの受け皿になってくれている。この悪役の存在のおかげで、読者は自然と主人公に肩入れすることができ、しかも物語世界の進行を待ち望んでしまうように仕向けている。
手が届かないからこそ見てしまう
そして最大の魅力はなんといっても作中に出てくる架空のゲーム“MBZ”である。
世界中の対戦ゲーマの理想を具現化したようなシロモノで、普段そういったゲームをやらない私でさえも「死ぬまでにやってみたい!」と熱望するほどである。面白そうすぎる。
ここまで強烈に人を惹きつけてしまうのは、「実際には存在しない」「どれだけ面白そうでもプレイできない」というところにポイントがある。
人は手が届かないものに弱い。手に入らないからこそ見てしまうという習性がある。
創作物ではこれも常套手段であり、あえてリアリティのある架空のものを見せることで、読者の飢餓感を煽り、「もっと見たい!」と思わせる。
グルメ漫画なんかはこの手法だけで成り立っていると言える。
このように読者を魅了する要素に溢れいているのが『01 ZERO ONE』なのだ。お分かりいただけただろうか。
ダメなところもあります
褒めてばっかりの『01 ZERO ONE』だが、もちろんダメな部分もある。というか、このダメな部分のせいで世の中に広まっていないのだろうと推測している。
上記の通り『01 ZERO ONE』は作者の奥浩哉が途中で心が折れてしまった作品である。どのくらいの折れっぷりかというと、これからゲームの世界大会に臨む!というシーンで終わっているのだ。
全3巻。正直言って、そのシーンが1番の盛り上がりを期待させる部分であり、肩透かしもいいところだ。これからどんだけ面白くなるのか期待にワクワクしていたところを、いきなり叩き落される。とんでもない仕打ちである。
つまり作品としては未完成も甚だしく、とても人様にオススメするようなものではない。
それは重々承知の上で今回の記事を書かせてもらっている。
それでも私は『01 ZERO ONE』を傑作だと思っている。
奥浩哉の才能の純粋な部分を味わえる
『GANTZ』『いぬやしき』をお読みになった方はご存知のとおり、奥浩哉という作家は「エロ」「グロ」「暴力」というアイテムを使うことで読者を魅了してくる。
これらは世間一般ではタブーとされているものであり、だからこそ読者に背徳的な快感をもたらすことができる。隠れて読むエロ本のドキドキみたいなもんである。
それで面白いマンガが描けるのであればまあいいと思う。でもそれと同時にそれでいいのか、とも思う。
「エロ」「グロ」「暴力」なんていうのはドーピングである。面白さに拍車をかけてはくれるが、それが無くなったり、読者が慣れてしまえば途端に魅力を失う。むしろ不快感さえもたらすかもしれない。
作品の本質はそれらにはない。
そして『01 ZERO ONE』は、それらの要素を一切排除している。多少のエッセンス程度には入っているが、あくまでもおまけである。
つまり『01 ZERO ONE』は奥浩哉の才能の純粋な部分を味わえる稀有な作品であるといことである。
私財を投入してまで連載を続けていたところからも、彼がどれだけこの作品を素晴らしいものにしようとしていたかがよく分かるだろう。
奥浩哉の作家性は『01 ZERO ONE』にこそ見つけることができるだろう。
彼の隠れた傑作をぜひご一読いただきたいと思う。
以上。
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